にげうまメモ

障害競馬の個人用備忘録 ご意見等はtwitter(@_virgos2g)まで

23/11/12 Weekly National Hunt / Jump Racing

11/9(木)

Clonmel (IRE) Heavy

Clonmel Oil Chase (G2) 2m4f96y (Replay)

1. Allaho (FR) J: Paul Townend T: Willie Mullins

先頭を走ったAllahoがそのまま後続を突き放し、最後はJanidilに9馬身差の快勝とした。Allahoは2021年、2022年のRyanair Chase (G1)の勝ち馬であるが、2022-2023シーズンは脾臓の問題で全休とし、これが561日ぶりの出走であった。ひとまず今回は3頭立て、それも同厩舎の馬と格下のGrandge Walkのみとメンバー的にはかなり楽な内容であったが、それでもトップクラスの能力を持った馬が戻って来たことは素直に喜ばしい結果であろう。過去24fではやや距離的に限界を感じさせるような負け方もあったのだが、2022年の4月にはPunchestown Gold Cup (G1)を快勝しており、そのレース選択が期待される。そのAllahoに対してG1クラスでも2着に入るなど頑張っているJanidilが2着。今年の5月にはShamrock Handicap Chase (Grade B)を勝ったGrande Walkは後方を付いて回り大きく遅れた3着に入った。

 

11/10(金)

Exeter (UK) Good to Soft (Soft in places)

Haldon Gold Cup Handicap Chase (G2) 2m1f109y (Replay)

1. Elixir De Nutz (FR) (AQPS) J: Freddie Gingell T: Joe Tizzard

この時期恒例のExeterの18f戦。レースはSoloが前に行く展開も、これを制してElixir De Nutzが先頭に。Elixir De Nutzは淡々と逃げると、残り2障害辺りから後続を突き放し、そのままSolo、War Lord以下を振り切って勝利した。

Elixir De Nutzは重賞競走自体はこれが初勝利とした。昨シーズンはClass2のHandicap Chaseを勝利し、Game Spirit Chase (G2)での2着やScotty Brand Handicap Chase (Premier Handicap)の2着がある。今回は積極的に飛ばすと思われたEditeur Du Giteが主張せず、かつ既に1戦を消化していたこと、10st0lbの軽量も手伝って結果を残した。昨シーズンはPendil Novices' Chase (G2)を勝利しているSoloが2着。Novice上がりとはいえChaseの経験は多い馬で、この路線の安定勢力として期待できそうだ。Wind Surgery明けのWar Lordが最後追い込んでの3着で、この馬は距離的にはもう少しあってもいいような感がある。

 

Down Royal (NI) Soft (Yielding to Soft in places)

Bottlegreen Hurdle (G3) 2m190y (Replay)

1. Irish Point (FR) (AQPS) J: Jack Kennedy T: Gordon Elliott

人気薄の9歳馬I Don't Get Itが元気よく逃げるも、早々にIrish Point以下の後続が殺到。向こう正面からIrish Pointが前に出ると、追いかけてきたMagical Zoeを振り切って勝利した。

例によってLow Sunの影響により障害がいくつかオミットされているようで、全体的にレースとしては平地色の強いものとなった。Irish Pointは昨シーズンのTurners Mersey Novices' Hurdle (G1)の勝ち馬だが、CheltenhamやPunchestownのG1クラスに出走することはなく、20f路線に回ってきたということもある。ひとまず12st0lbを背負っての勝利ということで完勝の内容だが、今後の距離適性やCheltenhamやPunchestownのG1クラスで上位争いを繰り広げていた馬との力関係が課題となりそうだ。前走Gowran ParkのListedを勝ったMagical Zoeが11st1lbを背負って2着に来た。3着以下は格下の馬ばかりで大きく遅れたが、4歳馬のMedia Naranjaが3着に入ったようだ。

 

Compiegne (FR) Lourd (4.9)

