*障害競馬回顧 2021/01/25-2021/01/31
1/25(月)
Plumpton (UK) Soft (Heavy in places)
〇 Maiden Hurdle (C4) 1m7f195y (Replay)
1. Khan J: Harry Reed T: Milton Harris
好位から進めたKhanがJohn Betjemanを抑えて勝利した。Khanはもともとドイツ調教馬で、CologneのPreis Von Europa (G1)の勝利がある。その後フランスのDavid Cottin厩舎に移籍しフランス障害を走り、さらにドイツのHenk Grewe厩舎に移りHoppegartenの歴史的なHurdle競走に出走し、重馬場で全体が追走に苦労する中、一時は後続に大差をつけていたが、残り2障害で落馬に終わっていた。その後イギリスに移り、前走はNational Hunt Flatを使うも5着、これがHurdle初戦であった。全体的な水準はさほど高くはないのだが、これまでC4のHandicap競走を始め、比較的経験のあるJohn Betjemanをいきなり抑えて勝ったのはさすがの能力といったところだろう。現時点で去勢はされていないようで、平地での実績を考えるとどこまで障害競走を走るのかは疑問だが、とりあえず次のレースを楽しみにしたい。
1/27(水)
Thurles (IRE) Soft to Heavy (Soft in places)
〇 Coolmore N.H. Sire Kew Gardens Irish EBF Mares Novice Chase (G2) 2m4f48y (Replay)
1. Colreevy J: Paul Townend T: Willie Mullins
前半からColreevyとScarlet And Doveが並んで逃げる展開も、残り2障害でScarlet And Doveが落馬。そのまま残ったColreevyが後続に12馬身差をつけて勝利した。ColreevyはHurdleでは未勝利勝ちがあるのみだが、Chaseでは3戦3勝、うちFaugheen Novice Chase (G1)を勝利するなど結果を残している。さすがに牝馬相手であれば能力は違ったようで、リスクの高い飛越を繰り返してついて行ったScarlet And Doveをものともしないパフォーマンスは立派であった。前走のKerry Group Irish EBF Mare Chase (G3)を勝ってきたMount IdaはColreevyに肉薄できずの2着。Scarlet And Doveは頑張って勝ち馬について行ったが、やや全体的に飛越に無理があった。
〇 Horse & Jockeys Hotel Chase (G2) 2m4f48y (Replay)
1. Allaho J: Paul Townend T: Willie Mullins
前半からBalko Des Flosと並んで逃げたAllahoがこれを振り切ると、追いかけてきたElimayを軽く突き放して勝利した。Allahoは昨シーズンのRSA Chase (G1)の3着馬だが、今シーズン初戦のJohn Durkan Memorial Chase (G1)では大敗、その後のSavills Chase (G1)でもA Plus Tardから遅れた4着に終わっていた。初戦はともかく、前走から比べて距離を短縮してのここになる。レース運びを見ていると前半からかなり早いペースで引っ張っており、馬の性質的には24fの馬というよりは20fの方が合うようだ。ついて行ったBalko Des Flos、Battleoverdoyenが完全に脚が上がっていることを考えると、相当強いパフォーマンスを示したと考えてよいだろう。牝馬Elimayは強敵相手に頑張ったが、Mark Walsh騎手がだいぶ上手く乗ったイメージがある。フランスではWhetstoneに肉薄した実績のある素質馬で、今後使う路線は不明だが楽しみにしたい。昨シーズンのNeville Hotels Novice Chase (G1)を勝利したBattleoverdoyenは好位からAllahoを追いかけるも、最後バタバタになっての大敗に終わった。Racing TVの解説者からなんで出てきたのか意味不明と言われ、第2障害を越えたあたりで早々にフェードアウトし、馬群から離れた遥か後方をマイペースで走っていた単勝400倍のTurndownthevolumeにすら交わされるといった有様で、さすがにこの負け方は悲しいものがある。
