にげうまメモ

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23/03/14 National Hunt Racing - Cheltenham Festival -

3/14(火)

Cheltenham (UK) Soft

Supreme Novices' Hurdle (G1) 2m87y (Replay)

1. Marine Nationale J: Michael O'Sullivan T: Barry Connell

Cheltenham Festival第1レース。スタート直後からRare Editionがある程度主張して前に出てくるも、High Definitionとの並走状態で馬群を引っ張ることになる。Facile Vegaは中段から、それを見ながらIl Etait Emps、Marine Nationale。馬群は密集して進行するも、残り3障害あたりから好位の外にいたChasing Fire、さらにFacile Vegaが一気に進出。そのまま抜けてきたFacile Vegaか逃げ込みを図るも、これに接近したMarine Nationaleが最終障害を越えてFacile Vegaを抑えて勝利した。

残り3障害辺りでCheltenhamは極端な下り坂に差し掛かるのだが、ここでChasing  Fire、さらにFacile Vegaが一気に内に切れ込むようなスパートを見せており、結果的にこのFacile Vegaのスパートに対抗するだけの加速力を持たない馬が内に閉じ込められ、Cheltenhamのコースにおいて最も重要な下り坂を利した加速に失敗している。上位勢はほぼこの地点でコースの外側にいた馬で占められており、それはやや馬群の後ろから馬の動きを見ながら立ち回ることに成功した馬のみであった。Marine NationaleはHurdleは3戦3勝とした。FairyhouseのRoyal Bond Novice Hurdle (G1)を勝った馬で、Dublin Festival組と比較するとメンバー的にどうかという感はあったのだが、今回はFacile Vegaをターゲットに見ながらのレース運びで、Michael O'Sullivan騎手の素晴らしい好騎乗もあって結果を残すことに成功した。レース運びとしてもこの中では安定したものを見せており、以下のとおりFacile Vegaとの着差を鵜呑みにすることはできないのだが、やはり現時点での完成度も含めてパフォーマンスとしては一枚上手であったと考えていいだろう。一方のFacile VegaはLeopardstownでHigh Definitionに絡まれてオーバーペース気味にレースを運び、結果的に大敗したことを考慮して中段から進めた可能性もあるのだが、やはりWalk In The Parkらしいスピードの持続性能を武器にした馬で、本来は前々でこの馬のリズムで運んだ方が力を発揮するように思える。最終障害での大きなミスも痛かった。

上記の展開を大きく利して3着に食い込んだのがFrankel産駒のDiverge。展開利が大きかったとはいえMaidenを勝ったばかりの馬としては上出来だろう。フランスでは平地を使っていた馬のようで、厩舎的にはDual Purpose Horseとなる可能性もあるのだが、これがフロックでないかは注意しておきたい。LeopardstownではFacile Vegaを下したIl Etait Tempsは同様にFacile Vegaを見ながら進めたが、やはり展開がなにかしら壊れないと逆転は難しいようだ。馬としてもJukebox Juryの小兵といったところで、Cheltenhamのようなダイナミックな展開を求められるとやや厳しいような感もある。いろいろな意味で注目の的になっていたHigh Definitionは今回はまともにレースに参加しての7着に終わった。さすがに下り坂であそこまで後続に急激に来られると厳しいものがある。とはいえLeopardstownの完成度を考えるとまともに飛越してレースに参加していただけでも大したもので、最後まで大きく脚が上がることなく頑張って走っていたことを考えると、一介のex-flat horseとしてはあまり考えない方がいいのかもしれない。イギリス勢で最先着を果たしたのは9着のStrong Leaderで、いちおうTolworth Hurdle (G1)の勝ち馬も出走していたとはいえ、イギリス勢全体としてHigh Definitionにすら先着できず、完全に下位を占めるというのは少々情けないものがある。

 

Arkle Challenge Trophy Novices' Chase (G1) 1m7f199y (Result)

1. El Fabiolo J: Paul Townend T: Willie Mullins

イギリスのJonbonとEl FabioloをはじめとするWillie Mullins厩舎勢との対決という構図になっていた。レースは例よってWillie MullinsのDysart Dynamoが飛ばす展開で、これについていけない馬、ついていかなかった馬も発生したため隊列はかなり長くなる。Jonbon、El Fabioloは好位から。後方からSaint Roi、Ha D'Orが進める。Dysart Dynamoは軽快に逃げるも、最終コーナーあたりから後続が接近。内を回って出てきたEl Fabioloが付いてきたJonbonを振り切ると、最後は5馬身ほどの差をつけて勝利した。

