にげうまメモ

障害競馬の個人用備忘録 ご意見等はtwitter(@_virgos2g)まで

20/08/02 Weekly National Hunt / Jump Racing

*障害競馬回顧 2020/07/27-08/02

7/29(水)

Galway (IRE) Good (Result)

〇 Play The Totre Jackpot Novice Hurdle (Listed) 2m110y (Replay)

1. The Very Man J: Davy Russell T: Gordon Elliott

好位から抜け出したThe Very Manがそのままあっさり後続を突き放して快勝した。The Very Man自身はこれでHurdleは4連勝とした。Hurdle自体は2019年の10月から使っているのだが、今年3月の未勝利勝ちを皮切りに連勝を続けている。飛越技術はここでは一枚抜けたものを持っており、ピッチ走法から繰り出される加速力に長けたタイプのように見える。障害馬としての完成度はこの時期の馬にしては高く、しばらくはこの路線で活躍してくれるだろう。

 

Galway Plate (Grade A) 2m6f110y (Replay)

1. Early Doors J: Mark Walsh T: Joseph O'Brien

第一レースの段階ではGoodで始まったのだが、どうやら雨が降り続いた影響で馬場はこの時点でYielding to Softまで悪化していたようだ。レースはCabaret Queen、Livelovelaughなどが引っ張るも、最終障害を越えて馬群を抜けてきたEarly DoorsがRoyal Rendezvousを抑えて勝利した。Early Doors自身はさかのぼれば2017年のRoyal Bond Novice Hurdle (G1)にてMengli Khanの2着があるのだが、その後はCheltenham FestivalのMartin Pipe Conditional Jockey's Hurdle (C2)の勝ち星がある程度であまり重賞戦線では良いところがなく、昨年の夏からChaseに転向していた。ChaseのNoviceクラスでもあまり良いところはなかったのだが、ここではいきなり大仕事をやってのけた。今回が初のチークピーシーズの着用であったようで、これが最後まで集中力を切らせることなく走れた要因と考えられるが、やや勝負所でも反応が悪い面があったりと、ゴールまで平地部分をかなり長く走るGalway競馬場がこの馬に向いた可能性もあり、今後に向けたはまだ課題が残るだろう。3月にNaas Directors Plate Novice Chase (G3)を勝ってきたRoyal Rendezvousが2着。勝ち馬とは7stの差があることを考えればこちらを上に取るべきだろう。Flogas Novice Chase (G1)にてFaugheenを追い詰めたEasy Gameは人気になっていたが、後方から進めるも良いところなく大敗した。途中で飛越に際して不利を受けるなど不幸な出来事もあったようだが、多頭数のハンデ戦への対応に課題を残す結果となってしまった。

 

Royan La Palmyre (FR) Bon Legre (2.9)

〇 Prix De Cauvaldor

Haies Pour tous chevaux 5 ans et au-dessus, n'ayant pas, depuis le 1er Juillet de l'année dernière inclus, en course à obstacles, reçu 10.000 (victoires et places). 4100m (Replay)

1. Master Dino J: James Reveley T: Guillaume Macaire

レース映像の雰囲気がなにやらひと昔前のものなのだが、いちおう2020年7月の映像である。レースは途中から先頭に立ったMaster Dinoがそのまま快勝。Master Dino自身はPrix Renaud Du Vivier (G1)の勝利など現6歳世代ではトップクラスの活躍を見せた馬で、昨年の6月にはイギリスPlumptonのNovice Chaseに参戦した経験がある。Plumptonのようなさほど大きなレースが行われていない競馬場にこれほどの馬が現れることは非常に珍しく、競馬ファンからは驚きをもって迎えられた。Plumptonでの快勝の後はイギリスNovice Chase戦線に参戦するとの話であったのだが、残念ながら故障でしばらく戦線を離脱しており、これが復帰戦となった。さすがにメンバー的にははるかに格下の相手であり全く問題にはしなかったのは予想通りであるのだが、とりあえずは無事復帰したことを喜ぶべきだろう。故障前には一度だけフランスでもSteeplechaseを使った経緯もあり、今後のレース選択には注目しておいた方がよさそうだ。

