にげうまメモ

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23/12/10 Weekly National Hunt / Jump Racing

12/8(金)

Sandown (UK) Heavy (Soft in places)

Beacons Winter Novices' Hurdle (G2) 2m3f173y (Replay)

1. Deafening Silence (IRE) J: Harry Skelton T: Dan Skelton

逃げたInsurrectionが逃げ込みを図る展開も、これにJosh The Boss、Deafening Silenceが接近。最終障害で落馬したJosh The Bossを尻目にDeafening SilenceがInsurrectionを退けて勝利した。

Deafening SilenceはこれでHurdleはExeterのClass3から連勝とした。勝負所からだいぶ騎手が手綱を動かして前に出る必要があったようで、最後は根負けしたInsurrectionを下しているようにもう少し距離的にはあった方がいいかもしれない。リズムよく逃げたInsurrectionが僅差の2着。アマチュアのJamie Neild騎手が騎乗したJosh The Bossは最終障害までは前に食らいついて行く走りを見せていたが、とはいえその時点でややInsurrectionに振り切られ気味であったように感じる。

 

Esher Novice' Chase (G2) 3m37y (Replay)

1. Stay Away Fay (IRE) J: Harry Cobden T: Paul Nicholls

淡々と引っ張ったStay Away Fayが付いてきたGiovincoとのマッチレースを制して勝利した。Stay Away Fayは昨シーズンのAlbert Bartlett Novices' Hurdle (G1)の勝ち馬で、Chaseはこれで2戦2勝とした。前向きな気性とスピードで派手な勝ち方をするタイプではなく、むしろ落ち着いて淡々とレースを運ぶことができるステイヤーのようで、24fでの馬といったところだろう。HurdleではListed勝ちを含めて3戦3勝という成績を残しているGiovincoが僅差の2着。前走Stay Away Fayに対して僅差の2着に入ったThe Changing Manもいたが、途中の障害で躓いて落馬に終わった。

 

Cagnes-Sur-Mer (FR) Collant (4.2)

〇 Prix Du Vieux Nice

Haies Pour tous poulains et pouliches de 4 ans, n'ayant pas, en courses à obstacles, couru trois fois. 3400m (Replay)

AR Majordomo (FR) J: Nathanael Ferreira T: Sylvain Dehez

Daiwa Major産駒のMajordomoが出走しており、中段からレースを進めたが、徐々に脱落しレース終盤で途中棄権に終わった。Majordomo自身はフランスの平地競争を使ってきた馬のようで、Deauvilleで1勝をあげている。Haiesは昨年もこの開催に一度出走していたようだが途中棄権に終わっており、残念ながら特段進捗を見せることはできなかったようだ。ダイワメジャー産駒は日本ではホッコーメヴィウスやスズカプレストといった活躍馬がいるが、フランス障害競馬に出走したのはおそらくこの馬が唯一である。欧州全体としては2021年にCrowns MajorがアイルランドCorkでMaiden Hurdleを勝って話題を集めたが、その後は平地競争に戻ったようで、2022年におそらく事故で亡くなっている。

 

12/9(土)

Aintree (UK) Heavy

Becher Handicap Chase (Premier Handicap) 3m1f188y (National) (Replay)

1. Chambard (FR) (AQPS) J: Miss Lucy Turner T: Miss Venetia Williams

元々14頭が出走を予定していたのだが、馬場を嫌ったのか2頭が出走取消。12頭立てというのはこのレースにしては珍しく、今年よりも少ない頭数で行われたのは2009年の8頭立てまで遡らなければならない。Highland Hunter、さらにはPercussionなどが前に行く展開も、じわじわと好位に押し上げていたChambardが残り6障害あたりから先頭に立つと、ついてきたCoko Beachを突き放して勝利した。

