にげうまメモ

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23/06/17 St. MoritzのSkikjöringrennenに関する覚書

*St. MoritzのSkikjöringrennenに関する覚書

当記事では本邦でも"White Turf"として有名なSt. MoritzのSkikjöringrennenの出走馬に関する情報を簡単な備忘録として提示する。"Skijöring"又は"Skikjøring"とはSt. Moritzが発祥のスポーツであり、動画を見ればその内容は一目瞭然だが、詳細はWikipediaを参照されたい。同様の競技はスイスArosaにも存在していたようだが*1、残念ながら近年は天候不順等の影響で開催に支障を来しており、2017年を最後に開催は行われていないようだ*2。St. Moritz及びArosaでは過去にはHurdle競走も行われており、2015年には"World Snow Hurdle Championship"というシリーズも創設されていたようだが*3、近年ではFlat及びTrot、さらにこのSkijöringのみとなっている。なお、サムネイルに使用している画像はPardubiceの帰り道のバス停で偶然通りがかったもので、目を細めて見れば絵面はどことなく心なしかわずかに似ている気がしてくるかもしれないししてこないかもしれないが*4、St. Moritz及びSkijoring等とは何ら関係がない。

Skijoring (Wikipedia)

Skijöring (Wikipedia)

2022年及び2023年のSt. Moritz開催計6日間において、各日1レース、計6レースのSkikjöringrennenが行われた。特にそのメインとなるGrand Prix Credit Suisseは2700メートルの距離が設定され、2023年は合計で20,000スイスフランの総賞金額が設定されていた。計6レースで延べ42頭、合計で16頭の競争馬が出走した。その内訳を以下に示す。出走馬の経歴としては比較的平地(出身)馬が多く、Moonflightはスイスダービーの4着馬であったりと平地競争においては著名な馬も存在するようだが*5、障害(経験)馬も一定の割合を占めている。

馬名 生産国 種別 母父 経歴
Alva  GER PS Black Sam Bellamy New Moon GER Flat → CZE Jumps → SWI Jumps
Atlantico GB   Aqlaam Namid SWI Flat
Coral Boy  FR PS Lord of England Big Shuffle FR Flat
Fou de Reve FR AQPS Maresca Sorrento Assessor FR Jumps → SWI Jumps
Ginistrelli IRE PS Frankel Acatenango GB Flat → GB Jumps → GER Flat → GB Jumps
Los Angeles SWI PS Vanishing Cupid Arazi FR Flat → SWI Flat
Moonflight FR PS Rajsaman Law Society FR Flat
Night Wave  IRE   Mastercraftsman Authorized SWI Flat
Pinot  CZE   High Extreme Regulus GER Flat → SWI Flat
Praetorius  GER PS Novelist Sicyos GER Flat → SWI Flat
Right Turn  IRE   Kodiac Mr Greeley IRE Flat → GB Jumps → GER Flat
Sociopath IRE PS Fastnet Rock Sadler's Wells GB Flat → SWI Flat
Stepney Causeway GB PS New Approach Noverre GB Jumps
Turandot  GER   Nutan Doyen GER Flat
Vienna Woods FR PS Cacique Dalakhani FR Flat
Well Care  GER PS Campanologist Bertrando SWI Flat

 

2023年にSkikjöringrennenを2走したAlvaは元々ドイツ平地競争でデビューした馬だが、2019年頃からHurdle競走に出走し、ドイツ、チェコ、フランス、スロバキアのHurdle競走に出走した。2020年の10月にはチェコBrno競馬場のSteeplechaseを勝利している。PardubiceのCross Countryにも出走した同馬だが*6チェコFilip Neuberg厩舎所属馬としての勝利はこれだけで、2021年からはスイスCarina Schneider厩舎に移籍しているようだ*7。スイスではコンスタントに障害競馬に出走し、2022年にはAarau競馬場のPreis der Wehrli Weinbau AG, Küttigen und GönnerというSteeplechaseにて、フランスでは重賞で入着歴もあった実力馬Al Cuartoを破って勝利している。2023年のSt. MoritzのGrand Prix Von CelerinaではCarina Schneiderが騎手兼調教師として参戦したようだ(7着)。