 

7/30(木)

Galway (IRE) Soft

Rockshore Novice Chase (G3) 2m2f54y (Replay)

1. Polished Steel J: Robbie Power T: Mrs Jessica Harrington

レースは逃げたPolished Steelがそのまま押し切り勝利した。Polished Steel自身はこれでChaseは2戦2勝で、途中やや踏切地点を間違える場面はあったものの、この中では飛越技術の完成度は上位であった。やや前向きに走るところがあるので現状はこの距離がよさそうだが、やはり完成度と言う点においてはこのクラスではしばらく楽しむことが出来るだろう。11歳馬のMy Manekinekoが2着に入った。コーナーのところで内をすり抜けてくる騎手の好騎乗もあり、さすがに勝ち馬と能力的な比較においては厳しそうだが、飛越技術自体は成熟したものをもっており、こういう馬は長く頑張って欲しいところ。人気を背負っていたRussian Diamondは第6障害で落馬に終わった。

 

Galway Hurdle (Grade A) 2m11y (Replay)

1. Aramon J: Mr Patrick Mullins T: Willie Mullins

Hunters Callが元気よく逃げる展開も、好位から抜けてきたAramonがHearts Are Trumpsなどを凌いで勝利した。Aramonはこれで今年の夏はGrimes Hurdle (G3)から連勝とした。本来であればG1クラスでも戦えるだけのスピード能力を持った馬だが、G1クラスに対応するだけのスピードの持続性能という面では若干怪しいところがあり、また重馬場となると途端にパフォーマンスを落とすというところもある。今回はやはりGrade Aのハンデ戦ということで馬群が密集して激しい持久戦になってはいるのだが、スピードの絶対値という面ではこの馬に対応可能な範囲に収まっていたようだ。トップハンデを背負っての勝利は価値がある内容であり、今後はアメリカ遠征というオプションもあるようだが、障害さえ対応可能であれば中山GJという選択肢もあり得るだろう。Hearts Are Trumpsは10st5lbの軽量を生かして2着に来た。葦毛のPetit Mouchoirが3着で、この馬もG1クラスで好走していた実力を見せてくれた。AscotのRacing Welfare Handicap Hurdle (G3)勝ちのあるHunters Callは積極的な競馬で4着。昨年のBetway Top Novices' Hurdle (G1)の勝ち星のあるFelix Desjyは人気になっていたが、第2障害で早々の落馬に終わった。

 

7/31(金)

Wellington RC @ Awapuni (NZ) Heavy11

Ricoh Goodbye Vicki & Craig Maiden Hurdle 2800m (Replay)

1. Bakela J: Shaun Fannin T: Kevin Myers

逃げる構えを見せたMr Davinciと制御を欠いたWonder Lassが大逃げを打つも、2周目の中盤で早々に失速。代わって好位にいたBakelaがMaster Finなどの追い上げを退け勝利した。Bakela自身はこれがHurdleは初参戦で、平地では29戦して4勝を上げた実力馬である。前2頭がオーバーペース気味になったためレースはしやすかったとは思われるが、全体的に安定した飛越で今後に期待の持てるものであった。このクラスの安定勢力であるKionも出ていたが、中段から特に見せ場なく6着に敗れた。

 

〇 Audio Vision Maiden Hurdle 2800m (Replay)

