にげうまメモ

障害競馬の個人用備忘録 ご意見等はtwitter(@_virgos2g)まで

22/02/20 Weekly National Hunt / Jump racing

f:id:virgos2g:20220217142651p:plain

*週刊障害競馬回顧 2022/02/14-2022/02/20

2/19(土)

Ascot (UK) Soft

Reynoldstown Novices' Chase (G2) 2m7f180y (Replay)

1. Does He Know J: David Bass T: Kim Bailey

途中から先頭に立ったDoes He Knowがそのまま後続を突き放すと、Doyen Breedに14馬身差をつけて勝利した。Does He KnowはこれでChaseは3勝目とした。前走のCheltenhamのクラス2ではThreeunderthrufiveの2着に敗れていたが、ここではきっちりと実力を見せたことになる。Hurdle時代はBallymore Novices' Hurdle (G2)勝ちもある実力馬だが、今回は戦術を変えて前に行くレースで結果を残した。Novice馬ながらClassic Chase (G3)で4着に頑張ったCorach Ramblerも出ていたが、こちらは第16障害で落馬に終わった。この馬はとりあえず次に期待しておきたい。

 

Ascot Chase (G1) 2m5f8y (Replay)


 1. Fakir D'Oudaries J: Mark Walsh T: Joseph O'Brien

この時期恒例の20fのG1競走。連覇を狙うDashel Dresherが出走していたが、アイルランドのFakir D'Oudariesが人気になっていた。レースはLostintranslationが積極的に前に出てくる展開だが、これを制してDashel Drasher、Two For Goldが引っ張る。残り4障害で大きなミスをしたDashel Drasherは後退し、代わってTwo For Goldが先頭に。しかしこれにじわじわと詰め寄ったFakir D'OudariesがTwo For Goldとの叩き合いを制して勝利した。3着にはFanion D'Estruvalが入った。

Fakir D'Oudariesは昨年のMarsh Chase (G1)に続き、G1はこれで通算3勝目とした。昨年のRyanair Chase (G1)ではAllahoから12馬身差の2着に終わっていたように、アイルランドのこの路線の超一線級と比べるとやや一枚格下といった立ち位置である。一方で、昨年のMarsh Chase (G1)でもイギリス勢を相手に11馬身差の快勝を見せていたように、基本的にイギリス勢に対しては格上といった立ち位置であった。今回はLingfieldのFleur De Lys Chase (C2)を制して好調のTwo For GoldがDavid Bass騎手の強気な立ち回りで最後までかなり抵抗していたのだが、それでもこれきっちりと抑えきるのだからやはり能力的には一枚上手であった。おそらく相手関係を考えるとCheltenhamのRyanair Chase (G1)でも好勝負は可能であることが想定されるが、やはりメンバー的なことを考えると昨年と同様にAintreeのMarsh Chase (G1)の方が勝機はあるだろう。

イギリス勢は比較的実績馬が揃っていたが、例によってアイルランド勢に対して分が悪いことを示す結果になった。好調のTwo For Goldが2着で、このような重馬場で強気に出ていくDavid Bass騎手の騎乗がハマった結果だろう。興味深いのがFanion D'Estruvalで、どうにも後方から進めて前になかなか肉薄できなかったのだが、最後はじわじわと差を詰めてTwo For Goldから1馬身離れた3着に入っている。この馬は距離を伸ばして期待したい。Silviniaco Conti Chase (G2)を勝ったMister Fisherは勝負に加われず、なんとか完走を果たすも前から70馬身離れた4着。G1クラスでは厳しいようだ。昨年の勝ち馬Dashel Drasherは順調に運ぶも、飛越のミスで後退するとそのまま抵抗できず途中棄権。Ascotは得意な馬だが、Wind Surgeryの経緯がある馬だけに、やや心配な負け方であった。Lostintranslation、Saint Calvados、Waiting Patientlyといった本来この路線で中心的な役割を果たすはずの実績馬もいたのだが、いずれも勝負に加われず途中棄権に終わった。特にLostintranslationはGrand Nationalにも登録があるのだが、Wind Surgeryを繰り返していた馬で、ここまでなにもできないとなると馬の状態が心配である。

