*障害競馬回顧 2020/07/06-07/12
今週のWanganui競馬場の開催からニュージーランド障害競馬がスタートしました。今年のニュージーランド障害競馬は南島の競争が全て中止となり、障害競馬開催国の中でも比較的大きな影響を受けていますが、Wanganui競馬場において大きなレースはなかったにも関わらず数多くの実力馬がシーズン初戦を走り、これからの競馬シーズンが楽しみになるところです。
7/6(月)
Uttoxeter (UK) Good (Good to Firm in places)
〇 Summer Cup Handicap Chase (Listed) 3m2f13y (Replay)
1. Minellacelebration J: Benjamin Poste T: Katy Price
例によってThe Young Masterが逃げるも、残り5障害辺りから並んで行ったBansmanがそのまま抜け出して先頭に。一旦は後続に5馬身差をつけるも、ゴール直前で強襲してきたMinellacelebrationがこれを差し切り勝利した。Minellacelebration自身Utttoxeterのコースは得意としている馬で、このコースで通常5月に行われているStaffordshire Plate (C2)を連覇した実績がある。Benjamin Posteとはあまり聞きなれない騎手だが、この人とは2016年以来コンビを組んでおり、手も合っているのだろう。Harry Skelton騎手にDan Skelton厩舎と、こちらは比較的名門のBandsmanは積極的な競馬で2着に入ったが、最後は少々脚が上がっているように、やや強気に乗りすぎた感もある。今年で11歳になるThe Young Masterは十分見せ場を作っての3着。昨シーズンはさっぱりな結果であったが、まだ展開次第ではこのクラスでもやれるだろう。
Lysá nad Labem (CZE) stav dráhy: 3.2 (dobrá až pevná / Good to Firm) (Result)
〇 Memoriál Evy Palyzové
Steeplechase crosscountry I.kat. - 4600 m, cena, 5letí a starší 150.000 Kč (Replay)
1. Aeneas J: ž. Jan Kratochvíl T: Váňa st. Josef
2. Sztorm J: ž. Marek Stromský T: Wroblewski Grzegorz
途中から抜け出したSztormとAeneasのマッチレースはAeneasに軍配が上がった。Aeneas自身は2017年のSlovenské derbyの3着馬だが、その後長いことイタリアのSiepiを使うも勝ち星は上げられず、このコースで頭角を現してきた馬である。昨年はCena hejtmana Pardubického kraje – Cena Vltavy (Stcc NL)の4着もあり、どうやら昨年は障害馬としてのこの馬にとって飛躍の年となったのだが、やはりレース運びを見る限りではだいぶ力をつけてきているようだ。今年のVelka Pardubickaにも登録があるようで、Pardubiceの広いコースで叩けるようであれば、6歳と伸び代が大きいことも考えればかなり楽しみな存在となってくるだろう。11歳馬のSztormは2018年にポーランドSteeplechaseで無敵を誇った馬で、やはりこのような小型のコースにおける機動力勝負では高い実力を持っている。昨年はVelka Pardubickaに挑戦するも10着と成績は冴えず、今年はVelka Pardubickaには登録はないようだ。昨年のVelká Slušovická steeplechase (Stcc I. kat)の勝ち馬Larizanoが3着だが、前の2頭とはやや後れを取った。
7/7(火)
Killarney (IRE) Good (Good to Yielding in places)
〇 An Riocht Chase (G3) 2m4f180y (Replay)
1. Perigrine Run J: Kevin Sexton T: Peter Fahey
好位から抜け出したPerigrine RunがRobin Des Foretを抑えて勝利した。Perigrine Runはいわゆる夏馬タイプで、ここ数年は殆ど夏場にかけて集中的にレースに出走し、秋~春にかけては休養に充てるというレースが続いている。若干この路線の一線級と当たると分が悪い面があり、良馬場が得意なこの馬にとってはこのような使い方が合っているのだろう。このレースはこれで連覇となった。この路線の安定勢力であるRobin Des Foretが2着に入った。
