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21/09/17 障害競馬入門⑦ - Crystal Cup -

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Crystal Cupとは、欧州における主要なCross Country競走を指定競争とし、日本のサマー2000シリーズなどと同様に、指定されたレースの着順に基づいて調教師・オーナー・馬・騎手に対してポイントが付与され、その合計ポイントを競うものとなっています。Crystal Cupの指定競争の開催国はフランスをはじめ、イギリス、チェコ、ベルギー、イタリアなど多岐に渡っており、有名なチェコのVelká PardubickáもCrystal Cupの指定競争として行われます。参戦馬は基本的に指定競争開催国における調教馬が多いですが、これを契機にした馬の交流もある程度発生します。特に、Crystal Cup指定競走を数多く開催するフランスにおける調教馬は積極的に国外遠征を行っており、フランス調教馬は欧州Cross Countryにおいて絶大な存在感を誇っています。

 

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公式ホームページ:http://crystalcup.org/

公式twitter@CrystalCupRaces

 

開催月 競馬場 競走名 距離(m) 賞金額(€)
2月 Pau (FR) Grand Cross De Pau Reverdy 6300 70,000
3月 Cheltenham (UK) Glenfarclas Cross Country 6070 74,000
4月 Fontainebleau (FR) Grand Steeplechase Cross Country
De Fontainebleau
6000 40,000
5月 Lion-d'Angers (FR) Prix Anjou-Loire Challenge 7300 112,000
8月 Waregem (BEL) ING Grand Steeplechase des Flandres 4600 70,000
9月 Craon (FR) Prix Super U Craon 6000 75,000
9月 Merano (ITA) Premio Delle Nazioni 6000 40,000
10月 Pardubice (CZE) Velká Pardubická 6900 178,000
10月 Wroclaw (POL) Crystal Cup 5500 40,000
11月 Compiègne (FR) Grand Steeplechase Cross Country
De Compiegne
5400 48,000
12月 Cheltenham (UK) Glenfarclas Cross Country 6070 48,000

注:2021年9月17日現在のCrystal Cupホームページから引用。Velká Pardubickáの賞金額はTBDとなっていましたので、2019年の総賞金額を記載しています。

 

上記煽り映像の元ネタ解説は以下の記事で。

 

*Grand Cross de Pau Reverdy 6300m @ Pau(FR)(2月)

スペインとの国境に近いフランス南部に存在するPau競馬場の競馬開催はフランスの冬季(12月~2月)に行われており、Pau競馬場におけるCross Country競走として最大の競走であるGrand Cross de Pauは2月に行われます。PauのCross Country Courseには多数のBanquetteを始めとする難易度の高い障害が設置されておりますが、、難易度の高い障害が特に加速を掛けてクリアする必要のある勝負所に設置されているため、非常にハイレベルなCross Country競走が行われることが特色です。また、フランス冬季に障害競馬開催が行われるのはPau競馬場とCagnes-Sur-Mer競馬場のみであり、Cagnes-Sur-Mer競馬場にはCross Countryコースは設置されていないことから、Pau競馬場のCross Countryを専門に使う馬が多く存在し、結果的にこのレースには経験豊富な馬たちが多数出走してくるのが特徴です。 

 

*Glenfarclas Cross Country 3m6f37y(6070m)@ Cheltenham(UK)(3月/12月)

イギリス国内において唯一Cross Country Courseが設置されているCheltennham競馬場にて、3月のCheltennham Festivalと12月に行われる競走です。3月は定量戦、12月はハンデ戦となります。毎年多数のフランスからの強力な参戦馬を集めるほか、近年ではTiger Rollを代表格としてここからイギリスGrand Nationalを目指す馬の参戦が目立ちます。 Glenfarclasとはハイランド地方に存在する有名なウイスキーの蒸留所。ゲール語で「緑の草の生い茂る谷間」という意味だそうです。

 

*Grand Steeplechase Cross Country de Fontainebleau 6000m @ Fontainebleau(FR)(4月)

Grand Steeplechase Cross Country de Fontainebleauは、ぼちぼちフランス障害競馬シーズンが本格的に始まりつつある時期に、パリ郊外に存在するFontainebleau競馬場で行われるFontainebleau競馬場最大のCross Country競走です。12~2月頃はPau及びCagnes-Sur-Mer競馬場の2カ所のみの開催となるフランス障害競馬ですが、この時期になると多数の競馬場での開催が始まるため、参戦馬はFontainebleauのみならず他の競馬場を含めて活躍してきたフランス調教馬が多くを占めます。コースとしては急カーブこそ存在するものの比較的障害としては平易なものが設定されており、比較的Steeplechaseのスピード能力が問われる内容となっています。 

