にげうまメモ

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23/02/19 Weekly National Hunt / Jump Racing

2/18(土)

Ascot (UK) Good to Soft (Good in places)

Reynoldstown Novices' Chase (G2) 2m7f180y (Replay)

1. Oscar Elite J: Harry Cobden T: Joe Tizzard

Bold Endeavourがある程度飛越のリズムを作りながら逃げる展開も、残り2障害あたりからこれに並んでいったOscar EliteがBold Endeavour以下を振り切って勝利した。

Joe Tizzard調教師はColin Tizzard調教師から厩舎を引き継いだ人で、これが開業後重賞は初勝利となった。Colin Tizzard調教師はCue Cardをはじめ多数の名馬を手掛けた近年のイギリスを代表する名伯楽の一人で、それに続くことができるかが注目される。Oscar EliteはChaseは2シーズン目で、昨シーズンはUltima Hanidcap Chase (G3)での3着の実績がある。基本的にはNovice戦線よりもHandicap向きのタイプだが、今回は全体的に飛越のリズムが悪い馬が目立つところこの馬の経験値の高さを見せるレースをした。ただし今回はNovice重賞を勝ったとはいえ基本的にはHandicap Chaseの方がいいだろう。Chaseは2戦2勝で挑んできたBold Endeavourはどうにも鞍上が飛越のリズムを作っていく場面が目立っており、もう少し技術的には進捗が欲しいところ。Hurdleを含めば6連勝で挑んできたSummer HorseのKinondo Kwetuは勝負所から脱落しての大敗で、良馬場とメンバー的なレース条件を考えるといくらなんでも負けすぎな感がある。

 

Swinley Handicap Chase (Premier Handicap) 2m7f180y (Replay)

1. Cap Du Nord J: Jack Tudor T: Christian Williams

Riders Onthe StormやFarinetなどがやや引っかかり気味に逃げるも早々に後続が殺到。Danny Kirwan、Cap Du Nordなどが好位を形成するも、残り2障害あたりから出てきたCap Du NordがNeon Moon以下を突き放して勝利した。

Cap Du Nordはこの路線では長い馬で、2022年にはCoral Trophy Handicap (G3)の勝ち鞍もある。当時はConditional JockeyであったJack Tudor騎手とのコンビでの勝利ということで感慨深いものとなった。今シーズンはすでに6戦を消化しているようだが、シーズン当初と比べればかなり調子を上げてきた感もある。Novice馬のNeon Moonが2着に入ったが、そもそもNovice戦はほとんど使われていないようだ。2020年にはAscot Chase (G1)を勝ったRiders onthe Stormもいたのだが早々につかまって大敗。好走と大敗を繰り返すタイプのようで、今回もどうにも気性の難しさを示すような仕草を見せており、能力的なもの以上にどうにも信用ができないところがある。15歳となったRegal Encoreも出走していたが、スタート直後こそ前に行く構えを見せていたものの早々に脱落し、前半で落馬に終わった。もともとAscotでは俄然張り切って走る馬で、馬の仕草を見ていると年齢以上に若そうにも見えるのだが、さすがにこのレースのスピードについていくのは厳しいようだ。

 

Ascot Chase (G1) 2m5f8y (Replay)

1. Shishkin J: Nico de Boinville T: Nicky Henderson

ShishkinのWind Surgeryからの復帰戦ということで注目が集まっていた。レースはAye Rightがやや注文を付けて逃げるも、途中からPic D'Orhyが先頭に。そのままPic D'Orhyは元気に引っ張るが、これに持ったままでついていったShishkinが最終コーナーを回って抜け出すと、そのままPic D'Orhy以下に大差をつけて圧勝した。Fakir D'Oudariesが3着に入った。

Shishkinは昨年のQueen Mother Champion Chase (G1)で馬場に苦労してまさかの途中棄権、今シーズンの復帰戦となったTingle Creek Chase (G1)でもEdwardstoneから15馬身離れた3着に終わっていた。今回はWind Surgeryを経て距離を伸ばしての一戦となったが、この馬の強さを改めて見せる結果となった。内容的には文句なしの完勝といったところで、Wind Surgeryはこれで2回目ということでややその影響が懸念されるとはいえ、Allahoの不在により突如混戦となったRyanair Chaseに向けて中心的な存在となりそうだ。今シーズン好調のPic D'Orhyはこの馬のやることをやっての2着で、本来Ascotのようなコースは得意とするタイプであることを踏まえると、Shishkinの強さはやはり衝撃的なものといえるだろう。アイルランドのFakir D'Oudariesはここではいいところなく3着に終わった。G1は複数勝利しているとはいえ基本的には空き巣のようなメンバーが相手で、前走も勝ったとはいえ前を走っていた馬の落馬に助けられたところもある。まともに走ったShishkinが相手では苦しいというのは想定内だが、さすがにG1馬としてはPic D'Orhyくらいは捕まえて欲しかったという気持ちもある。