Grand Steeplechase Cross Country De Compiegne (Listed)

Cross Country Pour tous chevaux de 5 ans et au-dessus 5400m (Replay)

1. Roi Mage (FR) J: James Reveley T: Patrick Griffin

Crystal Cupの一環となるレース。レースはGasby De Planchesが前に行く展開で、これにHarry Brownがついて行く。Born To Be A Queenはその後ろから。Harry BrownはGasby De Planchesに頑張って絡んでいくも、Gasby De Planchesがこれを振り切り逃げ込みを図る。しかし最後の直線に入って猛然と追い上げてきたRoi MageがGasby Des Planchesを捉えて勝利した。Born To Be A Queenは伸びず3着まで。

Roi Mageは元々フランスSteeplechaseの重賞戦線で活躍した馬で、2019年のGrand Steeplechase De Paris (G1)では3着に入っている。その後厩舎を転々としつつ、2022年からアイルランドに移籍、AintreeのGrand Nationalを目指してレースに出走していた。CompiegneのGrand Crossは昨年3着に入っていたが、11歳となった今年は更なる結果を残した。比較的Steeplechase色の強いCross Countryということもあってこの馬にとっては与しやすかったと思われるが、フランスSteeplechaseで結果を残し、さらにアイルランド、イギリスAintreeのGrand Nationalでも7着に入り、さらにフランスCross Countryでも成功を収めるというのは大したものである。あまり脚の速くない馬ということもあるのだが、Aintreeではやや距離的な問題もありそうで、その動向には引き続き注意したい。Ploermel、Moulins、CompiegneのCross Countryを4連勝で挑んできた7歳馬Gasby Des Planchesは見せ場を作っての2着。レース運びからしてこの重馬場に適性があったものと思われるが、この馬にとっては初の大舞台であっただけに、これから楽しみが増えそうな一頭である。今年はTNCを中心に結果を残したBorn To Be A Queenはどうにも重馬場に苦労するようなところがあり、最後も伸びを書いて3着に終わった。

 

11/11(土)

Aintree (UK) Heavy (Soft in places)

〇 Grand Sefton Handicap Chase (Class 2) 2m5f19y (National) (Replay)

1. Gesskille (FR) (AQPS) J: Henry Brooke T: Oliver Greenall & Josh Guerriero

年に5回行われるNational Courseを使った競走。悪天候により一時は開催自体が危ぶまれていたが無事に開催されるに至った。Low SunのためThe ChairとWaterは迂回された。レースはGesskille、Percussionなどが前に行く展開で、Canal Turnの辺りからGesskilleが引っ張る形となる。そのままGesskilleはPercussion、Frero Banbouなどを振り切って勝利した。

出走馬10頭中、落馬したのはCanal TurnにおけるHalf Shot一頭となった。Gesskilleは昨年のこのレースでAl Dancerの2着に入った馬で、直後のBecher Chase (Premier Handicap)でもAshtown Ladの2着に入っている。今回はNational Courseでの嬉しい初勝利となった。元々はフランスのSteeplechaseを走っていた馬で、いまでもAuteuilとイギリスとを行き来しているようで、前走はAuteuilのListed競走を制している。おそらくこの後はBecher Chase (Premier Handicap)に向かうものと思われるが、ここを11st7lbの斤量で勝ったことは価値のある内容だろう。昨年このレースで3着に入り、Becher Chase (Premier Handicap)でも3着に入ったPercussionが2着。Frero Banbou、Nassalam、Fantastic Ladyまで比較的差のない入線となった。今年のGrand National (Premier Handicap)で10馬身差の6着と気を吐いたBorn By The Seaは徐々に遅れ大敗。Aintreeのあともあまり休まずに使っているようで、どうにもこのローテーションは少々気の毒である。

 

Wincanton (UK) Good to Soft (Soft in places)

Rising Stars Novices' Chase (G2) 2m4f35y (Replay)

