にげうまメモ

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20/03/10 National Hunt Racing - Cheltenham Festival -

Cheltenham Soft (Heavy in places)

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Cheltenham Festival初日、Champion Day。例によって画像は2017年に行ったときのものの使いまわしである。新型コロナウイルス感染症の影響で、日本やフランスなどでは無観客開催、完全に感染症対策に失敗したイタリアに至っては4月頭まで開催中止となっているのだが、幸いなことにCheltenham Festivalは通常通りに開催された。感染症の拡大リスクという点では、混雑している上に、観客が大きな歓声を上げる競馬場はそれなりに(というかかなり)高いので、無観客開催とすることに一定の意義はあるのだが、Cheltenham Festivalは障害競馬ファンにとっての生きる希望なので、万が一にも無観客開催になどしたら暴動が起きるだろう。もっとも、場内にはアルコール消毒液が設置されるなど、それなりの対策は取っていたようだ。ちなみに、中継を見ていても誰一人としてマスクをつけている人がいないのはお国柄を感じるところである。

 

Sky Bet Supreme Novices' Hurdle (G1) 2m87y (Replay)

1. Shishkin J: Nico de Boinville T: Nicky Henderson

2. Abacadabras J: Davy Russell T: Gordon Elliott

3. Chantry House J: Barry Geraghty T: Nicky Henderson

4. Asterion Forlonge J: Paul Townend T: Willie Mullins

5. Allart J: James Bowen T: Nicky Henderson

11. Fiddlerontheroof J: Robbie Power T: Colin Tizzard

12. Berkshire Royal J: Dave Crosse T: Willie Mullins

F Elixir D'Ainay J: Mark Walsh T: Willie Mullins

レースは人気を背負ったAsterion Forlongeが逃げる展開も、どうにも右へ右へと斜飛する癖が目立つ。馬群は密集してレースは進行するも、残り2障害のところでも大きく右へ斜飛したAsterion Forlongeの煽りを食ってElixir D'Ainay、Captain Guinnessの2頭が落馬。ぎりぎりでこのアクシデントを回避し、外から手ごたえよく進出してきたAbacadabrasがAsterion Forlongeを捉えて先頭に立つも、内に切り替えて追いかけてきたShishkinがAbacadabrasとの叩き合いを制して勝利した。3着はやや遅れたが、Chantry HouseがAsterion Forlongeを下していたようだ。Allartが5着に入った。

Asterion Forlongeは2月のLeopardstownでChanelle Pharma Novice Hurdle (G1)にてEasywork以下を圧倒してきた馬で、右に斜飛する癖自体はその前のMaidenからも見せていたのだが、今回はここ2走と比べると顕著に悪化していた。このような馬が逃げると特に好位に位置する馬はコース取りが難しくなり、今回煽りを食ったElixir D'Ainayなどもリスクを避けるためある程度Asterion Forlongeに対しては距離を取って進めているのだが、それ以上にAsterion Forlongeの斜飛の影響が甚大であった。ShishkinはHuntingdonのListed競走を勝ってきた馬で、他のG1クラスでの実績があるライバルと比較すると実績自体は見劣るのだが、前走のListedではShan Blue、Pacifyなどの重賞実績馬を馬の性能だけで圧倒するハイレベルなパフォーマンスを見せており、その実力はここに入っても十分であった。特にElixir D'Ainayなどの落馬の影響を受けたことでCheltenhamの下り坂でマトモにブレーキを踏んでおり、そこから十分に加速する余裕がないまま、不利の少なかった実力馬Abacadabrasを追いかけるパフォーマンスは着差以上に評価できるものである。また、最終障害の直前では外に出すだけの余裕はないと判断するやいなや、Asterion Forlongeを避けて外に進路を取ったAbacadabrasに対して、最終障害で不利を受けるリスクを覚悟してAsterion ForlongeとAbacadabrasの間に突っ込むというNico de Boinville騎手の勇気のある進路取りは見事であった。

