にげうまメモ

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22/08/14 Weekly National Hunt / Jump racing

8/10(水)

Riccarton Park - Canterbury JC @ Riccarton Park (NZ) Heavy10

Hospitality NZ Canterbury 132nd Grand National Hurdles (PJR) OPN HDL 4200m (Replay)

1. Happy Star J: Shaun Phelan T: Kevin Myers

He's Ricが逃げる展開も重馬場の長距離戦らしくペースはゆったりと流れる。じわじわとHe's Ricは加速をかけるも、これについて行ったHappy Starが最終コーナーから先頭に。そのままHappy StarはHe's Ric以下を突き放して勝利した。

4200メートルという距離はニュージーランドHurdle戦では最長距離で、Heavy10という厳しい重馬場もあって非常にタフな消耗戦となっている。Happy StarはこれでHurdleは2戦2勝とした。今シーズンになって2500メートルのMaiden Hurdleを勝ってきた馬で、前走も平地競争を勝つなど調子は良かったようだ。元々平地競争では重賞に出走するなど頑張っていたようで、2500メートルから一気の距離延長を耐えきったというのは大したものである。ただ、メンバー的には"Grand National"といえどThe CossackはおろかPJRクラスでの好走馬が出走していたわけでもなく、レースの水準という意味では若干疑問符がつくというのが正直なところだろう。ここに向けての前哨戦となるAvon City Ford Sydenham Hurdlesを勝ったHe's Ricが2着で、2着以下はほぼ脚が上がっての入線となった。道中後方に置かれていた未勝利馬Phelan Foxyが最後押し上げて3着まで来ていることからもこのレースがどのようなものであったか想像に難くないだろう。先週のVIC州Grand National Hurdleとはかなりレースの性質が違うようで、このようなタフな消耗戦はニュージーランド障害競馬ならではでもあり、過去と比べるとだいぶ障害数や障害の難易度も減ったとはいえ、未だに本格的な生垣障害を多く有するニュージーランド障害競馬としての独自性を保って欲しいものである。

 

8/13(土)

Riccarton Park - Canterbury JC @ Riccarton Park (NZ) Heavy10

Racecourse Hotel & Motor Lodge 147th Grand National Steeplechase (PJR) OPN STP 5600m (Replay)

1. West Coast J: Shaun Fannin T: Mark Oulaghan

Riccarton ParkのSteeplechaseに設置されている障害にはそれぞれ名前がついているようで、"Kennels Double"、"Carriage Paddock"、"Jumbo"などと呼ばれているそうだ*1。レースはゆるゆるとWest Coastが逃げると、ついてきたCarnaby及びTittletattle以下を振り切って勝利した。

West CoastはこれでKoral Steeplechaseから連勝とした。今シーズンになってSteeplechaseを使い始めた馬で、Hawke's Bay Steeplechase (PJR)ではArgyllの3着に入っている。今回はやはり南島に遠征した馬が限られており、Koral Steeplechaseとほぼ同様のメンバーで展開的にはだいぶ楽であったとはいえ、ひとまず実力差を見せるレースであった。まだ飛越において甘いところが残っているようだが許容範囲だろう。そのKoral Steeplechaseで2着に入ったCarnabyがまたもや2着に入った。Wellington Steeplechaseにおいて大穴を開けたTittletattleは3着だが、Wellington Steeplechase (PJR)ではかなり前がやり合うところを最後浮上してきたといったレース振りで、もう少し厳しい消耗戦になった方がいいのかもしれない。こないだ初勝利をあげたPortia Matthews騎手とともに挑んだKeyboard WarrirorはStand Doubleにて落馬に終わった。

 

8/14(日)

Merano (ITA) Tempo Bello - Terreno Buono

〇 Paolo Meandri Euro 11,000 TRIO

per cavalli di 5 anni ed oltre (Cross-Country -  CONDIZIONATA  - G.R.-AMAZZONI-FANTINI) 4100m (Replay)

1. King Artur J: Niklas Loven T: Pavel Poles

地元のBilbo D'Assaultがゆったりと逃げるも、途中から例によって後方にいたAlmost Humanが上がって来て引っ張る展開に。そのままAlmost Humanが軽快に引っ張り逃げ込みを狙うも、じわじわと詰め寄ってきたKing Arturがゴール前でこれを捉えて勝利した。

