にげうまメモ

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22/03/06 Weekly National Hunt / Jump racing

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*週刊障害競馬回顧 2022/02/28-2022/03/06

2/28(月)

Auteuil (FR) Collant (4.4)

Prix Robert De Vlermont-Tonnerre (G3)

Steeplechase Pour tous chevaux de 5 ans et au-dessus 4400m (Replay)

1. Happy Monarch J: Angelo Zuliani T: Francois Nicolle

この日から始まったフランスAuteuil開催。レースはCarriacouがゆったりと逃げるも、スタンド前から一気にStarlet Du Mesnilが進出。Gros Open DitchでStarlet Du Mesnilは大きなミスをしてHappy Monarchが先頭に代わるも、残り2障害辺りから再度Starlet Du Mesnilが前に出る。そのままStarlet Du Mesnilが逃げ込みを図るが、最後追いこんできたHappy Monarchがこれを捉えて勝利した。

Happy MonarchはGrand Prix De Pau (G3)から連勝とした。昨年までの段階ではListedクラスで勝ち鞍がある程度だったのだが、ここにきて力をつけてきたようだ。順調に使っていた利はありそうだが、とりあえず上り馬として注意しておきたい。昨年Prix Sytaj (G3)を圧勝した5歳牝馬Starlet Du Mesnilは経験馬相手に善戦しての2着。Gros Open Ditchの手前で馬が躊躇する仕草を見せていたのが気になるところ。やはり5歳馬のRosario Baronも勝ち馬とあまり差のない3着で、最後はやや進路が狭くなる場面があり、まともならもう少しやれただろう。Carriacouは最後伸びを欠いて7着。昨年のPrix Ferdinand Dufaure (G1)の勝ち馬Le Listracもいたのだが、こちらもその後はいまいちで、今回も特に見せ場なく6着に敗れた。

 

Mont-De-Marsan (FR) Bon (3.1)

Prix Soalracing - Prix Raymond De Bouglon

#2 TROPHEE NATIONAL DU CROSS HARAS DU LION Cross Country Pour tous chevaux de 6 ans et au-dessus 4650m (Replay)

1. Parc De Belleville J: Erwan Bureller T: Eric Lecoiffier

フランス国内Cross Country SeriesであるTrophée National du Crossの第2戦。Trophée National du Crossについては以下の記事を参考にされたい。

22/01/23 障害競馬入門⑫ - Trophée National du Cross - (にげうまメモ)

前半からDenalie BellevueとParc De Bellevilleが引っ張る展開も、途中からDenalie Bellevueの単騎逃げの格好に。しかし最終障害を越えて迫ったParc De Bellevilleがゴール直前でDenalie Bellevueを捉えて勝利した。Parc De BellevilleはCross Country自体は長い馬で、ここまでCraonの条件戦で勝利を挙げている。当時の馬場もBon Souple (3.3)と良馬場だっただけに、今回のような良馬場のスピード勝負には適性があるようだ。オーナー兼調教師のEric Lecoiffierにとっても嬉しい勝利になったのではないだろうか。積極策で運んだDenalie Bellevueも経験の長い馬で、Grand Cross de Pauではやや荷が重かったようだが、ここでは結果を残した。Pauのアングロアラブ限定Cross Countryを30馬身差で勝利してきたGareth De Larachiは出走したアングロアラブ中最先着を果たすも5着まで。このレース3連覇がかかったTequila Sunは序盤の障害で大きなミスをして落馬、残念ながら助からなかったそうだ。

 

3/5(土)

Kelso (UK) Soft (Heavy in places)

Premier Novices' Hurdle (G2) 2m2f25y (Replay)

1. Nells Son J: Sean O'Keeffe T: Nicky Richards

好位から進めた人気のRichmond Lakeが抜け出しを図るも最終障害で落馬。残ったNorth Lodgeをゴール直前でNells Sonが捉えて勝利した。複数の無敗馬が揃ったレースであったが、勝ったNells Sonは前走Supreme Trial Novices' Hurdle (G2)でJonbonの4着に敗れたNells Sonとなった。やや全体的にばたばたした展開で最後に間に合わせた感は強いのだが、距離が伸びてパフォーマンスを上げてくる可能性もある。前走のBallymore Novices' Hurdle (G2)を勝ったNorth Lodgeは最後捕まって2着。とはいえSupreme Trial Novices' Hurdle (G2)でJonbonの2着に敗れたRichmond Lakeといい勝負をしていた辺り、上位馬はこの路線のトップクラスというわけではなさそうで、どちらかというと異なる路線に移行したときにどのようなレースをするか楽しみにしたいといったところだろう。

 

〇 Premier Chase (Listed) 2m7f96y (Replay)

