にげうまメモ

障害競馬の個人用備忘録 ご意見等はtwitter(@_virgos2g)まで

20/03/15 Weekly National Hunt / Jump Racing

*障害競馬回顧 2020/03/09-03/15

なんと言っても今週はCheltenham Festivalでしたね。なんとか観客を入れての開催に持ち込んだCheltenham Festivalでは、たくさんのドラマを含んだ、イギリス・アイルランド障害競馬の本気がぶつかり合う、息を呑むほど美しく激しいレースが展開されました。イギリス・アイルランドのトップホースが集結するG1競走は勿論、アマチュア騎手限定競走やハンディキャップ戦を含め、全てのレースにおいてここまで関係者が一喜一憂する素晴らしい開催は世界中探してもそうそうないでしょう。一方で、欧州では新型コロナウイルス感染症が急速に拡大しており、イギリス・アイルランド競馬シーズンはもはや終盤、一方でフランスをはじめイタリアやチェコ等の競馬シーズンはこれからといった大切な時期ですが、ここからの競馬開催はかなり難しい判断を強いられることになりそうです。

 

3/10(火)

Cheltenham (UK) Soft (Heavy in places)

Cheltenham Festivalの初日、Champion Day。量が多すぎるの別記事で。

 

Fontainebleau (FR) Terrain Lourd (4.6)

〇 Prix De Nemours

Cross Country Pour tous chevaux de 5 ans et au-dessus 4600m (Replay)

4. Bridgeur J: Jaroslav Myška T: Myšková Štěpánka

チェコ調教馬のBridgeurが出走しており、最終障害まで安定した飛越で引っ張ったが、最後の平地部分で捕まり4着に終わった。昨年のVelká Pardubickáでは勝負所の障害で大きなミスがあり、そこから立て直せずに終わっているが、9歳となった今年も状態は良いようで、特に飛越技術についてはかなり円熟味を増してきたことは今後に向けて楽しみな材料である。平地部分のスピードが如何せん遅いので勝ち切るのが難しいのだが、いい加減どこかで勝利を挙げて欲しいところ。

 

3/11(水)

Cheltenham (UK) Soft

Cheltenham Festivalの2日目、Ladies Day。こちらも量が多すぎるので別記事で。

 

3/12(木)

Cheltenham (UK) Soft (Good to Soft in places)

 

Warrnambool (AUS) Good4

〇 The Warrnambool Standard Hurdle 3215m (Replay)

1. Gobstopper J: Darryl Horner T: Eric Musgrove

FF The Arod J: Luke Wiliams T: Kim & Gayle Mayberry

2020年オーストラリア障害競馬シーズンの初戦。人気のGobstopperが逃げ切り勝利した。元々はニュージーランドでデビューした馬だが、2019年にオーストラリアVIC州に移籍、その後南オーストラリア州のEric Musgrove調教師のところに移籍している。昨シーズンはGrand National Hurdleでは途中棄権に終わるなどトラブルもあって結果が出なかったが、今年はTrialを2連勝し調子は良さそうだ。ニュージーランドでは高い能力を見せていた馬だけに今年は期待したい。今年で46歳になるLuke Wiliams騎手はこれが障害デビュー戦であったが、途中からついて行けなくなり途中棄権に終わった。

 

〇 Chirnside Plumbing & Gasfitting Maiden Hurdle 3125m (Replay)

1. Diamond Star Halo J: Shane Jackson T: Gai Waterhouse & Adrian Bott

2. Kapour J: Bil Gleeson T: Ciaron Maher & David Eustace

6. Kushiro J: Adam Roustoby T: Gai Waterhouse & Adrian Bott

人気のDiamond Star Haloが逃げたKapourを捉えて勝利した。日本産馬でノヴェリスト産駒のKushiroが出ていたが、見せ場は作れず6着と大敗した。

 

〇 South West Equine Veterinary Group BM125 Steeplechase 3450m (Replay)

