にげうまメモ

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24/03/14 National Hunt Racing - Cheltenham Festival -

3/14(木)

Cheltenham (UK) Soft

Turners Novices' Chase (G1) 2m3f168y (Replay)

1. Grey Dawning (IRE) J: Harry Skelton T: Dan Skelton

距離延長で挑んで来たアイルランドの良血馬Facile Vegaが人気の中心になっていたが、イギリス勢であるGrey DawningやGinny's Destiniy、Irokoといった馬も高評価を受けていた。レースはHarry CobdenのGinny's Destiniyが積極的に引っ張る展開で、これを追いかけてGrey DawningやDjelo。その後ろにZanahiyr、Facile Vegaなど。そのまま前を走ったイギリス勢3頭は元気に引っ張って後続を突き放し実況のテンションも上がる。直線を向いて脱落したDjeloを残してのGrey DawningとGinny's Destinyのマッチレースは最終障害手前で前に出たGrey Dawningに軍配が上がった。

Cheltenham Festival3日目にしてイギリス勢はようやくG1勝利となった。Grey DawningはFlemensfirthの産駒で、前走はWarwickのHampton Novices' Chase (G1)を勝利していた。今回は再度24fから20fに戻してのレースであったが結果を残した。Flemensfirth産駒らしい伸びやかでパワーのあるストライドが武器の馬で、行きたがる素振りを抑えることを目的にしてかGinny's Destinyのポケットに入るレースをしており、この競馬では同馬の武器を殺す可能性もなきしにもあらずであったが、結果的にGinny's Destinyがかなり積極的に引っ張ったことが奏功したようだ。2着にはCheltenhamのClass2でGrey Dawningを下してきたGinny's Destinyが入った。ここまでCheletenhamばかりを使っているCourse Specialistで、他の競馬場でのパフォーマンスを見てみたいところだが、Paul Nicholls厩舎のレース選択からするとこのコースにこだわる可能性もあるかもしれない。3着には昨年12月のNoel Novices' Chase (G2)を勝ったDjeloが入り、イギリス勢が1~3着とイギリス人を大喜びさせる結果となった。

アイルランドのZanahiyrは後方から押し上げるも前には迫れず。前がかなりうまく運んだ印象もあるが、ともかくこれがChase3戦目の馬としては頑張った方だろう。人気になっていたFacile Vegaは距離を気にしてか慎重なレースに終始しており、かつこの馬の気持ちを切らさないようにと外に出してスムーズに進めていたようだが、さすがにこのレース運びではどうしようもない。能力のある馬であることは間違いないのだが、どうにもここ最近のレースを見ていると乗り方が難しい馬となりそうだ。11歳のベテランSharjahは後方から進めるもいいところなし。12月のHenry VIII Novices' Chase (G1)を勝ったLe Patronは早々に脱落して途中棄権、フランスからの移籍初戦のJamaicoもまた途中棄権となった。

 

Pertemps Network Final Handicap Hurdle (Premier Handicap) 2m7f213y (Replay)

1. Monmiral (FR) J: Harry Cobden T: Paul Nicholls

JJ SlevinのPrairie Dancerが出ムチを入れて出ていく展開も馬群は固まって進行。早々に馬群に飲み込まれたPrairie Dancerに代わり途中からFlight DeckやKyntaraなどが引っ張る形となるも、残り2障害辺りからKyntaraが先頭に。しかし馬群を縫って出てきたMonmiralがKyntaraを捉えて勝利した。

Monmiralは2021年のAintreeのDoom Bar Anniversary 4YO Juvenile Hurdle (G1)以来の勝利とした。2021年のタイトルの後はHurdle路線に留まって重賞戦線に参戦するも勝ち星は上げられず、Chaseでもいいところはなくと苦労していたようだ。今シーズンも再度の挑戦となったChaseで結果を残せず、前走の2月のClass2でHurdleに戻していた。斤量面としても10st12lbとだいぶレーティング的にも全盛期から比べると下げており、単勝25倍と低評価であったがようやく結果を残した。どうにも適性がわかりにくい馬ではあるのだが、Juvenile Hurdleの段階では世代トップクラスの能力を示していた馬が戻って来たということは喜ばしいことだろう。Charlie DeutschのKyntaraは積極的な騎乗で見せ場を作った。今シーズンはClass4で2勝、その後は連続で2着と好調だったようで、いずれにせよ大厩舎の所属ではない馬がここで見せ場を作ることは良いことであろう。Sam Twiston-DaviesのCuthbert Dibbleが3着。Nicky Henderson厩舎のBold Endeavourは一瞬外から伸びかけたが、最後は4着に終わった。

 

Ryanair Chase (G1) 2m4f127y (Replay)

1. Protektorat (FR) J: Harry Skelton T: Dan Skelton

連覇を狙うアイルランドのEnvoi Allenが人気の中心となっていた。レースはHarry CobdenのStage Starが積極的に出ていく展開で、これを好位の外からAhoy Senorが追いかける。内からProtektorat、その後ろからEnvoi Allenなど。勝負所から外からHitmanなどが接近しこれに被される恰好となったBanbridgeは後退。するすると出てきたEnvoi Allenがそのまま抜け出しを図るが、内から抜けてきたProtektoratがEnvoi Allenを振り切って勝利した。