 

Haydock (UK) Good to Soft

Rendlesham Hurdle (G2) 3m58y (Replay)

1. Wakool J: Conor O'Farrel T: Nick Alexander

Green Book、Itchy Feetなどが前に行くも、最終障害を越えて伸びてきたWakoolがItchy Feetとの叩き合いを制して勝利した。

Wakoolは重賞は2回目の挑戦で勝利とした。基本的にはClass2辺りでトップハンデを背負うくらいのレーティングを有している馬で、あまり馬場条件の注文もなさそうだ。HaydockのStayers' Handicap Hurdle (Premier Handicap)では大敗していたようだが、そこでも11st9lbを背負うくらいにはレーティングを持っていたようで、今後のレース選択には注意した方がいいだろう。前走久しぶりのHurdle戦を勝利したItchy Feetが2着で、ChaseではNovice G1を勝っているとはいえ、飛越面から考えるとHurdleの方がよさそうだ。Becher Chaseの勝ち馬Ashtown Ladは元気に走っての3着で、この馬はこれで十分だろう。ただしこの時期のG2とはいえ、Stayers' Hurdleに向けてどうこうというメンバーではなさそうな印象である。

 

Grand National Trial Handicap Chase (Premier Handicap) 3m4f97y (Replay)

1. Quick Wave J: Harry Bannister T: Miss Venetia Williams

今年は15頭(The Two Amigosは取り消しで14頭)という多頭数を珍しく集めたGrand National Trial。レースはCloudy Glenが引っ張るも徐々に馬群は開いてくる。ここから抜けてきたQuick WaveがSnow Leopardessとの叩き合いを制して勝利した。

Quick WaveはLondon Nationalの勝ち馬で、重賞は初勝利とした。前走のWelsh National (Premier Handicap)では途中棄権に終わっているが、基本的には重い馬場よりも良馬場の方がよさそうな印象で、ここでも11st8lbの厳しい斤量を背負っての勝利というのは大したものだろう。10歳の牝馬ということを考えるとあまり現役期間は残されていなさそうな感もあるが、この距離への適正というのは確かなものがある。ただしWelsh Nationalのようなきついペースが発生したときにどこまでついていけるかというのは注意した方がいいかもしれない。Snow Leopardessはこの馬場は本質的には厳しそうな感もあったが、今回は特段追走には問題はなかった。この馬を物差しにすると良馬場のHaydockとはいえあまりペース的には厳しくはなかった感もあり、やはり距離的に慎重なレースになったようで、良馬場のスピード勝負と考えるのはやや微妙かもしれない。Cloudy Grenは遡れば2021年のLadbrokes Trophy (G3)を勝った馬だが、そこからはあまり順調に使えていないようだ。今回も元気に前に行くも、最後は脱落して3着に終わった。ベテランBristol De Maiもいたのだが、残り4障害あたりから苦しくなり前からは大きく離れた11着に終わった。馬自身は元気にレースに参加しいつもの伸びのある飛越を見せていたが、さすがに年齢的なスピードの衰えがありそうだ。

 

Albert Bartlett Prestige Novices' Hurdle (G2) 3m68y (Replay)

1. Makin'yourmindup J: Lorcan Williams T: Paul Nicholls

大きな流星が目立つDr Kanangaが逃げるも、最終コーナーを回ってSaint Palaisなどが抜けてくる。さらに内から出てきたMakin'yourmindupがCollectors Itemとのたたき合いを制して勝利した。

Makin'yourmindupがHurdleは3勝目とした。前走のClass3ではCollectors Itemから2馬身差の2着に終わっていたが今回はその借りを返したことになる。とはいえあくまで立ち回りの差といったところで、力量的にはさほど差はないだろう。そのCollectors Itemが惜しい2着。もったいなかったのは3着のThe King of Ryhopeで、スムーズに抜けてきた前2頭と比べてやや外に切り返す不利があった。ただし全体的に実績馬が出走していたというわけではなく、この時期の24fのNovice戦らしく取捨に難しいレースになりそうだ。

 

Wincanton (UK) Good

Kingwell Hurdle (G2) 1m7f50y (Replay)

1. I Like To Move It J: Sam Twiston-Davies T: Nigel Twiston-Davies

Bryony FrostのKnappers HillがGlobal Citizenを制して元気に逃げるも、残り2障害あたりから前に行ったI Like To Move Itが後続を大きく突き放して勝利した。