1. Knappers Hill (IRE) J: Harry Cobden T: Paul Nicholls

Bryan Carver騎手のOpening Bidが前に行くも早々に後退。代わってGiveraが引っ張るも、途中から前に出たKnappers HillがLady Adare、Captain Conby以下を突き放して勝利した。

Knappers HillはChaseは2戦目で初勝利とした。HurdleではSelect Hurdle (G2)やElite Hurdle (G2)の勝利など活躍した馬で、今シーズンからChaseに転向している。Chase2戦目ではあったが全体的に危なげのない安定したレースを見せており、この路線の有力馬として期待できそうだ。前走Class3のNovice ChaseでChase初勝利を挙げたLady Adareが2着。ここまで3買い物Wind Surgeryを行っている馬で、ノドさえ問題がなさそうであれば能力はありそうだ。Conduit産駒のCaptain Conbyは前走TipperaryのO'dwyer Steel Dundrum Novice Chase (G3)でSharjahの2着に入っている馬だが、ここでは突き放されて3着に終わった。

 

62nd Badger Beer Handicap Chase (Premier Handicap) 3m1f30y (Replay)

1. Blackjack Magic (GB) J: Rex Dingle T: Anthony Honeyball

Frodon、Threeunderthrufiveなどが前を伺うも、途中からThe Big Breakawayが先頭に。しかし残り5障害辺りからBlackjack Magicが前に出てくると、追いかけてきたThreeunderthrufiveを振り切って勝利した。

Blackjack MagicはNovice上がりの馬で、今シーズン初戦を白星で飾った。Hurdle路線、Novice路線ともに重賞戦線での出走歴はなく、今回はNovice路線から経験馬相手のPremier Handicapとかなりのステップアップを要求されるレースであったが、10st2lbが味方したとはいえ、いきなり結果を残したことになる。11st3lbを背負って頑張ったのがThreeunderthrufiveで、もともとNovice戦線ではDecember Novices' Chase (G2)勝ちなど結果を残した馬ではあるのだが、今回はWind Surgery明けで結果を残したことは喜ばしい内容だろう。昨シーズンはScottish Grand National (Premier Handicap)の4着など能力を示しており、期待できるとしたらこちらだろう。今年で11歳となったFrodonは12st0lbを背負っての3着で、最後遅れたとはいえこれだけ走れるのだから大したものである。

 

Elite Hurdle (G2) 1m7f50y (Replay)

1. Rubaud (FR) J: Harry Cobden T: Paul Nicholls

前半からするすると引っ張ったRubaudがそのままHansard以下を突き放して勝利した。Rubaudはこれで昨シーズンのDovecote Novices' Hurdle (G2)から4連勝とした。ただ、結局昨シーズンもCheltenhamやPunchestownのG1を使うことなく、どちらかというと空き巣のような重賞競走を選んで出走していたようで、16fのG1クラスで通用するかと言われるとまだ未知数といったところだろう。Hansardは昨シーズンの段階でRubaudとは勝負付けが済んでいる馬、Glorious Zoff、Sacre Coeurはいずれも格下と、レースレベルとしてはやや疑問が残る内容となった。

 

Down Royal (NI) Soft (Yielding to Soft in places)

Ladbrokes Champion Chase (G1) 3m (Replay)

1. Gerri Colombe (FR) J: Jack Kennedy T: Gordon Elliott

Sam EwingのConflatedが淡々と引っ張る展開で、好位からMinella Indo、Gerri Colombe。その後ろからEnvoi Allen。勝負所からじわじわとMinella Indoが接近を試み、さらにGerri Colombeも接近してくるも、ここからConflatedが強靭に抵抗。しかし後ろから進出したEnvoi Allenが一気に前を捉えて逃げ込みを図るも、最後内から再度抵抗したGerri ColombeがEnvoi Allenを交わして勝利した。

