にげうまメモ

障害競馬の個人用備忘録 ご意見等はtwitter(@_virgos2g)まで

22/08/21 Weekly National Hunt / Jump racing

8/15(月)

Granville (FR) Bon (3.0)

Grand Cross De Granville - #11 TNC Haras Du Lion

Cross Country Pour tous chevaux de 5 ans et au-dessus. 5800m (Replay)

1. Darkly Rochelais J: Clement Lefebvre T: Patrice Quinton

レースはEtoile De Pretotが逃げるも、途中のPassage de RouteからDarkly Rochelaisが先頭に。さらにBanquetteからFalcon De Kerserが先頭に代わり後続を引き離すも、終盤の障害で落馬。代わって前に出てきたDarkly RochelaisがEtoile De Pretot以下を抑えて勝利した。

GranvilleのCross Country Courseは非常にテクニカルな障害が連続しており難易度が高い。Darkly Rochelaisはデビュー当時からCross Countryばかりを使っている馬のようで、Granvilleの経験も豊富である。このレースは2020年にも出走しており、当時は3着に終わっていたのだが、今回はその雪辱を果たす勝利をあげた。もったいなかったのが未勝利馬で初の勝利を目指したFalcon De Kerserで、距離を伸ばしてパフォーマンスを上げてきたことは評価したい。Granvilleで連勝してきたEtoile De Pretotが2着、Cross Country初勝利を目指したForza Contiが3着と、牝馬勢が上位を占める結果となった。

 

Pompadour (FR) Bon (3.2)

Grand Cross - # TNC Haras Du Lion

Cross Country Pour tous chevaux de 5 ans et au-dessus. 5000m (Replay)

1. Drop D'Estruval J: Kilian Dubourg T: Lageneste & Macaire

レース映像の画質が90年代っぽいのだが、2022年のレースである。映像は画質も悪く、暗くてなんだか貧相なコースに見えるのだが、一方でFrance Sireの写真やライブ配信を見ると、夏のフランスの明るい陽射しに照らされた緑豊かな美しいコースが設置されている様子がわかるだろう。特にFrance Sireのライブ配信はドローン映像で、映っている馬が全体的に小さいのだが、その障害の大きさや迫力がよくわかっていいかもしれない。レースはゆったりとVolcan D'Estruvalが引っ張るも、途中からAll Goldが先頭に。しかしこれを捉えて前に出たDrop D'EstruvalがEvvivaの追い上げを凌いで勝利した。

Drop D'Estruvalは2020年に続いての勝利とした。前走はLyon ParillyのTNC第7戦を勝利しており、なかなか今シーズンは好調である。2020年はGrand Steeplechase Cross Country De Compiegne (Listed)で3着にも入っているようにフランスCross Countryでは最上位クラスの一頭であり、今回もPompadourの難易度の高いコースにも関わらず、安定した飛越を見せていた。なお、同馬はFrance Galopのホームページでもわかるとおり、牝系において僅かにアラブの血統が入っている。AAのFantagaroの産駒で、分類上はACとなるEvvivaが大健闘の2着で、アラブ馬限定戦で結果を残してきた馬がここまで戦えるというのはなかなかに嬉しい結果である。2021年以降はほぼPompadourのアラブ馬限定戦を使ってきたようで、コースに対する慣れもあったのかもしれない。13歳馬のVolcan D'Estruvalが3着。6歳馬All Goldは積極的に運んだが、最後息切れして4着まで。今年のAnjou-Loire Challengeで3着に入ったChez Pedroは勝負所で落馬に終わった。

 

Merano (ITA) Tempo Bello - Terreno Buono

Creme Anglaise - Memorial Gilberto Giottoli Euro 25,000

per cavalli di 5 anni ed oltre (Steeple-Chase -  LISTED RACE  - FANTINI) 3800m (Replay)

1. L'Estran J: Pavel Slozil Jr T: Josef Vana Jr

Notti Magicheが前に行くも、早々にL'Estranがスピードの違いで引っ張る展開に代わる。そのままL'EstranがFirst of Allを振り切って勝利した。

