にげうまメモ

障害競馬の個人用備忘録 ご意見等はtwitter(@_virgos2g)まで

21/12/05 Weekly National Hunt / Jump racing

f:id:virgos2g:20211204104936p:plain

*週刊障害競馬回顧 2021/11/29-2021/12/05

12/3(金)

Sandown (UK) Good to Soft (Good in places)

Ballymore Winter Novices' Hurdle (G2) 2m3f173y (Replay)

1. Lossiemouth J: Stan Sheppard T: Tom Lacey

Fair Frontieresが前に行くも早々に後退。代わって人気のBrave Kingdomが先頭に立つも、好位から進めたLossiemouthが前に出ると、そのまま後続を突き放して勝利した。2着にはViva Lavillaが入った。

LossiemouthはこれでHurdleは3連勝とした。これでHurdleは6戦目とやや経験を積んでいる馬だが、全体的にパワフルで重心の低いフォークから繰り出される飛越が目立っており、純粋なNovice向きの馬とは異なるような印象がある。距離が伸びても対応できそうだが、ややスタート直後に騎手が馬を押して出していたこと、及び深いブリンカーシャドーロールをつけていたことは気になるところ。母父Fusaichi Pegasusは日本ではお馴染みの馬だが、障害競馬ではあまりなじみのない馬で、障害競馬におけるDamsireとしての活躍馬はこの馬くらいのようだ。LingfieldでMaidenを勝ってきたViva Lavillaが2着。ChepstowでMaidenをいい勝ち方で突破し人気を集めたBrave Kingdomはやや案外な3着。全体的にMaiden又はNoviceの下級条件戦を勝ったばかりの馬が揃っていたことを考えると、ややレースレベル自体には注意した方がいいかもしれない。

 

12/4(土)

Aintree (UK) Soft

Many Clouds Chase (G2) 3m210y (Replay)

1. Protektorat J: Bridget Andrews T: Dan Skelton

Tiger Rollの復帰戦ということで注目が集まっていた。レースは前半からWishing And HopingがNative Riverを制して前に行く展開も、第11障害辺りから再度Native Riverが前に出る。しかしこれを追いかけてきたProtektoratが残り4障害辺りから前に行くと、そのままNative Riverを25馬身突き放して勝利した。22馬身離れた3着にはSam Brownが入り、第12障害で落馬したThe Two Amigosを除く残りの全馬は途中棄権となった。

この日のAintreeは強い雨風で、馬場はSoftと標準的なのだがあまりレースには不向きな条件であった。Protektoratは昨シーズンのManifesto Novices' Chase (G1)の勝ち馬で、今シーズンはPaddy Power Gold Cup (G3)でMidnight Shadowの僅差の2着に入っている。当時のレース振りとしては最後Midnight Shadowを強襲するといったもので、距離が伸びてパフォーマンスを上げてくることは前走から容易に想像ができるものであった。ひとまず今回は今後が楽しみになる内容であったが、今シーズン2戦目の上積みもあり、やや差し引いて考えた方がいいだろう。古豪Native Riverはこれが今シーズン初戦で、とりあえずしぶとく走って2着に入ったが、比較的得意な重馬場でのレースであったことを踏まえると、さすがにそろそろ11歳という年齢を考えた方がいいかもしれない。注目されたTiger Rollは第5障害辺りから早々に遅れての途中棄権で、馬にさっぱり走る気がなかったというのもありそうだが、そもそも既にChaseの重賞クラスでは厳しくなっているのかもしれない。

 

Becher Handicap Chase (G3) 3m1f188y (National) (Replay)


 1. Snow Leopardess J: Aidan Coleman T: Charlie Longsdon

年に5回使用されるNational Fenceだが、Grand Sefton Chaseが11月に移動したため、この日はBecher Chase (G3)のみとなった。レースは前半からTop Ville Ben、Via Dolorosaなどが出てくるも、Becher's Brookの辺りから前に出てきたSnow Leopardessが先頭に。そのまま残り3障害辺りでは後続に大きなリードをつける。残り2障害辺りからHill Sixteenが接近し、最終障害を越えてからSnow Leopardessに強襲するも、ぎりぎりでSnow LeopardessがHill Sixteenを凌いで勝利した。