I Like To Move Itは今シーズンはGreatwood Handicap Hurdle (Premier Handicap)に続き重賞は2勝目とした。前走は20f戦に挑むも大敗しており、やはりこの距離の方がよさそうな印象がある。ひとまず次はChampion Hurdleと思われるが、Wincantonのようなシンプルで平坦なコース向きという印象はないのは面白いところだろう。一部の飛びぬけた馬を除けばさほど層が厚くないイギリス16f Hurdle路線で頑張ってほしいところである。このコースではElite Hurdle (G2)を勝っているCourse SpecialistのKnappers Hillが2着。さすがに今回は相手が強かった。今シーズンはIntermediate Handicap Hurdle (Premier Handicap)を勝っているGolden Horn産駒のFirst StreetはKnappers Hillと差のない3着に終わった。

 

Gowran Park (IRE) Soft to Heavy

Red Mills Trial Hurdle (G3) 2m (Replay)

1. Fil Dor J: Jordan Gainford T: Gordon Elliott

ゆるゆると逃げたFil DorがSharjah、Doctor Bravoを抑えて勝利した。Fil DorJuvenile Hurdle路線で活躍した馬だが、今シーズンはChaseに転向し、LeopardstownのG1を連戦していた。今回は久しぶりのHurdle戦となったが結果を残した。とはいえやや展開に恵まれた感もありそうで、一方でChaseではやや結果を残せていない現状もあり、今後のレース選択には注意した方がよさそうだ。実績馬Sharjahはここでも僅差の2着に入ったが、やや勝負所で外に出すロスがあった。前走Maidenを勝ったばかりのDoctor Bravoが僅差の3着で、上がり目があるとしたらこの馬だろう。

 

Red Mills Chase (G2) 2m4f (Replay)

1. Janidil J: Rachael Blackmore T: Willie Mullins

Capodannoが逃げる展開も、最終障害を越えて前に出たJanidilがHaut En Couleursを制して勝利した。Janidilは2021年のGold Cup Novice Chase (G1)以来の勝利とした。24fはやや長いような印象もあることから基本的には20fの馬で、昨年のRyanair Chase (G1)でも2着に入っている。Shishkinがいい勝ち方を見せたことからやや存在感が薄くなりそうだが、とはいえ今シーズンは今回が始動戦ということもあり、この馬なりにいい形で大一番に向かうことができそうだ。前走Horse & Jockey Hotel Chase (G2)でもったいない落馬に終わったHaut En Couleursは最後捕まっての2着。シンプルにスプリント能力で差がついたといった印象だが、あまり経験の多くはない馬であり、引き続き上がり目に期待したい。それにしてもWillie Mullins厩舎の馬が4頭中3頭、JP McManusの馬が4頭中3頭となんともこの時期のアイルランドの前哨戦的な重賞らしいメンバー構成だが、4頭中4頭がフランス生産馬というのはなんとかならないものだろうか。

 

2/19(日)

Punchestown (IRE) Yielding (Yielding to Soft in places)

〇 P.P. Hogan Memorial Cross Country Chase 3m1f (Replay)

1. Stealthy Tom J: Simon Torrens T: Enda Bolger

PunchestownのBank Courseを使用する恒例のCross Country。Artic Pearl、John Adams等が前に行くも、途中から13歳のSinging Banjoが元気に引っ張る。しかしこれに最終障害を越えて迫ったStealthy TomがSinging Banjoとの叩き合いを制して勝利した。

Stealthy TomはKillarneyのハンデ戦から連勝とした。昨年4月のPunchestown FestivalのCross Countryで頭角を現してきた馬で、Cross Countryはこれが3戦目となる。Cross初戦となった昨年のこのレースでは途中棄権に終わっていたが、だいぶこのコースにも慣れてきたようだ。13歳のベテランSinging Banjoは安定したレース運びで見せ場を作った。ただし3着にここまで全くCross Countryでは勝負に加われなかった12歳のArtic Pearlが入っていたりと、ややレース水準という意味では慎重に見ておいた方がいいだろう。Chase等の実績馬Hardlineは勝負所から遅れて6着に終わった。

 

Grand National Trial Handicap Chase (Grade B) 3m4f40y (Replay)

1. Coko Beach J: Ben Harvey T: Gordon Elliott

Captain Kangaroo、Stones And Rosesなどが前に行くもレースは比較的馬群が密集して進行。ここから出てきたCoko Beachが最終コーナーを回って後続を突き放すと、そのままDeath Duty以下に5馬身差をつけて勝利した。