Gerri Colombeは昨シーズンの20~24f Novice Chase路線でG1を3勝と結果を残した馬で、CheltenhamのBrown Advisory (G1)でもThe Real Whackerから僅差の2着に入っている。これが今シーズンの始動戦であったが、いきなり実績馬相手に結果を残した。どうにもSaddler Makerの産駒らしくDown Royalの下り坂を利して前に出たEnvoi Allenに対して遅れる場面もあったが、そこからの反撃はさすがの内容で、24f超の持久戦に対して高い適性を感じさせる内容となった。ただしやはりCheltenhamの下り坂で遅れる可能性は否定できなさそうで、馬場状態としても可能な限り渋った方がよさそうだ。Down Royalの坂を上手く使ったのがRachael BlackmoreのEnvoi Allenで、これは勝ち馬を褒めるしかないだろう。Conflatedはどうにも好走と大敗の落差が大きい馬なのだが、とはいえ今回は見せ場を作っての3着。昨年はこのあとのSavills Chase (G1)を快勝しており、あまり信頼しすぎない程度に期待しておきたい。Cheltenham以来となったSam Ewing騎手も上手く騎乗していたと思われる。Minella Indoは最後遅れての4着だが、この馬はむしろスパートをかけるべきタイミングで馬群のポケットに入ってしまったようで、結果的にこれが最後のロスに繋がったように思われる。

 

Gowran Park (IRE) Heavy

〇 Maiden Hurdle 2m (Replay)

2. Crack The Sky (GB) J: Paul Townend T: Willie Mullins

Norsk Oaksの勝ち馬Crack The Skyのアイルランドデビュー戦であったが、途中からWestern Foldにハナを譲ると、10馬身差の2着に終わった。Crack The SkyはNathaniel産駒の牝馬で、昨年のNorsk Oaksでは勝利、Norsk Derby及びSvesnkt Oaksでは4着に入っている。北欧の平地競争の水準はいまいちわからないが、ひとまずex-flat horseとはいえ比較的落ち着いて走ることができていたのは収穫で、飛越自体はどうにももたもたと飛越するところがありいまいちであったが、可能性は示した一戦と言えよう。勝ったのはWesterner産駒でGordon Elliott厩舎のWestern Foldで、障害馬としての完成度はこちらの方が上であったと思われる。

 

Auteuil (FR) Lourd (4.9)

〇 Prix Oeneas (Classe 2)

Haies Pour tous poulains et pouliches de 4 ans, n'ayant pas, en courses à obstacles, couru trois fois. 3600m (Replay)

1. Jeu De Thaix (FR) (AQPS) J: James Reveley T: Mlle Daniela Mele

前半から元気いっぱい走ったJeu De Thaixがそのままリードを開くと、最後は持ったままで14馬身差の圧勝とした。Jeu De ThaixはAuthorized産駒のAQPSで、これでHaiesは2戦2勝とした。平地ではAQPS限定のG1競走を勝利しているようで、ここまでのHaiesでは鮮烈なレースを見せている。トップハンデの70kgを背負ってこのLourd (4.9)の重馬場で飛ばしたうえに最後まで脚が残っているというのはなかなか衝撃的なレースで、もう少し落ち着いて走って欲しいところではあるのだが、才能ある馬として注意すべき一頭だろう。大きく離れた2着にはSuper Quartzが入った。Myboycharlie産駒で未去勢のDixan Senoraは5着に終わった。

 

Prix Congress (G2)

Steeplechase Pour tous poulains et pouliches de 3 ans, ayant reçu une allocation en courses à obstacles. 3600m (Replay)

1. Kaadam (FR) J: Gaetan Masure T: Arnaud Chaille-Chaille

レースはGame of Storm、Royal Sagaなどが前に行く展開も、中段にいたKaadamがあっさりと好位まで進出。残り2障害を越えて抜けてきたKaadamが付いてきたKarre D'asを4馬身ほど突き放して快勝した。