 

Fou De Reveは元々フランスのAQPSで、わずかに(0.790%)アラブの血統を含有する。この馬の三代母Rolls De ReveがAnglo-Arabe de complément(AC)なのだが、この父FlaminkoがACで、Rolls De Reveの母Princesse MyrrhaはPSのようだ。Flaminko自身はPSであるStarの産駒で、父系を辿るとTeddyに行きつくラインとなる。Fou De Reve自身はフランスではLa Roche S/YonのSteeplechaseの1勝のみに留まったが、Cross Countryでも3戦していずれも2着に入るなど堅実な成績を残し、2022年からスイスに移籍している。スイスでも2022年の10月にDielsdorfのPreis Der Freunde Des Hindernissportsを勝利するなど結果を残していたが、2023年のSt MoritzにはSkikjöringrennenに精力的に参戦した。Skikjöringrennenでは2023年2月12日に行われたGrand Prix Von Silvaplanaの3着が最高と結果は残せなかったようだが、やはりその大きなタイトルとしてはGrosser Preis Des Kantons Aargauにてチェコの素質馬Greek Dessertを破って勝利したことだろう。直前のGrosser Preis Der Stadt ZürichでもチェコのMolly Powerの2着に入っており、現時点ではスイスSteeplechaseのトップホースの一頭と考えてよい馬である。

 

GinistrelliはFrankelの産駒で、もともとはEd Walker厩舎でイギリス平地競争を走っていたが、その後Olly Murphy厩舎に移籍しHurdle路線へと参戦する。ここではClass4を2勝するも、主に夏場の下級条件戦を使われていたようで特段目立った成績は残せず、2022年にドイツChristian von Der Recke厩舎へと移籍している。Christian von Der Reckeはドイツ障害競馬の名門であるが、この馬自身はBremenのBumperを勝ったのみで特に障害競馬への出走はなかったようだ。しかし2023年のSt. MoritzのSkikjöringrennenのあとにイギリスのMilton Harris厩舎へと移籍したようで、2023年の5月にはHuntingdon競馬場のClass4のHurdle競走に出走している(5着)*8。どうにもその経緯が複雑な馬ではあるが、イギリス障害競馬に出走してもらえるのであればその挑戦を楽しみにしたいところである。日本を含め平地競争での産駒の活躍が目覚ましいFrankelであるが、障害馬の父としてはどうにもパッとせず、代表的なところでは平地競争との兼用馬Solo Saxophoneが主にClass2のHurdle戦を含む障害競争計6勝を挙げた程度である。また、2023年のCheltenham FestivalではDivergeというFrankelの産駒がSupreme Novices' Hurdle (G1)でMarine Nationaleの3着に入っているが、残念ながらPunchestown Festivalのレース中の負傷が原因で亡くなっている*9。日本では名牝ウォッカの産駒として有名なタニノフランケルが2021年に小倉の未勝利戦を1走したのみ(5着)である*10

Right Turnは元々はアイルランド平地競争でデビューしたKodiacの産駒だが、2022年にOlly Murphy厩舎に移籍し、イギリスHurdleの下級条件戦を走っている。しかしHurdleで5戦するも勝ち星を挙げることはできず、どうやら2023年からドイツChristian von Der Recke厩舎へと移籍したようだ。2023年のSt. Motirzでは上記GinistrelliとともにChristian von Der Recke厩舎の一員として参戦している。

Stepney Causewayは元々イギリスAWでデビューした馬だが、2021年にDan Skelton厩舎に移籍、Hurdleでは下級条件戦を4連勝と結果を残す。Chaseでは11戦して2着が最高といまいちなようだが、2022年のCheltenham FestrivalではCountry Hurdle (G3)に参戦したりと頑張っているようだ。2023年のSt. MoritzではMilton Harris厩舎の所属馬として参戦し、1900メートルで行われたGrand Prix Von Celerinaを勝利している。ただ、この年のSt MoritzでSkikjöringに参戦したのはこのレースのみのようで、その後はGrosser Preis Von St. Moritz (Flat G2)を含む平地競争に参戦したようだ。