にげうまメモ

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22/01/30 Weekly National Hunt / Jump racing

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*週刊障害競馬回顧 2022/01/24-2022/01/30

1/27(木)

Gowran Park (IRE) Soft (Yielding in places)

John Mulhern Galmoy Hurdle (G2) 3m100y (Replay)

1. Royal Kahala J: Kevin Sexton T: Peter Fahey

人気を背負ったKlassical Dreamが引っ張るも、残り2障害辺りから後続が殺到。ここから抜けてきたRoyal KahalaがHome by the Leeを抑えて勝利した。Klassical Dreamは4着に終わった。

Klassical Dreamは半ば玉砕的な逃げでG1を連勝してきた馬なのだが、今回はおそらくStayers' Hurdle (G1)への前哨戦ということもあってかなり大事に乗っている。おそらく内容的にはあくまで一叩きといったところであまり勝負気配もなく、この馬本来の戦法とは異なり無理をさせないものであった。Royal KahalaはAdvent Surety Irish EBF Mares Hurdle (G3)から連勝としたが、どちらかというとKlassical Dreamを除けばさほど強力なメンバーもおらず、牡馬相手の重賞勝ちというよりは調子の良い馬が来たという印象である。Home By The LeeはここまでHurdleでは未勝利勝ちのみ、ChaseではNovice時代にG3勝ちもあるのだが、さほどメンバーが揃っていたわけでもないといったところで、前走もDarver Starから20馬身離れた2着に終わっている。どうにもJoseph O'Brien厩舎というのはレースの選択がよくわからないのだが、いちおう内容的にはHurdleの方が良いのだろう。Novice Hurdle時代には重賞勝ちのあるAshdale Bobは久々の好走で、今シーズンはChaseに転向するもさっぱり良いところがない辺り、おそらくHurdleの方がよいのだろう。昨シーズンのNovice Hurdleで活躍したGentlemansgameはシーズン初戦のPertemps Network Handicap Hurdleに続きさっぱりなレース内容。Commander of Fleetも道中からレースについていけず大敗に終わった。

 

Goffs Thyestes Handicap Chase (Grade A) 3m1f (Replay)

1. Longhouse Poet J: Darragh O'Keeffe T: Martin Brassil

Eklat De Rire、Foxy Jacksなどが引っ張るも、第11障害から連覇を目指したCoko Beachが先頭に。しかし最終コーナー辺りから後続が殺到すると、ここから抜けてきたLonghouse PoetがFranco De Portを抑えて勝利した。

Longhouse PoetはNovice時代はBeginners Chaseを勝利したの身であったが、HurdleではLastest Exhibitionに対して僅差の3着もある実力馬である。前走のTim Duggan Memorial (Grade B)ではいいところなく大敗していたようだが、今期2戦目で進境を見せた。レース運びを見るとやや行きたがって走るようなところもあるようで操縦が難しそうな印象もあるのだが、ようやく素質馬がChaseで実力を示すことができるようになったということで期待したい。Racing Post Novice Chase (G1)の勝ち馬Franco De Portは初のハンデ戦であったが久しぶりの好走。おそらくG1クラスではスピード能力的に足りないようで、これからはこのようなハンデ戦が主戦場となるだろう。11st3lbの斤量を背負っての2着は立派である。Mister Fogpatches、Diol Kerといった軽量馬が上位を占めた。昨年の勝ち馬Coko Beachも元気に頑張ったのだが、やはりレース内容的にはHeavy専門といったところで、最後は息切れして6着に終わった。

 

1/29(土)

Cheltenham (UK) Good

JCB Triumph Trial Juvenile Hurdle (G2) 2m179y (Replay)

1. Pied Piper J: Davy Russell T: Gordon Elliott

Bouletteが引っ張る展開も後続は密集して進行。そこから抜けてきたPied Piperが手ごたえよく後続を引き離すと、2着のMoka De Vassyに9馬身差をつけて快勝した。

