にげうまメモ

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21/12/14 第2回(2000)中山グランドジャンプ 海外からの参戦馬

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*第2回(2000)中山グランドジャンプ (Result)

〇 優勝馬:ゴーカイ (JPN) (Pedigree)

騎手:横山義行 調教師:郷原洋行

 

〇 2着 Boca Boca / ボカボカ (IRE) (Pegidree) (France Galop) (Hippoweb)

騎手:Theirry Doumen 調教師:François Doumen

フランスのFrançois Doumen調教師はCheltenham Gold Cup (G1)、King George VI Chase (G1)、Grand Steeplechase de Paris (G1)、Prix La Haye Jousselin (G1)等を制した1990年台のフランスの英雄、The Fellowを管理した人。The FellowはAQPS(Autre Que Pur-Sang)の代表的な名馬として広く知られており、フランスで殿堂入りしている伝説的な名馬です。François Doumen調教師は中山グランドジャンプ参戦当時もFirst Gold(2000 Prix La Haye Jousselin (G1)、2000 King George VI Chase (G1)、2003 Punchestown Gold Cup (G1)勝ち馬)、Baracouda(2000-2004 Long Walk Hurdle (G1)勝ち馬)など有力馬を多数抱えており、さらに香港でも勝利を挙げているように海外志向が強かったことが伺えます。2001年のジャパンカップダート (G1)にもKing of Taraで参戦しました(16着)。Theirry Doumen騎手はFrançois Doumen調教師の息子。来日時は重賞勝ち鞍はなかったBoca Bocaですが、日本遠征の直後にイタリアに遠征、イタリアMilano競馬場で行われるGrande Steeple Chase Di Milano (G1)*1参考映像 2017)を勝利しました。Boca BocaはPetitionの系統に連なる種牡馬Mandalusの代表産駒で、Mandalusの活躍した産駒としては他には2007年のCheltenham競馬場でServo Computer Services Trophy (G3)を制したSir Rembrandtが挙げられます。Racing PostによるとMandalusにはTullebard BeetmanというPoint to Point及びNational Hunt Flatで2戦して未勝利に終わった後継種牡馬がいるようで、2頭の産駒は存在するようですが、上記の血統データベースにも登録されておらず、詳細は不明です。Petitionの系統は2010年台に入ってもポーランドWielka Partynickaを勝利したMorfina及びIsuzu(いずれも父Rhodesian Winner)、イギリスFairlawne Handicap Chase (G3)を勝利したDouble Ross(父Double Eclipse)を輩出していますが、世界的にもはや衰退の一途にあるようです。

 

〇 3着 The Outback Way / ジアウトバックウェイ (IRE) (Pedigree) (Racing Post)

騎手:Norman Williamson 調教師:Venetia Williams

管理するVenetia WilliamsはイギリスWest Midlandsに位置するHerefordshireに拠点を置く女性調教師で、2009年には単勝100倍のMon Momeで英Grand National (G3)を勝利しました。The Outback Wayは1999年にMurphy's Gold Cup Chase Showcase Handicap (G3)を10st0lbの軽ハンデで勝利して一躍重賞勝ち馬の仲間入りを果たすと、2000年には英国16ハロンChaseの最高峰であるQueen Mother Champion Chase (G1)にてEdredon Bleuから8馬身差の4着に入り、そこから参戦してきました。その後はイタリアにも遠征し、2000年の秋にはイタリアMerano競馬場で行われるイタリアSteeplechaseの最高峰であるGran Premio Merano (G1)にてBoca Bocaと再戦していたりします(The Outback Way 3着、Boca Boca 5着)。その後、2001年にAintree競馬場のNational Courseを使用するJohn Hughes Trophy Chase(現在のTopham Chase)の事故で亡くなるまで、主に16~20ハロンChase重賞の常連として活躍しました。父KambaldaはOwen Tudorを経るHyperionの直系で、1993年のKing George VI Chase (G1)の勝ち馬Barton Bank、1994年のGrand National (G3)の勝ち馬Miinnehomaといった活躍馬を輩出した種牡馬ですが、このOwen Tudorの系統自体、2021年時点では既にすっかり下火のようで、2010年以降の障害競馬における重賞勝ち馬は2011年のイタリアEzio Vanoni (G2)の勝ち馬Wertrackが挙げられる程度です。

 

〇 5着 Maybe Rough / メイビーラフ (NZ) (Pedigree) (Loveracing.nz)

