にげうまメモ

障害競馬の個人用備忘録 ご意見等はtwitter(@_virgos2g)まで

23/09/24 Weekly National Hunt / Jump Racing

9/19(火)

Auteuil (FR) Tres Souple (4.0)

Prix Richard Et Robert Hennessy (Listed)

Steeplechase Pour tous chevaux de 5 ans et au-dessus. 4400m (Replay)

1. Gesskille J: James Reveley T: Oliver Greenall & Josh Guerriero

Gesskille、My Reprieveなどが前に行く展開もレースはゆったりと進行。Gros Open Ditchの辺りからペースを上げたGesskilleが付いてきたEcho De Champdouxとの叩き合いを制して勝利した。

GesskilleはAuteuilのListedは2勝目とした。元々Francois Nicolle厩舎にいた馬だが、2022年に現厩舎に移籍しイギリスのSteeplechaseとAuteuilを転戦している。昨年はAintreeのBecher Chase (Premier Handicap)にてAshtown Ladの2着に入る走りも見せていたのだが、とりあえず今年の秋はAuteuilでシーズンをスタートさせているようだ。今年のTopham Chase (Premier Handicap)ではあまり上手くいかなかったようで、その動向には注意しておきたい。9歳馬でAQPSのEcho De Champdouxが2着で、最後の走りを見ているともう少し強気に立ち回っても良かった感もある。春頃にはCross Countryを走っていた5歳馬Inga Kamが3着に入った。実績馬としてはPoly Grandchamp、Happy Monarchもいたのだが、いずれもやや遅れての入線となった。

 

9/20(水)

Listowel (IRE) Yielding to Soft

Kerry National Handicap Chase (G3) 3m (Replay)

1. Desertmore House J: Ricky Doyle T: Martin Brassil

この時期恒例のListowelの名物レース。レースはChemical Energyが前を伺うも、途中からFoxy Jacksがやや後続を引き離して逃げる格好となる。しかし最終周から後続が殺到し、Chemical Energyが前に並びかけ、さらにSalvador Ziggyが先頭に立って逃げ込みを図る。しかしこれに接近したDesertmore Houseがこれを捉えて勝利した。

Desertmore HouseはこれでChaseは4戦3勝とした。今年の7月からChaseに転向しているのだが、Beginners ChaseやNovice競走にはほとんど目もくれず、2戦目からHandicap Chaseに移行している。10st6lbという軽量に恵まれたとはいえ、この多頭数において馬群の内で我慢するレースを見せたというのは興味深い内容だろう。11st7lbを背負ったSalvador Ziggyも立派な内容での2着で、この馬もChaseはここまで3戦3勝で挑んできたということを考えると将来性豊かな馬が上位を占めたという点で面白い結果となったように思われる。積極的に運んだFoxy Jackは残り2障害地点で大きなミスがあったが、そこから立て直しての3着。好位で進んだAuthorized Artも差のない4着に入った。

 

9/23(土)

Auteuil (FR) Collant (4.4)

Prix Robert Lejeune (G3)

Haies Pour poulains entiers et hongres de 3 ans. 3600m (Replay)

1. Master D'Oc J: James Reveley T: Noel George & Amanda Zetterholm

圧倒的人気を背負ったJigmeが前に行くも、やや引っかかり気味にLight Waveが先頭に立ってレースを引っ張る。早々に捕まったLight Waveを捉えてJigmeが前に出るも、これに襲い掛かったMaster D'OcがLeon Du Berlaisをしのいで勝利した。Jigmeは3着に終わった。

Master D'OcはDoctor Dino産駒の牡馬で、Haiesはこれが初勝利とした。春はClasse1で2着に入ったのが最高であったのだが、重賞戦線で使ってきたというわけでもなく、David Cottin厩舎から現厩舎への転厩初戦であったことを考えると、新興勢力としては楽しみな存在になりそうだ。Leon Du BerlaisはAuthorized産駒の牡馬で、Prix Aguado (G3)ではJigmeの2着に入っていた馬である。3戦3勝と素晴らしい成績を残し、種牡馬入りが決まっているJigmeはまさかの敗戦となったが、Light Waveに絡まれたこと、今回はCollantと馬場も悪かったことにより最後やや苦しくなったものと思われる。上位3頭として未去勢の牡馬が独占し、それぞれDoctor Dino、Authorized、Motivatorと楽しみな馬の産駒であった。いずれも無事に種牡馬入りしてほしいものである。