1. Nuts Well J: Brian Hughes T: Mrs Ann Hamilton

後方からじわじわと進出したNuts WellがHill Sixteenとの叩き合いを制して勝利した。Nuts Wellは2020年のOld Roan Chase (G2)の勝ち馬で、24f戦ではこれが初めての勝利となる。今年で11歳となった高齢馬だが、元々小規模な厩舎であるAnn Hamilton調教師にとっては大きな成功をもたらしている。昨年のBecher Chase (G3)でSnow Leopardessの2着に入ったHill Sixteenが2着に入った。Grand Nationalにも登録があるようだが、現時点で出走順は9st9lbの72番目と絶望的な位置につけている。Grand National (G3)の出走順38番目のDingo Dollarは途中から後退し離れた5着。昨年のScottish Grand National (G3)の2着馬で、もう少し馬場が良くなってから期待したいところだが、一度Wind Surgeryの既往があるところが気になる。やはりGrand National (G3)の出走圏内にいるWindsor Avenue、Itchy Feetは途中棄権に終わった。Windsor Avenueは良馬場の方が良いだろう。Itchy Feetはどうにも飛越にミスが多く、どうやらレース後の検査で軽傷が見つかったようだ*1

 

〇 Morebatttle Hurdle (C2) 2m51y (Replay)

9. Buveur D'Air J: Nico de Boinville T: Nicky Henderson

2017、2018とChampion Hurdle (G1)を連覇し、ここまでG1を8勝している歴史的な名馬Buveur D'Airの約1年ぶりの復帰戦であったが、好位から進めるも最後伸びを欠いて9着に敗れた。同馬は2019年のPunchestown Champion Hurdle (G1)以来勝ち星はなく、その後は故障もあったりとどうにも順調に使えておらず、今回は11歳という高齢に加えて長期の休み明け、苦手な不良馬場、11st12lbのトップハンデと不利な条件ばかりのレースであったが、それで途中までレースについて行ったことを褒めるべきだろう。幾ら何でも往年の能力を期待することは酷だと思われるが、これだけの名馬がターフで走る姿を再び見ることが出来たことを素直に喜びたいレースである。

 

Newbury (UK) Soft (Good to Soft in places)

Greatwood Gold Cup Handicap Chase (G3) 2m3f187y (Replay)

1. Paint The Dream J: Connor Brace T: Fergal O'Brien

途中から先頭を進んだPaint The Dreamがそのまま後続に15馬身差をつけて快勝した。Paint The Dreamは目立った実績としては昨年2月のScilly Isles Novices' Chase (G1)にてSporting Johnの3着がある程度で、重賞は初勝利となる。どちらかというとC2でトップハンデに近い斤量を背負う程度のレーティングを持った馬なのだが、今回はこれまでのいまいちなレースとは打って変わっての快勝を見せた。昨年のPendil Novices' Chase (G2)の勝ち馬Tamaroc Du Mathanが2着。どうにもWind Surgeryを繰り返している馬のようで、どうにもいまいち信用しにくいところがあるのだが、能力的には本来であればここでも上位なのだろう。

 

Navan (IRE) Yielding

Flyingbolt Novice Chase (G3) 2m (Replay)

1. Gentleman De Mee J: Mark Walsh T: Willie Mullins

終始先頭を走ったGentleman De Meeがそのまま快勝。Gentleman De Meeは前走のBeginners Chaseに続き大差の楽勝とした。Chase転向後2戦はいずれも勝った馬がFerny Hollow、Haut En Couleursと強力な相手であり結果を残せていなかったが、ひとまず相手関係が楽になったここでは結果を残した。2着のGrange Walkは比較的Chaseの経験は長い馬で、前走はGrade BにてA Wave of the Seaの2着に入っている。ただし全体的にやはりCheltenham前のこの開催のNovice重賞を使ってきたといったメンバー構成で、このレースの歴代の勝ち馬の面々を踏まえても、勝った馬のパフォーマンスは良かったのだがどうにも信用しにくいというのが正直なところだろう。中山グランドジャンプに予備登録のあるFancy Foundationは出走取消となった。

 

3/6(日)

Auteuil (FR) Collant (4.2)

Prix Juigne (G3)

Haies Pour tous chevaux de 5 ans et au-dessus 3600m (Replay)

1. Theleme J: Pierre Dubourg T: Arnaud Chaille-Chaille

実績馬が多数集まったレースであったが、5歳馬同士の叩き合いを制して勝利したのはTheleme。Thelemeは昨年のPrix Renaud Du Vivier (G1)及び一昨年のPrix Cambaceres (G1)を勝利した馬で、現在の5歳世代のチャンピオンホースである。それに対して、Thelemeが不在であったPrix Alain Du Breil (G1)を圧勝していたのがHermes Baieであり、同馬はPrix Cambaceres (G1)では落馬に終わっていたことからPrix Renaud Du Vivier (G1)ではThelemeとの対決が大いに注目されていたのだが、残念ながら同レースでは落馬に終わっていた。今回は現在の5歳世代を代表するThelemeとHermes Baieがまともにぶつかった記念すべきレースと言えるだろう。とりあえず3600メートルの距離ではThelemeが先着したが、今後距離が伸びた時にどのようにこの2頭のレースが変わっていくかは大いに注目すべきところである。Grande Course De Haies De Compiene (G3)を勝利したPorto Polloが3着。昨年のGrand Prix D'Autumne (G1)で同レース3連覇を成し遂げたGalop Marinは例によって前々で進めたが、勝負所から遅れ4着に終わった。この馬は明らかに叩き一走といったところで、条件的にも距離が伸びた方が良いだろう。