Chambardは基本的にはClass2~3辺りのHandicap Chaseを使ってきた馬で、重賞クラスでは初勝利とした。2022年の段階ではFulke Walwyn Kim Muir Challenge Cupの勝ち鞍があり一躍名前を有名にしたのだが、昨シーズンは全体的にいまいちな結果に終わっていたようだ。Novice戦線では比較的安定したレースをしていた馬で、復調気配にあるのであれば面白いのだが、とはいえこの日は極端な重馬場と10st1lbという楽な斤量も考慮すべきだろう。11st9lbを背負ったCoko Beachはじわじわと押し上げるも2着まで。この中では唯一の11st台の馬で、さすがに斤量的に厳しかったものと思われる。逃げたPercussionが3着。そのあと大きく遅れてCelebre D'Allen、Lounge Lizardと入線し、12頭中完走は5頭とタフなレースとなった。

 

BoyleSports Daily Money Back 2nd Juvenile Hurdle (Listed) 2m209y (Replay)

1. Liari (FR) J: Harry Cobden T: Paul Nicholls

経験のあるMax Of Starsがゆったりと引っ張るも、好位から進めたLiariがKnight of Allen以下を振り切って勝利した。LiariはCracksmanの産駒で、これでHurdleは2戦2勝とした。平地ではフランスでMaidenを勝ったのみであまりレース経験はなさそうで、血統的には平地と兼用される可能性もありそうなのだが、とはいえ厩舎的には障害馬としてのキャリアを期待したいところである。この重馬場はビハインドであったと思われるが勝ち切ったことは収穫だろう。Juvenile Hurdleであれば持っているスピードはいいものがありそうで、Cracksmanの種牡馬としてのポテンシャルを図るうえでも注目される一頭であろう。

 

Sandown (UK) Heavy

Fighting Fifth Hurdle (G1) 1m7f216y (Replay)

1. Not So Sleepy (GB) J: Sean Bowen T: Hughie Morrison

元々Newcastleで行われる予定であったレースだが、開催が中止になった結果Sandownで行われることになった。Constitution HillとShishkinの2頭が出走を予定していたものの、馬場を嫌って直前で回避。レースはGoshenが前に行くもYou Wear It Wellがこれについて行く。しかし途中から再度前に行ったGoshenが軽快に引っ張るも、残り2障害辺りから前に出たNot So SleepyがLove Envoiを振り切って勝利した。

Not So Sleepyはこのレースは2021年に続き2勝目とした。ただし、その後は16fのG1クラスでは歯が立たず、基本的には平地と兼用で走っている。今回はNicky Hendersonの強力な2頭が不在の中、例によってGoshenが気難しさを覗かせつつ引っ張り、かつ開催が危ぶまれた極端な重馬場という条件において、唯一リズムを崩さずにしっかりと走ったこの馬の経験値が生きた格好となった。昨シーズンClose Brothers Mares' Hurdle (G1)でHoneysuckleの2着のある実力馬Love Envoiはどうにも前半から馬場に苦労するような印象のある2着。牝馬のListedを快勝してきたYou Wear It Wellは積極的に運んだが、Goshenのレース運びを考えるとこの馬場ではむしろ裏目に出たと考えるべきだろう。Goshenは例によっていつも通りだが、最近は終盤に気持ちが切れるようなところが多いのが気になるところである。ここまでコンスタントに走り続けてきた11歳馬の勝利ということは素晴らしく、やはりこのようなベテランが経験値で上回ることができるというのは障害競馬のスポーツとしての醍醐味であろう。一方でメンバー的にはかなり小粒であった上に勝ち馬を除けば全体的に自滅したような印象のあるレースで、今後に繋がるレースという観点ではかなり微妙な結果となった。

 

Henry VIII Novices' Chase (G1) 1m7f99y (Replay)

1. Le Patron (FR) J: David Noonan T: Gary Moore

8歳馬Unexpected Partyが前に行くも、残り3障害辺りからLe Patronが先頭に。そのままColonel Harryを振り切って勝利した。Jpr Oneが3着。