 

*Anjou-Loire Challenge 7300m @ Lion-d'Angers(FR)(5月)

フランス西部に存在するLe Lion-d'Angers競馬場にて開催されるAnjou-Loire Challengeは、フランスCross Country競走としては最大の賞金額を誇る競走ですが、なんといってもその特徴は距離にあります。このレースには7300メートルの距離が設定されており、これは障害競馬としては世界最長のものとなっています。障害としてはCross Country競走として比較的一般的なものばかりですが、Lion-d'Angers競馬場の大型の丘を繰り返し昇り降りする上に、飛越する障害は合計50と、非常にタフな条件が設定されています。 

 

*ING Grand Steeplechase des Flandres 4600m @ Waregem(BEL)(8月)

年間を通じて計4レース、1日間しか障害競走が行われないベルギー競馬ですが、"Belgian Grand National"とも呼ばれるING Grand Steeplechase des Flandresをメインレースとして行われるWaregem競馬場の祭典、"Waregem Koerse"は多数の観客を集め、大変な賑わいを見せます。ING Grand Steeplechase des Flandresの出走馬の殆どがフランス調教馬となりますが、第9障害及び第18障害として飛越する"The Gaverbeek Brook"は、幅500cmの巨大な水壕を持つ生垣障害であり、世界最大級の水壕障害として名を馳せています。

 

*Prix Super U Craon 6000m @ Craon(FR)(9月)

Craon競馬場最大のCross Country競走。これ自体はGrand Cross de Craonとも言います。途中で比較的小型の丘を昇り降りしたり、長くダートコースを走るなど、やや特徴的なCross Country Courseが設定されています。全体としては広々としたコースですが、途中のPassage De Routeは進行方向の幅が狭く、大きく減速して飛越する必要があります。

 

*Premio Delle Nazioni 6000m @ Merano(ITY)(9月)

9月下旬には二日間に渡り、イタリアMerano競馬場でGran Premio Merano等を含むイタリア障害競馬の主要競走が集中的に行われる開催がありますが、Premio Delle Nazioniはその1日目で行われるイタリア最大のCross Country競走です。この競走ではMerano競馬場のCross Country Courseをフルに使うコースが設定されており、3連続障害であるDoppia Gabbia Di Siepi(2019年はこの障害で全馬競争中止、一部が再騎乗で完走)、高さ110cmと150cmの生垣を並べたOxer Grandeなど、Merano競馬場における特徴的な障害を使用する、非常に難易度の高い競走となっています。

 

*Velka Pardubicka 6900m @ Pardubice(CZE)(10月)

言うまでもなくチェコ障害競馬における最高峰の競走。普段は長閑なPardubice競馬場もこの日はヨーロッパ諸国からたくさんの観客を集め、素晴らしい熱気に包まれます。特徴的なのは第4障害として設置されている"Velký Taxisův příkop"で、高さ150cm、幅180cmの生垣障害の後ろに、深さ100cm、幅400cmもの空壕を設置したもの。世界的に見ても最難関障害の1つに数えられます。チェコ調教馬のみならず、スロバキア、フランス、アイルランド、イギリスなどからも参戦馬を集める国際的な障害競走となっています。

 

*Crystal Cup 5500m @ Wroclaw(POL)(10月)

近年新たにCrystal Cupのメンバー入りを果たした競走で、ポーランドのWroclaw競馬場で行われます。ポーランドSteeplechaseとしてはWielka Wrocławskaと並んで高い価値を持つ競走です。レースのカテゴリーとしてはSteeplechaseに分類されますが、飛越する障害の性質を考えればCross Country競走的な側面があります。この競走の第3障害として設置されている"Skok trybunowy"(Grandstand Jump)と呼ばれる障害は、高さ220cm、幅220cm、さらに障害の後ろに250cmの空壕がある巨大なもので、年にWielka WrocławskaとCrystal Cupの2回しか使用されません。

 

*Grand Steeplechase Cross Country de Compiegne 5400m @ Compiegne(FR)(11月)

11月にCompiegne競馬場で行われるCompiegne競馬場最大のCross Country競走です。Pau競馬場やCraon競馬場、Fontainebleau競馬場などと異なり、Passage De Routeは下って登るような障害となっていますね。全体として障害としてはCross Country競走としては一般的なものとなっています。

 

(参考)La Touche Cup 4m2f @ Punchestown(IRE)(4~5月)

Punchestown Festivalで行われるCross Country競走。以前はCrystal Cupの指定競争として行われていましたが、現在はCrystal Cupのメンバーからは外れています。コースとしては数多くのBankを越えることが特徴です。映像は2012年のものなので、若干現在とは障害が異なっていることに留意してください。