1/28(木)
Gowran Park (IRE) Heavy
〇 John Mulhern Galmoy Hurdle (G2) 3m (Replay)
1. Sams Profile J: Phillip Enright T: Mouse Morris
後方から押し上げたSams ProfileがDiol Kerとの叩き合いを制して勝利した。Sams Profileは遡れば2018-19シーズンのアイルランド20f Novice Hurdle路線で活躍した馬で、Lawlor's of Naas Novice Hurdle (G1)にてBattleoverdoyenの2着などの実績もある。566日の休養を経て昨年の11月にChaseに転向していたが結果を残せず、結果的にHurdleに戻している。Chaseでの飛越があまりうまくなかったということもあるが、元々能力のある馬だけにここでの勝利は喜ばしいものだろう。Diol Kerはあまり実績のある馬ではないが、初めての重賞挑戦で見せ場を作った。Guiness Handicap Hurdle (Grade B)勝ちのあるGreat White Sharkが人気になっていたが、7着と大敗。実績馬としてはNovice HurdleでG1の2勝などを挙げているBacardysもいたのだが、こちらも良いところなく大敗した。昨シーズンのStayers Hurdle (G1)の3着もあるのだが、今シーズンはどうにもぱっとなしない成績に終わっている。
〇 Goffs Thyestes Handicap Chase (Grade A) 3m (Replay)
1. Coko Beach J: Jack Kennedy T: Gordon Elliott
2週目あたりから一気に前に出たSpyglass Hillが一時期は後続を突き放すも、残り3障害辺りから失速。代わって前に出てきたCoko BeachがRun Wild Fred以下を抑えて勝利した。Coko Beach自身はNovice馬で、Drinmore Novice Chase (G1)にも挑戦した経緯もあるのだが、Envoi Allenにはさっぱり敵わず16馬身離れた大敗に終わっている。どちらかというと一瞬のスピード能力というよりはじわじわと走り続ける重馬場での持久戦向きといったタイプで、いきなり24fで結果を残したこともこの馬の特性を反映した結果だろう。やはりNovice馬のRun Wild Fredが2着で、この馬もNovice戦線で結果を残せずこちらに転向してきた経緯がある。Novice競走とはレースの性質が異なり、Beginners Chaseで大敗していた馬がここであっさり好走するのは面白い現象だろう。トップハンデのAcapella Bourgeoisはやや離れた5着に終わった。
1/30(土)
Doncaster (UK) Soft
〇 Lightning Novices' Chase (G2) 2m78y (Replay)
1. Shishkin J: Nico de Boinville T: Nicky Henderson
前半からEst Illic、さらにEldorado Allenが飛ばす展開も、残り4障害辺りからあっさり先頭に立ったShishkinがそのまま楽勝とした。Eldorado Allen自身、昨年の11月のFrom The Horse's Mouth Podcast Novices' Chase (G2)ではGumballの落馬に助けられた感はあるものの、Quel Destin、Le Patriote以下を19馬身突き放して勝ってきた強い馬で、今回もそれなりのペースで引っ張ってはいるのだが、それ以下をものともしないShishkinはさすがにモノが違いすぎた。Arkle Challenge Trophyに向けて最有力の一頭だろう。やや前半飛越が近すぎる場面が目立ったが、ミスとしては許容範囲であると思われる。
〇 Yorkshire Rose Mares' Hurdle (G2) 2m128y (Replay)
1. Miranda J: Harry Cobdon T: Paul Nicholls