AbacadabrasはFuture Champions Novice Hurdle (G1)にてHeaven Help Us以下を完封したアイルランドのエース級の馬で、Royal Bond Novice Hurdle (G1)ではEnvoi Allenに逃げ切り勝ちを許していたものの、そのパフォーマンスとしては現Novice Hurdleにおいては一枚抜けており、Champion Hurdleすら選択肢に上がる程の同馬に肉薄していた。Davy Russell騎手はAsterion Forlongeの斜飛の影響を受けないようなセーフティーな騎乗に終始しており、これ自体はほぼパーフェクトな騎乗であるのだが、それ以上にShishkinの瞬発力が勝っていたことになる。2戦2勝で挑んできたイギリスのChantry Houseは一線級のメンバーと当たるのはこれが初めてになるのだが、最後は遅れたものの3着まで来た。人気を背負っていたAsterion Forlongeは前述の通り散々斜飛していたのだが、本来はパワフルなストライドの持続性能の高い馬で、馬場の悪化と斜飛する癖の改善によりパフォーマンスを上げてくる可能性は残っているだろう。また、ここまで左回りしか走っていないが、右回りに変わってのレースにも期待したいところ。SandownのTolworth Novices' Hurdle (G1)の勝ち馬Fiddlerontheroofは中段の内から進め、Asterion Forlongeの影響を全く受けないレース運びであったのだが、勝負所ではさっぱりついて行けず大敗した。ここまで何もできずに大敗となると、さすがにTolworth Hurdle (G1)のレースレベル自体に疑問を呈さざるを得ない結果であった。これがHurdleデビュー戦となるBerkshire Royalは早々に後れるも、最後まで頑張って完走したようだ。名門Willie Mullins厩舎の馬で、何かしら意図はありそうなのだが、とりあえず次に期待したい。

 

 ◎ Racing Post Arkle Challenge Trophy Novices' Chase (G1) 1m7f199y (Replay)


1. Put The Kettle On J: Aidan Coleman T: Henry de Bromhead

2. Fakir D'Oudaries J: Mark Walsh T: Joseph O'Brien

3. Rouge Vif J: Gavin Sheehan T: Harry Whittington

4. Global Citizen J: David Bass T: Ben Pauling

5. Al Dancer J: Sam Twiston-Davies T: Nigel Twiston-Davies

6. Notebook J: Rachael Blackmore T: Henry de Bromhead

U Brewing'upastorm J: Richard Johnson T: Olly Murphy

F Cash Back J: Paul Townend T: Willie Mullins

F Esprit Du Large J: Adam Wedge T: Evan Williams

第1レースに引き続き、またもやStanding Startから。レースは内からCash Backが出てくるも、これとPut The Kettle Onが並走して進行。Fakir D'Oudaries、Notebookなどは好位から。残り3障害辺りからPut The Kettle Onが先頭に代わり、これをFakir D'Oudariesが追いかける。Notebookは追走に苦労しつつ脱落。どうにも飛越に細かいミスが相次ぐFakir D'Oudariesとは対照的に、Put The Kettle Onは終始美しい飛越を繰り出すと、そのままPut The Kettle OnがFakir D'Oudariesを凌いで勝利した。3着にはRouge Vifが追い上げていたようだ。

牝馬のArkle Challenge Trophy (G1)の勝利は1980年のAnaglogs Daughter以来となる。Put The Kettle OnのオーナーであるOne For Luck Racing SyndicateはDermordy家によって組まれたシンジゲートであり、どうやら唯一の所有馬がこのPut The Kettle Onらしい。Put The Kettle On自身はChaseはこれで6戦5勝と経験のある馬で、昨年の11月にはArkle Trophy Trial (G2)を勝っている。しかしChase自体は昨年の5月から走っており、当時もどちらかというとChase経験豊富な馬が飛越技術における一日の長を生かして勝ってきたという印象で、前評判が示す通りさほど評価はされていなかったようだ。しかし前で気分よく運ぶことが出来たアドバンテージがあったとはいえ、最後まで細かいミスの散見されたFakir D'Oudariesなどと比べると、飛越においては全くのミスがなく、HurdleのG1クラスでも実績があり、さらにDrinmore Novice Chase (G1)のタイトルもあるFakir D'Oudariesを凌ぎ切るスピードを見せるのだから大したものである。そのFakir D'Oudariesは2着まで来たが、勝ち馬と比較すると細かいミスによる減速が目立った。小さな馬ながらもよく四肢を伸ばしたダイナミックな飛越ができる馬だけに、次はもう少しスムーズな飛越ができることを望みたい。