Le PatronはこれでChaseは3戦3勝とした。フランス障害競馬で活躍したBalkoの産駒で、もはやだいぶ少なくなったDariusの末裔と、血統的にはなかなか面白いものがある。Hurdleでは特段目立った実績はない馬だが、20f辺りを使っていたChase2戦はいずれも派手な勝ち方を見せていたようで、David Noonan騎手の初のG1制覇ということもあり、なかなか興味深いレースとなった。ただし、この路線は如何せんタレント揃いで、どうにも今回出走していたイギリス勢はアイルランド勢と比較すると小粒感は否めず、やはりアイルランド組の動向には気を付けた方がいいだろう。ChepstowのNovice戦を勝ってきたColonel Harryが2着。CheltenhamでArkle Challenge Trophy Trial (G2)で勿体ない落馬に終わったJpr Oneもいたが、好位からどうにも伸びきれず3着に終わった。

 

Tingle Creek Chase (G1) 1m7f99y (Replay)

1. Jonbon (FR) J: Nico de Boinville T: Nicky Henderson

Jack TudorのHaddex Des Obeauxが元気に引っ張るも、これにJonbonがぴったりとついて行く。Jonbonは最終障害前で先頭に出ると、Edwardstone、Haddex Des Obeuaxを振り切って勝利した。

Jonbonは今シーズンはShloer Chase (G2)に続き連勝とした。前走も下してきたEdwardstoneが相手ということはあるのだが、比較的スピードの持続性能を生かしやすいCheltenhamと異なり、途中にRailway Fenceが存在しているSandownは相対的にEdwardstoneに有利であったと思われるが、とはいえここでも力の違いを見せるレースで、引き続きこの路線のイギリス勢の代表格として頑張ってくれそうだ。そのEdwardstoneが2着。年齢的にはもう少し距離があってもよさそうな感もあるのだが、とはいえやや前向きな気性を見せているようで、気性的にはやはりこの16fなのかもしれない。上がり馬Haddex Des Obeauxは大健闘の3着だが、ここでこれだけ着差が付かないレースをしてしまうとレーティング的なところで問題が生じることが心配である。この路線ではすっかりお馴染みのスペイン生産馬Nube Negraは途中から早々に脱落し、離れた4着に終わった。勢いがあった数年前と比べると少々力落ちの印象は否めず、そろそろ路線変更の時期かもしれない。

 

〇 London National Handicap Chase (Class 2) 3m4f156y (Replay)

1. Truckers Lodge (IRE) J: Freddie Gingell T: Paul Nicholls

Tingle Creek Festivalを締めくくる伝統の超長距離戦。第1障害で早々にFontaine Collongesが落馬。空馬が度々馬群に絡んでくるも大きなアクシデントなはくレースは進行。残り3障害辺りから前に出たTruckers LodgeがBeauportを振り切って勝利した。

Truckers LodgeはWest Wales National、Midlands Grand Nationalに続き、"National"は3勝目とした。この手の極端に長い距離の不良馬場にて浮上してくるタイプの馬で、Welsh Grand Nationalでも好走歴がある。どうにも信用しにくいところはある馬ではあるのだが、とはいえこういうレースでのしぶとさは随一で、11st6lbと斤量的にも厳しかったここでもタフなレースを見せてくれた。トップハンデのBeauportが2着。一昨年にはCarlisleのIntermediate Chase (Listed)を勝った馬だが、その後は24f超のレースで結果を残している。

 

Navan (IRE) Heavy

Navan Novice Hurdle (G2) 2m4f (Replay)

1. Slade Steel (IRE) J: Rachael Blackmore T: Henry de Bromhead

Stellar Storyが引っ張るも馬群は密集して進行。人気薄のLalystoneのみが脱落した4頭の叩き合いはSlade SteelがLecky Watsonを凌いで勝利した。