Snow Leopardessの戦績の中には不自然な794日間のインターバルがあるのだが、これは出産のための休養だそうで、Snow Leopardessには現在2歳となる産駒がいるらしい。この馬自身は重賞は2017年にNovice HurdleのG2を勝っているのだが、Chaseでは重賞は初勝利で、National Fenceはこれが初挑戦であった。追いかけてきた組が早々に脱落したため一頭抜け出す形になり、結果的に最後やや苦しくなった部分はあったのだが、それでも初めてのNational Fenceで非常に安定した飛越を見せており、この悪条件の中でこれだけのレースを見せるのは大したものである。Martalineの産駒らしくパワーとスピードの持続性能に優れたタイプで、若干馬場は重くなったほうが良さそうな印象である。おそらくGrand Nationalを視野に入れることになると思われるが、Official Ratingは140と算出されていることを考えると、もう少しRatingの積み上げが欲しいところかもしれない。Hill Sixteenは後方から押し上げて見せ場を作った。どうやら一時期はノドの影響で大きくパフォーマンスを落としていたようで、ひとまずSandy Thomson厩舎への転厩2戦目で結果を出したことは嬉しい材料だろう。上位勢の中で比較的レーティングを持っていたのが4着のDomaine De L'Isleだが、中段から進めるも上位には肉薄できず、3着のCheckitoutから6馬身離れた入線。初のNational Fenceだけにもう少しパフォーマンスは上げてくるかもしれない。もったいなかったのが11st12lbを背負っていたChris's Dreamで、Canal Turnの後のコーナーで騎手が落っこちて競争中止。ベテランVieux Lion Rougeもいたのだが、こちらはTop Ville Benの落馬に巻き込まれる形で競争中止に終わった。

 

Sandown (UK) Good to Soft (Soft in places)

Henry VIII Novices' Chase (G1) 1m7f119y (Replay)

1. Edwardstone J: Tom Cannon T: Alan King

前半から人気のThird Time Luckiが飛ばすも、何度か大きなミス。残り3障害辺りからEdwardstoneが接近すると、そのままThird Time Luckiは抵抗できず後退。代わって前にでたEdwardstoneが後続を突き放し、2着のWar Lordに16馬身差をつけて勝利した。Third Time Luckiは3着。

EdwardstoneはこれでChaseは4戦2勝とした。Warwickのシーズン初戦では残り4障害で他馬の煽りを食って落馬に終わっており、実質今シーズン無敗といったところである。HurdleではG3クラスで入着した実績があるくらいで、Supreme Novices' Hurdle (G1)ではShishkinから23馬身離れた6着に終わっているが、ここでのレースは内容的には盤石のものであった。Cheltenhamでいい勝ち方をして人気を集めたThird Time Luckiは最後失速しての3着で、とはいえWar Lordに対しても僅差まで食い下がっているのだから大したものだろう。どうにもスピードに飛越技術がついて行っていないという印象で、今後もう少しパフォーマンスを上げてきてもおかしくはない。Chaseは2戦2勝で挑んできたWar Lordが2着だが、レース内容としてはもう少し距離があってもよさそうだ。

 

Tingle Creek Chase (G1) 1m7f119y (Replay)

1. Greaneteen J: Bryony Frost T: Paul Nicholls

アイルランドからChacun Pour Soiの参戦で話題になっていた。レースは前半からChacun Pour Soiが軽快に逃げるも、Railway Fenceで大きなミス。ここから馬群が一気に凝縮すると、残り3障害辺りからHitman、さらにはGreaneteenが進出。Greaneteenが残り2障害辺りから抜け出すと、そのままHitmanに5馬身差をつけて勝利した。3着にはCaptain Guinnessが入った。

Sandown競馬場は途中に障害が近接して設置されているRailway Fenceが存在する。この障害はイギリス・アイルランドでは比較的珍しい形態で、特にこのような高いスピードが求められる16fのG1競走においてはこのRailway Fenceをスピードを殺さずに突破することが重要となる。Chacun Pour Soiは言うまでもなく現時点での16f Chaseにおけるトップホースの一頭だが、Sandown競馬場はこれが初参戦で、Railway Fenceにおいて大きなミスがあった。ここまでこの馬が崩れるのは珍しく、ひとまずコース代わりで期待したいところだが、これが初コンビとなったPatrick Mullinsとの相性を含め、今シーズンは今後に不安が残る初戦となってしまった。Chacun Pour Soiを徹底マークしていたNube NegraはこのChacun Pour Soiのリズムの悪さに巻き込まれるようなちぐはぐなレースで、少なくともこの2頭が自滅したことを考えてレースは評価する必要があるだろう。