Kingmaker Novices' Chase (G2)の勝ち馬Rouge Vifは勝負所で遅れ、そこから巻き返すも時すでに遅しでの3着。逆に勝負所で強力な加速を見せるも、そこからさっぱり伸びなかったのがGlobal Citizenで、要するにこの馬は走ったり走らなかったりするような、こういう気難しいところが残っているタイプである。あえて強引にでもペースを作って逃げた方が良かったかもしれない。人気を背負ったNotebookは勝負所からの加速がさっぱりで、そのままCheltenhamの坂を上り切れずに大敗した。以前にCheltenhamに来た時も大敗しており、どうにもCheltenhamの下り坂での加速を苦手とするタイプのように見える。おそらく次はアイルランドで走るものと思われるが、アイルランドでのここまでの戦いぶりは堂々としたものであり、次走でこの馬本来の走りを取り戻すことを期待したい。

 

 〇 Ultima Handicap Chase (G3) 3m1f (Replay)

1. The Conditional J: Brendan Powell T: David Bridgwater

2. Kildisart J: Daryl Jacob T: Ben Pauling

3. Discorama J: Brian Cooper T: Paul Nolan

4. Vinndication J: David Bass T: Kim Bailey

5. Big River J: Derek Fox T: Lucinda Russell

8. Vintage Clouds J: Ryan Mania T: Sue Smith

好位から内を掬って抜けてきたThe ConditionalがKidisartを抑えて勝利した。オーナーのPeter Cave氏は昨年は厩舎で大怪我をして入院していただけに、嬉しい勝利となった。The Conditional自身は今シーズンのLadbrokes Trophy Chase (G3)にてDe Rasher Counterの2着に入った馬で、残り2障害のところで大きなミスがあるのだが、そこから立て直して抜けてくるのだから大したものである。11st3lbのKidisartは惜しい2着。Discoramaはさかのぼれば昨年のNational Hunt Challenge Cup (G2)の2着馬。今シーズンはややパフォーマンスを落としていたものの、昨年末か今年の初頭にはWind Surgeryを行っており、今後に期待したい一頭。Sodexo Gold Cup (G3)の勝ち馬Vinndicationは前々で頑張って4着まで踏ん張った。この馬はとにかく前に行って同じようなペースでひたすら走るのが持ち味の馬だけに、あまりCheltenhamのコースは合うとは思えないので、SandownやAscotなど、競馬場代わりに期待したい。Vintage Cloudsは先頭集団で運ぶも、例によって勝負所から遅れて8着に終わった。

 

Unibet Champion Hurdle Challenge Trophy (G1) 2m87y (Replay)