El FabioloはChaseは3戦3勝とした。LeopardstownのIrish ArkleではDysart Dynamoが同様に飛ばす展開を後続に大差をつけて勝ち切った馬で、今回も強い競馬を見せた。競馬場として大きく性質が異なるLeoparstownからCheltenhamへの対応が課題であったのだが、ここではもはやそれ以前にスピードの性能を含めて能力の絶対値が違ったという内容で、やや最後は脚があがったJonbonを尻目に一頭素晴らしいスプリントを掛けており、レースとしては完勝だろう。一方のイギリスのJonbonはこの馬のレースはしての2着で、イギリス勢の中で唯一Dysart Dynamoのペースを追走し、Saint Roi以下を完封するのだから大したものである。とはいえEl Fabioloに対してはやや大きく差を付けられてしまったという印象で、この馬にとってはやりやすいDysart Dynamoのペースであったことを考えると、ここからEl Fabioloに対してどのように逆転すればよいかというのはやや頭を悩ませるところではある。

Saint Roiは後方から差を詰めるも、最後は脚が上がって3着まで。Dysart Dynamoのペースに対応するのはさすがだが、とはいえJonbonを含めて上位勢に対してはやや分が悪そうだ。ペースとしてももう少しゆったりと運んだ方がこの馬の瞬間的な機動力を生かせそうな感がある。Dysart Dynamoは最終障害で落馬に終わった。疲労もあってかしばらくは立ち上がれなかったようで一時は心配されたものの特段問題はなかったようで、引き続きこの馬らしいレースを期待したい。なにか小細工をするというよりはこの馬のスピードを存分に生かしたレースを見てみたいところである。Selle FrancaisであるNidor産駒のHa D'Orは後方からじわじわと進めての5着。最後は苦しくなって格下のStraw Fan Jackに逆転されているのだが、とはいえいちおうはレースに参加したというのは考慮しておきたい。イギリス勢は他にも3頭ほど出走していたが、いずれもDysart Dynamoのペースについていけずに終わった。

 

Ultima Handicap Chase (Premier Handicap) 3m1f (Replay)

1. Corach Rambler J: Derek Fox T: Miss Lucinda Russell

Karl Philippe、Happygolucky、Fantastikasなどが前に行く展開もハンデ戦らしく馬群は密集して進行。残り3障害あたりからMonbeg Genius、さらにはThe Goffer、Fastorslowなどが先頭に立つも、馬群を抜けてきたCorach RamblerがFastorslowとの叩き合いを制して勝利した。

Corach Ramblerはこのレースは昨年に続き連覇とした。昨年の段階では10st2lbと裸同然の軽量であったが、今回は11st5lbとかなり斤量を増やしての参戦となる。今年はNewburyのCoral Gold Cup (Premier Handicap)でも4着に頑張っていたように調子もいいようで、どうやらAintreeのGrand Nationalに向けて有力馬の一頭として数えられているようだ。馬群の中を抜けてくるDerek Fox騎手の騎乗は見事なもので、Chaseではこれが9戦目とさほど経験がある馬ではないのだが、ハンデ戦向きの機動力と長い脚を持ち合わせた馬として楽しみな存在になりそうだ。11st9lbを背負ったFastorslowが2着に入った。こちらはDublin Chase (G1)から一気の距離延長と、どうにも使っているレース選択がよくわからないのだが、とはいえG1路線よりはこのようなハンデ戦向きのタイプということは間違いないだろう。なんだかんだで昨年のCheltenhamのCoral Cup (G3)でもCommander of Fleetの2着に入っており、Course Specialistという可能性もありそうだ。10st13lbのMonbeg Geniusが差のない3着に入った。The Goffer、Oscar Eliteは最後遅れて4、5着となった。

 

Champion Hurdle Challenge Trophy (G1) 2m87y (Replay)

1. Constitution Hill J: Nico de Boinville T: Nicky Henderson

もはやこのレースについてなにも言うことはありません。

 

Close Brothers Mares' Hurdle (G1) 2m3f200y (Replay)

1. Honeysuckle J: Rachael Blackmore T: Henry de Bromhead

2020年代アイルランドを代表する名馬Honeysuckleの引退レースということで注目が集まっていた。レースはやや出遅れたShewearsitwellを制してHoneysuckleが前に行く展開も、途中からLove Envoiが先頭に。そのままレースはかなりゆったり流れ、残り3障害辺りから後続が殺到。しかし好位で進めたHoneysuckleがLove Envoiを競り落として勝利した。

Honeysuckleはこれで無事に有終の美を飾ることに成功した。この馬と主戦騎手Rachael Blackmoreが成し遂げてきた偉業はもはやここで改めて語るまでもないだろう。ここのところはほぼ牡馬・セン馬混合戦に参戦していたため、このレースは2020年以来の勝利となる。今シーズンはHatton's Grace Hurdle (G1)の敗戦など、さすがに年齢的なものを感じさせるパフォーマンスであり、牝馬限定戦も2020年のこのレース以来の参戦であったが、内容的にはさすがのものであった。Love Envoiがかなりゆったりとしたペースで引っ張り、残り3障害の下り坂から一気にペースアップするという牝馬限定戦らしいレースであったが、そこでもしっかりと好位でポジションをキープしつつ加速を掛け、マイペースで運んだLove Envoiを下すのだが大したものである。