Coko Beachは2021年2月のTen Up Novice Chase (G2)以来の勝利とした。アイルランド24f超のHandicap Chaseではお馴染みの馬で、比較的重い馬場においてスピードの持続性能を生かすことを得意としている。今回は比較的良馬場でのレースであったが、3m4f戦ということでかなりペースがゆったりと進行したことがこの馬にとっては味方したようだ。昨年のAintreeのGrand National (G3)も参戦しNoble Yeatsから66馬身離れた8着に終わっているが、条件次第ではもう少しやれるだろう。12歳のDeath Dutyが2着に入った。残り3障害地点でかなり大きなミスがあり、これがなければもう少し勝馬には迫ることができたように思われる。Defi Blueが3着に入り、Gigginstown House StudのGodron Elliott調教師の管理馬が1~3着を占める結果となった。

 

Pau (FR) Tres Souple (4.1)

Grand Cross de Pau Reverdy (Listed)

Cross Country Challenge Crystal Cup Pour tous chevaux de 6 ans et au-dessus, ayant reçu 12.000 en steeple-chase (victoires et places). 6300m (Replay)

1. Hip Hop Conti J: Clement Lefebvre T: Emmanuel Clayeux

今年のCrystal Cupの第1戦。この日は10000以上の観客を集め、馬券の売り上げもCOVID-19以前の水準に戻るなど、開催自体は成功を収めたようだ*1。レースは2021年から2勝目を狙うUniketatが軽快に引っ張る展開で、好位からSaint Godefroy、さらに後方から押し上げてきたGalcoflaurがぴったりとついていく。終盤のPassage De RouteにてSaint Godefory、Galcoflaurが落馬し、Uniketatがそのまま押し切りを図るも、これについてきたHip Hop ContiがUniketatを振り切って勝利した。

Hip Hop ContiはPauのCrossでは比較的新参の馬で、2022年の1月からこの路線に参入している。今年のPrix John Henry WrightではGalcoflaurから6馬身ほど離れた3着に終わっていたが、今回は有力馬が前で競り合う流れの中をうまく立ち回って勝利をつかんだ。ただしやはりSaint Godefory、Galcoflaurの2頭が落馬したことによる影響も否めず、全体的に飛越にミスがあったことは今後の課題になるだろう。2勝目を狙ったUniketatも積極的に立ち回っての2着だが、とはいえその後はSaint Godefroyには完敗しており、やはり全体的にレースとしては終盤の事故が残念なものであり、特に競馬場に横断幕を持って応援歌を熱唱していた集団も来ていたGalcoflaurは残念な結果となったようだ*2。Harmonie Roqueはやや遅れた3着。ACのGareth De Larachiもいたのだが、こちらもPassage de Routeで落馬に終わった。

 

その他

'It will be strange without him' - David Pipe leads tributes to Tom Scudamore (Racing Post)

木曜日に突如引退を発表したTom Scudamore騎手とのコンビで多数の成功を収めたDavid Pipe調教師のインタビュー。

Return of the banks proves a huge draw at Knockanard (Irish Point to Point)

アイルランドPtPの競馬場であるKnockanardで約70年ぶりに復活したBank Courseに関する記事。KnockanardではPunchestownを参考にBank Courseが新設され、2月12日にその最初の競争が行われた。どうやら多数の観客を集め大成功を収めたそうだ。

Disparition brutale du jeune étalon For Fun (France Sire)

Prix Alain Du Breil (G1)を勝利し、種牡馬としての活動を開始していたFor Funが7歳の若さで亡くなったそうだ。Montjeuの孫であるFor Funは種牡馬として高い人気を集めていたようで、残された数少ないその子孫の活躍が期待される。

Hélène Sourbé, une amazone au coeur bien accroché ! (France Sire)

フランスCross Countryで精力的な騎乗を続ける女性騎手であるHélène Sourbéに関する記事。

L'exceptionnelle Nathalie Desoutter raccroche les bottes, et sort par la grande porte à Pau (France Sire)

"Dame de Fer"との愛称で呼ばれたNathalie Desoutter騎手がPauのPrix Antonie De Palaminyの勝利のあとに引退を表明した。この路線では20年以上にもわたって活躍した実力ある騎手で、ここまで695勝もの勝ち星を挙げている。

Hřebčín Napajedla převezme společnost SYGNUM, s.r.o. (Fitmin & TURF Magazin)

Z Napajedel odvezli koně, budoucnost chovu anglických plnokrevníků je nejistá (iDNES)

チェコの中心的な生産牧場でありHřebčín Napajedlaが解散されるようだ。Hřebčín Napajedlaは1886年に設立された歴史ある生産牧場であるが、近年は赤字経営となっており、繋養されている種牡馬繁殖牝馬も大きく数を減らしており、すでに繋養されていた馬は移動されたそうだ。Pop Rockもこの牧場で種牡馬としてのキャリアをスタートさせている。牧場地にはアパートが建設されるプランがあるようだ。