1. Grinner J: Emily Farr T: John Wheeler

先に抜け出したGrinnerとDes De Jeuとのたたき合いはGrinnerは1馬身ほど出て勝利した。GrinnerはHurdleは4戦目での勝ち上がりとした。今月の上旬にはRST OPNクラスにてAigneの3着もあり、このクラスでは実力上位といったところで順当な勝ち上がりだろう。いつぞやのMDN STPでの出来事がすっかり有名になっているDes De Jeuもさすがの2着で、これが昨年のGrand National Steeplechase (PJR)以来のレースであったが見せ場を作った。どうにも制御が難しい部分があったり、飛越技術も怪しいところがあるのは仕方がないのだが、おそらくここを叩いてSTPを使うものと思われる。

 

〇 Jennian Homes Hurdle RST OPN HDL 2800m (Replay)

1. Ave Maria J: Shaun Fannin T: Kevin Myers

2. Senassy J: James Seivwright T: Kevin Myers

残り3障害辺りからの上り勝負は内を立ち回って抜けてきたAve Mariaが勝利した。Ave MariaはこれでHurdleは4戦3勝と力を見せているのだが、勝ち星はいずれも3000メートル以下のレースに限られており、やはり今回も瞬発力が活きる展開であったことを考えると、距離延長等には懸念が残る。後方から馬群を割ってきたSenassyが2着で、Kevin Myers厩舎の牝馬2頭が上位を独占する結果となった。この馬も比較的短い距離で活躍してきた馬である。この中での一番の実績馬Gallanteは前走と比べればパフォーマンスを上げる4着で、さすがに70.5kgのトップハンデを背負っていてはこの瞬発力勝負ではどうしようもない。Great Northern Steeplechaseの勝ち馬Wise Men SayはまたもやHurdleを使い、比較的前々で運んで見せ場を作ったが、最後はさすがに遅れて5着に終わった。

 

〇 Norn Bevan Memorial Cup Maiden Steeplechase 3200m (Replay)

1. Albaron J: Shaun Fannin T: Kevin Myers

いきなり最初の障害でEl Pablo、Pavilchenkoの2頭が落馬して空馬が2頭も発生するなど、色々とアクシデントの多いレースであったが、勝ったのは好位から抜け出したAlbaron。Albaron自身は今月は平地で初勝利、Hurdleで初勝利、さらにSteeplechaseでも初勝利と、非常に有意義な7月となった。ここでのレース振りは安定しており、RST OPNクラスくらいなら期待してもいいだろう。後方から追い上げたMacklemoreが2着。なお、14頭出走して完走が5頭と、少々全体的には残念なレースであったが、幸い大きなアクシデントはなかったようだ。

 

〇 Metro Clad Steeplechase RST OPN STP 4000m (Replay)

1. Napoleon J: Shaun Fannin T: Kevin Myers

Magic Wonderがゆるゆると逃げそのまま押し切りを図るも、残り2障害にてまさかの落馬。残ったNapoleonがそのまま勝利した。Shaun Fannin騎手とKevin Myers調教師のコンビはこれでこの日は5戦4勝と素晴らしい成績を残した。Napoleon自身はSteeplechaseはこれで3勝目で、どちらかというとRST OPNクラスである程度の瞬発力を生かして勝ち切るタイプといった印象である。今回はやや展開的にも恵まれた感もあり、調子の良さでPJRクラスではどこまでといったところだろう。牝馬Magic Wonderはもったいない落馬に終わった。この馬もPJRクラスでは厳しいのだが、今回はAaron Kuru騎手が気合をつけて馬を促していく戦術がパフォーマンスを上げた印象であり、このレースが出来るのであればもう一段階上のクラスで戦える可能性を示すものである。

 

8/1(土)

Lysá nad Labem (CZE) (Result)

〇 PRVOMÁJOVÁ STEEPLECHASE MĚSTA LYSÁ NAD LABEM

Steeplechase crosscountry I.kat. - 4200 m, cena, 5letí a starší 150.000 Kč (Replay)