ProtektoratはBetfair Chase (G1)で高いスピード能力によりEldorado Allenなどを圧倒した馬だが、その後は24fを使うもどうにもいいところがなく終わっていた。今シーズンはWind Surgeryから復帰するも勝ち切ることはできず、今回は20fに距離を短縮してきた結果となる。24fだとやや距離が長すぎるような感もあるのだが、この馬の持っているスピード性能はいいものがあり、これが20fの距離にてStage Starがある程度締まったペースで引っ張ったレースにて発揮された結果だろう。やや行きたがるようなところもある馬だが、好位の内で我慢をしつつこの馬のスピード性能を殺さないよう早々に抜けてきたHarry Skelton騎手の好騎乗もあった。連覇を狙ったEnvoi AllenはCourse Specialistらしい安定したレース運びを見せたが、最後はProtektoratに振り切られての2着。この馬のやることはやり切っており、今回は勝ち馬を褒めるしかなさそうだ。

3~4着にはConflated、Capondannoと24fで実績のある馬が入った。Conflatedは今シーズンはアイルランドの24f ChasaeのG1を転戦するもいずれも終盤において落馬に終わっており、今回はようやくまともに走った結果となった。やはり20fのStage Starのペースではやや追走で苦労する感もあり、距離的にはもう少しあった方がいいだろう。前走Cotswold Chase (G2)を勝ったCapodannoが4着で、24fの馬が最後浮上してきたということを考えると、レースとしては20f以上の適性を求められるものであったと考えてよさそうだ。そのペースを作ったStage Starは最後失速しての5着。Ahoy Senorにかなりプレッシャーを受けながら走っており、もう少しスムーズに進めることが出来ればといったところだろう。案外であったのがBanbridgeで、外からHitmanが来た辺りからあっさり脱落し、離れた最下位に終わった。

 

Stayers' Hurdle (G1) 2m7f213y (Replay)

1. Teahupoo (FR) J: Jack Kennedy T: Gordon Elliott

アイルランドのTeahupooが人気になっていたが、連覇を狙うSire De Berlais、AintreeのGrand National (Premier Handicap)の勝ち馬Noble Yeats、ベテランPaisley Park、Hurdleに戻してきたFlooring Porterなど、なかなか個性的な面々が集まったレースとなった。レースはAsterion Forlongeが前に出てくる展開も、途中から好位にいたFlooring Porterが先頭に代わる。そのままFlooring Porterが淡々と引っ張るも馬群は密集して進行。Flooring Porterはコーナーを回っても前で抵抗し逃げ込みを図るも、これを好位から抜け出してきたTeahupooが捉えて勝利した。

Flooring Porterは元々快速を生かした自在なペース調整により2021~2022年とこのレースを連覇した馬で、今シーズンはChaseに転向するも結果を残せず、今回はHurdleに戻してきた形となる。スタート直後はやや積極的に前に出たAsterion Forlongeを前に行かせるも、ある程度ペースが緩みかけたところでスピードを生かして前に行き、例によってこの馬のペースを作っている。Teahupooは昨年の2着馬で、今年は嬉しい勝利とした。今シーズンはHatton's Grace Hurdle (G1)を快勝してここに挑んできており、Flooring Porterのペースへの対応力を含め、ここでは総合力の面で上回っていた。CheltenhamのSpecialistというよりは総合力の面で素晴らしいものを持っているタイプで、おそらく同じメンバーでLeopardstownやPunchestown、Ascotといった異なる競馬場でレースを行った場合でも同様に上位争いを繰り広げてくれるだろう。逃げたFlooring Porterが2着に入った。小回りの利く飛越でスピードを生かしたペース調整を武器とする馬で、Chaseではやや飛越に苦労するようなところがあるのだが、やはりこの馬はHurdleにおいて自在にペースを操ってこその馬だろう。

今回は初めてブリンカーを付けたHome By The Leeが3着。ここのところはさっぱりいいところがなく終わっていたのだが、ブリンカーの効果か今回は見せ場を作った。2022年のChirstmas Hurdle (G1)を勝ったのちは凡走が続いていたりといまいち信用が置けない馬ではあるのだが、ブリンカーの効果があったのであれば楽しみにしたい。内から抜けてきたのがBuddy Oneで、ここまで重賞クラスでの実績はなくCheltenhamのClass2を勝った程度の馬であったのだが、ここでまさかの激走となった。LeopardstownのChristmas Hurdle (G1)では途中棄権に終わっていた馬で、これが単なるフロックであるのかは注意した方がいいだろう。昨年の勝ち馬Sire Du Berlaisは後方からじわじわと押し上げるも5着までで、やはりFlooring Porterのペースの中では後方からの押し上げは難しい。この馬のやることはやっての結果だろう。やはり気の毒であったのがNoble YeatsやDashel Drasher、Paisley Park、Cramboといったイギリス勢で、ここのところはDahsel Drasherのペースで戦ってきた面々はFlooring Porterの作り出すペースに対応できずに終わった。どの馬も展開次第ではチャンスがあったものと思われる。なお、12歳のPaisely Parkはこれで引退のようで、ここまで長らく24f Hurdle路線で活躍してきた名馬にとって、展開的には少々気の毒な内容となった。