 

Haydock (UK) Heavy

Rendlesham Hurdle (G2) 3m58y (Replay)

1. Wholestone J: Sam Twiston-Davies T: Nigel Twiston-Davies

Top Ville Ben、Molly Olly Wishesが並んで引っ張るも、最終コーナーの辺りからMolly Olly Wishesは脱落。内を立ち回って伸びてきたWholestoneがTop Ville Benを競り落とすと、そのまま13馬身差をつけて勝利した。

どうやら今週イギリスには"Storm Eunice"が襲来していたようで、各地で停電を始めとする深刻な被害をもらたしている*1。この日のHaydockも激しい降雨により、なんとか開催こそ可能ではあったものの非常に重い馬場となっていた。Wholestoneは11歳馬だが、2020年11月のHaydock開催での落馬で故障を発生して以来、これが実に455日ぶりのレースであった。遡ればRelkeel Hurdle (G2)を始めとする複数の重賞勝ちがある馬で、2018年のLiverpool Hurdle (G1)でも2着に頑張ったりと、24f HurdleのG1路線でも良績があった。さすがに一昨年の時点ではやや年齢的なものを感じさせる敗戦も多かったのだが、これだけの長期休養明けで、しかも飛越にもミスがあったにも関わらず結果を残すというのは大したものである。おそらくCheltenhamには行かないということで、Liverpool Hurdle (G1)が次の目標になるとのことで*2、年齢的に現役生活がどれだけ残されているかは不明だが頑張って欲しい。LingfiledのCazoo Hurdleを勝ってきたTop Ville Benが2着。おそらくGrand Nationalがこの馬の大目標のようで、現在出走順は46番目と現実的な位置につけている。さすがにHeavyな馬場で最後は脚が上がっているのだが、調子の良さという点では魅力的な一頭になりそうだ。

 

Grand National Trial Handicap Chase (G3) 3m4f97y (Replay)


1. The Galloping Bear J: Ben Jones T: Ben Clarke

"King of Haydock"との異名を持つBristol De Maiの参戦で話題になっていた。そのBristol De MaiとSam Brownの2頭が前に行く展開で、早々に手ごたえが悪くなったKalooki、Secret Reprieve、Mint Condition、Sidi Ismaelなどは脱落していくサバイバルレースが展開される。並んで走っていたSam Brownを競り落とし、徐々に後続を振り切りにかかるBristol De Maiだが、これについて行ったのがThe Galloping Bear。そのThe Galloping Bearは残り2障害で前に出ると、Bristol De Maiに7馬身差をつけて勝利した。Time To Get Upがほぼ歩くように入線し、出走馬11頭のうち完走を果たしたのは3頭となった。

The Galloping BearはLingfieldのSurrey National (C3)の勝ち馬で、重賞は初勝利となった。元々はPoint to Pointを走っていた馬で、昨年2月から"Under Rules"の競争に参戦しているが、どうやら当初はHunters' Chaseを使っていたようで、まさかこのような重賞クラスでどうこう、というのは嬉しい誤算だろう。AintreeのGrand Nationalには登録はないようで、おそらくIrish Grand Nationalに向かうことになるそうだ。Ben Clarke調教師は現在31歳の若い調教師で、昨年の9月に免許を所得し、元上司であったAnthony Honeyballの近くのDorsetに拠点を置き、15頭の馬を管理している*3。まだ駆け出しの小さな厩舎のようだが、ここから頑張って欲しいところである。

11歳のBristol De Maiは自身にとって最も得意とする条件で結果を残した。どうにも勝負所の障害でやや減速して飛越してしまい、そこから再加速が掛からなかったというのが敗戦の要因だが、それでも11st12lbを背負ってここまで抵抗するのだから大したものである。おそらく既にG1クラスでどうこうというスピードは残っていないものと思われるが、それでもこのパワーと持久力溢れる走りは強靭なステイヤーのそれであり、この馬の残された現役生活の走りを存分に楽しめることを期待したい。