1. Forever Dry J: ž. Jan Kratochvíl T: Váňa st. Josef

レースは先に抜け出したSztormをゴール直前でForever Dryが捉えて勝利した。Forever Dry自身はまだ5歳と若い馬で、Cross Countryではkat. IIIにて入着がある程度であり、これが初勝利とした。いきなりここで結果を残したことはやや驚きの結果であり、Sztormなどのレース運びがややいまいちであったということを差し引いても今後注意しておいた方がいい馬だろう。そのSztormはやはりこのような小型のコースにおける機動力には長けた馬だが、どうにも今回は飛越のリズムが悪かった。前走はこのコースで落馬に終わったPeintre Elusifが3着に入った。Cross Country自体の経験は比較的少なく、Steeplechaseでは実績のある馬だがもう少し慣れが必要だろう。

 

Niigata / 新潟 (JPN) Good

The Niigata Jump Stakes / 新潟ジャンプステークス (JG3) 3250m (Result)

1. フォイヤーヴェルク J: 森一馬 T: 池江泰寿

今年は夏場の障害競走が少なくなっており、この競走は障害競走としては先々週の阪神の競争以来のものとなる。この新潟ジャンプステークスの次は再来週の小倉が予定されており、障害競馬ファンとしてはやや寂しい夏となった。もっとも、灼熱の日本の夏に障害競走を行うのは安全性上のリスクが高いので、個人的には夏場は全休にする代わり、冬場に開催を増やしても良いように思うのだが。一日12鞍全て障害競走の日を作ろう。

レースは3コーナーから抜け出したメドウラークを、最終障害を越えて迫ったフォイヤーヴェルクが捕らえると、そのまま後続を突き放し6馬身差の快勝とした。フォイヤーヴェルクはこれで障害競走は新潟の未勝利戦から3連勝とした。福島での障害デビュー戦の時点では馬が飛越技術を理解していないようなレース運びであったのだが、今回のレース振りを見ているとかなり飛越技術は上達している。平地でかなり期待された馬だけあって平地力(とかいう謎ワード)による勝利と見る向きもあるようだが、元来緩すぎるくらいのストライドを有する馬であったのが障害転向によってパワーがついてきており、結果的にはある程度スピードに乗せつつも脚力のある飛越が可能となっている。馬自身もかなり頭が良いようで、スピードに任せた低い飛越を行うのではなく一つ一つの動作を丁寧に行った飛越を見せており、これだけのキャリアの中で着実に飛越技術を向上させていることを考えると、ここまで主に置き障害でのレース経験しかないものの、技術的にはより大型の障害に対応できる可能性も示していると言えるだろう。いずれにせよ、単なる平地のスピード能力だけでこれだけのレースをしたわけではないことは理解しておくべきである。ステイヤー資質という面での能力は未知数であるため、必ずしも中山や阪神の障害重賞に対応できるとは限らないのだが、単なる平地のスピード馬として軽視しない方がよさそうだ。昨年の阪神ジャンプステークス(G3)の勝ち馬メドウラークは積極的な競馬で2着に入った。ワンペース型の馬だけに前に行ってゆるゆると運ぶのが理想なのだが、この展開においてこの馬の出来ることはやり切っている。東京及び京都でオープン勝ちのあるケイティクレバーが3着で、比較的平地競争で実績のある馬が上位に入った。プラチナアッシュは例によって元気よく運んだが、2周目で早々に後続に捕まり苦しくなった。前走阪神で派手な勝ち方を見せたブラックワンダーは2周目から先頭を伺う構えを見せたが、メドウラークに捲られて後退、最後は完全に脚が上がり、最終障害で落馬に終わった。

 

8/2(日)

Granville (FR) Bon (3.0)

〇 Prix Haras Du Lion Des Vans Mtm - Grand Cros

Cross Country 5800m (Replay)

