*障害競馬回顧 2020/11/30-12/06
12/2(水)
Haydock (UK) Heavy
〇 Veterans' Handicap Chase (C2) 3m1f125y
U Whisper J: Sam Twiston-Davies T: Nigel Twiston-Davies
2014、2015年のAintreeのStayers' Hurdle (G1)を勝利したWhisperが出走していたが、残念ながら第5障害で落馬、予後不良となった。同馬は2016年からはChaseを使い、2017年のRSA Chase (G1)ではMight Biteの2着に入るなど活躍していた。2017年の末からは長い休養に入り、その後2回の転厩を経てこれが今年の417日ぶりとなる復帰戦であった。Chaseでも上記の活躍に加え、2017年の段階ではLadbrokes Trophy (G3)の2着など、将来性豊かな馬であったのだが、その後は順調に使えず、長期の休養を余儀なくされていた。
12/4(金)
Sandown (UK) Heavy (Soft in places)
〇 Ballymore Winter Novices' Hurdle (G2) 2m3f174y (Replay)
1. Star Gate J: Nico de Boinville T: Evan Williams
残り2障害辺りから先頭に立ったStar Gateがそのまま快勝。Star Gate自身はこれでHurdleは2戦2勝とした。レースとしては残り2障害辺りからの瞬発力争いといったところで、さほど内容的に目立ったものではないのだが、加速を掛けてからの飛越内容も悪くはなく、今後に向けて上々の内容だろう。走法から見ると馬場はある程度渋った方がよさそうなタイプのように見える。クラス2のShukers Introductory Hurdleにて2着に入ったValleresが2着。Maidenを勝ったばかりのSending Loveは先頭で運ぶも、最後は失速して3着に終わった。
Cagnes-Sur-Mer (FR) Tres Souple (3.9)
〇 Prix De Belvedere
Haies Pour tous chevaux de 5 ans et au-dessus, n'ayant pas, cette année, en courses de haies, été classés 1er ou 2ème d'une course de dotation totale de 30.000. Handicap 4000m (Replay)
2. Mansionsa J: Johnny Charron T: Gabriel Leenders
これ自体は特になんてことのないHaiesのHandicap競走なのだが、後方から手ごたえよく上がってきたMansionsaは持ったままで残り2障害地点で先頭に立つと、そのまま持ったままでゴールに向かい、そのまま持ったままで内から伸びてきたBricに差されて2着に終わった。この辺りのいきさつはこちらの記事が詳しい。どうやら騎手によるとMansionsaはノドの問題を抱えており余力がなかったために強く追わなかったとのことだが、獣医師の検査では特段の異常は見つからず、Gabriel Leenders調教師はそれなりにご立腹であったようだ。真相は不明だが、ひとまずJohnny Charron騎手は15日間の騎乗停止の罰則を受けたらしい。
12/5(土)
Aintree (UK) Soft (Heavy in places)
〇 Becher Handicap Chase (G3) National Course 3m1f188y (Replay)
1. Vieux Lion Rouge J: Conor O'Farrel T: David Pipe
年に5回行われるNational Courseを使用した競走だが、今年はGrand National Meetingがなくなったため、2020年にNational Courseを使用する障害としてはこのBecher ChaseとGrand Sefton Chaseとなる。レースはLe Breuil、Jett、Ramses De Teilleeなどが前に行く展開だが、後方からじわじわと位置を上げ、残り2障害地点でKimberlite Candyを交わして先頭に立ったVieux Lion Rougeが24馬身差の圧勝とした。