7/10(金)
Wanganui JC @ Wanganui (NZ) Heavy11
〇 Wanganui Function Centre MDN HDL 2400m (Replay)
1. Albaron J: Shaun Fannin T: Kevin Myers
ニュージーランド競馬公式のレース映像が綺麗になっている。この日から始まったニュージーランド障害競走の初戦は好位から抜け出したAlbaronが人気にこたえて勝利した。Albaron自身はこれが障害初参戦で、平地では未勝利で好走する勝ち星は上げられなかった馬だが、ここではいい勝ち方を見せた。2着のIzymydaadはHDL4戦目にして初の好走。このクラスでは比較的良績のあったKionは後方から追い上げるも3着に終わった。
〇 Brian FM RST OPN HDL 2400m (Replay)
1. Tallyho Twinkletoe J: Aaron Kuru T: Kevin Myers
例によって後方から捲りをかけたTallyho Twinkletoeが4馬身差の快勝。Tallyho Twinkletoeは2015年のGrand National Hurdle (PJR)の勝ち馬で、その後は長い休養を挟みつつも、昨年はオーストラリアに渡り、VIC州のGrand National Hurdle、Grand National Steeplechaseを制覇している。なにかと故障がちな馬だが、現時点ではオセアニア障害競馬最強馬と言っていい立場にあり、74kgというニュージーランド障害競走では滅多に見ないほどの斤量を背負った今シーズンの障害初戦も力の違いを見せつけて圧勝する結果となった。メンバー的にはRST OPNクラスの常連であり決して強力な相手ではなかったのだが、74kgを背負って2400メートルという障害競走としては異様に短い距離のレースでこれだけのパフォーマンスを見せるのだから、やはり今年も楽しみにな存在となるだろう。おそらくVIC州のGrand Nationalに行くものと思われるが、現在メルボルン地区では新型コロナウイルス感染症の再流行が認められており、やや先行きが心配である。
〇 Chase A Fox Racing Syndicate RST OPN HDL 3000m (Replay)
1. Aigne J: Reece Cole T: Kevin Myers
2. It's A Wonder J: Shaun Fannin T: Harvey Wilson
It's A Wonderが逃げる展開も、直線追いこんできたAigneがこれを捉えて勝利した。Aigne自身はHDLはこれで3戦2勝とした。昨年の段階でRST OPNクラスでやれることははっきりしており、実績的にはさほど目新しい物ではないのだが、冬にはJericho Cupにて6着に入る活躍も見せており、今年はPJRで見てみたいところである。昨年のGrand National Steeplechase (PJR)の勝ち馬It's A Wonderは積極的な競馬で2着に入った。Grinnerは未勝利馬だが見せ場のある3着。昨年のGreat Northern Steeplechase (PJR)で稀代の逃亡劇を決めたWise Men Sayは中段からせっせと捲るも、やや前とは離された5着に終わった。この日の馬場は非常に重かったのでこの馬向きだったようだが、さすがに3000メートルという短距離のHDLではどうしようもない。ここを叩いて次を楽しみにしたい。
〇 Kevin Myers Stables OPN STP 3000m (Replay)
1. Zentangle J: Shaun Fannin T: Kevin Myers
Mr Enthusiasticが行く構えを見せるも、The Big Opal、Game Percyなどが絡んでいき、さらにはスタンド前でNapoleonが一気に先頭に並んでいく。しかし途中から先頭に立ったZentangleがOld Countess、Napoleonなどを抑えて勝利した。ZentangleはSTPはこれが初勝利とした。HDLではかなり勝ち星はあるのだが、PJRへの出走はなく、STPでの活躍が期待される。10歳牝馬Old Countessは今年も元気に2着。Napoleonはペースが緩んだとみるやSam O'Malley騎手が一気に捲り上げる面白いレース運びで、低評価を覆す3着に入った。2018年のIrvines McGregor Grant Steeplechase (PJR)、2017年のWaikato Steeplechase (PJR)などの勝ち鞍のある実績馬The Big Opalはこれが実に2年ぶりの出走であったが、とりあえずは8着と完走したようだ。2018年のGreat Northern Steeplechase (PJR)の勝ち馬Chocolate Fishは昨年の後半からの不調を引きずるような大敗。El Borbyは能力の高い馬でなんとか飛越が上手くなってもらいたいのだが、残念ながら今回は途中で落馬に終わった。