1. Vino Royale J: Hugo Lucas T: David Cottin

なんだか競馬場らしくない雰囲気なのだが競馬場である。障害としては比較的Banquetteタイプのものが多く、あまりスピードが出にくいコース形態も相まって高い技術を要求している。レースはCharmyraを残り2障害辺りで捉えたDarkly Rochelaiseをゴール直前でVino Royaleが捉えて勝利した。Vino Royaleはまだ5歳と若い馬だが昨年の7月からCross Countryを使っており、GranvilleのCross Countryは2勝目となる。Senonnes、Le Pertreでも勝利がある馬で、さほど大きなレースでの勝ち鞍はなさそうだが、今後が楽しみな一頭だろう。逃げたCharmyraが最後盛り返して2着に来た。Cross Countryの経験は長い馬で、Prix Anjou-Loire Challenge (Listed)では途中棄権に終わっているが、得意のGranvilleに戻って見せ場を作った。

 

Merano (ITA) Tempo Coperto - Terreno Morbido (Result)

〇 Pasqualino Mazzoni

Euro 33.000 TRIO per cavalli di 3 anni (Siepi - DEBUTTANTI - FANTINI) 3000m (Replay)

1. Makito J: Raffaele Romano T: Raffaele Romano

残り3障害辺りから抜け出したMakitoが後続に大差をつける勝利を上げた。Makitoはイタリア調教馬で、もともとはフランスでデビュー、今年からイタリアで走っていた。Siepiはこれが初参戦で初勝利となる。やや全体的に行きたがって走るところが目立ち、スピードで圧倒したここは良いのだが、やはり今後のことを考えると制御が効くようになって欲しいところである。

 

Ladbrokes Park Lakeside (AUS) Good4 / Soft5

〇 Ladbrokes Hurdle 3400m (Replay)

Handicap. Three-Years-Old and Upwards, No sex restriction. BenchMark 120.

1. Wolfe Tone J: Aaron Lynch T: Francis Finnegan

2. Instigator J: Lee Horner T: Aaron Purcell

例によってNorthern Voyageが軽快に飛ばす展開も、残り600m辺りから後退。代わって先頭に立ったWolfe ToneがInstigator以下を抑えて勝利した。Wolfe Toneは未勝利戦から連勝、Hurdleは2戦2勝とした。Maidenでの勝ち方は強風のPakenham競馬場においてはなかなか高く評価できるであり、ここでもその実力を見せたことになる。そのPakenham競馬場の未勝利戦で2着に入っていたInstigatorが2着。Hurdleでは未勝利馬だが、前走も乗り方一つで逆転が可能なものであった。実績馬Northern Voyageはまだ5歳と若く、いつも通り元気にハナを切るレースをしているのだが、どうにも今年は冴えない。WarrnamboolのMaiden勝ちがあり、前走はBee Tee Juniorの2着もあるFrankel産駒のSan Remoも出ていたが、終始飛越がいまいちで大敗した。5月のNovice戦以来のHurdle出走となるRiding Highも好位から進めたが、勝負所で脱落し7着に敗れた。

 

Grand National Hurdle 4200m (Replay)

1. Ablaze J: Shane Jackson T: Ciaron Maher

2. Bee Tee Junior J: Lee Horner T: Rachael Cunningham

3. Gobstopper J: Darryl Horner Jnr T: Eric Musgrove

5. Tallyho Twinkletoe J: Steven Pateman T: Patrick Payne

今年のVIC州Hurdle競走における大一番。昨年はGrand National Hurdle、Grand National Steeplechaseと連勝し、連覇を狙うTallyho Twinkletoeが人気になっていた。他にも今年のGrand Annual Steeplechaseを制し、Flat、Hurdle、Steeplechaseの3カテゴリーにおいて、国内最長距離制覇を目指すAblaze、前走Tallyho Twinkletoeを追い詰めたBee Tee Junior、今シーズン一躍パフォーマンスを上げてきたGobstropperなどが人気を集めていた。