Vieux Lion Rougeはこのレースの2016年の勝ち馬で、National Courseはこれが9回目の出走となる。長くNational Courseを使っている馬だが、Grand Nationalは2017年の6着を再考に年々パフォーマンスを落としており、昨年のこのレースもWalk In The Millの9着と大敗していただけに、11歳という年齢的なものもあってやや評価を落としていた。それにしても、この難易度の高いNational Courseにおいて一切のミスがない飛越技術には恐れ入るのみであり、小手先のスピード能力などでは到底覆しようのない圧倒的な技術を感じさせる素晴らしいレースであった。Grand Nationalはやや距離的には長い印象もあり、ややレーティングを落としているだけに来年のレース選択はやや気をつけた方がいいのだが、それでも長くNational Courseで見てみたいと思わせる馬である。
昨年2着のKimberlite Candyは見せ場を作った。この馬自身、その後Classic Handicap Chase (G3)を快勝しており、本来であればGrand Nationalを目指したかった馬で、今シーズンはその期待がかかる。11st6lbの斤量を背負っての2着は立派だろう。距離延長も歓迎したいところ。National Hunt Challenge Cup (G2)の勝ち馬Le Breuilはその後の成績はいまいちであったのだが、ここでGrand Nationalへの望みをつなぐ3着。昨年のBecher Chaseでは大敗していたことを考えると、ここから楽しみな馬となるだろう。Planteur At Chapel Stud Handicap Chase (G3)を勝ってきたRamses De Teilleeは飛越が安定せず大敗。その2着のYala Enkiは第1障害で落馬に終わった。連覇を狙ったWalk In The Millもいたのだが、飛越がいまいちで第6障害のThe Chairで落馬に終わった。
〇 Many Clouds Chase (G2) 3m210y (Replay)
1. Lake View Lad J: Brian Hughes T: Nick Alexander
レースはNative RiverがFrodonを制して逃げる展開も、Native River、Santini、Lake View Ladの3頭の叩き合いはLake View Ladに軍配が上がった。この時期のAintree競馬場にはよくあるのだが、西日の影響でスタンド前の障害がほぼオミットされている。そのため後半はほぼ平地のスピード比べといった内容で、Lake View Lad自身は2018年のRowland Meyrick Handicap Chase (G3)勝ちなど実績のある馬ではあるのだが、内容的にはなんとも評価しにくいものである。Cheltenham Gold Cup (G1)の2着馬Santiniは見せ場を作っての2着。勝ち馬に対して6stの不利がありながらの2着は立派だろう。連覇を目指したNative Riverも頑張っての3着で、瞬間的なスピードの面で見劣ったのだが、10歳となった今年も元気なようだ。
Sandown (UK) Soft (Good to Soft in places)
〇 Henry VIII Novices' Chase (G1) 1m7f119y (Replay)
1. Allmankind J: Dan Skelton T: Harry Skelton
前半から先頭を切って進めたAllmankindが早々にGa Lawを振り切ると、追いかけてきたHitmanを凌いで勝利した。Allmankind自身は昨シーズンのCoral Finale Juvenile Hurdle (G1)の勝ち馬で、Chaseはこれで2走目となる。全体的にシーズン序盤の競争ということでメンバーはさほど揃ってはいなかったのだが、それでも将来性を感じさせる良い勝ち方を見せた。飛越についても現時点で特段の問題はなかったが、レース中のお行儀がさほど宜しくないのは4歳をいう若さもあるかもしれない。フランスからの移籍馬Hitmanは見せ場を作った。実績的にはほぼ無名に近いのだが、いきなりイギリスの素質馬相手にこれだけ迫ることが出来るのは収穫である。WincantonのRising Stars Novices' Chase (G2)を快勝したGa Lawはいまいちスピードに乗り切れずの3着で、これはRailway Fenceなど特徴的なSandownのコースに原因があるだろう。実績どころとしてはEldorado Allenも出走していたが、いいところなく大敗に終わった。
〇 Tingle Creek Chase (G1) 1m7f119y (Replay)
1. Politologue J: Harry Skelton T: Paul Nicholls