昨年のMidlands Grand National (Listed)の勝ち馬Time To Get Upは頑張って前2頭について行くも、最後は脚が上がって3着。Chaseは6戦目とあまり経験の長くない馬だが、この消耗戦で走り切っただけ大したものである。昨年の勝ち馬Lord Du Mesnilは途中で飛越をミスし、そのまま後退して途中棄権。前走この条件で圧勝した13歳のBlaklionもいたのだが、今回はややペースが速すぎた感もある。昨年1月のWelsh Grand National (G3)の勝ち馬Secret Reprieveはさっぱりレースに参加できず。重馬場は得意とする馬だが、今回はさっぱりであった。Peter Marsh Chase (G2)で好走したSam Brownはこの不良馬場の超長距離戦は厳しかったようで、途中までは順調に進んでいたのだが、勝負所から息切れするとそのまま脱落し、残り4障害手前で途中棄権となった。

 

Albert Bartlett Prestige Novices' Hurdle (G2) 3m58y (Replay)

1. Hillcrest J: Richard Patrick T: Henry Daly

Green BookとHillcrestが引っ張るも、最終コーナーからGreen Bookは後退。そのままHillcrestがついてきたCrystal Gloryを突き放し、2着に8馬身差をつけて勝利した。HiicrestはこれでHurdleは4勝目、落馬に終わったBallymore Novices' Hurdle (G2)を除くとHurdleは無敗としている。今回は初の24f戦であったがいきなり結果を残した。不良馬場のHaydockということでやや特殊な条件だが、それでもCheltenhamのSoftの20f戦を始め、様々な条件下できっちりと結果を残していることはなかなかの魅力だろう。Crystal Gloryは初の重賞クラスへの挑戦であったが、頑張って勝ち馬に食らいついての2着。前走経験馬相手にHeroes Handicap Hurdle (G3)を勝ってきたGreen Bookは道中リズムよく運んでいたが、残り3障害辺りから脱落して大敗に終わった。

 

Wincanton (UK) Soft (Good to Soft in places)

Kingwell Hurdle (G2) 1m7f50y (Replay)

1. Goshen J: Jamie Moore T: Gary Moore

Wincanton競馬場は"Storm Eunice"の襲来で甚大な被害を受けていたようだが、スタッフの尽力によりなんとか開催を可能にすることに成功したそうだ*4。レースは人気のGoshenがAdagioとの叩き合いを制して勝利した。Goshenはこのレースは連覇、Contenders Hurdle (Listed)から連勝とした。今シーズンはハンデ戦を試したりと色々と試行錯誤しているようだが、おそらく16f程度の距離でこの馬にとって気分よく走らせることが重要のようで、持っている能力は素晴らしいのだが、どうにもストライクゾーンが極めて狭いという馬のようだ。とりあえず4頭立てで楽なレースであったことで結果を残したが、次にどこを使うかというのは難しい選択になりそうだ。Juvenile Hurdle路線で結果を残してきたAdagioは2着。次走以降楽しみにしたいとしたらこちらだろう。

 

Gowran Park (IRE) Heavy

Red Mills Trial Hurdle (G3) 2m (Replay)

1. Teahupoo J: Robbie Power T: Gordon Elliott

スタート直後から強引にFelix Desjyが前に行こうと試みるも、どうにも飛越が安定せず、Saldierなどが前々で運ぶも、残り3障害辺りから先頭に立ったTeahupooがそのままDarasso以下を突き放して勝利した。