KaadamはこれでSteeplechaseは3戦3勝とした。父Saint Des Saints、母父Martalineといういかにもフランスの障害馬らしい血統で、母FiestineはEnghien-SoisyのListed Steeplechaseを勝った実力馬である。全体的に危なげない飛越と高い航行能力が目立っており、特に終いの伸び脚はこの中では抜けたものを持っていた。4馬身半という着差以上の危なげのないレースであったと言えよう。Balko産駒のAQPSの牝馬Karre D'Asは残り2障害地点では前に出る格好を見せたが、そこから勝ち馬に突き放されての2着。これでSteeplechaseは3戦連続の2着だが、あまり見限らずに注意しておきたい。Choeur Du Nord産駒の牡馬Royal Sagaは前々で頑張ってレースを進めたが、最後は力尽きて7着。血統背景を考えると種牡馬入りして欲しいところだが、どうだろうか。

 

Haras D'Etreham- Prix Magalen Bryant (G2)

Haies Pour pouliches de 3 ans. 3600m (Replay)

1. Kamsinea (FR) J: Theo Chevillard T: Mlle Elisabeth Allaire

Jeu St Eloi産駒のKaline Des Boullatが前に行く展開で、やや後続にリードを取って引っ張る。向こう正面からCelty Du Kalonが内から交わしていき先頭に立ち、直線入り口では人気のKara Diamondが前に出てくるも、ここから伸びたKamsineaが最終障害を越えると後続を一気に引き離し10馬身差の圧勝とした。

KamsineaはこれでHaiesは2戦2勝とした。Kamsin産駒の牝馬だが、経験馬相手にいきなりこれだけのレースをするのはなかなか驚きの内容で、特にこのLourdの馬場での伸び脚は目立っていた。これが単に馬場が味方したものなのかどうかは引き続き注意したい。ここまで善戦続きのMaskayaが2着。前走のPrix De Chambly (G3)を快勝し、人気を集めていたKara Diamondは案外伸びを欠いての3着で、もしかするとこの馬場自体がいまいちな可能性はありそうだ。

 

Grand Prix D'Automne (G1)

Haies Pour tous chevaux de 5 ans et au-dessus. 4800m (Replay)

1. Theleme (FR) J: Gaetan Masure T: Arnaud Chaille-Chaille

秋のフランスHaiesの大一番だが、アイルランドやイギリスからの遠征馬もなく、Hermes Baieといった比較的強力な対抗馬も不在で、前評判としては完全にThelemeの一強ムードとなっていた。レースはIne Anjou、La Cheneviereなどが前に行くも、途中でLa Cheneviereは落馬。Ine AnjouにTheleme、Vae Patronなどが接近するも、ここからThelemeがあっさりとIne Anjou以下を振り切ると、最後は2着に10馬身差をつけて圧勝した。Ine Anjou、Vae Patronと続いた。

ThelemeはこれでHaiesは春秋完全制覇とした。Lourdの重馬場であったがそれも全く問題はなかったようで、メンバー的にもかなり楽であった現状、危なげない勝利と言えるだろう。どうやらCheltenhamに遠征することを計画しているようで、文句なしに現時点のフランス最強馬がCheltenhamでどのようなレースを見せるか期待したい。おそらくStayers' Hurdle (G1)が目標になると思われるが、イギリス・アイルランドの24f Hurdle路線は例によって混戦で、Cheltenhamを含めイギリスHurdleへの適性次第では有力候補となりそうだ。例によって応援団が大挙して駆けつけた5歳牝馬Ine Anjouが2着。9月にHandicapを勝ったVae Patronは見せ場を作って3着に入ったが、とはいえIne Anjou、さらに落馬したLa Cheneviereを除けばG1クラスでは数段格下の馬ばかりで、もう少しメンバーが揃って欲しかったというのは正直なところである。

 

Kyoto / 京都 (JPN) Good

The Kyoto Jump Stakes / 京都ジャンプステークス (G3) 3170m (Replay)