L'EstranはいうまでもなくイタリアのChampion Steeplechaserで、今年のGran Premio Merano (G1)では4連覇がかかっている。春のGrande Steeplechase D'Europa (G1)はスキップしたようだが、5月末のLunedi' Di Pentecoste (Listed)でも圧倒的な勝利を収めており、ここでも力の違いを見せつける勝利であった。メンバー的にも今年に入ってGrande Steeplechase Di Milano (G1)、Grande Steeplechase D'Europa (G1)と連勝してきたNotti Magiche、2020年の4歳世代において圧倒的なレースを見せてきたFirst of Allと、考え得る限り現時点のイタリアSteeplechaseとしてはほぼトップクラスのメンバーが集まっていただけに、このレース振りはやはり驚くべきものであろう。そのFirst of Allが2着。前走のBad HarzburgのSteeplechaseで久々の勝利をあげており、2021年当初はフランスに遠征して落馬に終わり、そこからはやや精彩を欠いていたのだが、ようやくここにきて復調ぶりを見せてくれた。今年好調の12歳馬Notti Magicheはこの馬のレースをしたのだが、L'Estran相手だとどうにも分が悪い感もある。イタリア調教馬Big Cityもいたが、概ねの前評判通りさっぱりレースには参加できず、前3頭からは遥か後方に離された最下位に終わった。

 

〇 Ristorante Roessl Rabla' Euro 17,000

per cavalli di 5 anni ed oltre (Siepi -  CONDIZIONATA  - FANTINI) 3300m (Replay)

1. Zanini J: Lukas Matusky T: Josef Vana Jr

Condizionataだがメンバーは非常に豪華なものであった。レースは前半から積極的に引っ張ったZaniniがMauriciusを振り切って勝利した。Zaniniはこの路線の常連で、今年の2月にはGran Corsa Siepi Nazionale (G1)にてMauriciusの2着に入っている。今回は積極的に引っ張って見せ場を作り、春はどうにもぱっとしなかったのだが、Gran Corsa Siepi Di Merano (G1)に向けてよいステップレースとした。昨年は2着であった同レースでの雪辱がかかる。そのGran Corsa Siepi Nazionale (G1)を勝ったMauriciusが2着で、Gran Corsa Siepi D'Italia (G1)ではまさかの落馬に終わったのだが、ともかくこの馬もまた本番に向けて好調ぶりをアピールした。3着にはO'Jukeが入ったが、この馬は遡ればSt Leger Italiano (G1)勝ちのある馬で、Siepiの経験はさほどなく前半からややペースについていけてない雰囲気があったのだが、今後に向けていい経験になったことを期待したい。ポーランドで強い競馬を続けていたNoble Eagleが4着で、前半からZaniniのペースに付いて行ってここまで踏ん張るのだから大したものである。昨年のGran Corsa Siepi Nazionale (G1)にてNight Moon以下を下したEdinsonもいたのだが、どうにも今年に入ってからはいまいちで、今回も前半は好位から運ぶも、徐々に脱落して大敗に終わった。

 

8/17(水)

Bro Park (SWE) Steeplechase god, Häckbana god

GYLLENE HÄSTEN 75.000 kr

Steeplechase För 4-åriga och äldre hästar. 4200m (Replay)

1. Mutadaffeq J: Niklas Lovén T: Kuszli Karen

Steccandoが逃げるもどうにも飛越が安定せず。最終周の途中から前に出てきたMutadaffeqが最終コーナーでSteccando以下を振り切ると、そのまま後続を突き放して勝利した。

MutadaffeqはこのBro Parkではお馴染みの馬で、Svenskt Grand Nationalでは落馬に終わっているが、春にはこのコースで2連勝をあげている。昨年はこのあとポーランドに遠征したのだが、昨年よりは力をつけている感もあること、ポーランドWroclawのHurdleが合うとは思えなかったことを踏まえると、この馬の動向には注意したい。そのMutadaffeqをBaccarat Steeplechaseで下してきたSteccandoはどうにも飛越が安定せず、とりあえずLeo The Lionは振り切ったのだが、勝ち馬からはだいぶ遅れた2着に終わった。デンマーク産馬でこの路線では常連のJunglelandは好位から進めたが、じわじわと後退して勝負に加われず。French Warriorは終始最後方を走り、特に勝負に加わることはできなかった。

 

CALVADOS MEMORIAL 60.000 kr

häck För 4-åriga och äldre hästar. 3450m (Replay)

1. Mr Suarez J: Kevin Parkin T: Patrick Wahl

北欧の怪物Calvadosの名前を冠したレースだが、2頭取り消しで3頭立てとなってしまった。レースは前半から徐々にリードを取って逃げたMr Suarezがそのまま圧勝した。Mr SuarezはHurdleは昨年のOrmus Memorialに続き2勝目とした。ただ、前走のNoviseserienではSea Moonsterの3着に敗れており、Svenskt Champion Hurdleでも勝負に加われていないことを踏まえると、やや今回はメンバーに恵まれた感も否めないだろう。昨年の上り馬Early Vocieは前走のSvenskt Champion Hurdleに続いてのHurdle戦であったが、どうにも全体的に飛越がちぐはぐで、勝ち馬とはずいぶん離れた2着に終わった。

 

Saratoga (USA) Firm

Jonathan Sheppard Hurdle Stakes (G1)