上がり馬Love Envoiは自身のレースをしたものの、最後はHoneysuckleの加速に屈しての2着。牝馬相手であれば能力上位、さらに完全にこの馬のレースに持ち込んだ騎手の好騎乗があったとはいえ、これではさすがに勝ち馬を褒めるしかないだろう。ここまで前にのんびりと運ばれてしまうと後続は何もできないといったところで、Queens Brookが4馬身ほど離れた3着に来たのが精一杯であった。Honeysuckleと同じく9歳となったイギリスの名牝Epatanteもいたのだが、こちらは特に何もせず大敗に終わった。基本的に20fは距離的に少々長すぎるようで、おそらく同厩舎のConstitution Hillを避けたものと思われるが、条件的にはやや気の毒であった。

 

Boodles Juvenile Handicap Hurdle (Premier Handicap) 2m87y (Replay)

1. Jazzy Matty J: Michael O'Sullivan T: Gordon Elliott

いわゆるThe Fred Winter。日本でもそれなりに話題を集めていたDeep Impact産駒のCougarは当初登録はあったのだが、結局出走はしなかったようだ。レースはPerseus Wayなどが前に行く構えを見せるも、外からSamuel Spade、Bad、Bykerなどがするすると前に出てくる。馬群は例によって密集して進行。最終障害手前からByker、Risk Belleが前に出てくるも、この2頭の間にいたJazzy Mattyが前の2頭を差し切り勝利した。

Juvenile Hurdleらしいスローペースもあってか馬群は極度に密集して進行している。Jazzy MattyはHurdleはMaidenに続いて2勝目とした。前走はRated Novice HurdleでもSir Allenから4馬身差の4着に敗れていた馬だが、今回は終始馬群の外で気分良く進めており、この密集した馬群に付き合うことなく進めたのはMichael O'Sullivan騎手の好騎乗だろう。Doctor Dino産駒らしいパワーと突進力のあるタイプで、下手に馬群に入れて機動力を生かすよりはこのような大味なレースの方が合っている感がある。同様に好位にいたBykerが2着に入った。馬群を強引に縫って出てきたのがRisk Belleで、前々で運んで余裕のあった前2頭と比べるとかなりロスの多い競馬で前に来たことは注意すべきだろう。Galileo産駒の牡馬Sundialも頑張って4着に来た。

 

Wellchild National Hunt Challenge Cup Amateur Jockeys' Novice Chase (G2) 3m5f201y (Replay)

1. Gaillard Du Mesnil J: Mr Patrick Mullins T: Willie Mullins

約20頭近い出走馬を集めた2000年代から比べるとかなり出走馬も減少し、近年では距離も短縮されたりとやや物議を醸している一戦。昨年の6頭に比べれば10頭といちおう頭数は増えたのだが、過去から考えればやや寂しい感は否めない。レースはFakieraが前に行くも、途中からMahler Missionが先頭に。Mahler Missionは軽快に引っ張り、残り3障害辺りでは後続にやや大きなリードを取って逃げ込みを図るも、残り2障害地点で落馬。そのまま前に出たChemical EnergyをGaillard Du Mesnilがとらえて勝利した。

Gaillard Du Mesnilは今シーズンはNeville Hotels Novice Chase (G1)を勝利しており、ここまでアイルランドではG1を3勝している名馬である。とはいえ基本的にスピードの絶対値というよりは、Irish Grand National (Grade A)で3着に入ったりとスピードの持続性能で勝負をかけていくタイプのようで、Brown Advisoryではなくこちらに回ってきたことはおそらく意図的なのだと思われる。やや今回は大事に乗り過ぎた感もあり、Mahler Missionのミスに助けられたという印象は否めないが、とはいえかなりPatrick Mullinsが馬を長く追っても最後まで脚が上がっていないことは前向きにとらえたい材料だろう。おそらくAintreeのGrand Nationalに向かうと思われる馬で、ここまで崩れずに走ってきたことを考えると引き続き楽しみにしたい一頭である。

前走Ten Up Novice Chase (G2)でChurchstonewarriorの2着に入ったMahler Missionはもったいないレースとなってしまった。残り2障害地点ではやや馬も苦しくなっていたようで、Mahlerの産駒の傾向からしてここからゴールまではかなり馬を動かす必要があることが想定されるため、スピードに乗った残り2障害地点をスピードに乗せたまま飛越しようというのは自然な発想である。結果的にこれが落馬に繋がってしまったが、これは騎手の失敗ではないだろう。むしろ勝ちに近いレースをした馬として注意したい。好位から進んでいたChemical EnergyはMahler Missionの落馬を利して前に出たが、最後は苦しくなってGaillard Du Mesnilにつかまってしまった。3着以下は大きく遅れ、HurdleではLeopardstown Dublin Racing Festivalの名前の長いG1でMinella Cocoonerの2着があるMinella Croonerもいたのだが、どうにもぱっとせず途中棄権に終わった。飛越技術があり超長距離を走るタフネスを有したNovice馬を発掘する重要な出世レースなのだが、10頭中完走が4頭というのはやや寂しいものがある。