にげうまメモ

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22/12/11 Weekly National Hunt / Jump Racing

12/6(火)

Tramore (IRE) Soft

〇 Maiden Hurdle 2m50y (Replay)

1. Gaelic Warrior J: Paul Townend T: Willie Mullins

途中から元気よく前に行ったGaelic Warriorがそのままひたすらリードを開くと、終わってみれば2着のLittel Flourに86馬身差をつけて圧勝した。Gaelic Warriorは元々フランスでデビューした馬だが、今年の春にWillie Mullins厩舎へと移籍、Boodles Juvenile Hurdle (G3)にてBrazilの2着に入っていた。Boodles Juvenile Hurdle (G3)ではアイルランド移籍初戦にも関わらず僅差で前に出たBrazilに対して障害馬らしいスピードで圧倒する走りであり、どうにも斜飛する癖があったとはいえ能力的には素晴らしいものを見せていた。当時はPaul Townendがゆったりと乗り過ぎた上に最終障害もミスしたことによりフラットのスピードを持つBrazilに脚を掬われたといったレース振りであったが、内容的には明らかに障害馬としての将来性は勝ち馬を上回っていた。フランスHaiesで数戦の経験があるように障害馬としての成熟度も上であり、さすがにこのクラスの馬がMaiden Hurdleに出てくるというのはいくらなんでも規格外だろう。さらに、メンバー的には前走Maidenで人気薄ながら勝ち馬からは離れた3着に入ったLittle Flourが精々といったところで、Henry de Bromhead厩舎のLucky Zeboも早々に落馬、他のWillie Mullins厩舎の馬、Gordon Elliot厩舎やJoseph O'Brien厩舎といった有力厩舎の馬も出走しておらず、Maidenの中でもメンバー的にはあまりにも手薄であったと言わざるを得ないことを踏まえると、ここまで来ると着差にさほど意味はないとはいえ、このようなレースが展開されることも致し方がないといったところだろう*1

 

12/9(金)

Cheltenham (UK) Good

Dahlbury Handicap Chase (Premier Handicap) 3m2f (Replay)

1. Eva's Oscar J: Alan Johns T: Tim Vaughan

本来この日はGlenfarclas Cross Countryを含むInternational Meetingであったのだが、この週は複数の競馬場において寒波による影響による馬場の凍結が懸念されており、とりあえずこの日のCheltenhamは馬場に覆いをかける等の関係者の尽力によりなんとか開催にこぎつけることに成功した。しかしながらCross Country Courseまでの対応は難しかったようでCrystal Cupの最終戦は中止となり、レースを見ているとやはり馬場の一部には凍結が生じていた箇所もあるようで、関係者の苦労が偲ばれる開催となった。

レースはじわじわと前に行ったCommodoreが先頭で進める展開も、最終コーナーから後続が接近。ここから出てきたEva's OscarがSpiritofthegamesとの叩き合いを制して勝利した。Eva's Oscarは重賞は初勝利とした。前走のJewson Handicap Chase (Premier Handicap)ではDoes He Knowの2着に入っていたように調子もよく、そこから一気に斤量的にはきつくなったものの結果を残した。Novice上がりの勢いのある馬ということで楽しみはありそうだが、とはいえ良績はほぼ良馬場に集中していることには留意すべきだろう。この路線ではすっかり常連となったSpiritofthegamesが2着。連覇を狙ったCommodoreはこの馬のリズムで進めたが、昨年の10st0lbから2stも斤量が増えており、さすがに最後は後退して5着に終わった。

 

12/11(日)

Cork (IRE) Yielding to Soft

Stayers Novice Hurdle (G3) 3m (Replay)

1. Hiddenvalley Lake J: Rachael Blackmore T: Henry de Bromhead

結局この州は寒波及び大雪の影響で土曜日のCheltenhamや日曜日のPunchestownといった開催は中止になり、土曜日の障害競馬開催は全滅、日曜日はこのCorkとSouthwellのみが開催にこぎつけることに成功した。

レースはCool SurvivorとMenbeg Parkが前に行くも、最終障害前で内を掬って出てきたHiddenvalley LakeがMonbeg Park以下を振り切って勝利した。Hiddenvalley Lakeはex-pointerで、Irish Point-to-Pointでの唯一の出走となったMaidenでは空馬につり出される形で競争中止に終わっている。"Under Rules"ではMaidenからこれで連勝とした。この時期の24fということもあるのだが、とはいえ全体的に完成度のある馬が揃った中をしっかりと抜け出して勝利したことは今後につながる内容で、なかなか将来性のありそうな馬のようだ。これがHurdleでは3戦目となるMonbeg Parkが2着で、Walk in the Parkらしいいいスピードの持続性能を見せていた。

 

O'Flynn Group Irish EBF Mares Novice Chase (G2) 2m160y (Replay)