レースはAblazeが淡々と逃げる展開。Gobstopperがこれを好位から追いかけ、Tallyho Twinkletoeは中段、Bee Tee Juniorは後方に構える。Ablazeはそのまま軽快に逃げると、Gobstopperを引き連れて後続を突き放し逃げ込みを図る。Tallyho Twinkletoeはじわじわと位置を上げ前に迫るも、最終障害で大きなミス。後方から物凄い勢いで突っ込んできたBee Tee JuniorをAblazeが凌いで勝利した。Gobstopperが3着、Tallyho Twinkletoeは最後遅れて5着に終わった。

Ablazeはこれで平地(Jericho Cup:4600m)、Steeplechase(Grand Annual Steeplechase:5500m)に加え、Hurdleにおける国内最長距離の競争を制したことになる。障害馬としては昨年の8月にHurdle未勝利戦、JJ Houlahan Hurdleを勝ったばかりとさほど経験は多くはないのだが、障害競走はこれで5戦して無敗と高い実力を見せている。比較的小柄の馬体の持ち主で決してストライドも大きくはないのだが、やはり平地におけるスピード能力と効率的な航行能力というステイヤー資質においては非常に高いものを持っているようで、比較的馬場が良くなった条件もこの馬には味方した。ひとまずはGrand National Steeplechaseが大目標となるようだが、小柄な馬だけに今後想定される斤量増はあまりこの馬にとって歓迎できる材料ではないだろう。調教師のCiaron Maherは今年のCheltenham FestivalにBig Blueを参戦させた経緯もあり、斤量増を嫌って来年はオーストラリア障害競走とは異なる路線を歩むことも考えられる。ただし、飛越技術にはもう少し向上が欲しいところだろう。

惜しかったのが2着のBee Tee Junior。元々はニュージーランド障害競走でデビューした馬で、オルフェーブル産駒ということで日本からも話題を集めたHokkaido Missが4着に敗れたMcLeod Plumbing 1JW Hurdleを勝ってきた馬である。どちらかというと不良馬場において強靭なパワーを活かして内内を立ち回り、最後は強力な瞬発力で抜け出してくるイメージが強かったのだが、Soft5の馬場に対応できたことはこの馬の新たな可能性を示すものである。道中は最後方にいて脱落した馬を捌くのに苦労した面もあり、展開さえ異なっていれば1着まであり得るものであった。今回の好走には66kgという軽量が味方した面もあるのだが、この馬もどこかで大仕事をやってのける可能性を秘めている。

今年のAustralian Hurdleの勝ち馬Gobstopperは3着まで。前走のSoft7ではTallyho Twinkletoe以下に太刀打ちできず敗れていたが、馬場が良化したここではパフォーマンスを上げてきた。Eric Musgrove師の管理馬ということもあり、この馬も中山遠征とか面白いのではないか。驚きであったのが未勝利を勝ったばかりのSollevareで、元来BM120クラスでも大敗していただけに良馬場が余程この馬向きだったのかもしれない。連覇を狙ったTallyho Twinkletoeは最後失速して5着に終わったが、さすがにトップハンデの73.5kgに加えて、この馬のパワーが活きないSoft5の馬場は非常に不利な条件であった。また、元来パワーのある大きめのストライドでゆったりと加速するタイプの馬だけに、最終障害でのミスからリカバリーするのは困難であり、この着順は致し方ないものだろう。そこまでの飛越はこの馬らしい伸びのある素晴らしいものを見せており、Grand Annual Steeplechaseで再度期待したい。なお、レース後に跛行しているとの情報もあったが、おそらく最終障害のミスによるもので、さほど大きなトラブルではなさそうだ。

 

Crisp Steeplechase 4200m (Replay)