小柄なSopatが頑張って逃げるも、最終コーナーの辺りから後続が殺到。ここから抜け出してきたFloressaに持ったままで接近してきたMirandaがこれを4馬身ほど突き放して勝利した。Miranda自身は重賞は初勝利とした。ここまでNoviceの下級条件戦及びC2のハンデ戦で勝利のある馬だが、ここに来て力をつけてきたようで、今シーズンはC2のハンデ戦でいずれも好走している。Floressaとは4lbの利もあったのだが、牝馬戦線において上り馬として留意すべき存在だろう。NewburyのIntermediate Hurdle (Listed)勝ちのあるFloressaはこの中では比較的実力上位の存在で、さすがに見せ場は作った。NoviceクラスではByerley Stud Mares' Novices' Hurdle (Listed)勝ちのあるMarie's RockはこれがWind Surgery明けの2戦目であったが、見せ場を作れず離れた3着に終わった。この2戦のパフォーマンスを見るとノドの影響が残っているようにも思える。
〇 River Don Novices' Hurdle (G2) 3m84y (Replay)
1. The Cob J: Darryl Jacob T: Ben Pauling
前半からEmir Sacreeがゆったりと逃げる展開だが、2周目から馬群は密集しペースは上がる。しかし全体の脚が上がる中、残り2障害辺りから抜け出してきたThe Cobがそのまま後続を大きく突き放して勝利した。Novice競走としてはしばしば発生するのだが、全体的にゆっくりと進めたはいいものの、2周目あたりからテンション高くペースを上げた結果、スタミナがゴールまで持たなくなるといったレースになっている。従って、直線に向くあたりから脱落した馬が多発しているように、完全にタイムロスが生じる消耗戦となっている。The Cobは単勝26倍と低評価であったが見せ場を作った。ここまでNovice競走はC4での勝利しかなく、その後はC3のハンデ戦を勝利し、前走はC2のハンデ戦を使っていたのだが、その経験が活きた結果だろう。おそらくNovice競走らしい機動力に飛んだタイプではなく、このような消耗戦に強い馬として認識すべきだろう。おそらく騎手が重馬場への対応に不安がなかったのか内を立ち回っているが、勝負所では内の進路がないところに閉じ込められたりと、ややレース展開としては厳しいものであったのだが、強い競馬であった。はるか後方をぽつねんと進んでいたPortstormが2着で、この馬は全体のペースアップに付き合わなかったConor O'Farrel騎手の好判断が功を奏した。Castle Robinも最後はPortstormとの叩き合いをやるくらいは余力が残っていたようで、馬券的には大荒れの結果だが、このようなレースに強い馬が純粋に前に来たと考えていいだろう。人気を背負ったAsk A Honey Beeはさっぱり良いところなく途中棄権。2番人気のAshtown Ladも途中棄権に終わり、CheltenhamのAlbert Bartlett Novices' Hurdle (G2)から転戦してきた組はいずれも良いところなく終わった。
Kokura / 小倉 (JPN) Good to Firm
〇 Ushiwakamaru Jump Stakes / 牛若丸ジャンプステークス OPN 3390m
ボナパルトが逃げる展開も、途中で落馬したミュートエアーが空馬で絡んでいく。最終コーナー手前辺りからアサクサゲンキが先頭に立つも、内から接近した空馬の影響を受ける。代わって内から抜けてきたヒロシゲセブンがアサクサゲンキを退けて勝利した。ヒロシゲセブン自身は昨年の中山大障害の7着以来の実戦であったが、ここは人気に応える勝利を見せた。東京ハイジャンプ (G2)においてメイショウダッサイの2着もあるように、比較的小型の障害コースへの適性は高いようだが、今回はアサクサゲンキが空馬の不利を受けた影響を考えるべきだろう。オープンクラスの常連アサクサゲンキは惜しい2着で、まともなら勝利まであった。これまで比較的ハードルコースを多く使ってきたこの馬にとって、小倉のコースをこなしたことは収穫だが、やはり飛越は全体的に低く、やはり小型の障害ならではの馬だろう。
1/31(日)
Naas (IRE) Soft to Heavy
〇 Limestone Lad Hurdle (G3) 1m7f151y (Replay)
1. Bachasson J: Paul Townend T: Willie Mullins
6. Winston C J: Mr John O'Neill T: Keri Brion