騎手:Brett Scott 調教師:John Wheeler

主にオーストラリア障害で活躍した馬で、2010年に廃止されたMoonee Valley競馬場のA.V. Hiskens Steeplechase(参考 2007)やMcDonald Steeplechase勝利の実績がありました。Australian Hurdlesでも3着に入るなどHurdle競走でも実績を残していたようにスピード能力も高く、近年では不良馬場での開催が多くなっている豪州障害競馬ですが、この馬自身は良馬場への適性もあったようです。鞍上のBrett Scott騎手はその後派手な風車鞭とカラジとのコンビで有名になる人。現在は調教師に転身しており、障害競馬でも一定の成功を収めています。John Wheelerはその後中山グランドジャンプSt Stevenを送り込んでくる調教師。Maybe Roughの父RoughcastはStar Kingdom - Noholmeの直系で、1990年台にオセアニアで計11のG1競走を制し、1991年及び1994年のジャパンカップ (G1)に参戦したRough Habitの父として有名ですね。Star Kingdomの系統は過去オセアニアで大成功を収めたそうですが、近年はめっきり影響力を失っており、2010年以降の主要障害競馬勝ち馬としては2010年のニュージーランドManawatu Steeplechaseの勝ち馬Logan James(父Yachtie)、2010年のオーストラリアJJ Houlahan Hurdleの勝ち馬Titchが挙げられる程度です。

 

〇 6着 Sydney Opera / シドニーオペラ (USA) (France Galop)

騎手:Cyrille Gombeau 調教師:Jean-Paul Delaporte

フランスからの参戦馬。主にフランスのHaiesを走っており、Enghien-Soisy競馬場を主戦場としていたようです。重賞戦線では好走歴はありませんが、障害競走は現役生活を通じて通算30戦ほど走りました。中山グランドジャンプに向けて、2000年の3月にはこの馬にとって初挑戦となるSteeplechaseに挑んでから来日したという気合いの入りようです。鞍上のCyrille Gombeauは2007年にMid DancerでフランスSteeplechaseの最高峰Grand Steeplechase de Paris (G1)及びPrix La Haye Jousselin (G1)を勝利する人*2*3。Sydney Operaの父Risen StarSecretariatの産駒で、Risen Star自身はそれなりに後継種牡馬も輩出したようですが、そもそもアメリカ系統だけあってSecretariatのラインの近年の障害競馬における存在感は小さく、2010年以降の主要障害競馬勝ち馬としては2011年のチェコCena hejtmana Zlínského krajeの勝ち馬Godea、2010年のチェコVelká cena Netolicの勝ち馬Grilias(いずれも父Secret'n Classy)が目立つ程度です。

 

〇 9着 Ninepins / ナインピンズ (GB) (Pedigree) (equibase)

騎手:Archibald Kingsley Jr. 調教師:Jonathan E. Sheppard

もともとはアイルランドの障害馬で、アイルランド時代はHurdleを主戦場としていたようです。アイルランドではHurdleで4勝に加え、Bisquit Cognac Handicap Hurdle (Listed)にて3着が目立つ実績ですが、1992年からアメリカに移籍すると、その年のGrand National Steeplechaseを勝利。その後も長く活躍を続け、1999年のBreeders' Cup Grand National Hurdle Stakes (G1)、Colonial Cup Hurdle Stakes (G1)と、アメリカHurdle路線の主要競走を連勝してここに挑んできました。14歳と日本では考えられないくらいの高齢での参戦でしたが、アメリカでの成績的にはキャリアハイの時期だったようです。その後もNew York Turf Writers Cup Steeplechase Handicap (G1)(参考 2013)を勝つなど、2000年前後のアメリカ障害競馬を代表する馬と考えていいでしょう。調教師のJonathan Sheppardはアメリカ障害競馬リーディングトレーナーのタイトルを1973年から1990年の23年連続で獲得するなど圧倒的な実績を挙げ、アメリカ競馬では殿堂入りしている凄い人。2020年に残念ながら健康上の問題で調教師を引退しましたが、Saratoga競馬場において開催されていたNew York Turf Writers Cup (G1)と呼ばれていたアメリカ障害競馬の主要競走は、このJonathan Sheppardを讃え2021年からはJonathan Sheppard Hurdle Stakes (G1)と名前を変えることになりました。Ninepinsの父Niniskiは障害競馬ではお馴染みの偉大な種牡馬で、多数の後継種牡馬を残して系統を発展させていますが、この系統からは近年の障害競馬でも2021年のChampion Hurdle (G1)等を勝利したアイルランドの名牝Honeysuckle(父Sulamani)、2012年から2014年に掛けてLong Walk Hurdle (G1)を3連覇したReve De Sivola(父Assessor)、2007年のAustrian Derbyの勝ち馬で2012年にはGran Corsa Siepi Di Merano (G1)を勝利したProud Boris、2019年のGran Corsa Siepi Di Milano (G1)等を制しイタリアSiepiにおいて地元調教馬として気を吐いているLive Your Life(父Turati)等の活躍馬を輩出し、その子孫は障害競馬において大きな存在感を放っています。