 

Prix De Compiegne (G3)

Haies Pour tous chevaux de 5 ans et au-dessus. 3900m (Replay)

1. Goa Lil J: Felix De Giles T: Noel George & Amanda Zetterholm

レースは10歳馬Honest Vicが積極的に前に行くも、好位にいたGoa Lilがそのままスピードの違いで先頭に立つと、ついてきたIne Anjouに7馬身差をつけて勝利した。

Goa Lilは元々Nigel Twiston Davies厩舎にいた馬だが、イギリスChaseではあまり結果が出ず、2022年から現厩舎に移籍していた。春のPrix Leon Rambaud (G2)ではTheleme、Hermes Baieを相手に大逃げを打って不意打ちのような形で逃げ切るというレースを見せていたが、その後のGrande Course De Haies D'Auteuil (G1)ではさすがに絡まれて途中棄権に終わっていた。今回は距離の短縮と積極的に運んだ同厩舎のHonest Vicの存在があったとはいえ、好位で我慢する競馬を見せたという点で大きな進歩を示した。2022年のPrix De Pepinvast (G3)を勝ったIne Anjouはその後全く崩れずに走っているのだが今回も2着で、そのうちいいことがあって欲しいものである。6月にPrix La Barka (G2)でHeros D'Ainayを下したLa Cheneviereはやや遅れての3着。当時の3着馬がIne Anjouということを考えると、このIne Anjouという馬の性質がよくわかるところである。

 

Prix The Fellow (G3)

Steeplechase Pour tous poulains et pouliches de 4 ans. 4400m (Replay)

1. Okkido J: Florent Bayle T: Arnaud Chaille-Chaille

レースはOkkidoが前に行くも飛越をミスしたりと後退。人気のJuntos Ganamosが前に出てくるが、残り2障害地点のDouble BarrierでSpeed Emileを巻き込んで落馬。Goliath Du Rheuが抜け出すも、Okkidoが最後これを捉えて勝利した。3着以下は遅れた。

OkkidoはMartalineの産駒で、これが初勝利とした。春の段階でも重賞で2着に入るなど頑張ってはいたのだが、今回は春のチャンピオンJuntos Ganamosがいたことで人気を落としていたようだ。Castle Du Berlaisの産駒で、Prix Jean Stern (G2)にてOkkidoを下していたGoliath Du Rheuが2着に入ったが、これは重馬場適性と2kgの斤量差によるものだろう。Juntos Ganamosは細かいミスはあったのだが、勝負所ということでリスクの高い飛越を試みた結果落馬したものと思われる。Martalineの産駒にとってこの馬場は与しやすいものであり、勿体ない結果となってしまった。Estejo産駒のSpeed Emileもこれに巻き込まれての落馬で、今後の4歳Steeplechase路線の動向を考えるうえでのシーズン初戦としてはやや残念な結果となった。

 

Merano (ITA) Tempo Bello Terreno L. Pesante

Steeplechase D'Italia

per cavalli 4 e 5 anni (Steeplechase - Gruppo II - Fantini) Euro 45,000 3900m (Replay)

1. Burschi J: Jan Faltejsek T: Grzegorz Witold Wroblewski

毎年恒例のGran Premio Meranoの開催なのだが、G1競走は日曜日に固めて行うことにしたようだ。レースはRamuntchoが軽快に逃げる展開も、これにぴったりとBurschiがついて行く。最後やや苦しくなったRamuntchoを捉えてBurschiが後続に12馬身差をつけて快勝した。