1. Ecoro Duel / エコロデュエル (JPN) J: 草野太郎 T: 岩戸孝樹

この日は先日引退した熊沢重文騎手の引退式も行われたそうだ*1。このレースでは誘導馬に騎乗して出走馬を先導する場面もあったそうで*2、ベテランが鞭を置くことは寂しいものであるが、とはいえこのようなセレモニーが行われたことは喜ばしいことだろう。レースは例によって横一列のスタートからナギサ、テーオーコンドルなどが前々で進行。名物の三段跳びで中段にいたエコロデュエルが大きなミス。2周目に入ったところから後方にいたエイシンクリックが一気に押し上げ先頭に並びかける。そのままエイシンクリックが先頭に代わり逃げ込みを図るも、内から追い上げてきたエコロデュエルがアサクサゲンキとの叩き合いを制して勝利した。

エコロデュエルは4歳の若馬で、障害戦はこれがオープン戦に続き3勝目とした。前走の阪神ジャンプステークス (G3)では大敗していたようだが、今回は巻き返しての勝利となった。各馬しっかりと準備をしてきた三段跳びでは一頭大きなミスがあり、そこからの飛越も全体的にいまいちで、残り2障害地点ではかなり後方にいるのだが、そこから一気のスパートで間に合わせるのだから大したものである。むしろ勝ちに等しいレースをしたのが小牧騎手のアサクサゲンキで、ペースが緩んだところを利して前に行ったエイシンクリックに対し、馬群の中からワンテンポ遅れて抜けてくるレースであった。エイシンクリックは西谷騎手らしい決め打ちがハマった格好だが、最終コーナーのコーナリングの部分であるとか、ルーラーシップ産駒らしいストライドの大きさを考えるとややロスもあったように思われる。小倉サマージャンプ (G3)で2着に入った牝馬ナギサは今回は後続に一気に来られての5着で、勝ち馬のフラット部分での瞬発力が目立つ結果となった。

 

11/12(日)

Naas (IRE) Soft

Barberstown Castle Chase (G3) 2m (Replay)

1. Dinoblue (FR) J: Mark Walsh T: Willie Mullins

人気薄のHope Des Blinsが元気に逃げる展開も、早々にDinoblueが接近し先頭に。これにFil Dor、Sir Gerhardと接近するも、Sir Gerhardは残り2障害で落馬。DinoblueがFil Dorを振り切って勝利した。

DinoblueはChaseはこれで4勝目とした。昨シーズンのGrand Annual Challenge Cup (Premier Handicap)でも2着と頑張っている能力馬だが、ここまでハンデ戦を含めてChaseでは2着を外さない堅実ぶりを示している。厩舎的と牝馬ということを考えると今後16fの大レースに向かうかどうかは怪しいところもあるのだが、とはいえレース選択が楽しみになる一頭だろう。Dinoblueと同じくDoctor Dino産駒のFil Dorが2着。Novice Chaseに移行した昨シーズンは結局Hurdleに戻しているのだが、ひとまずシーズン初戦としては悪くない内容であった。Sir Gerhardは今シーズン初戦で、課題と思われた飛越に関しては残り2障害地点での飛越を除けばそう悪いものではなかったのだが、ここでは落馬に終わった。

 

Auteuil (FR) Tres Lourd (5.1)

Prix Fondeur (Listed)

Steeplechase Pour tous chevaux de 5 ans. 4400m (Replay)

1. Il Est Francais (FR) (AQPS) J: James Reveley T: Noel George & Amanda Zetterholm

降り続いた雨の影響でAuteuilの馬場は土曜日からさらに悪化してTres Lourd (5.1)まで重くなっていた。レースは圧倒的人気を背負ったIl Est Francaisが軽快に引っ張ると、そのまま持ったままで後続に11馬身差をつけて圧勝した。

