にげうまメモ

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21/02/14 Weekly National Hunt / Jump Racing

*障害競馬回顧 2021/02/08-2021/02/14

この週は悪天候や馬場の凍結によりイギリス・アイルランドの殆どの競馬開催が中止になった。

 

2/8 (月)

Fairyhouse (IRE) Soft to Heavy

Race Displays Solerina Mares Novice Hurdle (G3) 2m2f (Replay)

1. Roseys Hollow J: Mark Walsh T: Jonathan Sweeney

最終コーナーを回って先頭に立ったRoyal Kahalaが抜け出すかと思いきや、内を立ち回って抜けてきたRoseys Hollowがこれを凌いで勝利した。Roseys HollowはこれでMaidenから連勝とした。ここまでHeavyで主に良績があるように走法としても重馬場巧者のそれであり、今回はバテたCastra Vetera辺りをスムーズに交わして内を出てきたMark Walsh騎手の好騎乗もあった。人気を背負ったRoyal Kahalaが2着で、レース振りを見る限りではさほど差はないだろう。ThurlesでListed勝ちのあるWillie Mullins厩舎のGauloiseが3着に入った。

 

2/13 (土)

Naas (IRE) Soft

〇 BBA Ireland Limited Opera Hat Mares Chase (Listed) 2m (Replay)

1. Elimay J: Mark Walsh T: Willie Mullins

Yukon Lil、Shattered Loveとの叩き合いから抜け出したElimayが5馬身差の快勝。Elimayは前走のHorse & Jockey Hotel Chase (G2)にてAllahoの2着に入っていた馬で、Novice Chaseを戦った昨シーズンは牝馬限定重賞を2勝している。牝馬相手に戻ったここではさすがの能力の高さを示した。今年からCheltenham Festivalにて牝馬限定Chase重賞が行われることになっており、現時点で牡馬・セン馬の一線級相手と戦っている牝馬が出走してこないことを前提とすると、おそらく最有力の一頭になるだろう。遡ればJLT Novices' Chase (G1)勝ちのあるShattered Loveは久々の16fであったが、じわじわ伸びて2着に入った。24fでは若干長い感もあり、牡馬・セン馬相手では現時点ではやや苦しいので、牝馬限定戦の方がいいようにも思うのだが、10歳という年齢を考えるとあまり残された現役生活は長くない可能性もある。

 

2/14 (日)

Punchestown (IRE) Soft

〇 P.P Hogan Memorial Cross Country Chase 3m1f (Replay)

1. Shady Operator J: Mr Derek O'Connor T: Enda Bolger

Call It Magicが引っ張る展開も、中段から抜け出してきたShady OperatorがBlast of Koemanを凌いで勝利した。Shady Operator自身はCross Countryは初参戦で、元々はJoseph O'Brien厩舎にいた馬だが、昨年の秋からEnda Bolger厩舎に移籍している。元々重賞戦線で戦ってきた馬ということもあり能力は高いものを持っているようで、8歳とまだ若いことを考えると新たなCross Countryの主役として期待したいところ。Risk of Thunder Chaseの経験のあるBlast of Koemanが進境を伺わせるレースで2着に入った。この路線の経験馬として、Auvergnat、Ballyboker Bridge、Josies Ordersなどもいたのだが、全体的にぱっとしないレース振りで大敗に終わった。

 

〇 I.N.H Stallion Owners EBF Novice Hurdle (Listed) 2m120y (Replay)

1. Thedevilscoachman J: Mark Walsh T: Noel Meade

2. French Light J: Gerard Galligan T: Keri Brion

好位から抜け出したThedebilscoachmanが2馬身差の勝利。ThedebilscoachmanはFuture Champion Novice Hurdle (G1)ではAppriciate Itから19馬身離れた5着に終わっている馬だが、その後のNovice競走は快勝しており、ここでも実力を見せるレースであった。あまり全体的に勝負気配のないNovice競走らしくほぼ最終障害手前までゆっくりと進むレースであったが、終いの瞬発力は目立っていた。アメリカ調教馬French Lightは大健闘の2着。やや飛越が高いのはおそらくアメリカ式のHurdleに適応した結果と考えられるが、Softの馬場でこれだけ走れれば十分だろう。Saratogaでは良馬場で高いスピードを見せてきた馬だけに、良馬場で期待したい。Cheltenham Festivalには現時点で登録はなく、おそらくアイルランドに留まることになりそうだ。

(追記)

どうやらアメリカでの2勝がレース前の斤量算出の際に正しく算入されておらず、本来背負うべき斤量よりも軽い斤量を背負っていたことが明らかとなったため、失格となるそうだ。詳細は下記の記事の通り。

American horse set for disqualification (Irishracing.com)

 

Pisa (ITA) Tempo Bello Terreno L.Pesante (Result)