Greaneteenはこれで昨シーズンのCelebration Chase (G1)に続くG1は2勝目とした。今シーズン初戦のHaldon Gold Cup (G2)はさっぱり良いところがなく終わっていたのだが、叩き2戦目で状態が上がっていたのかもしれない。Sandownのコースはこの馬にとって走り慣れたものであり、明らかにPolitologueの2着に入った昨年よりも力をつけている。自滅した有力馬2頭と比較するとBryony Frost騎手がリズムよく運んだレース振りが目立っており、今回の内容はややフロック視される可能性もあるのだが、決して無視できる存在ではないだろう。同厩舎のHitmanが2着で、この馬もHaldon Gold Cup (G2)では2着と調子はいいようだ。昨シーズンはNovice戦線で20fで結果を残しており、再度の距離延長も考えられる。アイルランドのCaptain GuinnessはHitmanと僅差の3着だが、もう少し積極的に動いてもよかったかもしれない。

 

Navan (IRE) Yielding (Good in places)

Navan Novice Hurdle (G2) 2m4f (Replay)

1. Ginto J: Mr Jamie Codd T: Gordon Elliott

好位から進めたGintoがそのままEric Bloodaxeに11馬身差をつけて勝利した。GintoはこれでHurdleは2戦2勝、NHFも含めて3連勝とした。レース前にRuby Walshが述べていたようにNavanの未勝利戦では非常に良い勝ち方をしており、今回はNHFからコンビを組んでいたJamie Coddとのコンビに戻ってのレースであったが、レース内容としては完勝であった。Champion I.N.H (G1)でKilcruitの4着のあるEric Bloodaxeは対抗角と目されていたが、全体的に飛越の拙さが目立っており、勝ち馬には肉薄できず離れた2着に終わった。

 

Klairon Davis Novice Chase (G3) 2m1f (Replay)

1. Riviere D'Etel J: Dennis O'Regan T: Gordon Elliott

軽快に飛ばしたRiviere D'EtelがそのままTake Allに12馬身差をつけて勝利した。Riviere D'EtelはこれでChaseは3連勝。前走のPunchestownのCasino Novice Chase (G2)でもCape Gentlemanに21馬身差をつけて勝利しており、今のところ全てのレースで大差をつけるめざましい勝利をあげている。飛越自体にも問題はなく、この時期のNovice馬としては非常に優秀な内容だろう。10月にBetVictor Novice Chase (G3)を勝つなど、ここではChase競走における経験値としては抜けたものを持っているEmbitteredもいたのだが、どうにも良いところがなく最下位に終わった。この馬はJoseph O'Brien厩舎の所属なのだが、例によって7月から休みなく使われており、どうにも馬の状態面で不安が残る。

 

Pau (FR) Lourd (4.7)

〇 Prix Hubert De Navailles

Cross Country Pour tous chevaux de 5 ans et au-dessus 4700m (Replay)

1. Saint Godefroy J: Felix de Giles T: Patrice Quinton

Lucky Net Love、Vif Ardentなどがゆったりと引っ張るも、途中からこれにDunquin、さらにUniketatが絡んでいく。途中から先頭に立ったUniketatを抑えてDunquinが逃げ込みを図るが、力強く伸びてきたSaint Godefroyがこれを捉えて勝利した。Otchoa Rougeが3着。

馬場はかなり悪いようで、道中のスムーズなレース運びが重要となっている。Saint GodefroyはこれでPauのCross Countryは4連勝とした。6歳とまだ若い馬だが、全体的に前向きな追走が目立っており、内容的にも余裕残しであることを考えると、今シーズンは非常に楽しみな一頭と考えてよいだろう。飛越面でも安定しており、PauのCross Country Specialistとして非常に期待ができそうだ。牝馬DunquinはCross Countryでは長い馬で、前走はGrand Steeplechase Cross Country de Compiegne (Listed)にてPrengardeの2着がある。前走はさすがに勝ち馬が強すぎた感もあるが、この馬も今年はGrand Cross de Lignieresの勝利など調子はいいようで、2月以来のPauのCross Coutnryであったが今後に繋がるレースを見せた。4月のGrand Steeplechase Cross Country de Fontainebleauの勝ち馬Otchoa Rougeは例によって後方から押し上げる競馬であったが、PauのCross Country経験がある馬として飛越は安定しており、展開面で今後も左右されそうだが、この路線で大仕事をやってのけるポテンシャルはあるだろう。Grand Cross De Pau Reverdyの2着馬Lucky Net Loveは最後盛り返して4着。同レースの勝ち馬Uniketatは積極的に運んだが、最終コーナーで捕まってからは無理をしなかったようで、6着と着順は悪いがさほど気にしなくていいだろう。今年で13歳になる葦毛のUnbrin De L'Isleは久々のPauのCross Countryであったが、どうにも障害に苦労しているような感があり、途中でついていけなくなり途中棄権に終わった。