 

〇 Prix Agiato

Classe 1 Steeplechase Pour tous poulains et pouliches de 4 ans, n'ayant pas, en steeple-chase, été classés dans les trois premiers d'une course de dotation totale de 65.000. 3500m (Replay)

1. La Cheneviere J: Theo Chevillard T: Francois Nicolle

ゴール直前でIkorikoを捉えてLa Cheneviereが勝利した。La Cheneviereはこれが初のSteeplechase参戦となる。HurdleではHaras D'Etraham (G3)を勝利した実績のある馬で、若干細かいミスはあったが許容範囲だろう。ただし、牝馬とは言え今回は65kgと斤量的にはかなり恵まれた条件であった。PauでSteeplechaseを勝ってきたIkorikoが2着で、3kg差を考えると現時点ではこちらを上に取る方がいいだろう。ここでは珍しいチェコ産馬のTkliwy Nihilistaは好位から進めるも最後は遅れて4着で、72kgという斤量を考えれば十分だろう。距離はもう少し伸びた方がいいかもしれない。

 

その他

Randox Grand National: Bailey eyeing Aintree for Two For Gold (Racing TV)

Grand National 2022: 92 entries remain for Aintree showpiece as Tiger Roll taken out (Liverpool Echo)

Tiger Rollを含む計14頭が2022年のGrand Nationalの登録馬からスクラッチされた。これに伴い、Dingo Dollar、Top Ville Ben、Enjoy D'Allenの3頭が繰り上がって上位40頭のリストに入ることとなった。41番目からはAnibale Fly、Freewheelin Dylan、Class Conti、Cloth Cap、Jettと続いており、この辺りの馬が入ってくると本番でも興味深い存在となる可能性がある。

BATTLESHIP: THE PONY WHO CONQUERED AINTREE (The Vault)

アメリカGrand NationalとイギリスGrand Nationalの双方を勝利した唯一の競争馬Battleshipに関する記事。BattleshipはMan o'Warの産駒で、種牡馬としても活躍し後継種牡馬も存在したようだが、おそらくその系統は現代には残っていないものと思われる。

A five-day Cheltenham Festival? Nicky Henderson 'can't see a reason why not' (Racing Post)

度々議論されるCheltenham Festivalの4日から5日への延長案だが、Nicky Henderson調教師によるこれに関する意見。師はこれを支持しているようだが、一方のKatie Walshはこれに反対しているようだ。レースの増設計画がこのアイデアの発端だが、イギリス・アイルランド競馬ファンには反対する人も多く、しばらく議論を呼びそうだ。

Hommage à Tequila Sun, la guerrière au grand coeur de Philippe Lutz et Marc Nicolau (France Sire)

Trophée National du Crossの第2戦における事故で亡くなったTequila Sunに関する記事。

Veterinární podmínky pro koně původem z Ukrajiny, kteří vstoupili na území ČR z důvodů výjimečné situace (Státní veterinární sparáva)

ウクライナにおけるロシアの侵攻を踏まえて、チェコにおけるウクライナを由来とする馬の滞在に関するルールが設定されたそうだ。

Rusko-ukrajinský konflikt ovlivňuje už i českou dostihovou scénu. Trenér Šavujev nabízí na prodej koně stáje Russian Racing Syndicate (Fitmin)

ロシアによるウクライナの侵攻はチェコ競馬にも影響を及ぼしている。Arslangireje Šavujeva調教師はロシアのシンジゲートが所有する競走馬を競売に掛けているようで、その中には2020年のEJC Leram Million (G3)の勝ち馬Politicumが含まれている。

NEWS: 'We are sure we will win this war' (The Irish Field)

アイルランド競馬界にも多数のウクライナ出身のスタッフがいるようだ。記事中ではウクライナにおける競走馬の状況や飼料価格等への影響についても言及されている。

Jumps racing unlikely to return to Riverton racecourse (stuff)

2019年を最後に行われていないニュージーランド南島のRiverton競馬場のGreat Western Steeplechaseは2022年も行われないようだ。このレースは非常に歴史のある名物レースであり、Riverton競馬場自体も本格的な障害コースを有しているのだが、残念ながら2022年のニュージーランド南島の障害競走は8月のGrand National Meetingのみとなっている。近年、ニュージーランド南島の競馬開催は殆どが北島からの遠征馬及び騎手のみで構成されており、ニュージーランド南島は障害競馬開催地として消滅の危機に瀕している。

Sixteen meets on tap for NSA Spring calendar (National Steeplechase Association)

アメリカの春の障害競馬日程が発表された。やはり特筆すべきはその賞金額であり、近年はCOVID-19の影響で大幅な減額が生じていたものの、今年はCOVID-19以前の水準の金額が予定されている。