21 Neni Da Zara Euro 33.000 TRIO (Replay)

per cavalli di 4 anni (Steeplechase - G3 -Fantini)

1. Honey Sexy J: Jan Faltejsek T: Pavel Tuma

スタート地点でフランスのYmirが発馬拒否するアクシデント。Salcretがゆったりと逃げるかと思いきや、途中から抑えきれないくらいの勢いで先頭に立ったHoney Sexyがそのまま逃げ切り勝利した。Honey SexyはこれでSteeplechaseは連勝とした。フランス産馬だが現在はチェコ調教馬で、PisaのSteeplechaseとはいえ飛越は安定していた。もう少し抑えが効けばよいのだが、4歳の現時点でこれだけ走れれば世代トップの馬として楽しみが広がるだろう。Honey Sexyのデビュー戦でこれを下してきたPeace Gardenが2着だが、Honey Sexyとはだいぶ力量差がありそうだ。

 

29 Criterium D'Inverno Euro 50.050 TRIO (Replay)

per cavalli di 4 anni (Siepi - G2 - Fantini)

1. Roncal J: Jan Faltejsek T: Pavel Tuma

No Profit、Pourquoipas Robert辺りが逃げる展開も、最終障害手前から内を抜けて出てきたRoncalがPourquoipas Robert以下を抑えて勝利した。RoncalはこれでMilanoのGiulio Berlingieri (G2)を含む連勝とした。MeranoのEttore Taglibue (G3)ではNo Profitと接戦を演じているが、やや道中スムーズさを欠いたNo Profitと異なり、狭いPisaのコースでもすんなりと回ってきたレース運びの巧さがあった。見せ場を作ったのがPourquoipas Robertで、PauのClaimingを勝ってのここなのだが、いきなりこれだけ走れるのだから大したものである。フランスのTancarvilleは初めてのイタリアのSiepiであり、後方から慎重に進めたが最後脚を伸ばして3着まで来た。

 

73 Gran Corsa Siepi Nazionale Euro 60.000 TRIO (Replay)

per cavalli di 5 anni ed oltre (Siepi - G1 - Fantini)

1. Edinson J: Ondrej Velek T: Richard Chotard

2. Night Moon J: Jan Faltejsek T: Pavel Tuma

Edinson、Bowler Hatのフランス調教馬2頭が引っ張る展開も、最終コーナーからNight Moon、Skins Rock、Laldannなど後続が殺到。ここからNight Moonが抜け出しを図るも、内で抵抗したEdinsonがNight Moonを差し返して勝利した。3着にはCapivariが上がった。

Rcihard Chotard調教師はフランスを拠点としているが、比較的イタリア障害競馬において名前を見ることは珍しい。EdinsonはHurdleの経験は比較的少なく、主に冬場のみ障害を走っているタイプの馬のようだ。中山グランドジャンプにも登録のあるTenerife Seaの勝利したGrande Course De Haies De Cagnesの6着馬で、ややフランスのListedクラスだと厳しいような印象もあるが、ここではNight Moon以下この路線の強豪を破っての勝利であり、やはり侮れないものである。昨年はあまり順調に使えなかった感のあるNight Moonはさすがにここに入れば力量は上位で、勝ち馬とはあくまでスプリント能力だけの差だろう。2019年のGran Criterium D'Autunno (G1)の勝ち馬、今年こそMeranoのG1クラスで見てみたいところである。上記Grande Course De Haies De Cagnesの2着馬Capivariが3着に入ったが、どうにも馬群の中に入れたせいか戦術が後手後手に回っているような印象もあった。昨年のGran Corsa Siepi Di Milano (G1)の勝ち馬Skins Rockはやや遅れての3着。地元期待のSky Constellationもいたのだが、やや途中で飛越に大きなミスがあり、位置を下げて伸びきれず7着に終わった。

 

その他

Willie Mullins runners are "basically getting a freebie in Ireland" says Dan Skelton (Racing TV)

Dan Skelton調教師による興味深い指摘である。Cheltenham FestivalにおけるWillie Mullins厩舎を始めとするアイルランド勢の躍進はアイルランド競馬における構造的な問題が絡んでいる可能性が指摘されている。

Rory Delargy column: Amazing story of Cheltenham Festival winner Beau Caprice (Sportinglife)

12歳にしてSupreme Novices' Hurdleを制したBeau Capriceに関するコラム。

'The television didn't lie, they came pretty close' - France's craziest race (Racing post)

Youtubeで有名なフランスのPrix des Benevolesに関する記事。フランス障害競走でレース中にコースを間違えるのはしばしばあるのだが、ここまでカオスな状況になることは珍しい。面白半分でまとめサイトレベルの記事を書いている日本のメディアと異なり、きちんと騎手や実況者のインタビューが掲載されている。