 

12/5(日)

Huntingdon (UK) Good (Good to Soft in places)

Peterborough Chase (G2) 2m3f189y (Replay)

1. First Flow J: David Bass T: Kim Bailey

Allmankindの復帰戦ということで人気になっていた。そのAllmankindがMaster Tommytuckerを振り切って逃げるも、これにFunambule Sivolaがぴったりとついて行く。残り2障害辺りからFunambule SivolaがAllmankindを制して前に出るも、これを追いかけてきたFirst Flowがこれを捉えて勝利した。

First Flowは昨シーズンは2020年2月のNovice Chaseから続く6連勝でClarence House Chase (G1)を制した馬だが、その後のCheltenham、Punchestownではあまりいいところなく惨敗しており、今回は対アイルランド調教馬という意味での期待値も含め人気を落としていた。昨年の6連勝当時はほぼ重馬場だったことを考えると、今回良馬場で結果を残したこと、さらに今回が初の20fであったことは今後に向けての明るい材料だろう。ただし、どうにもCheltenhamやPunchestownのような坂の多いトリッキーなコースではなく、HuntingdonやAscotといった大雑把なコースの方がこの馬向きのような印象はある。Mughull Novices' Chase (G1)でShishikinを3馬身差まで追い詰めたFunambule SivolaはこれがNovice上りの初戦であったが、堂々としたレースで2着。Novice時代は20fでは結果が出なかったが、この路線でも楽しみな存在になるだろう。Haldon Gold Cup (G2)の勝ち馬Eldorado Allenは後方から進めるも、途中でやや大きなミスもあり、最後はFunambule Sivolaを捉えきれず3着に終わった。

 

Cork (IRE) Soft

Stayers Novice Hurdle (G3) 3m (Replay)

1. Nell's Well J: Mark McDonagh T: Sean O'Brien

人気の一角のIdas Boyが逃げるも、残り3障害でミス。代わってDedanannが前に出るも、残り2障害で前に出たNell's Wellがそのまま後続を突き放して勝利した。2着にはChurchstonewarriorが入った。Nell's Well自身はこれがHurdle10戦目と経験の長い馬だが、ようやく今年の10月にMaidenを勝ったばかりといったところで、ここのところはHandicap競走を使っていた。そこでもレーティングは104とあまり高いものはもっておらず、今回も単勝25倍での勝利と低評価であった。どうしてもこの時期の24f戦というのはメンバー的にも難しいところがあり、Thurlesの23fのNovice Hurdleの上位馬が人気になっていたということも考えると、とりあえず現時点での完成度としてはそれなりのものがありそうだが、メンバーの水準という意味では注意した方がよさそうだ。

 

O'Flynn Group Irish EBF Mares Novice Chase (G2) 2m160y (Replay)

1. Concertista J: Sean O'Keeffe T: Willie Mullins

人気のMagic Dazeが逃げて隊列が非常に長くなるも、最終障害でこれに並んできたConcertistaがJeremys Flameとの叩き合いを制して勝利した。Concertistaは昨シーズンのClose Brothers Mares' Hurdle (G1)でも1番人気に推され、Black Tears相手の僅差の2着に入ったほどの馬で、これがChase初戦であった。前半はどうにも飛越に拙さが残っていたのだが、加速を掛けてからは比較的しっかりとした飛越を見せており、飛越次第ではさらにパフォーマンスを上げてくる可能性もあるだろう。これがChase7戦目となるJeremys Flameは惜しい2着で、実績的には格下感もあるのだが、これは経験値によるものなのかもしれない。人気のMagic Dazeは勝ち馬とはそう離れていない3着に終わったが、Concertistaと比べるとかなりスムーズな競馬をしていただけに、ここは勝ち切りたいところであった。