 

TrustATrade Plate Handicap Chase (Premier Handicap) 2m4f127y (Replay)

1. Shakem Up'arry (IRE) J: Ben Jones T: Ben Pauling

Danny MullinsのGlengoulyやFighter Allen、Straw Fan Jackなどが前に行くも例によって馬群は固まって進行。残り5障害辺りからCharlie DeutschのFrero Banbouが前に出て元気に引っ張るも、残り2障害辺りから前に出たShakem Up'arryがCrebilly以下を振り切って勝利した。

Shakem Up'arryはFlemensfirthの産駒で、Ballyburnや上記Grey Dawningに続いてのFlemensfirth産駒によるFestival勝利とした。この馬自身は昨年のこのレースは3着に入っているのだが、1月のCheltenhamでのPaddy Power New Year's Day Handicap Chase (Premier Handicap)に続いての重賞は2連勝とこの馬自身も勢いに乗っている。年齢的にも10歳と円熟期に入っており、11st5lbと斤量的にもそれなりに背負っていたことを考えると、なかなか価値のある勝利である。昨年12月のCoral Gold Cup (Premier Handicap)では6着と敗れているのだが、20fであれば楽しみな存在だろう。Novice馬のCrebillyが11st2lbを背負っての2着。Sheila Lewis厩舎のStraw Fan Jackが3着と、イギリス勢が上位を占めた。トップハンデを背負っていたのは母にKing's Daughterを持ち、兄弟にGoliath Du Berlaisなどがいる良血James Du Berlaisで、こちらは中段からじわじわと進出するも最後は脱落して7着に終わった。フランスでは重賞2勝、Prix Renaud Du Vivier (G1)での2着など鳴り物入りアイルランドに移籍した馬だが、移籍後はBeginners Chaseを勝利したのみで案外な成績となっている。

 

Ryanair Mares' Novices' Hurdle (G2) 2m179y (Replay)

1. Golden Ace (GB) J: Lorcan Williams T: Jeremy Scott

単勝125倍のVictoria Milanoがやや後続を引き離して逃げるも、早々にペースが緩み後続が殺到。ここから外を回って抜けてきたGolden AceがBrighterdaysaheadを退けて勝利した。

Victoria Milanoは前走SandownのClass3のNovice戦を勝ったばかりの格下の馬で、序盤は元気よく逃げたとはいえそこからJack Tudor騎手がしっかりと抑えを掛けたことでペースは緩んでいる。Golden AceはTauntonのClass3を含めHurdleでは3戦3勝とした。ここでイギリスの小規模な厩舎の馬が勝利したことは喜ばしいことで、イギリス生産馬としては3日間を通じて初のCheltenham Festival勝利となったが、とはいえレースとしてはほぼ終いの瞬発力勝負といった内容であったことには留意すべきだろう。Down RoyalのEBF Mares' Hurdle (G3)を含め5戦5勝で挑んで来たBrighterdaysaheadは瞬発力勝負でGolden Aceに敗れての2着。ThurlesのMares Listedを勝ってきたBirdie or Bustも差のない3着と、アイルランドの実績馬はいずれも惜敗となった。もったいなかったのはFairyhouseのSolerina Mares Novice Hurdle (G3)を勝ったJade De Grugyで、こちらは勝負所で内で行き場をなくし、直線に向いてから慌てて追い出すもやや遅れての4着に終わった。

 

〇 Fulke Walwyn Kim Muir Challenge Cup Amateur Jockey's Handicap Chase (Class 2) 3m2f (Replay)

1. Inothewayurthinkin (IRE) J: Mr Derek O'Connor T: Gavin Cromwell

遥か後方から進めたInothewayurthinkinがじわじわと進出すると、そこからGit Maker以下を8馬身ほど突き放して勝利した。アマチュア騎手限定の多頭数競走にはありがちな展開で、ハイテンションで引っ張った結果前がオーバーペース気味になり隊列が長くなることはしばしば生じるのだが、この展開をDerek O'Connor騎手は冷静にレースを進めていたというのはさすがというしかないだろう。InothewayurthinkinはFaugheen Novice Chase (G1)ではGaelic Warriorの3着があるNovice馬で、ここでは12st0lbという厳しい斤量を背負っていたが結果を残した。まだ6歳と若い馬で、Derek O'Connor騎手の騎乗も素晴らしかった一方、この馬自身もこの条件で結果を残すのだから大したものである。3m2f戦ということを考えるとこの超長距離戦で楽しみな一頭だろう。今シーズンは計3勝と好調のGit Makerが2着に入った。