Teahupooはこれで今シーズンは3連勝とした。Juvenile Hurdle路線ではG1クラスへの参戦はなく、Norman Colfer Winning Fair Juvenile Hurdle (G3)を勝ったのみだったのだが、今シーズンはそのJuvenile Hurdleで主役級の活躍を見せたQuilixiosを圧倒している。今回はLimestone Hurdle (G3)を勝ったDarasso以下を相手にしなかったということで、対Honeysuckle候補としてはアイルランド勢の中では筆頭格の一頭になりそうだ。DarassoはこのG3クラスでは力量上位の馬だが、今回はやや相手が悪かった。とりあえずこの路線の安定勢力として今後も期待できるだろう。昨シーズンのJuvenile Hurdle路線で活躍したQuilixiosはまたもやTeahupooに対する敗戦で、さすがにこの2頭の勝負付けは済んだと考えてよさそうだ。昨年の夏にGalway Hurdle (Grade A)を勝ったSaldierはまたもや低迷気味のレース結果で、なんとか復活してもらいたいところ。名前だけ見るとこのメンバーの中では明らかに異色な存在であったRoi Mageは特に何もせず5着。過去フランスSteeplechaseではG1クラスで上位争いをしていたほどの馬で、10歳となった現在でもフランスSteeplechaseの重賞クラスで戦えるだけの力を持っているのだが、今回がアイルランド移籍後の初出走、しかも明らかに距離も十分ではないHurdle競走ということで、おそらく全く勝負気配はなかったものと思われる。どうやらGrand Nationalにも登録があるようで、現在出走順76番目と絶望的な位置にいるのだが、ひとまずこの馬の動向には注意しておきたい。それにしても、仮にもフランスSteeplechaseのG1クラスで過去好勝負を演じ、現在でもフランスSteeplechaseの重賞クラスで通用する馬をレーティング上ではたったの140と評価する一方で、Tiger Rollのように明らかにChaseの重賞クラスでは勝負にならなくなった馬をレーティング161と評価するというのは、さすがに常識的に疑問を感じざるを得ない。中の人は元よりレーティングというものを信用していないのだが、ハンデキャッパーとかいう仕事はその存在意義と思考プロセスをいい加減考え直した方がいいのではないだろうか。

 

Red Mills Chase (G2) 2m4f (Replay)

1. Melon J: Paul Townend T: Willie Mullins

終始先頭を走ったMelonがそのまま勝利した。Melonは実にChaseはBeginners Chaseから2勝目だが、とはいえ長らくG1クラスでも好勝負を演じていた馬で、さすがにここでは格上であった。ここまでの実績が示す通り重馬場の方がいいタイプで、Champion Hurdle (G1)でも良績はあるものの、だいぶ年齢を重ねている分、現時点では距離的には20f以上の方がよさそうだ。まさかこの馬が10歳となるまでG1を勝てないとは思わなかったといったところ。この馬にとってどれだけチャンスが残されているかはわからないが、悲願のG1勝利に向けてなんとか頑張って欲しい。

 

その他

Randox Grand National: View a full list of the allotted weights (Racing TV)

2022年のGrand Nationalの斤量が発表された。Conflated及びGalvinがトップハンデの11st10lbとなっており、昨年の勝ち馬Minella Times、Grand National3勝目がかかるTiger Rollは11st4lbとなっている。現時点で斤量順の40番目は、Braesideの10st5lbとなっている。

Tiger Roll ruled out of the National over 'ridiculous rating and unfair weight' (Racing Post)

上記の決定を受け、Tiger RollはGrand Nationalの回避を発表した。おそらくCheltenhamのGlenfarclas Cross Countryがこの馬の引退レースとなる見込みのようだ。

Pateman holds out hope for 2023 Oakbank jumps racing return (Punters)

SA州の障害競走に関するSteven Patemanの見解。Steven Patemanはオーストラリア障害競馬における一流騎手であるのみならず、調教師としても成功しているオーストラリア競馬の第一人者であり、その障害競馬に関する深い洞察は一読の価値がある。Racing SA及びORCの決定はそのプロセスも含めてどうしようもないものであることはここまでの法的措置で明らかになっており、引き続きSA州の障害競馬の開催の有無に関する論争は続きそうだ。

Deset dostihových dnů a vyšší výhry, taková bude letošní sezona (Dostihovy Spolek)

近年COVID-19の影響で賞金額を減らしていたVelká pardubickáを始めとするPardubice競馬場の開催だが、今年は賞金額を増額し、COVID-19前の水準に戻ることが期待されそうだ。