 

Hilly Way Chase (G2) 2m160y (Replay)

1. Energumene J: Sean O'Keeffe T: Willie Mullins

前半からEnergumeneとNotebookがかなり競り合って逃げるも、残り3障害辺りからNotebookは脱落。そのままEnergumeneがDaly Tigerに8馬身差をつけて勝利した。

EnergumeneはこれでChaseは5戦5勝とした。昨シーズンはIrish Arkle Novice Chase (G1)、Ryanair Novice Chase (G1)勝ちを収めており、今シーズンの16f路線では最も楽しみなNovice上りの一頭である。NotebookはNovice時代にG1を2勝、今シーズンもかなり力落ちがあるとはいえSamcroを相手にFortria Chase (G2)を圧勝している実績馬で、重馬場自体は得意な馬であったことを考えると、このNotebookに執拗に絡まれながらも後続を圧倒した走りは非常に印象的なものであった。対するNotebookは最下位で歩くように入線していることを考えると、このEnergumeneのパフォーマンスの素晴らしさがよくわかるだろう。

 

Punchestown (IRE) Yielding

〇 Novice Hurdle 1m7f190y (Replay)

4. Crowns Major J: Brian Hayes T: Emmet Mullins

PunchestownでNational Hunt Flatを勝利し一躍話題になったダイワメジャー産駒Crowns Majorが出走していたが、中段から進めるも伸びきれず4着に終わった。National Hunt Flatを勝利したのちは平地を使っていたようで、今年の10月にはCorkのMaiden Hurdleを快勝しているのだが、どうにも今回のレース運びを見ていると行きたがって走る仕草が目立っていた。とりあえず飛越の面ではHurdle2戦目の馬として及第点なのだが、負け方としては平地競争で実績を残してきた馬に典型的な負け方で、格下相手にはスピードで圧倒することが出来るのだが、このクラスに入るとこのペースでゆったりと走ることが出来ないと厳しそうだ。厩舎の傾向を考えると平地兼用でレースに出走する可能性はあるのだが、どちらかに目標を絞った方がいいような印象がある。

 

John Durkan Memorial Punchestown Chase (G1) 2m4f100y (Replay)

1. Allaho J: Mr Patrick Mullins T: Willie Mullins

Envoi Allenの始動戦ということで話題になっていたが、昨シーズンのRyanair Chase (G1)を快勝したAllaho、AintreeのMarsh Chase (G1)でイギリス調教馬を一蹴したFakir D'Oudaries、9歳の古豪Kemboyといった実績馬が集まっていた。さらにEMS Copiers Novice Handicap Chase (Grade A)をトップハンデで圧勝したAsterion Forlongeに加え、目下絶好調のBryony Frostを鞍上に迎えたRacing Post Novice Chase (G1)の勝ち馬Franco De Port、G1では幾度となく入着を繰り返しているMelon、更には今年のGrand National (G3)の勝ち馬Minella Timesと、実績馬からどちらかというと少々変わったメンバーまで、非常に多彩な出走馬を集めるレースとなった。

レースは早々にAllahoが引っ張る展開。好位からMelon、Fakir D'Oudaries、Envoi Allen。Allahoは順調に引っ張るも、残り4障害辺りから好位にいたAsterion Forlongeが接近しプレッシャーを掛ける。しかし残り3障害でAsterion Forlongeは落馬。そのままAllahoが先頭に残ると、追いかけてきたJanidil、Melonを凌いで勝利した。Fakir D'Oudariesが4着。Envoi Allenは好位から脱落し6着まで。

AllahoはHurdle時代は24fでのちにCheltenham Gold Cup (G1)を勝利するMinella Indoと鎬を削っていた馬で、Novice ChaseでもRSA Chase (G1)でそのMinella Indoと死闘を繰り広げているところをChampに間を割られたりと、どちらかというともともと24fのイメージが強い馬である。しかし昨シーズンは20fに距離を短縮してから結果を残しており、特に印象的であったのがハイペースで引っ張って後続を圧倒したRyanair Chase (G1)であった。その後はそのスピード能力を評価されたのか、Punchestownの16fのChampion Chase (G1)に向かい、さすがに16f路線のバケモノであるChacun Pour Soiには敵わなかったものの、そこから5馬身離れた2着に踏ん張っている。父No Risk At Allは近年ヨーロッパ障害競馬で流行の種牡馬だが、全体的に長い距離を耐えるというよりはスピードで圧倒するタイプが多く、このAllahoも例外ではない。従って、走行距離としては20fではあるものの、どちらかというと16fに性質が近いレースとなった。