Pied PiperはこれでHurdleは2戦2勝とした。PunchestownでHeavyのMaidenを僅差で勝ってきたばかりの馬だが、ここでは大きくパフォーマンスを上げてくる走りであった。どうにも平地競争でのキャリアが長く、平地では2勝を挙げた程度なのだが、ここでは一枚上のパフォーマンスを見せる走りであった。KemptonのClass2を圧勝してきたIceoもいたのだが、こちらはどうにも全体的にリズムが悪く4着まで。2着のMoka De Vassyは未勝利馬だが、3着のForever WilliamはCoral Finale Juvenile Hurdle (G1)の3着馬であることを考えると、極端にメンバーが手薄なところを勝ち切ったというわけでもなさそうだ。母父にTiznowを持つBouletteはこの中では比較的経験豊富な馬だが、どうにも馬が自由に走りすぎるきらいがあり、早々に馬群に飲み込まれると抵抗できず大敗に終わった。

 

Paddy Power Chase (G3) 2m4f127y (Replay)

1. Torn And Frayed J: Sam Twiston-Davies T: Nigel Twiston-Davies

例によってCoole Codyが引っ張るも早々に後退。内をすくって抜けてきたTorn And FrayedがGalahad Questに6馬身差をつけて勝利した。

Torn And FrayedはNovice馬で、Chaseではこれが初勝利とした。ここまでさほど大きなレースで実績のある馬ではないのだが、どうやら良馬場でのスピード能力という面では高いものを持っているようで、調子自体もよかったのだろう。前走はHeavyの馬場に泣かされて途中棄権に終わっていたようだが、ここではいきなり経験馬相手に結果を残した。Galahad Questはこの路線の常連のメンバーで、Cheltenham競馬場の20f Handicap Chaseは実にこれがシーズン3戦目となる。人気のCoole Codyは11st12lbのトップハンデにも関わらず人気を集めていたようだが、どうにも行きっぷりが悪く、早々に捕まるとそこからは持ち前の粘り腰を見せることが出来ず、前とは大きく離れた7着に終わった。

 

Cotswold Chase (G2) 3m1f56y (Replay)

1. Chantry House J: Nico de Boinville T: Nicky Henderson

Santiniが引っ張る展開も、好位で進めたAye Rightが途中から前に出てくる。しかし最終障害からこれに接近したChantry HouseがAye Rightを競り落とすと、再度追いかけてきたSantiniを抑えて勝利した。

Chantry Houseは昨シーズンのMarsh Novices' Chase (G1)の勝ち馬で、今シーズンはイギリス勢の中心格として期待されていたのだが、King George VI Chase (G1)では早々に脱落して途中棄権に終わっていた。とりあえず巻き返しの一戦となるここでは格好はつけたのだが、どうにも飛越にミスも多く道中の行きっぷりも悪く、Cheltenham Gold Cup (G1)に向けてどうこうという水準にない格下のメンバーを相手にこの辛勝では少々不安材料の方が多いレースとなってしまった。レース直後に騎手が下馬する場面もあり、かなり馬に疲労も溜まっていたようだ。Polly Gundry厩舎への転厩2戦目となるSantiniは得意のコースで見せ場を作った。2020年のCheltenham Gold Cup (G1)の2着馬だが、既に昨シーズンの段階でG1クラスの力量にないことははっきりしており、今回もあくまで自分のペースで走ることができた結果だろう。Aye Rightは近走調子のいい馬として積極的な競馬で見せ場を作ったが、さすがにこのメンバーに入ると力量的には格下のようで、最後は息切れして3着に終わった。Simply The Bettsは飛越が終始いまいちで勝負に加われず。いくら良馬場とはいえ、重賞クラスの力量になく勝負気配もなかったKauto Rikoが勝ち馬から約10馬身離れた4着にいるようではレースレベルが思いやられる。

 

Cleeve Hurdle (G2) 2m7f213y (Replay)

1. Paisley Park J: Aidan Coleman T: Miss Emma Lavelle

Lisnagar Oscarが積極的に引っ張る展開も、好位からMcfabulous、Champが接近。そのままChampが抜け出しを図るも、後方からじわじわと進出してきたPaisley Parkが先頭争いに参加すると、Champとの叩き合いを制して勝利した。

