にげうまメモ

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24/03/13 National Hunt Racing - Cheltenham Festival -

3/13(水)

Cheltenham (UK) Soft (Heavy in places)

Gallagher Novices' Hurdle (G1) 2m5f (Replay)

1. Ballyburn (IRE) J: Paul Townend T: Willie Mullins

Leopardstownで圧勝劇を見せ、その動向が注目されていたアイルランドのBallyburnが圧倒的な人気を背負っていた。レースは逃げると思われたIle Atlantiqueが控える代わりに同厩舎のMercureyが先頭に行く展開で、かなり頭を下げた走法が特徴的なBallyburnは好位から進める。これを追いかけてHandstands、Jingko Blueのイギリス勢。好位にいたBallyburnは手ごたえ良く残り2障害辺りから前に出ると、そのままJimmy Du Seuil以下をあっさりと突き放して勝利した。

BallyburnはLeopardstownのTattersalls Ireland 50th Derby Sale Novice Hurdle (G1)にてSlade Steelを7馬身突き放して勝利してきた馬で、これでHurdleは3連勝とした。Slade Steelがこの前日にやや鞍上の好騎乗に助けられた感もあるとはいえきっちりと勝ち切ったことを考えるとこの馬の高評価は自然な流れで、ある意味では期待に応えた結果となる。やや現時点では行きたがって走るような仕草もあるのだが、とはいえ若馬としてはありがちな仕草であり、ここでのスピードの持続性能を含めた運動能力では明らかに抜けたものを見せていることを踏まえると、13馬身差の圧勝という結果も納得の内容だろう。陣営が言及しているように*116f Hurdleや距離延長、Chase転向を含めて様々な可能性を持った馬で、これまでにも様々な活躍馬を送り出しているFlemensfirthの産駒としてはまさにその良さを存分に持った一級品だろう。今シーズンのNovice Hurdleにおいて卓越した能力を示した一頭として引き続き大いに期待しておきたい。

同厩舎のJimmy Du SeuilはMaiden勝ちのみの馬だが、見せ場を作って2着に入った。勝ち馬とは身体能力の面で明らかに異なってはいるのだ、この馬なりに引き続き期待したい。3着のIlle Atlantiqueは前走Lawlor's of Naas Novice Hurdle (G1)にてReadin Tommy Wrongの2着に入った馬で、今回は戦術を変えてきてのレースとなった。ただしこのあたりはあまり経験の多くはない馬で、特殊なCheltenhamでのコースということも考えると現時点での順位付けにあまり意義があるようには思えない。4着のMercureyもMaidenを圧勝してきた馬で、いずれにせよこのあたりは今後上積みに期待したい。同厩舎のPredators GoldはここまでLeopardstownのG1で2着に入った馬だが、今回は見せ場を作れず、ここまでの実績的には案外な敗戦となった。Handstands、Jingko Blueと7頭中2頭を占めたイギリス勢はいずれも大敗で、7頭中5頭出しとなったWillie Mullins陣営が1~5着を占めるという、なんとも思うところのあるレースとなった。

 

Brown Advisory Novices' Chase (G1) 3m110y (Replay)

1. Fact to File (FR) J: Mark Walsh T: Willie Mullins

距離を延長して挑んで来たFact To Fileが人気になっていた。レースはStay Away FayとMonty's Starが前に行くも、途中からSandor Cleganeが絡んでいきStay Away Fayと並んでレースを引っ張る形になる。途中から脱落したStay Away Fayを残してSandor Cleganeが前で引っ張るも、好位から抜けてきたFact To Fileが残り2障害辺りで前に出ると、そのままMonty's Starを振り切って勝利した。