Alitorの復帰戦ということで注目されていたのだが、馬場を理由に回避。レースは前半から元気に先頭を走ったPolitologueがそのまま後続を突き放して勝利した。Politologueは昨シーズンのCheltenhamのQueen Mother Chase (G1)にて、やはりAltiorが不在のところを快勝してきた馬で、それ以外にもMelling Chase (G1)などG1は今回のTingle Creek Chaseを含めると4勝をあげている。Tingle Creek Chaseは2017年にもFox Nortonを凌いで勝利を挙げており、これで2勝目となった。パワー溢れる馬体から繰り出される持続性能の高いストライド能力はPoliglote産駒としては高い水準を誇っており、Sandownの坂をものともせずに駆け上がる姿が印象的であった。どうしても性能的には距離延長を考えたくなるタイプなのだが、24fは持たないようで、20fまでが守備範囲なのだろう。平坦なコースだとやや取りこぼしも多くなりそうだが、特に坂の多いコースでは注目して行きたい。Haldon Gold Cup (G2)を勝ってきた上り馬Greeneteenは強敵相手に踏ん張っての2着。最終障害までPolitologueについていければ大したものだろう。CheltenhamのBentley Flying Spur Handicap Chase (C2)で圧勝してきたRouge Vifはさすがに一気の相手強化で苦しかったようだが、Greeneteenと僅差の3着なら立派な内容である。良馬場になって改めて期待したい。
〇 London National Handicap Chase (C2) 3m4f166y (Replay)
1. Doing Fine J: Miss Millie Wonnacott T: Neil Mulholland
毎年Tingle Creek Dayに行われる超長距離ハンデ戦。勝ったのはDoing Fineだが、昨年のこのレースの幻の勝ち馬である。昨年のこのレースはPon Fenceの地点で事故があり、レース中止を知らせる黄旗が振られていたのだが、残りの騎手はそれに気が付かなかったのか、もしくは当該障害を迂回するものと理解したのかレースを続行し、結果的に延々3マイル以上を走り1位入線となったのがDoing Fineである。最終的に当該競走は無効とされ、Doing Fineの勝利は幻のものとなった。この経緯についてはこちらの記事が詳しい。Doing Fine自身はC3からC2辺りのハンデ戦で活躍する12歳のベテランで、Conditional JockeyであるMiss Millie Wonnacottともに嬉しい勝利となった。
Navan (IRE) Soft
〇 Irish Stallion Farms EBF Klairon Davis Novice Chase (G3) 2m1f (Replay)
1. Andy Dufresne J: Mark Walsh T: Gordon Elliott
3頭立てとやや寂しいレース内容であったが、Andy DufresneがEmbitteredを凌いで勝利した。Andy Dufresne自身はChaseはこれで2戦2勝。HurdleではMoscow Flyer Novice Hurdle (G2)勝ちのある素質馬だが、一線級相手とはさほど戦っておらず、今後メンバー強化された際の対応が課題となるだろう。Joseph O'Brien厩舎のEmbitteredが2着で、HurdleではEnvoi Allenなど一線級相手には歯が立たなかった馬だが、Chaseではどこまでやれるだろうか。
Pau (FR) Tres Souple (4.1)
〇 Prix Hubert De Navailles
Cross Country Pour tous chevaux de 5 ans et au-dessus. 4700m (Replay)
1. Uniketat J: Alain De Chitray T: Hector de Leganeste
Elegant StarとDyams D'Anjouが大逃げの構えも、途中からElegant Starは脱落。そのままDyams D'Anjouが逃げ込みを図るも、直線に入って伸びてきたUniketatが前を差し切り勝利した。Uniketat自身は今年前半のPauのCross Countryにて3連勝を上げてきた馬で、冬のCross Country初戦としては良い勝ち方を見せた。どちらかというと上り馬という立場だが、今年2月のGrand Cross de Pauの2着馬Blason D'Orをいきなり下してきたことは今後に向けて楽しみな材料だろう。そのUniketat相手に頑張ってきたDyams D'Anjouが3着。Elegant Starは途中からどうにも飛越にミスがあり、最後は大敗に終わった。