1. He's a Genius J: Tom Ryan T: Terry & Karina O'Sullivan

2. Dormello Mo J: Shane Jackson T: Simon Ryan

4. Bold Bandit J: Ronan Short T: Patrick F Ryan Jnr

6. Newbury J: Bil Gleeson T: Declan Maher

FF Undergroundfighter J: Luke Wiliams T: Tony Rosolini

Newburyが例によって逃げる展開だが、2連続障害の辺りから先頭に立ったHe's a Geniusがそのまま差を広げて勝利した。同馬はSteeplechaseは昨年にもBM120 Chaseを勝利しており2勝目となる。ややBriely Hillの辺りで遅れる場面はあったが許容範囲だろう。70kgのトップハンデを背負ったDormello Moはやや仕掛け遅れの部分があったとはいえ、よく追い上げて2着まで来た。古豪Undergroundfighterは良いところなく途中棄権に終わった。

 

3/13(金)

Cheltenham (UK) Soft (Good to Soft in places)

 

3/14(土)

Kempton (UK) Good to Soft (Soft in places)

European Breeders Fund Paddy Power 'National Hunt' E.B.F. Novices' Handicap Hurdle (G3) 2m5f (Replay)

1. McFabulous J: Harry Cobdon T: Paul Nicholls

元々は先週に予定されていたレースだが、悪天候の影響で延期されていた。レースは人気を背負ったMcFabulousが好位から抜け出すと6馬身差の圧勝。昨年Supreme Trial (G2)では大きく敗れているが、今年に入ってから馬が良くなってきた感がある。Cheltenham Festival直後でややメンバーは手薄なのだが、11st9lbを背負ってのこの内容は今後が楽しみになるものだろう。

 

Uttoxeter (UK) Heavy

Midlands Grand National (Listed) 4m2f8y (Replay)

1. Truckers Lodge J: Lorcan Williams T: Paul Nicholls

2. Captain Drake J: Bryan Carver T: Harry Fry

3. Joe Farrell J: Bryony Frost T: Rebecca Curtis

計25の障害を飛越するUttoxeterの名物レース。かつてはSynchronizedなどの名馬も輩出している。Just Your Typeが淡々と逃げるも、2周目からBryony FrostのJoe Farrellが先頭に代わる。3周目に入ってJoe Farrellはペースを上げるも、残り4障害からこれに並びかけていったTruckers LodgeがそのままJoe Farrellを振り切ると、後続を突き放して快勝した。Truckers Lodge自身はChpstowのWelsh Grand National (G3)の2着馬で、地味にまだNovice馬なのだが、終始安定した飛越を見せた。Chpstowをはじめとする坂の多いコースの不良馬場を得意とするタイプのようで、この類の超長距離戦において非常に楽しみな存在となるだろう。Captain Drakeは10st2lbの軽量を生かして2着に食い込んだ。最終障害では大きなミスをしているが、なんとか立て直してJoe Farrellを抑えている。Scottish Grand National (G3)勝ちのあるJoe Farrellは久々に頑張った。Ladbrokes Trophy (G3)の勝ち馬De Rasher Counterも出ていたが、11st9lbと他馬に比べると10lb近く重い斤量を背負っており、さすがに厳しく途中棄権に終わった。それにしても、小さな競馬場の場内には観客が溢れんばかりにつめかけて声援を送り、勝った騎手は心から嬉しそうにしている。これが競馬の醍醐味の1つなのだろうと思わせる光景である。

 

Navan (IRE) Heavy

Webstar Cup Chase (G2) 2m (Replay)

1. Castlegrace Paddy J: Brian Cooper T: Pat Fahy

2. Ornua J: Davy Russell T: Henry de Bromhead

3. Cadmium J: Paul Townend T: Willie Mullins

残念ながらNavanは無観客開催となった。例によってするするとOrnuaが逃げる展開だが、これを追いかけたCastlegrace Paddyが最終障害手前で前に出て勝利した。Castlegrace PaddyはHilly Way Chase (G2)を含む重賞はこれで3勝目で、G1クラスではどうにも足りないのだが、ひとまず大敗したWhatOddPaddy Chase (G3)から巻き返しには成功したとのことで、これからの時期で期待したい。Ornuaは元気に逃げて2着。人気のCadmiumは案外な結果に終わった。