 

〇 10着 Hill Society / ヒスソサエティー (IRE) (Pedigree) (Racing Post)

騎手:Paul Carberry 調教師:Noel Meade

Chaseにて重賞4勝の実績を引っ提げて来日したアイルランド調教馬。Hurdleでは1997年のChampion Hurdle (G1)にて5着の実績もあり*4、Chase転向後はBallybrit Novice Chase (G3)及びIrish Field Novice Chase (G3)と連勝、さらにArkle Challenge Trophy (G1)*5でもChampleveの2着に入り、Novice卒業後も1999年のB.M.W. Chase (G1)でCelibate相手に僅差の4着に入るなど、G1路線でも比較的上位のレースを続けていたようです。ただし1999-2000シーズンはHilly Way Chase (G3)勝ちのみで、それ以外は全体的に案外な結果に終わっており、中山遠征後はあまりぱっとしない成績に終わったことを考えると、もしかすると中山遠征の時点でやや競走馬としてのピークは過ぎていたのかもしれません。Noel Meade調教師はイギリス・アイルランド障害競馬ではお馴染みの調教師で、アイルランドのチャンピオントレーナーに7回輝いている人。鞍上Paul Carberryは2016年に引退するまでにG1を39勝しているアイルランドの名手。Hill Societyの父Law SocietyはAllagedの産駒で、2008年のHatton's Grace Hurdle (G1)でBrave Incaを下したCatch MeがLaw Societyの代表的な産駒でしょうか。また、Law Societyの産駒としては、Anzilleroが2016年のJNwine.com Champion Chase (G1)等を制したValseur Lidoを輩出しています。Hoist The Flag - Allagedのラインはヨーロッパ障害競馬ではお馴染みの系統で、Imperial CommanderやTidal Bay、Flemenstar等を輩出したFlemensfirth、Death DutyやThe Storyteller、Shan Blue等を輩出したShantou、QuestarabadやAnaking、Whisper等を輩出したAstarabadといった近年の障害競馬において大成功した種牡馬が名を連ねています。

 

〇 落馬 Celibate / セリベイト (IRE) (Pedigree) (Racing Post)

騎手:Carl Llewellyn 調教師:Charlie Mann

イギリス調教馬で、1999年のB.M.W. Chase (G1)の勝ち馬。ほかにも1999年のGame Spirit Chase (G2)等を勝利した実績があり、イギリス・アイルランドからの参戦馬としては(少なくとも直前のQueen Mother Champion Chase (G1)を含むCheltenham Festivalの成績を踏まえると)The Outback Wayに続き、Hill Societyと並ぶ程度の格の持ち主です。中山遠征後は2001年のDesert Orchid Chase (G2)勝利を含めてコンスタントに重賞クラスへの出走を続けていましたが、それまで3マイル超のChase競争への出走歴がなかったにも関わらずいきなり2002年のGrand National (G3)に参戦し*6、6着に踏ん張りました。調教師のCharlie Mannは1995年のVelká pardubickáにてIt's A Snipに騎乗し勝利を挙げた人*7。Carl Llewellyn騎手は1992年(Party Politics)及び1998年(Earth Summit)に2度の英Grand National (G3)を制した名手ですが、調教師としてはDempseyのCelebration Chase (G1)勝ちがあるのみで、現在ではイギリスの有力な調教師であるNigel Twiston-Daviesと共に働いているそうです。Celibateは父Shy Groomの産駒としては障害競走において最も成功を収めた産駒。Shy GroomはBlushing Groomの産駒ですが、このBlushing Groomの系統は近年の障害競馬でも成功を収めた種牡馬は数多く輩出しており、2010年台前半にかけてイギリス・アイルランドHurdleで活躍したSolwhit(父Solon)、2010年のGrand Steeplechase De Paris (G1)の勝ち馬Banksstair(父Le Balafre)、2021年のVelká pardubickáの勝ち馬Talent(父Egarton)、2018年当時はイギリス16ハロンHurdleで無敵を誇ったBuveur D'Air(父Crillon)等、その影響力は無視できないものがあります。2003年の中山グランドジャンプにも参戦したTiger GroomもまたBlushing Groom - Araziのラインの出身で、種牡馬としては2012年のPrix Ferdinand Dufaure (G1)の勝ち馬Teejay Flyingを輩出しています。