Burschiは春のPremio Ezio Vanoni (G2)では落馬に終わっていたのだが、今回はその借りを返すレースを見せた。5月のCondizionataではRamuntchoを下して勝利しており、今回もいつものメンバーが上位を占めたことにはなるのだが、とはいえ今回の着差はだいぶ決定的なもののように思われる。夏場はどうやらフランスに遠征していたようで、そのあたりで力をつけていたということもあったかもしれない。Ramuntochoは前走のNovice戦に続いての敗戦となった。高いスピード能力を持っている馬ではあるのだが、とはいえ捕まるとどうにもあっさり後退するところもあるようで、もう少ししっかり最後までこらえて走れるようになって欲しいところである。近年はめっきり数を減らしたイタリア生産馬で、前走Piero E Freanco Richard (G3)を勝ったLady In The Lakeはペースについて行けず離れた3着。地元のVelo Dipintoも途中棄権に終わった。ドイツChristian Von Der Recke厩舎のDotie Boyは全体的に飛越がいまいちであり、最終障害で逃避、落馬に終わった。飛越がいまいちとはいえLady In The Lakeを交わそうとするくらいの勢いは見せており、飛越さえよくなればここでも勝負できてよいだろう。

 

79 Premio Delle Nazioni - Memorial Marco Rocca Cystal Cup

per cavalli di 5 anni ed oltre (Cross Country - Gruppo II - G.R.-Ammazoni-Fantini) Euro 40,000 6000m (Replay)

1. Almost Human J: Lukas Matusky T: Josef Vana

イタリアのCross Countryとしては最大のもの。Crystal Cupの一環として行われるMeranoの名物レースである。そのコースとしてはOxer GrandeをはじめとするSteeplechaseの難関障害に加え、Doppia Gabbia Di Siepiと呼ばれる三連続生垣障害をはじめとするMeranoのCross Country Courseに設置された障害をフルに活用する世界最難関クラスのコースが設定されている*1

レースはAlmost Humanが淡々と逃げる形で、Gap Pierjiが続く。Broughtonは後ろから。全体的にミスなく進めるが、Doppia Gabbia Di Siepiの3つ目の障害にてZankalaが飛越拒否する格好で競争中止。Gap Pierji、さらにZubienaがAlmost Humanに迫ろうとするも、Almost Humanがこれらを振り切って勝利した。

Almost Humanはこのレースは3度目の挑戦での勝利とした。MeranoのCross Countryではかなり長くなった馬で、2021年にはGrande Steeplechase Di Roma (G3)の勝ち鞍もある。以前はスピードに任せて飛ばすようなレースを見せていたのだが、ここのところはすっかり鳴りを潜め、今回も落ち着いて安定したレースを見せていた。WroclawやPardubiceといった他のコースでも見てみたいところではある。前走はPardubiceのQualification Raceに参戦していたGap Pierjiはさほど差のない2着で、Pardubiceでは引っかかって逃げる格好にはなったのだが、やはり前に馬がいれば落ち着いてレースを進めることができるようだ。イタリア勢として最先着を果たしたのがZubiena。13歳のBroughtonはかつてこの路線で無敵を誇った馬であるのだが、全体的に動きが重く、最後は遅れて4着に終わった。イタリアのWhite Woodはいいところなし。Zankalaは3000メートルクラスのCross Countryで結果を残してきた馬だが、Cross Country自体の経験は多くなく、今回途中棄権に終わったとはいえそこまでしっかり障害に対処していたことは褒められてよいだろう。まだ5歳の牝馬ということを考えれば上出来の内容である。

 

Warszawa (POL) elastyczny(3,3)

〇 Nagroda 1. Dywizji Kawalerii Wojska Polskiego

Gonitwa płotowa międzynarodowa dla 4-letnich i starszych koni, które od 1.01.2022 roku nie wygrały gonitwy płotowej. 3200m (Replay)

1. Felix J: Marek Stromský T: Kazimierz Rogowski

Jadmirを制してLe Murが元気に前に出てくるも途中で落馬。代わって前に出てきたJadmirとFelixのマッチレースはFelixに軍配が上がった。Dszkaが3着に入った。

