にげうまメモ

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21/10/05 Velká Pardubická ③ - 障害 -

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Velká PardubickáではPardubice競馬場の6900mのコースに設置された合計31の障害を飛越します。平地競争は勿論、一般的なHurdle競走やSteeplechase競走と比較しても圧倒的に複雑怪奇なものとなっており、よく間違えないものと感心しますが、実際Pardubice競馬場のCross Country競走を見ていると時々素でコースを間違えている人はいます。ちなみに、Velká Pardubickáで1位入線を果たすも誤った走路を通ったことにより失格になった人(Marek Stromský騎手)もいます。

 

*参考映像

 

*障害

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写真は2019年のVelká Pardubickáのパンフレットから。2020年は新型コロナウイルス感染症の影響で無観客開催となり、本来有料のプログラムが下記のリンクから無料でダウンロードできるようになっていたので、適宜ご参照ください。

https://zavodistepardubice.cz/zivy-prenos-a-dostihovy-program-na-nedeli-11-rijna/

 

1. Živý plot(po startu)/ Railed hedge

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スタート直後に存在する障害。高さ80cmの白い柵を手前に置いた、高さ120cm、幅130cmの生垣障害です。障害としては非常に平易なもの。

 

2. Živý plot s příkopem / Railed hedge and ditch

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第1障害と同様に白い柵を手前に設置した高さ130cmの生垣障害。この後ろに深さ60cmの空壕が存在します。やや飛越の幅が要求されることから、スピードを持って飛越する必要があります。なおヨーロッパにおいて、このように障害の後ろに空壕を設置している障害は数多く存在します。

 

3. Malý vodní příkop / Small water jump

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水壕だけの障害。深さ60cm、幅300cm。一部Steeplechaseの競争でも使用される平易な障害で、Velká Pardubickáに出走するようなチェコ障害競馬の一流馬が落馬することは殆どありません。ここからスタンドの前を横切って、最難関の第4障害に向かいます。

 

4. Velký Taxisův příkop / Taxis Jump

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Velká Pardubickáにおける最難関障害です。Taxis JumpとかTaxis Ditchとか呼ばれています。障害としては高さ150cm、幅180cmの生垣障害の後ろに、深さ100cm、幅400cmもの空壕を設置したもの。この障害は調教に使用することも禁止されており、数多くの障害が設置されているPardubice競馬場の障害競馬でも、1年に一度、このVelká Pardubickáの第4障害でしか使用されません。相当な幅とスピードを持って飛越する必要があり、踏切地点の設定から正確な着地動作まで、全ての面において高い水準が求められ、1つのミスが落馬に直結する極めて難易度の高い障害となっています。世界的に見ても最難関障害の一つであり、その落馬率はAintree競馬場のGrand Nationalにおける全てのNational Fenceを凌駕します。

 

5. Irská lavice / Irish Bank

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Cross Country競馬に特有の障害。小型の塚のような障害です。塚の前後に深さ50cm、幅100cmの空壕が設置されており、塚自体は高さ200cm、幅450cm、最高地点の幅は250cmとなっています。すなわち、馬の動作としては障害手前の空壕を飛び越えたのち、塚を登り、さらに下って空壕を飛び越えるというものになります。Taxis Jumpまでの障害はスピードに乗った飛越技術を要求するものですが、この障害はスピードを落として越える必要があります。ここでペースを握る馬が変わることもしばしば。この障害を越えた後はダートコースを走ります。この障害自体はPardubice競馬場における比較的上位クラスのCross Country競争では頻繁に使用される障害ですが、Velká Pardubickáにおいては他の競争とは比べものにならないほど高いスピードを維持したままこの障害を越える必要があります。

 