To be run over National Fences a Hurdle Handicap for Four-Year-Olds and Upward. Two and Three Eighth Miles on the Hurdle $150,000 (Replay)

1. Snap Decision J: Graham Watters T: Jack Fisher

Chief Justice、Song For Someoneなどが前を狙うも、これを制してSnap Decisionが先頭に。そのままSnap Decisionが軽快に逃げると、唯一食らいついてきたGoing Countryを振り切り、後続に大差をつけて勝利した。

Saratogaのコースは小回りかつ平坦で、最終障害からゴールまでかなりの距離があり、しかもこの時期はなにかと良馬場で行われることが多いため、あまり着差がつきにくく、どちらかというとフラットのスピード勝負のようなレースになることが多い。加えてこのSnap Decisionの負担重量は164lb(11st10lb = 74.4kg)であり、斤量順的には2番目となるSong For Someoneが153lb(10st13lb = 69.4kg)、しかも殆どの馬が精々140~146lb(10st0lb~10st6lb = 63.5~66.2kg)であったことを踏まえると、この着差はあまりにも驚異的である。これで同馬は今年は平地競争を挟んでIroquois Hurdle (G1)から連勝とした。The Mean Queenこそいなかったのだが、とはいえメンバー的にはかなり強力なイギリスからの移籍馬であるBelfast BanterやSong For Someoneといった馬も存在し、これらの馬がどこまで本調子であったのかは今後よく検討しなければならないとしても、それでもこのパフォーマンスは衝撃的であろう。今後はLonesome Gloryに向かうようだが、その走りには引き続き注目したい。

Jonathan Kiser Novice Stakesで3着に入ってきたGoing Countryが2着。140lbと最軽量を背負っていたこともあるのだが、とはいえ3着のRediceanに5馬身差をつけており、レース振りとしても完全に勝負を捨てて着狙いに行っているわけではない辺り、今後が楽しみな馬である。アイルランドのDanny Mullins騎手も上手く乗ったと言えるだろう。Belfast Banterが4着で、Great MeadowのDavid Semmes Memorial (G2)では重馬場に泣いたとはいえ、今回は完全なる良馬場であるだけにやや言い訳の出来ない敗戦である。これがアメリカ移籍後初戦となるSong For Someoneもいたのだが、どうにもぱっとしないレース振りで5着と大敗。イギリス時代から良馬場の方がいい馬ではあったのだが、ここまで負けるのはやや残念な内容であった。前走A.P. Smithwick Memorial (G1)を勝った牝馬Down Royalもいたのだが、今回は後方から何もできずに大敗に終わった。

 

8/21(日)

Waverley RC @ Waverley (NZ) Heavy10

〇 Pioneer Brand Products / Murdoch Contracting Maiden Hurdle MDN HDL 3000m (Replay)

2. Verry Flash J: Dean Parker T: Kevin Myers

Verry Elleegantの全兄Verry Flashが出走しており、レースでは好位から運んだのだが、最終障害を越えて後方から伸びてきたRocking Good Timeに差し切られ2着に終わった。Verry FlashFlatではListed勝ちを含む計10勝をあげており、今回がHurdle初参戦となる。全体的に飛越はまだ甘いところがあったのだが、前半から完全に制御を欠いたSoireeが引っ張る荒れた流れを追走し2着に入ったのだから大したものだろう。名門Kevin Myers厩舎の所属ということで、良い馬が障害に転向してくれることは業界にとっても良いことである。勝ったのはRocking Good Timeで、この馬自身は前走初障害でRST OPN HDLにて3着に入っており、実績的には格上の馬であった。乱ペースを後方から追いかけたShaun Phelan騎手の好騎乗もあった。

 

〇 Square / Dickie Direct Open Hurdle OPN HDL 3000m (Replay)

1. Kajino J: Nick Downs T: Diana Kennedy

逃げたAigneに途中からせり掛けて行ったKajinoがそのままRingbolt以下を抑えて勝利した。Kajinoは前走はHawke's Bay Hurdle (PJR)にてThe Cossackの2着に入っている上り馬で、ここではきっちりと結果を残した。The Cossackがオーストラリアに遠征中であり、ニュージーランド国内のHurdle路線が混沌としているのだが、ひとまずその中で頭角を現してきた一頭と言えるだろう。ただ、途中で大きなミスもあり、今回は65kgと斤量的にも恵まれた状況で、レース的にもやはり全体的にさほど厳しいものではなかったことを考えると、あまり手放しで喜べる勝利ではなさそうだ。2着のRingboltも基本的にはPJRクラスでは通用しない馬で、レース水準としてもやや微妙かもしれない。南島に遠征したHey Happyもいたのだが、今回は勝負には加われず4着に終わった。