Allahoは上述の通り20fをスピードで圧倒するタイプの馬で、今回もそのようなレースを作り出すことに成功した。最後はさすがにかなり苦しくなっているのだが、それでも踏ん張る辺りはさすがの能力といったところだろう。特筆すべきは残り3障害で落馬したAsterion Forlongeで、遡ればHurdleでは2020年の16fのChanelle Pharma Novice Hurdle (G1)を圧勝した実績もある。Chaseではどうにも飛越が安定せず結果を残すまで時間がかかったのだが、それでもこの馬にとってはやや馬場が良すぎる感がある条件で、残り4障害地点からAllahoを煽る勢いで上がってきたパフォーマンスは記憶すべきだろう。Cheltenhamでは右に斜飛して後続に散々迷惑を掛けたり、Chaseでは人気を背負って散々落馬したりと色々とやらかしている馬で、今回も大いにやらかしてくれたのだが、そのうち再度の大仕事をやってのける可能性のある馬である。

やや驚きのレースを見せたのがJanidilで、昨シーズンはやや空き巣感のあるFairyhouseのGold Cup Novice Chase (G1)を勝っているのだが、その後のRyanair Novice Chase (G1)ではEnergumeneから16馬身離れた2着に終わっている。とはいえこのレースでAllahoをここまで追い詰めた走りは評価されるべきであり、内容的に後方から進めた利はありそうだが、実績以上に気をつけなければならないだろう。Melonは昨シーズンはSavills Chase (G1)の3着が最高で、その後はスランプ気味だったのだが、今回は休養がうまくいったようだ。本質的に24fは長すぎるようで、さすがに16fに対応するだけのスピードは残っていな現状、このくらいの距離がいいのだろう。Hurdle時代は素質を高く評価された馬だが、ここまで現役でDown RoyalのWKD Hurdle (G2)くらいしかタイトルのない3勝、G1勝ちはなしとなかなか恵まれていない。なんとかそのうちいいことがあって欲しい。

Clonmel Oil Chase (G2)を圧勝したFakir D'Oudariesはやや根負けして4着まで。この馬も16fに対応できるだけのスピードを持った馬だが、どうにもアイルランドの一線級を相手にすると厳しいというのが現状のようで、今回もそのようなレースであった。前走のような格下相手には圧勝出来るのだが、やはりここに入ると一枚格下という印象は拭えない。期待されたEnvoi Allenは最後脱落しての6着。昨シーズンのMarsh Novices' Chase (G1)でまさかの落馬に終わると、続くChampion Novice Chase (G1)も途中棄権と、馬の状態が心配されていた。今シーズンんは初戦となったDown RoyalのJoin Racing TV Chase (G2)を圧勝してのここであり、馬の状態には問題はなさそうなのだが、ここまでほぼ余裕残しの緩いレースばかりを圧勝してきた馬だけに、ここまでの消耗戦になった際に対応できなかったということが考えられるだろう。ここからもう一段階ステップアップして欲しいところだが、このタイプのレースになった際の対応力には課題が残る結果となってしまった。Franco De Port、Kemboyはいずれも見せ場なし。Kemboyはやはり24f仕様の馬で、今回はAllahoのペースについていけていない感もあった。Minella Timesはさっぱりレースに参加できず、残り3障害で落馬に終わった。とりあえず大きな怪我はなかったようだが、ここに出走してきた意義には疑問が残る。

 

その他

Snow Leopardess records fairytale Becher victory (At The Races)

Becher Chaseを勝ったSnow Leopardessに関する記事。

Kool Kompany relocates to Clongiffen Stud for the 2022 season (Racing Post)

Jeremyの産駒で、現在スペインで繋養されている種牡馬Kool Kompanyがアイルランドに移動するようだ。Danehill - Danhill Dancerの直系であるJeremyはOur Conor、Appriciate It、Black Tears、Belfast Banterといった多数の優秀な障害馬を送り出しているが、残念ながら11歳で早逝しており、Kool Kompanyにはその後継種牡馬として期待がかかる。