1. Epatante J: Barry Geraghty T: Nicky Henderson

2. Sharjah J: Mr Patrick Mullins T: Willie Mullins

3. Darver Star J: Jonathan Moore T: Gavin Cromwell

4. Cilaos Emery J: Paul Townend T: Willie Mullins

5. Petit Mouchoir J: Rachael Blackmore T: Henry de Bromhead

6. Silver Streak J: Adam Wedge T: Evan Williams

7. Supasundae J: Robbie Power T: Jessica Harrington

8. Ballyandy J: Sam Twiston-Davies T: Nigel Twiston-Davies

9. Pentland Hills J: Nico de Boinville T: Nicky Henderson

PU Cornerstone Lad J: Henry Brooke T: Micky Hammond

本日のメインレース。とはいえ一昨年の勝ち馬Buveur D'airは故障で離脱、昨年の勝ち馬Espoir D'Allenは事故で死亡、牝馬Apple's Jadeは不調、LaurinaはChase転向で調子を崩し、Benie Des DieuxやHoneysuckleといった新進気鋭の牝馬はMares' Hurdleに回るなど、どうにも主役不在のChampion Hurdleで、出走馬も17頭とここ10年で最多となる"Wide open race"となった。人気はChristmas Hurdle (G1)を圧勝した牝馬Epatanteであったが、直前になって咳をしているとかの不安材料が流れたりしていた。

レースは例によってCornerstone LadとPetit Mouchoirが前に行くも、スピードの違いでPetit Mouchoirが先頭に。Cornerstone LadはそのままPetit Mouchoirに絡んでいくが、丘の頂上辺りから苦しくなり後退。残り2障害辺りからDarver Starが先頭に代わるが、最終障害手前からスムーズに前に出たEpatanteがそのまま追いかけてきたSharjahを振り切って勝利した。3着にはDarver Star、4着にはCilaos Emeryと続いた。

アイルランドの一大オーナーであるJP Mcmanusはこれが誕生日らしく、嬉しい勝利となった。Epatanteは昨年末のKemptonのChristmas Hurdle (G1)を圧勝してきた馬で、昨年のChetelhanmでは牝馬のNovice Hurdleを使い大敗していたが、今回のCheltenham参戦では結果を残すことが出来た。非常に正確な飛越と高い機動力を武器に馬群をすり抜けてくるのが武器の馬で、同厩舎で同じ勝負服のBuveur D'airと印象は被るのだが、Buveur D'airは跨ぐような飛越と強力なピッチ走法がそれを可能にしている面もあり、この馬の方が馬場等に対する守備範囲は広いように感じる。2着のアイルランド調教馬Sharjahはいつ走るかがどうにも謎めいている馬なのだが、ここまでG1は3勝を上げているようにハマったときの破壊力はすさまじく、今回もある程度前半からペースが流れつつこの馬の末脚を生かすことが出来る展開であっただけに、Sharjahを完封したEpatanteのパフォーマンスは素晴らしいものであった。Nicky Henderson調教師もこの馬の勝ち方は評価しているようで、ひとまず現時点での16f Hurdle路線の勢力図は確定したといっていいだろう。

Novice馬Darver Starは大健闘の3着で、前走のIrish Champion Hurdle (G1)にてHoneysuckleに食い下がった実力は伊達ではなかった。未勝利勝ちまでに時間を要した馬だが、昨年夏からの進境という点では著しいものがある。ただし、8歳とやや年齢を重ねているだけに、今後のレース選択には注意した方が良いだろう。Gowran ParkのRed Mills Trial Hurdle (G3)を勝って追加登録してきたCilaos Emeryは4着に入った。後方から捲り上げていくレース運びで、勝負所で馬群をさばいて上がっていく脚は見事であったが、今回はそれ以上に強い馬が前にいた。明らかにChaseよりもHurdle向きの馬で、まだまだ大きな仕事をしてくれることを期待したい。Petit Mouchoirは例によって自分の競馬はした。9歳と年齢は重ねているが、パドックでも元気いっぱい周回していたり、一時はChaseに転向してリズムを崩していた飛越も円熟味を増していたりと、展開次第でいくらでもチャンスはあるだろう。Silver Streakはいつも通りある程度勝負が終わってから追いこんでくるタイプで、一見距離を伸ばしてよさそうにも見えるのだが、どうやら案外距離的には16fがちょうどいいらしい。10歳馬Supasundaeは勝負所で狭くなる不利があったが、それ以上に勝負所でスピード負けして不利を受けたという経緯が気になるところで、そろそろ年齢的な部分によるスピードの衰えが出ているかもしれない。Ballyandyはロングスパートをかけてどこまでというタイプの馬であり、内に入った時点で試合終了した。笑顔が素敵なSam Twiston-Davies騎手だが、残念ながらこれは騎手の丸坊主案件である。今シーズン初頭ではChampion Hurdle候補として期待されていたNovice上がりのPentland Hillsは残念ながら大敗。ピッチ走法を生かした高い機動力を持った馬で、本来馬群が密集し機動力を生かすような展開はこの馬向きなのだが、最後は完全に脚が上がっている辺り、Petit Mouchoirのペースには対応できないのだろう。Fighting Fifth Hurdle (G1)で大波乱を演出したCornerstone Ladは、前半こそPetit Mouchoirに絡んでいくも、早々について行けなくなって途中棄権に終わった。馬体を見るとスピードのあるタイプではなく、むしろパワーが勝ったようなタイプで、かなり馬場が悪くなることでスピードが殺される条件でないとこのメンバー相手では厳しそうだ。