Fact To Fileは前走のLadbrokes Novice Chase (G1)に続いてG1を連勝とした。前走は結果的にオーバーペース気味に引っ張ったGaelic Warriorを途中で交わしての勝利であったが、今回はそのレースは単に元気よく走り過ぎたGaelic Warriorの自爆ではなかったことを示したことになる。Hurdleを経ずにChaseに参戦するというやや変わった経歴の馬で、陣営がこの馬に見出したポテンシャルも含めて興味深い一頭だろう。ただし今回は前で競り合ったStay Away FayやSandor Cleganeを見ながら進めた利もあり、加えてやや前向きにレースを運んでいたことを考えると、24fでも勝ち切ったとはいえこの距離への適性についてはもう少し慎重に考えた方が良いかもしれない。どうやら陣営としてはGold Cupを目標にするようだ*2。同様に上手く運んだのがMonty's Starで、Sandor Cleganeが絡んで来た辺りであっさりと引いたRachael Blackmore騎手の好騎乗があった。2020年のMinella Indoのレースの反省を感じさせるレース運びであった。

後方から進めたGiovincoが3着。ただしKing George VI Chase (G1)ではIl Est Francaisに対して完敗に終わっており、今回も上位2頭と同様に展開を生かしての浮上であることを考えると、レース全体としてIl Est Francaisに肉薄するものであるかについては疑問が残る。途中からやや押して前に出ていったSandor Cleganeは前から10馬身ほど離れた4着で、だいぶ強気に出ていくというレース運びを考えれば頑張った方だろう。残念な競馬に終始したのがJack Kennedy騎手のAmerican Mikeで、Mahler産駒の航行能力の高さをひたすら殺しつつ、結果的に馬のリズムが狂ったのか飛越においてもミスを連発していた。今回のレースは度外視した方が良いだろう。12月のEsher Novices' Chase (G2)を勝ったStay Away Fayは前々で運んだが早々に脱落しての途中棄権で、結果的にはSandor Cleganeのチャレンジに付き合ったことが裏目に出た結果と言えるだろう。

 

Coral Cup Handicap Hurdle (Premier Handicap) 2m5f (Replay)

1. Langer Dan (IRE) J: Harry Skelton T: Dan Skelton

Cheltenham恒例の20f Handicap Hurdle。レースはBeacon Edgeなどが前に行くも例によって馬群は密集し進行。この中から出てきたLanger Danがじわじわと外に進路を取りながら抜け出すと、追いすがるBallyadamやShanbally Kidなどを振り切って勝利した。

Langer Danはこのレースは連覇とした。2022年にAlder Hey Aintree Handicap Hurdle (G3)を勝った馬で、それ以外はどうにもパッとしない成績に終わっているのだが、どうにもCheltenhamのHandicap戦を含め、このような多頭数のHandicap Hurdleの大舞台においてはピンポイントで力を発揮してきている。今シーズンは例によってClass2にてさっぱりいいところはなく終わっており、どうやら冬にトラブルがあったようだが*3、いきなりここで11st8lbを背負って勝利するのだから大したものである。先日競争馬の個人購入に関する問題で罰金を受けたDan Skelton陣営にとっては励みとなる勝利となった*4。Langer Danと同様に馬群の中をすり抜けてくるレースで見せ場を作ったのがRachael BlackmoreのBallyadamで、上位馬のレース運びを考えるとだいぶ馬場としては前日と比べると良くなってきたような印象がある。いずれにせよ、11st8lbのLanger Dan、12st0lbのBallyadamと、斤量上位馬が上位を占める結果となった。

 

Queen Mother Champion Chase (G1) 1m7f199y (Replay)

1. Captain Guinness (IRE) J: Rachael Blackmore T: Henry de Bromhead

イギリス勢の代表格として期待されていたJonbonの回避もあってかアイルランドのEl Fabioloが圧倒的な人気を背負っていたが、前半の障害で大きなミスをするとそのまま途中棄権。Edwardstoneが元気に逃げる展開も、これにCaptain Guinnessが接近すると、追ってきたGentleman De Meeを振り切って勝利した。