終始先頭を走ったBachassonがそのまま逃げ切り勝利した。Bachassonは今年で10歳になるベテランで、ChaseとHurdle兼用で走っており、今シーズンはClonmel Oil Chase (G2)を含む3連勝と調子がいいようだ。2018年にはCheltenham Gold Cup (G1)に挑んだ一方で、昨年はCoral Cup (G3)を使ったりとどうにも使い方がよくわからず、16fも久しぶりの参戦と謎なのだが、ここまで障害21戦12勝と素晴らしい成績を上げ、HurdleからChaseと条件不問で走るのはやはり驚くべきことだろう。アメリカからの参戦馬Winston Cは後方からレースを進めるも、勝負所から遅れ最下位に終わった。もともとイギリス調教馬であったのだが、アメリカでの実績を考えるとやはり良馬場の方がいいタイプだろう。Champion Hurdle (G1)に登録があるようだが、やはり馬場条件には注意した方がよさそうだ。
〇 Handicap Hurdle 1m7f151y (Replay)
3. Baltimore Bucko J: Mr John O'Neill T: Keri Brion
レース直前にMelly And Meが放馬して15分くらい捕まらなかったりと不穏な雰囲気の中始まったレース。スタートの直前のタイミングで後ろに旋回してそのまま騎手が落馬した馬がいたりとかなり物議を醸すスタートであり、Racing TVのスタジオからはFalse Startだという意見も出ていたのだが、どうやらレースは成立と判断されたようだ。アメリカ調教馬のBaltimore Buckoは後方からじわじわと馬群を縫って進めるも、最後遅れ3着に終わった。LimerickのNoviceの3着からいきなりHandicap戦への参戦ということで、馬場もあまりこの馬向きであったとは思えないのだが、大健闘の3着だろう。
〇 Naas Racecourse Business Club Novice Chase (G3) 3m170y (Replay)
1. Eklat De Rire J: Rachael Blackmore T: Henry de Bromhead
4. Forza Milan J: Kevin Brouder T: James Nash
レースはするすると逃げたEklat De Rireがそのまま勝利した。この馬自身HurdleではMaidenの2戦のみの実績で、Chaseはこれで2戦2勝とした。7歳とやや若い馬だが、あまりレース経験自体はなく、これがPTPも入れて5戦目と、どちらかというとダークホース的な存在となるだろう。前走のBeginners Chaseで20馬身差の圧勝を見せたEscaria Tenが2着だが、この馬自身Martin Pipe Conditonal Jockey's Handicap Hurdle (C2)にて大敗しているように、やや水準的には微妙かもしれない。むしろこのレースは最終障害で大きなミスをするも頑張って騎手がしがみついていた4着のForza Milanの方が話題になっていた。この馬自身はPorterstown Handicap Chase (Grade B)の4着もあるように、どちらかというと24fを越えた長い距離での活躍に期待したいタイプである。
その他
〇 La folle histoire d'Haru Urara, l'idole japonaise qui ne gagna jamais ! (France Sire)
障害競馬関連ではないのだが、ハルウララの記事がFrance Sireにあったので。
〇 Authentic Voted 2020 Horse of the Year (National Thoroughbred Racing Association)
2020年のEclipse賞におけるSteeplechase HorseにはMoscatoが選ばれた。今年は色々と主要競走が中止になったアメリカ障害競馬であるが、Moscato自身はA.P. Smithwick Memorial Steeplechase (G1)の勝利がある。
〇 Khan mit Gruppe I-Nennung in Cheltenham (Galopp Online)
前述のPlumptonのNovice Hurdleを勝ったKhanについての記事。どうやらCheltenhamのBallymore Novices' Hurdle (G1)にエントリーがあるようだ。
〇 Controversy at Naas as runner left stranded at 'shambolic' start finishes second (Racing TV)
上記のNaasのHandicap Hurdleに関する議論について。