 

〇 Forest 360 / Ultra Scan RST OPN STP SWP 4000m (Replay)

1. Kiddo J: Shaun Fannin T: Kevin Myers

人気を背負ったHe's Ricが逃げるも、2周目からRaucousが執拗に絡んできて途中から先頭に代わる。しかし最終コーナーからKiddo、さらにはDonardoが上がってくると、KiddoとDonardoとの叩き合いはKiddoに軍配が上がった。

KiddoはSteeplechaseでは初勝利とした。ニュージーランド障害競馬においてはもはやお馴染みとなった馬で、Ready Eddieが勝利した2017年のGrand National Hurdleにも参戦し、4着に入っている。Steeplechaseはもはや遡れば2017年に初参戦、RST OPN STPにてThe Foxの2着と、もはや共に戦ってきた馬は一昔前のものばかりで、まるで歴史の生き証人といったところだろう。前走Steeplechase10戦目にして嬉しい初勝利を挙げた10歳馬Donardoが2着ということで、なんとも経験のある馬が上位を占める趣深いレースとなった。Raucousは積極的な競馬を見せたが、終盤は完全に脚が上がり、勝負所での飛越には大きなミスがあった。そこから立て直して3着を確保するのは大したものである。前走Grand National Hurdles (PJR)にてHappy Starの2着に入ったHe's Ricは積極的に進めたが、Raucousに執拗に絡まれて苦しくなった。

 

その他

Cheltenham reduces crowd capacity to ease pressure on 'stretched' facilities (Racing Post)

2022年は最大で約74000人もの観客数を記録したCheltenham Festivalだが、いくらなんでも混雑し過ぎであるということで最大で68500人に制限するそうだ。当ブログの中の人は2017年にこの開催に参加したが、同年の最終日(入場者数約70000人)はかなりの混雑ぶりで、この制限は過度の混雑を避ける意味では意義があるかもしれない。なお、記事中には"More toilet facilities are also set to be located on roads near the racecourses in response to complaints from local residents of racegoers urinating in gardens and parks."という記載もあり、さすがに酔っ払いが帰り道の道中において立小便をするのは近隣住民にとっては溜まったものではないだろう。

Paradiso au Haras de la Tuilerie pour débuter en 2023 (France Sire)

今年のPrix Aguado (G3)をはじめ3歳Haies路線で3勝をあげたParadisoがフランスにて種牡馬入りするそうだ。複数の活躍馬を送り出している種牡馬Kapgardeの産駒ということだが、母方の血統も優秀で優れたスピード能力を示したことで、障害種牡馬として期待されているようだ。

Prodej dostihového závodiště, Lysá nad Labem (reality iDNES.cz)

O prodeji závodiště v Lysé nemám žádné informace, říká za pořadatelský OS Hipodrom Lukáš Palyza. Majitel své plány nechce komentovat (Fitmin)

チェコLysá nad Labem競馬場を含むエリアが競売に掛けられているそうだ。同競馬場では毎年活発に障害競走が開催されており、その中には比較的高額の賞金が設定され、チェコCross Countryの有力馬を集める競走も行われている。一方で、この競馬場の主催者はこの件については情報を持ち合わせていない旨の回答があったそうだ。

Vítěz Gran Premia Al Bustan ukončil kariéru. Penzi stráví na pastvinách svého majitele Karla Jalového (Fitmin)

2017年のSvenskt Grand National、及びGran Premio Merano (G1)等を制したAl Bustanが引退するそうだ。どうしても年齢的なものもあってか近年は勢いを失っており、今年に入ってからは特に出走もしていなかったのだが、それでも全盛期における抜群の強さは強く記憶に残るものであった。

海外ネットカジノ業者が堂々の日本進出宣言 (Yahoo! ニュース)

直接障害競走とは関係があるわけではないのだが、令和4年6月1日の衆議院予算委員会にて岸田首相より日本国内からのオンラインカジノの利用は違法である旨の見解が明確に示されている。海外競馬に関連してブックメーカーの利用を推奨する悪質なブログ等も存在し、海外競馬ファンの中にはブックメーカーを利用していると思しき人も少なからずいる(しかも、それなりの発信力を持った人もいる)のだが、くれぐれも留意されたい。

タガノエスプレッソが競走馬登録抹消 (JRAニュース)

京都ハイジャンプ (G2)等の障害重賞を3勝したタガノエスプレッソが引退し、タガノフファームで種牡馬入りするそうだ。同馬はブラックタイドの代表産駒であるキタサンブラックと同期である。日本で障害重賞勝ち馬が種牡馬入りする例は少ないのだが、一頭でも多く産駒を送り出してくれることを期待したい。