Felixはこの路線ではすっかりお馴染みになった馬で、遡れば2017年から障害戦への参戦はあったりする。ただし特に目立った実績があるわけではなく、今回もJadmirはアマチュア騎手が騎乗して70kgを背負っていたのに対して、FelixはMarek Stromskýが騎乗して69kgと、斤量的にも恵まれたことは大きそうだ。障害経験があまりない馬が多い中、この馬の障害経験の豊富さはだいぶ突出していた感がある。AQPSのJadmirは前々で運んでの2着だが、シンプルなスピードが生きるWarszawaのコースはあまり合わないように思われる。初障害のDuszkaは最後追い込んで3着。飛越に慣れればもう少しやれるだろう。アイルランド産馬のConall Cernachは飛越にもたつき早々に遅れての大敗。Wielka Wrocławskaにも参戦したAl Namixの産駒Le Murは途中で躓いて騎手が落馬し競争中止に終わった。

 

9/24(日)

Merano (ITA) Tempo Bello Terreno Morbido

15 Gran Criterium D'Autunno - Zorzi Frigotecnica Merano

per cavalli di 3 anni (Siepi - Gruppo I - Fantini) Euro 66,000 3300m (Replay)

1. Flying Chaser J: Felix De Giles T: Davide Satalia

イタリア3歳Siepi路線の最高峰の競争となる。フランスからFlying Chaserを迎えて行われた。レースはMakassirが引っ張る展開で、番手にFeed Backが付ける。イタリア勢とFlying Chaserはその後ろから。しかし途中の障害でMakassirが外に逃避すると、これに釣られるようにFeed Backも外に逃避して競争中止。残った4頭のレースはFlying ChaserがLast Stand以下をあっさり振り切って勝利した。

チェコ調教馬としてScuderia Aichnerの2頭が人気を集めていたのだが、レースとしてはだいぶ残念なものとなった。Flying ChaserはフランスAuteuilのListedにも出走していた馬だが、今回は当面の相手となるMakassirとFeed Backが不在となり、実績的にも明らかに格下のメンバーとなったことでかなり楽な競馬になったと考えていいだろう。Makassirは前走のCondizionataにてNabilの2着に入った馬、Feed BackはEttore Tagliabue (G3)にて同じくNabilの2着に入った馬だが、いずれも前走にてやや怪しい仕草を見せており、今回はその不安が的中する形となった。Last Stand、Pan De Azucarといった残ったイタリア勢は前哨戦にて既に完敗の内容で、G1競走とはいえそのレースレベルには疑問が残る結果となった。

 

Corsa Siepi Dei 4 Anni - Red Moon Sparkling

per cavalli di 4 anni (Siepi - Gruppo I - Fantini) Euro 66,000 3500m (Replay)

1. Sopran Mistery J: Josef Bartos T: Raffaele Romano

早々に落馬したNorthern Fighterを残して淡々とレースは進行。途中から先頭に立った栗毛のSopran Misteryが少しずつペースを上げると、ついてきたOcchio Alla Penna、Costa Ricaなどを振り切って勝利した。

Sopran MisteryはRaffaele Romanoの調教馬で、地元に嬉しいタイトルをもたらすことになった。Steeplechaseの重賞戦線にも挑戦していた馬だがどうにも結果は出なかったようで、今回は久しぶりのSiepiでの出走であった。全体的に大跳びであまりスピードや器用さに勝ったタイプのような感はなく、フランスからの強力な参戦馬も存在しなかったということで全体的に小粒な印象もあるのだが、とはいえ地元の有力馬ということで楽しみにしたい。Maidenを勝ったばかりのHighland Reel産駒のOcchio Alla Pennaが2着で、キャリアを考えればだいぶ伸びしろがありそうだ。昨年Gran Criterium D'Autunno (G1)でフランスのNew Friendの2着に入ったCosta Ricaは3着で、どうにも今年はこの路線の中心的な馬になり切れていないというのが現状である。

 