James Reveley騎手がこの雨の中集まった観客を煽るくらいの余裕を見せている。Il Est FrancaisはSteeplechaseは2勝目とした。HaiesではPrix Renaud Du Vivier (G1)にてIne Anjou以下を圧倒し世代のトップと期待された馬だが、今年の秋からSteeplechaseに移行している。重馬場への適性云々以前に能力的には完全に抜けたものを持っているようで、将来のフランスSteeplechaseを担う馬として大いに期待できそうだ。この冬はこの後Kauto Star Novices' Chase (G1)に向かうという話もあるようで、久々のフランスの大物のイギリス遠征ということでその活躍には期待がかかる。Noel George & Amanda Zetterholm厩舎は元々イギリスに拠点を置く厩舎のフランスのサテライト拠点であったことを踏まえると、イギリスにおいてもしっかりとした準備が期待できそうだ。比較的Il Est Francaisに頑張ってついて行ったのが経験馬Toscana Du Berlaisで、この馬はTres Lourd (5.2)のGrand Steeplechase De Compiegne (G2)で5着に入っていることを考えると、やはり勝ち馬のパフォーマンスは高く評価しなければいけないだろう。

 

Prix Cambaceres - Grande Course De Haies Des 3 Ans (G1)

Haies Pour tous poulains et pouliches de 3 ans. 3600m (Replay)

1. Jigme (IRE) J: Ludovic Philipperon T: Marcel Rolland

Jigme、Leon Du Berlais、Master D'Ocの牡馬3頭が人気になっていた。レースはJigmeが逃げる展開も、これにMaster D'Ocが絡んでいく。しかしJigmeはMaster D'Ocを振り切ると、付いてきたLeon Du Berlais、Kinglandなどを振り切って勝利した。

JigmeはMotivatorの産駒で、このレースを最後に種牡馬入りが決まっていた。この3歳Haies路線ではトップクラスの活躍を見せた馬で、種牡馬入りに向けて有終の美を飾ったことになる。今回はTres Lourdとかなり重い馬場であったが、単なるスピード能力のみならず、この重い馬場での消耗戦を快勝したことは種牡馬としても大きな価値となるだろう。Authorized産駒の牡馬Leon Du Berlaisは6馬身半差の2着に入った。これで5戦連続の2着と現役生活を通じて全てのレースで2着に入っているというなんとも面白い馬で、そのうちいいことがあって欲しいものである。一方でAuthorizedの後継種牡馬としても期待がかかるというところもありそうで、母系にはフランスの大種牡馬Cadoudalが入っているというのも面白いところである。Doctor Dinoの産駒で、前走はPrix Robert Lejeune (G3)にてJigmeを下して勝利したMaster D'Ocは積極的に絡んでいったが、最後は苦しくなって脱落。前走もそれなりに重い馬場であったのだが、今回はそれを上回る重馬場で、この条件となると少々苦しかったようだ。

 

Prix Maurice Gillois - Grand Steeplechase Des 4 Ans (G1)

Steeplechase Pour tous poulains et pouliches de 4 ans. 4400m (Replay)

1. Amy Du Kiff (FR) J: Leo-Paul Brechet T: Gabriel Leenders

レースは前半からJeu St Eloi産駒のJazzy Senamが後続を大きく突き放して逃げる展開で、隊列はかなり長くなる。好位から人気のJuntos Ganamosが進めるも、細かいミスをしたのちにPetit Open Ditchにて落馬。Jazzy SenamにAmy Du Kiff、Winteriscomingが接近すると、Amy Du Kiffが必死で逃げ粘るJazzy Senamとの叩き合いを制して勝利した。