Slade SteelはこれでMaidenから連勝とした。NHFでも特に大きなところは使っていなかった馬のようで、まださほど世代を重ねていないTelescopeの代表産駒としてどこまでやれるか期待される。Willie Mullins陣営のLecky Watsonが2着で、Champion Bumper (G1)にてA Dream To Shareの4着があることを考えるとさほどメンバー的に弱いということはなさそうだ。ただこの馬自身NHFでは勝ち切れず、Maidenから24fを使っていることを考えると、距離的にはまだあった方がいいかもしれない。Jack Kennedyが騎乗したStellar Storyが3着に入った。

 

12/10(日)

Cork (IRE) Soft to Heavy (Heavy in places)

Singletons SuperValu Stayers Novice Hurdle (G3) 3m (Replay)

1. Search For Glory (IRE) J: Jack Kennedy T: Gordon Elliott

What A Pathが淡々と引っ張るも最終コーナーから後続が殺到。ここから抜けてきたSearch For GloryがSolitary Manを振り切って勝利した。

Search For GloryはこれでHurdleは2勝目とした。昨シーズンの段階からHurdleは使っている馬で、Surehaul Mercedes-Benz Novice Hurdle (G3)ではMonty's Starの3着がある。その後のG1戦線では結果は残せなかったが、Hurdle2シーズン目で進捗があることを期待したい。面白いのがEnda Bolger厩舎のSolitary Manで、Hurdleは2022年からこれで11戦目となる。比較的長い距離でコンスタントに結果を残している馬のようで、所属厩舎のことを考えるとHurdle以外の路線においても可能性がありそうだ。格下と思われていたSarah Bearaが健闘して3着に入った。

 

O'Flynn Group Irish EBF Mares Novice Chase (G2) 2m160y (Replay)

1. Silent Approach (IRE) J: Danny Mullins T: Con O'Keeffe

Jack KennedyのHarmonya Makerが元気に前に行くも、第5障害で斜飛してSilent Approachが前に出る。そのままリズムよく運んだSilent ApproachがHarmonya Makerを振り切って勝利した。

出走馬5頭のうち3頭をWillie Mullins厩舎の馬が占めていたが、勝ったのは人気薄のSilent Approachとなった。同馬はHurdleではMaidenも勝てなかった馬だが、11月からChaseに転向するとこれで2戦2勝とした。Hurdleでもコンスタントに走っていただけに勝ち味に遅いタイプな可能性もありそうで、このような陣営の馬が頑張ってくれることは喜ばしいことである。人気のHarmonya Makerが2着だが、どうにも途中で大きく斜飛する場面が気になった。Willie Mullins陣営の中で最先着を果たしたのがZentaで、AintreeのJewson Anniversary 4YO Hurdle (G1)を勝った馬なのだが、あまりぱっとしないChaseデビュー戦となった。

 

Hilly Way Chase (G2) 2m160y (Replay)

1. El Fabiolo (FR) J: Paul Townend T: Willie Mullins

Maskadaが前に行く展開も、好位から元気に進んだEl Fabioloが残り4障害辺りから前に出ると、ついてきたFil Dorを振り切って勝利した。

El Fabioloは昨シーズンの16f Novice Chaseのトップホースで、これがシーズン始動戦であった。Sandownでいいレースを見せたJonbonに対してこちらも素晴らしいパフォーマンスを見せての勝利で、昨シーズンに引き続きこの2頭のレースが楽しみになる内容だろう。ひとまずMaskadaのゆったりとしたペースで我慢をしたというのは今後を見据えての内容と考えられるが、Jonbonとは比較的タイプとしては類似しているだけに今後どのようなレースをするかは注意しておきたい。Fil Dorは昨シーズンは結局ChaseからHurdleに戻しているのだが、今シーズンはChaseで2戦を消化しているようだ。Juvenile HurdleではVauban、Novice ChaseではEl Fabioloが相手と、どうにもついていない馬である。AintreeのGrand National (Premier Handicap)にて2着に入ったVanillierは今シーズンは16fからの始動で、とりあえずこの馬はこれでいいだろう。