7/11(土)
阪神 (日本) 芝・ダート:不良
〇 障害3歳以上オープン 3110m (Result)
1. レンジストライク J: 石神深一 T: 武井亮
最終障害から前に出たレンジストライクがそのまま押し切り勝利した。レンジストライクはこれで障害は2戦2勝とした。初障害ながらも障害未勝利クラスでは力上位のリボンナイトを下してきた3月の中京未勝利戦は見事であったのだが、クラスが上がり障害の難易度も難化したここでも結果を出すあたり、やはり能力の高さを伺わせる。全体的に飛越は前向きで低めのものを見せており、道中やや余計な仕草が多いことが解消されれば距離を伸ばしても楽しみが広がるだろう。やはり未勝利戦を初障害ながら制してきたスズカマイゲストが2着。こちらは勝ち馬とことなりやや仕掛け遅れのような面があった。
〇 障害3歳以上未勝利 2970m (Result)
テイエムディランが後続を大きく引き離して逃げるも、さらにこれに絡んでいったブラックワンダーが先頭に立ち、そのまま引っ張る形に。番手にいたテイエムディランは最終障害で落馬し、そのまま追いかけてきたスマートアペックスをブラックワンダーが振り切り勝利した。ブラックワンダー自身はこれが障害5戦目での初勝利。前走の東京未勝利戦では積極的な競馬でパフォーマンスを上げてきたためこのような競馬となった可能性があるのだが、全体的に飛越技術が覚束ない馬が多かったからよかったものの、さすがにオープンクラスに上がるとなると競馬振りを再考した方がいいだろう。障害2戦目のテイエムディランは最終障害で落馬に終わったが、そこまでの飛越自体にはさほど問題は見られなかった。スマートアペックスは飛越技術がついてくれば勝ち上がりは早いだろう。
7/12(日)
福島 (日本) 芝:重
〇 障害3歳以上未勝利 2750m (Result)
1. ベストサポーター J: 伊藤工真 T: 和田雄二
ファストアプローチ、ニシノゴウウンなどが先頭を伺うも、飛越の巧さで前に出たベストサポーターが逃げ切り勝利した。ベストサポーターは障害は2016年から走っており、実にこれが26戦目での初勝利となる。平地では全くいいところがなかった馬で、平地の走法を見ても馬格の割に完歩が小さく日本のスピード競馬に適応したタイプとは到底思えないのだが、やはり飛越技術の安定性という面では一歩抜けていた。障害2戦目のキタノテイオウが2着で、この馬もまた平地では門別でようやく勝利を挙げてきた程度の馬であり、これは重馬場適性の差だろう。未勝利馬ながらオープンクラスに挑戦して話題を集めたララエクラテールも出ていたが、全くいいところなく大敗した。
その他
〇 Barry Geraghty announces retirement from glorious race-riding career aged 40 (Racing Post)
アイルランドのBarry Geraghty騎手が引退を表明した。同騎手は2000年と2004年の2回にわたりアイルランドのリーディングジョッキーに輝いており、今年のCheltenham FestivalでもChampion Hurdle (G1)をEpatanteで制するなど、神懸り的な騎乗で数々の成功を収めていた。
〇 'It's been a dream' - Lizzie Kelly quits the saddle to start family (Racing Post)
女性騎手としてイギリスで初めて障害G1を制したLizzie Kelly騎手も引退するそうだ。どうやらご出産を控えているそうだが、その後再度騎手に復帰する可能性もあるらしい。
〇 Dual Grade 1 star Yanworth suffers fatal injury at Kilbeggan (Racing Post)
Christmas Hurdle (G1)及びLiverpoll Hurdle (G1)の勝ち馬Yanworthが残念ながら金曜日のMidlands Nationalでの故障が原因で亡くなったそうだ。2017年のChampion Hurdle (G1)でも1番人気に押された能力馬は、最近はCross Countryにも活躍の場を広げ、PunchestownのRisk of Thunder Chaseでも勝利を収めていた。