 

Auteuil (FR) Terrain Collant (4.5)

Prix D'Indy (G3) 3600m (Replay)

Haies Pour tous poulains et pouliches de 4 ans

1. Grand Messe J: Alain de Chitray T: Mille Anne-Sophie Pacault

2. Moises Has J: Angelo Zuliani T: Francois Nicolle

3. For Fun J: Bertrand Lestrade T: Guilaume Macaire

5. Caroubier J: Kevin Nabat T: David Cottin

大逃げを打ったCaroubierだが最終コーナーを過ぎて苦しくなり後退。代わって出てきたGrand MesseがMoises Hasを抑えて勝利した。Grand MesseはHaiesは1勝のみ、Haras D'Etreham (G2)ではやや前とは離れた3着に敗れており前評判は高くなかっただけに、波乱の結果となった。2連勝で臨んできたMoises Hasが2着。人気を背負ったFor Funは中段から進めるも、伸びきれず3着に敗れた。

 

Prix Troytown (G3) 4400m (Replay)

Steeplechase Pour tous chevaux de 5 ans et au-dessus

1. Ebonite J: Felix de Giles T: Emmanuel Clyeux

2. Poly Grandchamp J: Tristan Lemagnen T: Francois Nicolle

6. On The Go J: James Revely T: Guilaume Macaire

前走は水壕障害にて落馬に終わっていたOn The Goの今年のSteeplechase2戦目であったが、どうにも動きが重く、勝負所から脱落して大敗した。勝ったのは軽量の牝馬Ebonite。Poly Grandchampが2着に入った。

 

阪神(日本)稍重

阪神スプリングジャンプ(G2)3900m

1. オジュウチョウサン J: 石神深一 T: 和田正一郎

2. シングンマイケル J: 金子光希 T: 大江原哲

3. トラスト J: 熊沢重文 T: 長谷川浩大

4. シンキングダンサー J: 五十嵐雄祐 T: 武市康男

注文を付けて逃げていったブライトクォーツとトラストが前半から激しく引っ張り、勝負所からはシングンマイケルなどが動いて行く展開だが、これをじっと追いかけていたオジュウチョウサンが最後はあっさりと抜け出すと、シングンマイケルに9馬身差をつけて圧勝した。オジュウチョウサンは昨年の中山GJ以来の障害戦であったが、終始飛越に問題は見られなかった。オーナーの意向だかなんだか知らんが、ここまで無駄に平地競争を使ったことが勿体なくなるくらいの圧勝劇であった。これでJRA重賞はテイエムオペラオー等の最多記録に並ぶ12勝目で、稍重にも関わらず軽く気合をつけた程度で2001年にダンシングターナーが記録したコースレコードを0.7秒更新するのだから恐ろしい馬である。中山GJ5連覇という未曽有の記録に向けて視界良好といっていいだろう。シングンマイケルは真っ向勝負を挑むも2着まで。トラストはやや引っかかる場面はあったが、最後まで2着争いには参加して見せ場を作った。それにしても、メンバーとしては現在の日本障害競馬におけるトップクラスの馬が勢揃いしており、もし観客がいたら場内は大いに沸くだろうというエキサイティングなレースであっただけに、やはり無観客開催というのは寂しいものである。

 

3/15(日)

Carlisle (UK) Heavy

〇 Veterans' Handicap Chase (C2) 3m110y (Replay)

1. Seeyouatmidnight J: Ryan Mania T: A M Thomson

するすると前に行った12歳馬Seeyouatmidnightがそのまま押し切り勝利した。Seeyouatmidnightは元々腱の故障で引退していた馬で、2月の末にKelsoのListedで復帰していた。2018年のGrand Nationalを最後に、2年近いブランクがあった上に、12歳という高齢での競走馬復帰であったのだが、2走目からいきなり結果を残すのだから大した馬である。どこまでまともに走れる状態に戻っているか疑問とか書いているクソブログの中の人は腹を切ってお詫びすべきである。

 

〇 Hunters' Chase (C5) 3m110y (Replay)