6. Popkovický skok / Popkovice turn - railed hedge with ditch

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高さ130cm、幅200cmの生垣の後ろに幅200cmの空壕を設置したもの。Irish Bankで一端スピードを落とした馬はこの障害に向けて再度スピードを上げることになりますが、この障害の直後は急カーブになっていることから、重複落馬の高いリスクを孕む障害です。Velká Pardubickáの序盤のコースは、設置されている障害自体の難易度の高さは勿論のこと、スピードを持って飛越する障害とスピードを殺して飛越する障害と、性質の異なる障害が織り交ぜて設置されており、全体の難易度を格段に上昇させています。なお、このように障害の直後に急カーブが存在する障害としては、Aintree競馬場のCanal Turnが有名です。

 

7. Francouzský skok / double hedge

高さ120cm、幅110cmの生垣が二つ、幅110cmの空壕を挟んで設置されたもの。映像からはわかりにくいのですが、これもスピードを持って飛越する必要がある障害です。この障害のあともダートコースになります。ちなみにイタリアMerano競馬場にも同様に二つの生垣が並べて置かれた障害(Oxer Grande)が存在します。

 

8-9. Malé zahrádky / small gardens, double railed hedge - road profile

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いわゆる2連続障害。高さ120cm、幅140cmの障害が850cmの幅を持って設置されているものです。一見派手ですが、この障害自体はPardubice競馬場の下級条件戦や、他の競馬場でも数多く使われる障害であり、落馬はあまり見られません。ここには4つの生垣障害が並んでおり、第8-9障害となるのは最も奥の障害です。二連続障害はVelká Pardubickáにて2回使用し、2回目は手前から2つ目の障害を使用します。

なお、ニュージーランドの一部の競馬場やイギリスのSandown競馬場に存在する二連続障害はこれとは異なり、通常の障害が比較的狭い間隔で並べられたものです。オーストラリアWarranbool競馬場のSteeplechase Courseにはこれと類似した障害が存在しますが、障害自体は小型なものです。ちなみにイタリアのMerano競馬場のCross Country Courseには3連続障害(Doppia Gabbia di Siepi)が存在しており、Merano競馬場のCross Countryにおける最難関障害の一つとして待ち構えています。

 

10. Anglický skok / English Jump - ditch and hedge

高さ70cmの柵の後ろに幅150cmの空壕を設置し、その後ろに幅120cmの生垣が存在する障害です。この障害のように、障害の手前に空壕が存在する障害はイギリスやアイルランド、フランス等ではOpen Ditchと呼ばれています。なにもないのはPlain Fenceと呼びます。

 

11. Prodloužený taxisův příkop / railed hedge and ditch

第10障害であるAnglický skokを飛越してから大きくカーブしてこの障害に挑みます。この障害は高さ80cmの柵を生垣の手前に設置した、高さ130cm、幅200cmの生垣障害。その後ろに深さ30cm、幅200cmの空壕が設置されています。

 

12. Živý plot s příkopem / railed hedge and ditch

60cmの柵を生垣の手前に設置した、高さ130cm、幅170cmの生垣障害。この後ろに深さ60cm、幅200cmの空壕を設置したもの。

 

13. Živý plot – seskok / railed hedge and jump

60cmの柵を生垣の手前に設置した、高さ120cm、幅130cmの生垣障害。障害自体は小型ですが、着地地点が踏み切り地点よりも50cmほど低くなっています。従って比較的着地時に前足でしっかりと踏ん張る必要があり、バランスを取るのが難しくなっています。同様のタイプの障害で有名なのがイギリスAintree競馬場のNational Courseに存在するBecher's Brookです。

 

14. Živý plot / railed hedge

高さ80cmの柵の後ろに高さ130cm、幅130cmの生垣障害を設置したもの。第13障害であるŽivý plot – seskokのあとに急カーブを曲がる必要があり、この辺りから各馬ペースを落とすことになります。

 

15. Poplerův skok / timber rail

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高さ80cmの柵だけの障害。Timber Railと呼ばれるタイプの障害はアメリカSteeplechaseで主に使われます。このタイプの障害はヨーロッパCross Countryでは一般的です。

 