1. Slowpoke Rodriguez J: Steven Pateman T: Patrick Payne

3. Shamal J: Will Gordon T: Amy McDonald

4. The Dominator J: Thomas Sadler T: Henry Dwyer

立ち位置としては今月末のGrand National Steeplechaseの前哨戦といったところ。Crispは古き良き時代のオーストラリア障害競走の名馬であり、その後イギリスに移籍してGrand Nationalにて一世一代の大逃げを打ち、あのRed Rumの2着に入った実績もある。レースは前半から大きなリードを取ってThe Dominatorが逃げる展開も、2周目で息を入れたのか急速に後続が殺到。好位を進んでいたSlowpoke Rodriguezが抜け出すと、そのまま後続を振り切り5馬身差の快勝。2着には葦毛のDon't Be Shyが上がった。

Slowpoke Rodriguezは前走のMosstrooper Steeplechaseから連勝とした。今年の春の段階まではどうにも足りないレースを続けていたのだが、前走辺りから調子を上げてきている。昨年のCrisp SteeplechaseではWellsの驚異的な二枚腰の前に屈していたのだが、ここではその雪辱を晴らす勝利となった。今後はGrand National Steeplechaseに向かうと思われるのだが、鞍上のSteven PatemanはTallyho Twinkletoeと被るため、鞍上が誰になるのかも注意しておいた方がいいだろう。少なくとも現状メルボルン地区はレベル4のロックダウンとなっており、Tallyho Twinkletoeの本来の主戦であるAaron Kuruがニュージーランドから来ることは難しそうだ。

Don't Be Shyは波乱を演出する2着に入った。遡れば2018年のAustralian Steeplechaseの勝ち星があるのだが、その後はどうにもいまいちな成績ばかりで、ここでは大きく人気を落としていた。Soft5の馬場がこの馬に味方したのだろうか。Shamalはじわじわと脚を使うも、最後は勝ち馬から離され3着。やはりどうにも脚の使いどころが難しいタイプで、The Dominatorのロングスパートがこの馬には堪えたかもしれない。The Dominatorは前走のEcycle Solutions BM120 Steeplechaseにて逃げて圧勝していたこともあり、前半から積極的に大逃げを打ったのち一旦息を入れ、再度ロングスパートをかけるという技ありの戦術を取ったが、最後は失速して4着に終わった。

 

Racing Te Aroha @ Te Aroha (NZ) Heavy10

〇 Graham Lemon Murray Darroch, Optimism Hurdle MDN HDL 3100m (Replay)

1. The Cossack J: Aaron Kuru T: Paul Nelson & Corrina McDougal

好位から抜け出したThe Cossackが後続に20馬身差をつける圧勝。The Cossack自身はHDLは5戦目での勝ち上がりとしたが、3000メートルのRST OPN HDLクラスで同距離において高い瞬発力を誇るAve Mariaの2着もあり、明らかにここでは力上位の馬であった。初障害のTipical、2019年の時点ではさほどMDNクラスでも良いところがなかったThe Midnight Shiftなどが主な相手とさほどメンバーは揃ってはいなかったのだが、今後が楽しみになる勝利であった。その初障害のTipicalは地味に2着まで来たが、ややこのクラスでも格下感のあるCurious Georgeが3着と、若干2着以下の水準には疑問の残る内容であった。

 

〇 Knottingly Farm Maiden Steeplechase MDN STP 3500m (Replay)

1. El Disparo J: James Seivwright T: Mark Brooks

The Anarchistが手綱を押して先頭を伺うも、行き脚がつかず替わりにDesert Stormが逃げる展開。そのままレースはスローで流れるも、途中から先頭に立ったEl DisparoがPress My Buttons以下の追い上げを凌いで勝利した。El DisparoはSTPは2戦目での勝ち上がりとした。HDLでは昨年のWaikato Hurdles (PJR)にてIffitelの2着のある実績馬であり、STPの飛越技術も2戦目の馬としては高いものを持っていた。後方から追い上げた牝馬Press My Buttonsが2着で、ここまで障害戦ではさっぱり良いところがなかった馬だけにやや波乱の結果となった。人気のLittle MacsはEl Disparoを追いかけて残り2障害辺りから叩き合いに持ち込んだが、最後は勝ち馬から脱落して4着に終わった。