1. Just A Par J: Mr Toby Wynne T: Joshua Guerriero

3. Ultragold J: Mr L Trott T: Colin Tizzard

途中から先頭に立ったJust A Parがそのまま後続を突き放して圧勝。これでHunters Chaseは2連勝で、National Fenceへの対応も可能な馬だけに、来月のAintreeにてFoxhunters' Chaseへの出走が楽しみになる。有名なNational Specialistで2016年から2018年とTopham Chase (G3)を3連覇しているUltragoldは前から大きく離された3着で、近走成績を見ているとさすがに全盛期の勢いを望むのは厳しそうだ。

 

Limerick (IRE) Heavy

Kerry Group Irish EBF Shannon Spray Mares Novice Hurdle (G3) 2m6f (Replay)

1. Well Set Up J: Ricky Doyle T: Mark Fahey

2. Lady Breffni J: Robbie Power T: Joseph O'Brien

6. Larquebuse J: Davy Russell T: Gordon Elliott

好位から進めたWell Set UpがLady Breffniを退け勝利した。比較的Hurdle経験は長い馬で、昨年にはKerry Group Stayers Novice Hurdle (G3)の勝利もある。最終障害でミスをしたLady Breffniが2着。人気のLarquebuseは残り3障害でのミスはあったが、最後後退し大敗に終わった。

 

Charleville Cheese Irish EBF Mares Novice Chase (G2) 2m6f120y (Replay)

1. Salsaretta J: Paul Townend T: Willie Mullins

U Tintangle J: Luke Dempsey T: Gordon Elliott

残り2障害で先頭を走っていたTintangleが落馬。そのまま前に出たSalsarettaが後続に11馬身差をつけて圧勝した。SalsarettaはこれでChaseは4戦4勝とした。HurdleのG1クラスではいまいちだったのだが、Chaseではここまで一線級とは当たっておらず、能力的にはやや未知数である。牝馬ながらここまで牡馬・セン馬相手に頑張ってきたTintangleはもったいない落馬に終わった。

 

その他

〇 COVID-19 Plans for Victorian Racing | Racing Victoria (Racing Victoria)

オーストラリアVIC州の競馬開催は競馬場への入場を関係者のみに制限して開催するらしい。厚生労働省の発表によると、3月8日時点のオーストラリアの感染者数は63人と、比較的少数に留まっている。

Coronavirus latest: Meetings in Ireland to be run behind closed doors until March 29 (RacingTV)

アイルランド競馬は3月13日のDundalkから無観客開催とすることを決定した。これからアイルランド競馬はPunchestown Festivalをはじめ、障害競馬シーズン終盤の主要開催が続くので、なんとか無事に開催して欲しいところである。

ところで中の人はPunchestown Festivalのチケットを持っているのだが、無観客開催となった場合は払い戻されるのだろうか。正直チケット代は貧乏な勤め人にとっては痛手だが、わたしのはした金くらいで済むのなら無事に観客を入れて開催して欲しいところである。

NSA Massage About COVID-19 Threat (NSA)

3月13日に国家非常事態を宣言したアメリカにおけるNSAからの声明。今後開催の変更があり得るとのことだが、特段具体的な記載は見当たらない。アメリカでは3月21日のAiken Spring Racesがシーズン最初の開催として予定されている(←AikenのSpring Meetingは中止になりました)。

Mit Solidarität durch die Corona-Krise (GaloppOnline)

コロナウイルス感染症の急速な拡大が認められるドイツでも直近の競馬開催を無観客開催とすることが決定された。

STOP alle manifestazioni sportive ed eventi (HiD Web)

欧州の中でも特にコロナウイルス感染症の拡大が顕著なイタリアでは、4月3日まで全ての競馬開催が中止となった。この辺りの競馬開催はあまり経営状態が宜しくないので、コロナウイルス感染症の影響が長引くとそもそも存続自体がかなり心配である。

All British racing set to go behind closed doors later in the week (RacingPost)

頑張ってCheltenham Festivalを開催したイギリス競馬も無観客開催に変更する意向のようだ。最悪の場合は6月末までという可能性にも言及されており、直近の主要開催であるGrand National Meetingはモロに影響を受けそうだ。