16. Drop(seskok) / drop fence

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スタンド前の障害。ひときわ盛り上がりも大きくなります。障害としては第5障害のIrish Bankと似たようなもの。深さ20cm、幅40cmの空壕を前後に、高さ110cm、傾斜面の幅220cmという小さな塚。第5障害のIrish Bankよりも高さは抑え目ですが、同様にスピードを落とす必要があります。このような障害はアイルランドのPunchestown競馬場に多数存在します。

 

17. Kamenná zeď / stone wall

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高さ85cm、幅180cmの石垣の手前80cmの地点に目印となる丸木を置いたもの。高さは非常に低いのですが、脚をぶつけると確実に落馬に繋がるため、確実に飛越する必要があります。

 

18. Hadí příkop / snake ditch, water jump - jump down

深さ95cmの水壕です。着地点はゆるやかな傾斜面になっており、どちらかというと飛び降り台という側面が強いです。Dropを越えるためにペースを一度抑えていた馬はこの辺りから再度ペースを上げていく必要があります。

 

19. Velký vodní příkop / big water jump

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水壕。深さは45cmと抑え目ですが、幅400cmとかなりのものがあります。この辺りからペースアップしていくため、ペースアップするだけの余力がなくなってきた馬はこの障害で水しぶきを上げることになります。先ほどのHadí příkopとは異なり、飛越の幅が必要であるため、スピードを持って飛越する必要がある障害です。なお、この障害の手前には急カーブが存在しており、しばしば障害飛越とは関係のない落馬が発生する地点です。

 

20. Malý Taxisův příkop / small taxis jump

高さ60cmの柵を前に置き、高さ140cm、幅200cmの生垣の後ろに幅170cmの空壕を設置したもの。同様にスピードを持って飛距離を伸ばしつつ飛越する必要がある障害です。

 

21-22. Velké zahrádky / gardens, double railed hedge - road profile

いわゆる2連続障害。高さ130cm、幅150cmの障害が900cmの幅を持って設置されています。第8-9障害よりもやや大型となっています。

 

23. Suchý příkop(za lesem)/ dry ditch

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深さ90cm、幅300cmの空壕。空壕の前に目印となる丸太が置いてあります。映像ではどうにもわかりにくい障害なのですが、実物を見ると意外と大きい障害。

 

24. Proutěná překážka(Steeplechase skok) / steeplechase plain fence

通常のSteeplechaseで使用される障害。幅120cmの柵の後ろに高さ130cm、幅60cmの生垣を置いたもの。

 

25. Živý plot(u hangáru)/ railed hedge

80cmの柵の後ろ60cmに高さ130cm、幅130cmの生垣障害を設置したもの。

 

26. Velký anglický skok / big English jump - ditch and hedge

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高さ150cm、幅160cmの生垣障害の手前60cmに、高さ80cmの白い柵を設置したもの。この障害自体の大きさは勿論のこと、この障害の難易度を上げているのは飛越地点と着地地点の高低差であり、この障害では第13障害とは逆に、踏み切り地点に比べて着地地点が40cmほど高くなっています。着地時に器用さが要求される障害であり、終盤の難関障害の一つ。慣れない馬はしばしばここの着地でミスをして落馬をします。

 

27. Suchý příkop (mezi břízkami) / rail and ditch

高さ50cm、幅60cmで立てかけられた柵の後ろに幅240cmの空壕を設置したもの。

 

28. Havlův skok / Havel's Jump - railed hedge and ditch

高さ80cmの柵の後ろ50cmに、高さ140cm、幅190cmの生垣を設置し、その後ろに深さ50cm、幅250cmの空壕をつけたもの。ややこしいですが、要するに比較的小型の生垣の前後に空壕があるものだと考えればよいと思います。これも終盤の難関障害の一つ。

 

29-31. Proutěné překážky / hurdles

Steeplechase Courseから最後の直線にかけて設置されたHurdle障害。要するに通常のSteeplechaseで使用する障害です。難易度は低いですが、最後の勝負どころということで最大限のスピードを持って越えていく必要があります。