中山 / Nakayama (JPN) Good
〇 イルミネーションジャンプステークス / Illumination Jump Stakes Open 3570m
1. エンシュラウド J: 五十嵐雄介 T: 藤沢和雄
マイブルーヘブンが先頭を伺うも、早々にブラックワンダーが絡んできて先頭に代わる。しかし途中からこれに並んで行ったエンシュラウドがこれを競り落とすと、カポラヴォーロ以下の追い上げを凌いで勝利した。エンシュラウド自身は障害は未勝利に次ぐ2勝目とした。Tiger Rollと同じくAuthorizedの産駒ということが地味に目立つのだが、やはりまだ道中行きたがって走る部分が目立っており、全体的に飛越も粗いものであった。能力は確かなようだが、これ以上の距離延長となるともう少しレース運びが大人びて欲しいところ。オープンクラスの常連カポラヴォーロは落ち着いたレース運びで2着。レンジストライクが3着に入ったが、水壕障害で大きなミスがあった。未勝利を勝って挑んだスズカデヴィアスは見せ場を作れず5着。もう少し飛越技術の向上が欲しいが、距離的にも少し長いかもしれない。人気になっていたマイブルーヘブンはブラックワンダーに絡まれて苦しくなった。
12/6(日)
Cork (IRE) Soft to Heavy (Heavy in places)
〇 Kerry Group Hilly Way Chase (G2) 2m160y (Replay)
1. Chacun Pour Soi J: Paul Townend T: Willie Mullins
残り2障害辺りからスムーズに先頭に立ったChacun Pour Soiがそのまま快勝とした。Chacun Pour Soiは昨シーズンのDublin Chase (G1)の勝ち馬で、Queen Mother Champion Chase (G1)でもアイルランド代表として期待されていたのだが、あいにく出走取り消しに終わっていた。これが今シーズン初戦であり、全体的に格下のメンバーではあったのだが、いい勝ち方を見せた。馬の仕上げとしてはやや余裕残しであったようで、反応も思ったより鋭いものではなかったのだが許容範囲だろう。最終障害で派手な落馬に終わったCash Back及びDjingleは特に怪我はなかったようだ。
〇 Kerry Group Irish EBF Mares Novice Chase (G3) 2m160y (Replay)
1. Mount Ida J: Dennis O'Regan T: Gordon Elliott
残り5障害辺りからやや押して前に行ったMount IdaがScarlet And Doveを退けて勝利した。Mount Ida自身はChaseはこれが2戦目で初勝利とした。HurdleではMaiden勝ちのみに留まった馬だが、Voler La Vedette Mares Novice Hurdle (Listed)ではMinella Melodyの2着の実績もある。同様にChase2戦目であったScarlet And Doveが2着で、これは最終障害の飛越の分だろう。
Punchestown (IRE) Heavy
〇 John Durkan Memorial Punchestown Chase (G1) 2m4f100y (Replay)
1. Min J: Patrick Mullins T: Willie Mullins
レース映像からわかる通り、この日のPunchestown競馬場は濃霧に包まれており、なぜこの状態で開催を決行したのか不明だが、とりあえずこのレースを最後に開催は中止となった。例によってレース映像が全く見えず、内容としてはよくわからない。おそらく終始先頭を走ったMinがそのまま逃げ切り勝利した。Minは昨シーズンのRyanair Chase (G1)を始め、ここまでにG1を7勝している名馬で、これが今シーズンの初戦となる。16fでも良いのだが、同厩舎かつ同馬主のChacun Pour Soiがいるためおそらく20fがこの馬にとっての主戦場となるだろう。やや乗り難しい面があるようだが、最近は逃げてレースを作ることでこの馬のスピードを活かす競馬に終始している。やや意外だったのがTornado Flyerで、昨シーズンはIrish Stallion Farms EBF Klairon Davis Novice Chase (G3)のみに留まり、一線級相手にはやや苦しい印象だったのだが、いきなりここで強敵相手に頑張った。Novice上りのMelon、Battleoverdoyen、Allahoはいずれも案外な結果に終わった。