1. Impervious J: Brian Hayes T: Colm Murphy

人気のDinoblueが軽快に引っ張るも、残り2障害あたりから番手にいたImperviousがこれに接近。最終障害を越えてImperviousがDinoblueを振り切って勝利した。

ImperviousはこれでChaseは2戦2勝とした。いちおうHurdleではEBF Mares Novice Hurdle (G3)の勝ち鞍がある馬だが、とはいえG1クラスでは役者不足であったようで、Chaseでどこまでやれるかといったところだろう。最終障害ではかなりリスクをとった飛越を試みているようにセンスはよさそうだが、とはいえ牝馬限定Novice Chaseということで水準的にはやや疑問が残りそうだ。Irish Stallion Farms EBF Mares Novice Hurdle Championship Final (G1)で4着に入ったDinoblueが2着で、内容的にはこの2頭にあまり差はなさそうだ。

 

Hilly Way Chase (G2) 2m160y (Replay)

1. Energumene J: Paul Townend T: Willie Mullins

前半から元気よく先頭で進めたEnergumeneがそのまま勝利した。Energumeneは昨シーズンのQueen Mother Champion Chase (G1)の勝ち馬で、アイルランド16f Chase路線では現状筆頭格の馬である。ひとまずこれが今シーズンの復帰戦であったが、飛越にも大きな問題はなく実力通りの勝利を収めた。昨シーズンのClarence House Chase (G1)で敗戦を喫したShishkinは今シーズンの復帰戦は案外な結果に終わり、路線変更を示唆している現状、おそらくこの馬がQueen Mother Champion ChaseにおいてEdwardstoneなどを迎え撃つ構図になることが想定される。前走CorkのHandicap Chaseを勝ったEpson Du Houxは途中までついていったがさすがにそこから振り切られ大きく離れた2着に終わった。昨シーズンのNovice Chase路線ではFaugheen Novice Chase (G1)の勝利など活躍を見せたMaster Mcsheeもいたのだが、Energumeneのスピードにさっぱりついていけず、最後は脚が上がり、離れた最後方で頑張って走っていたBorn By The Seaにも交わされたようだ。

 

その他

Honeysuckle crowned Horse of the Year for a second time at the HRI Awards (Racing Post)

先日のHatton's Grace Hurdleでまさかの敗戦を喫したHoneysuckleだがアイルランドのHorse of a Yearに選ばれたそうだ。その他にはA Plus Tard、Allaho、Energumeneが候補だったらしい。

'He really put us on the map' - champion sire and stayer Kayf Tara dies aged 28 (Racing Post)

ThistlecrackやSpecial Tiaraを送り出し、11回ものChampion National Hunt Sireに輝いたKayf Taraが亡くなったそうだ。2020年に種牡馬は引退していたようだが、つい先日もEdwardstoneがTingle Creek Chase (G1)を圧勝しており、そのイギリス競馬に刻んだ影響力は計り知れない。

Princess Zoe could switch to hurdles, says Tony Mullins (Racing TV)

Prix du Cadran等を制した平地の有力なステイヤーであるPrincess ZoeはHurdleに転向する可能性があるようだ。ex-flat horseはここ最近でも数多く障害競走に参戦しているが、ここまでの実績馬が転向してくることはやや珍しい。

Wellunca odchází do chovu. Stáj Hany Kabelkové posílili Sapienti či slovenský Star (Fitmin)

Talentを管理するHana Kabelková厩舎のシーズンオフの動向に関する記事。どうやらTalentは現役を継続するようで、Cheltenhamの遠征もプランにあったようだが膝関節の故障で取りやめたようだ。面白いところではPrix Du Cadranに出走したSapientiや元々スロバキア調教馬のStarなどが同厩舎の障害競馬のメンバーに加わるようだ。

Warrnambool Racing Club Hall of Fame Announcement (Country Racing)

WRCは同Racing Clubの殿堂を設立するそうで、どうやらこれは2023年に最初の殿堂入りが発表されるようだ。Grand Annual Steeplechaseの開催クラブとして150年の歴史を誇る同クラブが障害競馬の歴史の保存に貢献することが期待される。

「障害絶対王者」オジュウチョウサンの種牡馬入り 種付け料は100万円の予定 (netkeiba)

今年の中山大障害を最後に引退を予定しているオジュウチョウサンは坂東牧場で種牡馬入りを予定しているそうだ。なにより興味深いことは、坂東牧場は当面の受け入れ先であり、種牡馬を専門にけい養している牧場などの受け入れ先を探している旨の記載があることだろう。フランスやイギリス、アイルランド等には多数の障害種牡馬が存在しており、当然障害種牡馬を専門にけい養する牧場も存在する。日本よりも遥かに種牡馬としての需要はあると思われるが、どうだろうか。

*1:なお、例によって某競馬メディアのtwitterアカウントが反応しているが、案の定、例によって当ブログに訪問されている賢明なる皆様にとっては大喜利大会が繰り広げられており、興味のある方はご笑覧されたい。