Paisley Parkは2020年のLong Walk Hurdle (G1)以来の勝利とした。スタートの段階でどうにも発馬を拒否するような仕草を見せていたり、勝負所で早々に手ごたえが悪くなるなど、いい加減年齢相応のズブさを見せているのだが、それでもやはりロングスパートの持続性能という意味では驚異的なものを持っているのだろう。おそらく道中オーバーペース気味の追走を強いられると苦しくなるようなところもあり、ロングスパートをかける上でCheltenhamの下り坂が必要な感もあるのだが、それでもCheltenhamの独特のコース形態におけるこの馬の破壊力というのは未だに侮れないものがあるようだ。ただしStayers' Hurdle (G1)に向けては、Klassical DreamやFlooring Porterといった暴走タイプの逃げ馬がいること、さらに発馬拒否のような仕草を見せていたことが懸念材料となるだろう。人気を背負ったChampは案外な負け方だが、そもそもこの馬は道中の加速性能に優れたタイプで、その加速性能により他馬と差をつけることができるAscotと、下り坂を利用して加速を掛けるCheltenhamではかなりレース運びを変えなければいけなかったようだ。最後まで加速をかけたPaisley Parkと異なり、この馬は道中スムーズに加速するも最後は息切れしており、Stayers' Hurdle (G1)ではおそらくレース運びを変えなければいけないだろう。

 

Ballymore Novices' Hurdle (G2) 2m4f56y (Replay)

1. North Lodge J: Adrian Heskin T: Alan King

早々に人気のHillcrestがHarper's Brookの煽りを食らって落馬するアクシデント。A Different Kind、Balco Coastal、North Lodgeの叩き合いは内から外へと寄って行ったNorth LodgeがBalco Coastalを抑えて勝利した。西日の影響で最後の直線走路の障害が全てオミットされており、ほぼ平地の脚比べのようなレースになっている。North LodgeはAintreeのClass3から連勝としたが、外側へと膨れていったことでBalco Coastalが大きく不利を受けており、とりあえず着順は変わらなかったのだがあまり信用できる勝利ではないだろう。Class4から連勝してきたBalco Coastalが2着で、再度この2頭の因縁の対決は見てみたいところである。人気のHillcrestはもったいない落馬で、全体的にいまいちなレースとなってしまった。

 

Doncaster (UK) Good

Lightning Novices' Chase (G2) 2m78y (Replay)

1. Third Time Lucki J: Harry Skelton T: Dan Skelton

For Pleasureが元気に逃げるも最終障害で落馬。これにスムーズに接近していたThird Time Luckiがそのままほぼ追うことなく快勝した。Third Time LuckiはこれでChaseは3勝目とした。Henry VIII Novices' Chase (G1)ではEdwardstoneの3着に敗れていたが、ここでは巻き返しの勝利とした。3頭立てとメンバー的にはやや寂しかったのだが、ハイペースで引っ張るFor Pleasureの逃げを難なく追走していたのはさすがの能力であり、ひとまずArkleに向けてはイギリス勢の中では中心的な存在になるだろう。For Pleasureは例によって元気に引っ張るも、最終障害では踏み切り位置が遠すぎたことによる落馬。Do Your JobもイギリスNovice Chaseの重賞戦線であれば上位の活躍をしてきた馬で、この馬を圧倒するだけの走りをしていたことを考えれば、Chaseでの初勝利まで時間がかかった馬ではあるが、評判以上の走りを期待してもいいかもしれない。

 

Yorkshire Rose Mares' Hurdle (G2) 2m128y (Replay)

1. Miss Heritage J: Sean Quinlan T: Mrs Lucy Wadham

連覇を狙ったMirandaが最終コーナーから先頭に行くも、これを持ったままで追いかけたMiss Heritageが15馬身差の快勝。Miss Heritageは重賞は初勝利とした。今シーズンは5月のImperial Cup (G3)で2着があるのだが、基本的にClass2~Listedを走ってきた馬といったところで、ややここでは想定以上の走りを見せることとなった。前走はややスタートでもたついたMirandaは今回はまともに走ったのだが、勝ち馬とはやや力量差を感じさせる2着。アイルランドからの転厩2戦目となるWestern Victoryは収穫のある3着で、アイルランドでは牝馬限定のListed勝ちもある馬だけに、本来の能力を発揮すれば牝馬限定重賞であれば勝負になっていいだろう。

 

River Don Novices' Hurdle (G2) 3m84y (Replay)

1. Mahler Mission J: James Bowen T: John McConnell

人気のMy Bobby Dazzlerが逃げるも、最終コーナーから先頭に立ったMahler MissionがThe Real Whackerとの叩き合いを制して勝利した。このレースは過去の勝ち馬を振り返ると、どちらかというとG1クラスでどうこうというよりは24fのハンデ戦で活躍するタイプを多く輩出しており、今回もそのようなレースとなった。Mahler MissionはこれでMaidenから2連勝とした。どうにも瞬間的な加速力に優れるというよりは苦しくなってからのしぶとさに強みがあるようなタイプで、最後まで一頭フォームが崩れることなく走ることが出来たことが印象的であった。同じMahlerの産駒のThe Real Whackerが2着で、こちらはCarlisleの25fのMaidenを勝ってきた馬なのだが、どうにも苦しくなってから左右にフラフラと走っているところがあった。力量的に上位2頭はあまり差がないような感があり、あくまでレース運びと現時点での完成度で勝ち馬に分があったというところだろう。