LXIX Gran Corsa Siepi Di Merano - Memorial Guido Zibellini

per cavalli di 5 anni ed oltre (Siepi - Gruppo I - Fantini) Euro 60,000 4000m (Replay)

1. Mauricius J: Josef Bartos T: Josef Vana Jr

事前にMerano Champion Hurdleとか言われていた競走。Siepiとしては最高峰の競争となる。ドイツからMaster Debonairを迎えて行われた。レースはScuderia AichnerのEdinsonが前に行くも、好位にいたMauriciusが途中から強気に前に出て先頭に。MauriciusはそのままついてきたHerve Du Seuilを振り切って勝利した。

Mauriciusはこれで今年は6戦無敗とした。その中にはG1競走3勝が含まれており、文句なしに今年のイタリアSiepiにおいてはチャンピオンとして考えてよさそうだ。このレースは昨年はZaniniの2着に終わっていたのだが、今年はその雪辱を晴らす勝利となった。前評判を含めてMauriciusの一強と考えられていたようだが、意外にも頑張ったのが2着のHerve Du Seuilで、この馬は元々フランス調教馬で、前走のCondizionataにて移籍初戦をSkins Rockの2着で終えていた。まだ6歳と可能性のある馬で、いきなりMauriciusにここまで迫るのだから大したものである。ドイツChristian Von Der Reche厩舎のMaster Debonairは最後じわじわと追い上げて離れた3着に入った。やはり他の馬と比べるとこのMeranoの生垣障害に対処しきれていない感があったのだが、持っている能力としてはいいものがありそうで、慣れてくればもう少しやれるだろう。Christian Von Der Recheはこの開催に計3頭を送り込んでいたのだが、全体的に大陸系の障害に手を焼いていたようで、フランス辺りで転戦できれば来年にはこのMeranoの重賞クラスで対応できていてもおかしくないだけに、引き続きの挑戦を期待したいところである。来年はドイツで年間10~20程度の障害競争が開催されるのが一番良いシナリオなのだが。

 

LXXXIV Gran Premio Merano Alto Adige

per cavalli di 4 anni ed oltre (Steeplechase - Gruppo I - Fantini) Euro 250,000 5000m (Replay)

1. First of All J: Felix De Giles T: Pavel Tuma

言うまでもなくイタリア最大の競争である。5連覇を狙うL'Estranが話題の中心になっていたが、今シーズンはGrande Steeplechase D'Europa (G1)を圧勝するなど絶好調のFirst of Allが人気の中心となっていた。飛ぶ鳥を落とす勢いのScuderia Aichner陣営からはL'Estranのほか、Gangster De Coddes、Aindoins、Piton Des Neigesの4頭。ポーランドWielka Wrocławskaを勝ったチェコのHer Him、さらにフランスからはWaregemのGrand Steeplechaseを連覇した葦毛のPolinuitが参戦していた。地元イタリアRaffaele RomanoはBallinsco、スイスJuerg Langmeier厩舎からBornascoが参戦していた。PrahaのProutkyの主要競争を勝利していたSternkranzは直前で取り消して12頭立てとなった。

レースはAndoinsがかなり注文を付けて逃げる展開で、隊列は早々に長くなる。番手からGangster De Coddes、その後ろからL'Estran、First of All。PolinuitやHer Himなどは後方に構える。スタンド前の大障害、水壕と軽快に飛越していくが、Oxer Grandeにて着地で躓いたL'Estranが落馬。さらにMuroにてGangster De Coddesが落馬し、これに躓いたAndoinsも落馬。直後の急カーブで後方にいたFly Filo Flyも落馬。代わってFirst of Allが前に出て、これをイタリアのBallinscoが追いかける。Ocean Life、Bornasco、PolinuitやHer Himと続く。First of Allは軽快に逃げると残り2障害地点では後続を完全に振り切り、最後追い込んできたOcean Lifeに7馬身差をつけて勝利した。3着にはPolinuit、Her Him、Ballinscoと続いた。