King ArturはあまりCross Countryの経験は長くはない馬で、前走はSteeplechase Di Roma (G3)に参戦するも途中で落馬に終わっていた。どちらかというとSteeplechaseでコンスタントに走ってきたというタイプで、とりあえずCross Countryで結果を残したことはこの馬にとっては将来の可能性を広げる結果となった。この路線の常連Almost Humanはいつものレースをしたのだが、最後捕まり2着まで。とりあえずは勝ったKing Arturを褒めた方がいいのだろう。スイスからは元フランス調教馬のGordon Pymという馬が参戦していたが、どうにも障害に苦労している場面もあり、あまり良いところはなく5着に終わった。

 

Coleraine (AUS) Soft5

eCycle Solutions Great Western Steeplechase

Handicap. No age restriction, No sex restriction. No class restriction. Apprentices cannot claim. 3600m (Replay)

1. Roland Garros J: William McCarthy T: Ciaron Maher & David Eustace

オーストラリアにおいて現存する最古の障害競走であると言われており、150年以上もの歴史を誇る競走である。ただし、スケジュール的にはCrisp Steeplechase及びGrand National Steeplechaseの間に挟まっており、賞金額としても$60,000ということもあり、どうしてもメンバーとしてはやや格落ちの感は否めないのが例年のこの競走ではある。レースは大きくリードを取って逃げたRoland GarrosがぎりぎりでBee Tee Juniorを凌いで勝利した。Rorand GarrosはSteeplechase自体はこれが初参戦かつ初勝利で、かなり行きたがって走っていた面があったとはいえいきなり経験馬を凌ぎ切ったのは大したものである。Bee Tee Juniorは75.5kgの圧倒的なトップハンデを背負いながらも2着まで来て、むしろ勝ち馬との斤量差を考えればこちらを上に取るべきだろう。11歳とだいぶ年齢は重ねているが、この開催中ずっと降り注いでいた雨を考えれば馬場はだいぶ悪化していた可能性もあり、馬場がかなり重くなればまだどこかでチャンスはありそうだ。人気を背負っていたUnder The Bridge、障害競走でのキャリアはかなり長いFrankel産駒のSan Remoといった馬もいたのだが、いずれも大敗に終わった。

 

その他

Overseas trained runners in low Grade Handicaps (British Horseracing Authority)

2020年にCOVID-19対策の一環としてBHAは下級条件戦に限定して海外調教馬の出走を許可しない旨の決定を下しているが、現時点で下級条件戦の状況に基づく当該決定に関する考察記事。筆者は当該決定は下級条件戦の競争力を削ぐものではなく、当該決定を覆す必要性はないことを主張している。

British tracks eager to see 'crazy' ban on low-grade Irish horses lifted (Racing Post)

一方で、当該決定に対してAyr競馬場を初め、一部の関係者からは反論があがっている。AyrやCartmelといった競馬場では多数のアイルランド調教馬が出走しており、競争性の担保及び開催の維持における国外調教馬の重要性が主張されている。

Jump Pattern Committee update 22/23 season (British Horseracing Authority)

2022/23シーズンからイギリス障害競馬における重賞競走について幾つかの変更がなされることになった。主な変更点は以下のとおりである。基本的にはHandicap競走をG1及びG2とは別の路線として明示したいという意図だと推測している。この変更について色々と思うところはあるが、さて。

  • G3競走の名称が変更され、"Premier Handicap"と呼ばれることとなった。この理由は重賞競走の枠組みの中でHandicap競走の果たす役割に関してわかりにくいことが挙げられている。
  • Listed Handicap競走は廃止され、G2又はPremier Handicapへの昇格、もしくはClass2への降格が行われた。
  • 一部の重賞競走が必要条件を満たしていないことから格下げされた。この中にはこれまでにG1競走として行われていたChepstowのFinale Juvenile Hurdleも含まれている。
  • Novice及びJuvenile馬はClass1及び2のHandicap競走に出走するために必要な出走数が3から4に増加された。
  • Noviceの資格が延長された。3月1日から4月のシーズン終了までに初勝利を挙げた馬は同年11月末まで当該カテゴリーにてNoviceの資格を有する。
  • 2023/24シーズン開始に際して、National Hunt Flat Raceにて原則最大3回の出走が許可されることになる。

Jumps double for Leeks (Racing.com)

Coleraineの第1レース及び第2レースではLeek夫妻の調教馬が勝利し、かつて調教師としてGrand National Hurdleを勝利したTeam Heritageを管理していたJohn Leek調教師にとっては15年ぶりの障害競走での勝利となった。当時のTeam Heritageに騎乗していたAndrea Leek元騎手にとってもこの日勝利したHeir To The Throneは同調教師に初の障害競馬での勝利をもたらした馬のようで、夫妻にとって嬉しい一日になったようだ。