事前の段階ではEl Fabiolo、Jonbon、Edwardstoneとタレント揃いのレースが展開することが想定されたが、予想外の結果となった。El Fabioloの競争中止は大きなミスによりPaul Townend騎手が大事を取ったもので、いずれにせよあまり悲観する内容ではないだろう。前走でもペースが緩んでいた前半にもたもた走るところを見せており、ある程度スピードに乗せて走った方がいいのかもしれない。一方で前走のNewburyのGame Spirit Chase (G2)で圧勝劇を演じたEdwardstoneは前走のイメージがあったのか特に工夫もなく飛ばす形を作ったが、スピードが生きるシンプルなNewburyのコースと異なり、起伏がありスピードの細かい調整が必要なCheltenhamでは同じ形で勝ち切ることは難しい。Edwardstoneは残り2障害で落馬に終わったが、それ以前にCaptain Guinnessに勢いの点で劣っており、Gentleman De Meeがあっさり引いたことでハナを切ることができたのは良かったのだが、Kayf Taraの傑作であるこの馬の卓越した加速力を生かすうえでもう少し工夫があってもよかったものと思われる。

Captain Guinnessは嬉しい戴冠となった。ここまで16f ChaseではG1戦線で常連として頑張ってきた馬で、比較的豊富なスピードを生かしてこれまでにも何度も好勝負を演じてきている。なかなか上位勢を相手に勝ち切ることはできなかったのだが、今回はEl Fabioloをはじめ有力馬が脱落する中、この馬のできることをしっかりとやり切ったという結果だろう。どうやら昨年末には心房細動もあったそうで、陣営にとっては嬉しいレースだろう*5。Gentleman De MeeのMark Walsh騎手は最初からEdwardstoneを前に行かせることを狙っていたようで、結果的に特に工夫もなく引っ張ったTom Cannon騎手のペース配分がこの馬には向いた形になった。Funambule Sivola、Elixir De Nutzのイギリス勢2頭はさっぱりこのペースについて行けずの大敗で、トップクラスの16f Chaseのペースについていくことが出来る馬がイギリスに殆どいないというのはさすがに寂しいものがある。

 

Johnny Henderson Grand Annual Challenge Cup Handicap Chase (Premier Handicap) 1m7f199y (Replay)

1. Unexpected Party (FR) J: Harry Skelton T: Dan Skelton

例によってドイツ生産馬Calicoなどが前に行くも馬群は密集して進行。残り4障害辺りからUnexpected Partが先頭に代わり、コーナーを回ってPath D'Oroux、Libberty Hunterなどが進出するも、これらを振り切ってUnexpected Partyが勝利した。

Dan Skelton陣営はこの日2勝と、不調が続くイギリス勢の中では唯一気を吐いた。Unexpected PartyはこれがNoviceは2シーズン目となる馬で、今シーズンは10月のChepstowのListed競走を勝利している。Noviceクラスではその後Henry VIII Novices' Chase (G1)等に出走するも結果を残せなかったようで、基本的にはHandicap路線向きの馬といったところだろう。ただし最近は特に問題となってはいないようだがWind Surgeryを2回繰り返している馬で、このあたりにはやや注意しておきたいところである。NoviceのClass3及びClass4と連勝してきたLibberty Hunterが2着。アイルランド勢として最先着を果たしたのが3着のPath D'Orouxとなった。フランスの名手James Reveley騎手がMadaraに騎乗して参戦していたが、中段の外から進めるも終盤に失速、離れた9着に終わった。

 

〇 Champion Bumper (G1) (NHF) 2m87y (Replay)

1. Jasmin De Vaux (FR) (AQPS) J: Mr Patrick Mullins T: Willie Mullins

後方から進出したJasmin De VauxがRomeo Coolio以下を振り切って勝利した。Jasmin De Vauxはフランス生産馬だがex-pointerで、これでNHFは2連勝とした。好調が続くWillie Mullins陣営にとってはこれがCheltenham Festival100勝目の区切りの勝利ということになった。Gordon Elliott陣営のRomeo Coolio、AQPSのJalon D'Oudariesと続いた。Gemix産駒のFishery Laneも出走していたが、後方から脚を伸ばすも5着まで。さすがに最後方に近い位置取りからでは厳しいようで、あまり差のない5着に入ったというのは上出来だろう。それにしても1~7着までをWillie Mullins陣営とGordon Elliott陣営の馬が占め、イギリス勢で最先着が8着のRoyal Infantryというのは少々寂しいものがある。