 

Close Brothers Mares' Hurdle (G1) 2m3f200y (Replay)

1. Honeysuckle J: Rachael Blackmore T: Henry de Bromhead

2. Benie Des Dieux J: Paul Townend T: Willie Mullins

3. Elfile J: Danny Mullins T: Willie Mullins

4. Roksana J: Harry Skelton T: Dan Skelton

5. Stormy Ireland J: Robbie Power T: Willie Mullins

一昨年の勝ち馬で、昨年はまさかの最終障害での落馬に終わったBenie Des Dieuxに加え、新進気鋭の上り馬Honeysuckleの出走で盛り上がっていた。地味に昨年の勝ち馬Roksanaもいたのだが、単勝は13倍の4番人気と、前評判としてはBenie Des DieuxとHoneysuckleの2頭の一騎打ちムードであった。

レースは例によってStormy Irelandが逃げる展開で、これを好位からHoneysuckle、Benie Des Dieuxが追いかける展開。勝負所からHoneysuckleの外にElfileが被せに行き、さらにこれをBenie Des Dieuxが外からプレッシャーを掛ける。しかし内を立ち回って抜けてきたHoneysuckleが直線追いすがるBenie Des Dieuxを抑えて勝利した。Elfileが3着、Roksanaは4着に終わった。

Willie Mullins調教師は、Stormy IrelandのRobbie Power騎手が最終コーナーで内をあけたことにご立腹らしい。Stormy Ireland自身は本来軽快なスピードを活かしてすたこら逃げるのが持ち味の馬なのだが、今回はRobbie Power騎手がかなり抑え込んでペースを作る辺り、あえて馬群を密集させつつ、Elfile、Benie Des Dieuxの協力してHoneysuckleを封じ込めるようなレースを展開している。この包囲網の中にLady Buttonsもいたのだが、勝負所でついて行けず早々に脱落している辺り、対Honeysuckleとして非常に強力な包囲網が敷かれていたことになる。一方でWillie Mullins調教師がおそらく問題視していると思われる最終コーナーの部分だが、Cheltenhamの最終コーナーは下り坂を降り切ったところに設置されている急カーブであり、これを内をあけずに回るのは至難の業であり、その後に急な上り坂が待ち構えているように、本来内をぴったりと回ってくることは折角下り坂で加速したスピードを殺した上に、ここまでの激しい鍔迫り合いで余裕のなくなってきた馬に対して上り坂のための再加速を要求する自殺行為でもある。Stormy Irelandがある程度内をあけて回ってきてしまったのはコース形態を考えれば仕方がないことであり、軽快なスピードが持ち味のStormy Irelandを、少しでも勝たせるチャンスを残すためであればごく自然な判断である。