 

Fairyhouse (IRE) Good to Yielding (Yielding in places)

Solerina Mares Novice Hurdle (G3) 2m2f110y (Replay)

1. Allegorie De Vassy J: Sean O'Keeffe T: Willie Mullins

元気一杯Brandy Loveが逃げるも元気一杯左へと斜飛。好位で真面目に走っていたAllegorie De Vassyが左へと膨れていったBrandy Loveを抑えて勝利した。Allegorie De VassyはこれでHurdleは2勝目とした。Fairyhouseの同条件の牝馬限定戦でいい勝ち方を見せており、同厩舎のBrandy Loveと比べるとかなりお行儀の良さが目立った。Naasの未勝利戦を圧勝したBrandy Loveはさすがにこの飛越ではどうしようもないといったところで、2着まで残ったことを褒めるべきだろう。左回りに戻ってどこまで走れるか楽しみにしたいところである。

 

1/30(日)

Naas (IRE) Good to Yielding (Yielding in places)

Naas Racecourse Business Club Novice Chase (G3) 3m170y (Replay)

1. Stattler J: Paul Townend T: Willie Mullins

好位から進めたStattlerがFarouk D'Aleneとの叩き合いを制して勝利した。StattlerはこれでChaseは2戦2勝とした。HurdleではIrish Mirror Novice Hurdle (G1)の3着などがある実力馬で、ひとまずChaseではHurdle時代の実績から期待される成績を残している。どうにも飛越でミスも多く未完成な部分がかなりあるようで、ひとまず今後の成長に期待したい。Faugheen Novice Chase (G1)の2着馬Farouk D'Aleneは惜しい2着で、この馬もかなり飛越にミスがあったのだが、とりあえずは前評判通りの走りを見せた。Limerickの上記G1はどうにもメンバー的に微妙な印象もあるのだが、現時点で上位の2頭にあまり力量差はないだろう。Vanillierも好位から進めるも、最後は脱落して3着。CheltenhamのG1勝ちはかなり鮮やかなレースを見せたのだが、それ以降のレース振りはどうにも微妙で、かなりレース条件のストライクゾーンは狭いタイプかもしれない。

 

Limestone Lad Hurdle (G3) 1m7f156y (Replay)

1. Darasso J: Mark Walsh T: Joseph O'Brien

Felix Desjyが元気一杯逃げるも残り2障害から後続が殺到。ここから伸びてきたDarassoがSaint Felicien以下を抑えて勝利した。Darassoは今シーズンはLismullen Hurdle (G2)に続き重賞は2勝目とした。基本的に16~20fのHurdleではG3~G2クラスの実力は有しているのだが、G1に入るとだいぶ足りないといった立ち位置で、ひとまずG3としてはそれなりにいつも通りのメンバー相手に常連としての力量を見せたといったところだろう。今シーズンはHurdleを中心に使っているが、昨年の夏にはChaseを使っていた経緯もあり、とりあえずレース選択には注意しておきたい。これがアイルランドHurdleは2戦目となるSaint Felicienが2着に入った。Whiskey Sourは内を立ち回って差を詰めるも、どうにも終始進路が空かないような場面が多く、Saint Felicienを捉えきれず3着に終わった。11st3lbと斤量的には恵まれていたが、どちらかというとレース展開の綾だろう。

 

その他

Turf-Times Freitag, 28. Januar 2022 (Turf-Times)

Turf-TimesのNewsletterから。どうやら今年のドイツ障害競馬として、昨年も開催されたBad HarzburgとHonzrathの開催に加えてQuakenbrückでSeejagdrennenが予定されているようだ。去年よりもレース数が増えていることは喜ばしいことだが、伝統的に障害競馬を開催してきたHamburgやMannheim競馬場で障害競走は予定されておらず、トータルのレース数としても非常に少ない状況は変わらないようで、以前にも短評として記載した通り依然としてドイツ障害競馬は厳しい状況が続いている。