Tres Lourdの重馬場とJazzy Senamの逃げによってレースとしては壮絶な内容となった。Amy Du KiffはこれでSteeplechaseは3勝目、前走のAuteuilのListedから連勝とした。Steeplechaseは一度昨年の秋にFontainebleuのClasse 4を使っているのだが、その後は一旦Haiesに戻り、今年の秋からAuteuilのSteeplechaseを使っている。圧倒的人気を背負っていたJuntos Ganamosの落馬によりレース水準としては若干の疑問は残るのだが、とはいえ重馬場適性も含めてこのようなレースを勝ち切ったことは4歳馬にとって価値のあることだろう。Jeu St Eloi産駒の牝馬Jazzy Senamは積極的な競馬で見せ場を作った。最終障害ではAngelo Zulianiが落馬覚悟でリスクの高い飛越を試みているように死力を振り絞る渾身の逃走劇で、これだけのレースをしながら勝ち切れないというのは天を仰ぎたくなるものである。3着以下は大きく遅れたが、Buck's Boum産駒のAQPSであるJostが入ったようだ。Juntos Ganamosは課題の飛越面で問題が出てしまったようで、Martalineの産駒ということもあってこの馬場への適性は高かったものと思われるが、残念な結果となった。

 

Prix La Haye Jousselin (G1)

Steeplechase Pour tous chevaux de 5 ans et au-dessus. 5500m (Replay)

1. Grandeur Nature (FR) J: Gaetan Masure T: Arnaud Chaille-Chaille

"48H de l'Obstacle"と呼ばれるこのAuteuil開催のハイライトとなる競走である。Framce Galopをはじめとする公式SNSYoutube等でも様々なプロモーションが行われているようで、世界で最も美しい競馬の一つであるこの開催が広く知られることを願うばかりである。レースはGrand Steeplechase De Paris (G1)の上位馬は完全に不在となり、前評判としては上がり馬Gran Dioseが人気を集めていたようだ。レースは第1障害にてLe Ludeが早々に落馬するも、人気のGran Dioseが淡々と引っ張る形でスタート。Gros Open Ditchにて後方にいた牝馬Rosa Klebが躓いて騎手が落馬。Gran Dioseはやや後続にリードを取って引っ張り、好位からLa Manigance、Ho La La Forezが進める。2回目のRiviereの辺りから好位のLa ManiganceにGrand Oncleが接近。Rail Ditch and FenceにてGran Dioseはミスをするも立て直す。後方のHo La La Forez、Blackfieldが落馬。そのままGran Dioseは後続を大きく突き放し逃げ込みを図るも、残り2障害辺りからGrand Oncleを交わしてGrandeur Natureが接近。脚が上がったGran DioseにGrandeur Natureが猛追すると、ゴール前でGran Dioseを交わして勝利した。3着にはGrand Oncle、その後遅れてEcho De Champdoux、La Maniganceと入線した。

Grandeur Natureは昨年のPrix La Haye Jousselin (G1)でゴール前に猛追して2着に入った馬で、今年はめでたく前の馬を捉え切るに至った。今年はGrand Steeplechase De Paris (G1)の出走馬が不在とレース水準としてG1に足りるか怪しいところではあるのだが、とはいえこの消耗戦において最後までスプリントを掛けるだけのタフネスを持ち合わせていたということは驚くべきことで、レースとしてもやはりフランスSteeplechaseのG1として見ごたえのあるものであったと言えよう。距離的にはさらに伸びてもよさそうな印象すらあり、今回はTres Lourdの重馬場もあったとはいえ、来年のGrand Steeplechase De Paris (G1)で見てみたいところである。重賞競走では必ず上位に顔を出してきたGran Dioseはまたしても惜敗に終わったが、とはいえレース内容としてはほぼ勝ちに等しいもので、最後に驚異的なスプリントを見せたGrandeur Natureを褒めるしかなさそうだ。10月のPrix Montgomery (G3)で3着に入ったAQPSのGrand Oncleが3着、同2着に入ったAQPSのEcho De Champdouxが4着と、実績的には格下と思われたSaddler Maker産駒のAQPSが3、4着を占めたのはこれは馬場適性によるものと思われる。