Honeysuckleはこれで8戦無敗とした。その中にはIrish Stallion Farms EBF Mares Novice Hurdle (G1)など、G1は4勝が含まれており、特に今シーズンは牡馬・セン馬相手にも結果を残している。アイルランドの女性騎手Rachael Blackmoreとの手も合っており、非常に正確な飛越と強力なスピード能力を武器に、ここまで非常に安定した勝ち方を続けている。特に今回は不利なCheltenhamの内を立ち回りながらも、外々を回ってスムーズに加速してきた、スピードとその持続性能の面でアイルランド随一の能力を誇るBenie Des Dieuxを抑え込むという素晴らしいレースをやってのけた。まだ6歳と若く、今シーズンはこれが4戦目と順調に使われており、この連勝記録がどこまで続くのかは興味がある。ただし、距離的にはどちらかというと16fよりも20fの方がよさそうな印象はある。

昨年は無念の落馬に終わったBenie Des Dieuxは惜しい2着に終わった。AuteuilにてGrande Course de Haies D'Auteuil (G1)でフランスの最強牝馬De Bon Coeurを下したスピード性能は素晴らしいものがあるのだが、今回はそれ以上の馬がいたということである。9歳とやや年齢を重ねているだけに、どこまで現役を続行するかは不明だが、できればもう一度Auteuilでも見てみたいところ。特に、昨年のDe Bon Coeurは故障の影響で本来の能力を発揮していない可能性があり、フランスにはL'Autonomieという非常に強力な新星も現れている。2月のQuevega Mares Hurdle (G3)を勝ってきたElfileは3着で、Honeysuckle包囲網の一員としてこの馬のレースはしたのだが、いくらなんでも上位2頭が強すぎるのでどうしようもない。昨年の勝ち馬Roksanaは4着で、上位勢には全く肉薄できなかったのだが、この馬はこの馬なりに頑張っているだろう。

 

〇 Northern Trust Company Novices' Handicap Chase (Listed) 2m4f44y (Replay)

1. Imperial Aura J: David Bass T: Kim Bailey

好位から進めたImperial AuraがアイルランドのGalvinを抑えて勝利した。Chase自体は同馬のみが完走馬となったFakenhamのBeginners Chaseに続く2勝目となったが、シーズン初戦にはChepstowのSilver Trophy Handicap Hurdle (G3)にて3着の実績もある。

 

National Hunt Challenge Cup Amateur Riders' Novices' Chase (G2) 3m5f201y (Replay)

1. Revenhill J: Mr Jamie Codd T: Gordon Elliott

2. Lord Du Mesnil J: Mr Sam Waley-Cohen T: Richard Hobson

ここ数年死亡事故が相次ぎ、今年から距離を短縮したりと色々変更を加えて行われることになったNational Hunt Challenge Cup (G2)。さかのぼればTiger Rollをはじめ、Teaforthree、Minella Rocco、Cause of Causes、Rathvindenといった、Grand Nationalにて活躍する強力なステイヤーを輩出したレースであり、この時期のNovice馬が4マイルの距離を走るレースは今後のNational Horseを占う上で非常に価値のあるものなのだが、事故が相次いでしまうとなんとも難しいところがある。レースは途中から先頭に立ったLord Du Mesnilを、残り2障害辺りで並びに行ったRevenhillが凌いで勝利した。人気のCarefully Selectedは少しずつ位置を上げるも、最終コーナーを回る辺りからは脚色が一杯になり、最終障害で落馬に終わった。Revenhillは今年で10歳とNovice馬にしては高齢であり、これがChase7戦目と比較的経験は豊富なようだ。昨年の5月からChaseを走っており、今年9月のKerry National (Grade A)でも2着と好走している。この超長距離戦にて最後まで脚を伸ばしたレース振りは素晴らしいものがあるが、どこまで上積みがあるかは疑問だろう。Novice馬ながらGrand National Trial (G3)にてSmooth Stepperの2着のあるLord Du Mesnilは前々で運んで見せ場を作った。実績的には重馬場専門の超長距離戦向きといったタイプの馬で、どうにも2着が多い辺り、瞬間的なスピードという意味では若干怪しいのだが、まだ7歳と若く、これからの活躍に期待したいところである。