First of Allは2023年に入ってはこれで4戦無敗、Grande Steeplechase D'Europa (G1)を含むG1を2勝とした。元々良質なスピード能力を武器に高いパフォーマンスを発揮していた馬なのだが、2021年にはAuteuilに遠征するも落馬に終わり、そこからはしばらくスランプ気味であった。2022年から再始動し、ここ1年程のレースを見ると既に完全にその時期を抜けたと考えてよいだろう。昨年はL'Estranに対して惜しい2着に終わっていたのだが、今年は他の有力馬の落馬もあり内容的には完勝であった。どうしても記録面を考えるとL'Estranの落馬が大きいような感もあるのだが、L'Estranの今年の勢いを考えるとどちらかというと世代交代を考えた方が良いだろう。Grande Steeplechase D'Europa (G1)の圧勝、その前のListed競走でのL'Estran相手の圧勝を考えると、新たなイタリアのチャンピオンと考えてよさそうだ。まだ7歳と若い馬で、ここからどこまで政権を維持できるか楽しみである。

ポーランド生産馬のOcean Lifeは前評判を覆す快走を見せた。6月のGrande Steeplechase D'Europa (G1)では5着と完敗であったのだが、そこからDescendenteを勝利、さらにフランスへの遠征等を経て力をつけていたようだ。どうしてもFirst of All以下となるとL'EstranやGangster De Coddesなどの落馬が気になるところなのだが、2021年のGran Criterium D'Autunno (G1)にてIsatis De L'ecuの2着に入った馬が力をつけてきたのであれば面白いところである。フランスのPolinuitはじわじわと差を詰めたが3着まで。Andoins、Gangster De Coddesの落馬で分かりにくいのだが、First of All付近は比較的淡々とレースを運んでいたようで、結果的にはやや踏み遅れるような敗戦となった。やはりWaregemのSteeplechaseはMeranoへの外挿性は高いようで、この馬もMeranoのSteeplechaseには対応していたのだが、どうしても好位で運んだスピード能力を有するFirst of Allを捕まえるとなるとあの形では苦しいところがある。勿体ない結果となった。Wielka Wrocławskaを勝ったHer Himもやはり踏み遅れての4着で、どうしてもMeranoのSteeplechaseは初ということもあってか、やや立ち回りの面で苦労したかもしれない。最後は猛然と追い上げていたように距離は伸びた方がいいだろう。年齢的にズブさを見せているのは気になるところだが、とりあえず今回はスタート地点で面倒ごとを起こさなかっただけプラスに考えたいところである。

Raffaele RomanoのBallinscoは積極的に立ち回って5着。これがMeranoのSteeplechaseは3戦目の馬で、前走はPremio Masaf (G3)にてGangster De Coddesの2着に入っていた。Meranoの経験は少ないとはいえ飛越には問題はなかったようで、上位勢との力量差はあったとはいえこの馬のやることはやり切った内容だろう。イタリア勢悲願のGran Premio Merano制覇を目指して見せ場は作った。スイスのBornascoは後方で見せ場は作れなかったが、とりあえずは完走したようだ。元々イタリアで走っていたもののどうやら今年の夏にスイスのJuerg Langmeier厩舎に移籍したようで、実績的には重賞クラスでどうこうという馬ではない。むしろこのクラスの馬がこの大舞台で完走したというのは胸を張っていいだろう。あまりスイス調教馬を国外で見かけることは多くはないのだが、引き続きの挑戦を期待したい。Piton Des Neigesはなぜここに出てきたのかよくわからないが見せ場はなし。Fly Filo Flyはコーナーで騎手が落馬したようだ。5連覇を目指したL'EstranはOxer Grandeにて落馬に終わった。どうしてもあのような形の落馬が極めて起こりやすい難関障害であるだけに仕方がないのだが、どうにも今年に入っての勢いに欠ける点が気になるところである。10歳という年齢を考えるとそろそろ年齢的なところも考えた方がよさそうだ。快速を武器にここでも有力視されていたGangster De CoddesはMuroにて落馬。おそらくGangster De Coddesに対してラビット役と思しきAndoinsも巻き込んでの落馬で、Scuderia Aichner陣営としては残念な結果となった。