にげうまメモ

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21/09/19 Weekly National Hunt / Jump Racing

*週刊障害競馬回顧 2021/09/13-2021/09/19

9/16(木)

Belmont Park (USA) Firm (Result) (Replay)

William Entenmann Memorial Hurdle Stakes

To be run over National Fences for four-year-olds and upward which have not won over Hurdles prior to March 1, 2020 or which have never won three races, other than three-year-olds. Two and One Fourth Miles on the Hurdle. $75,000

1. Ritzy A. P. J: Graham Watters T: Neil Morris

上記Replayでこの日のBelmont Park中継の全体が視聴可能である。レースは第3障害でBaltimore Buckoが落馬し、それに躓いてPerfect Tapatinoも落馬。前半からBooby Trapが後続にやや大きなリードをつけて逃げる展開だが、勝ったのは残り400メートル付近から先頭に立ったRitzy A. P.。Ritzy A. P.自身は平地競争でもそれなりに実績のある馬で、Del Mar Derby (G2)やHollywood Derby (G1)への参戦歴もある。HurdleはColonial Downsの未勝利戦に続く2勝目とした。内容的にはややBooby Trapがゆったりと逃げた上に馬群が間延びした展開利もあったように思えるが、ひとまず平地の実績馬ということで注目しておいた方がいいだろう。2連勝で挑んできたBooby Trapが2着。今年のA. P. Smithwick Memorial (G1)の勝ち馬で、このHurdle路線の新たな主役候補として期待されていたBaltimore Buckoは残念ながら助からなかったそうだ。イギリス・アイルランドの2020-2021シーズンにおけるKeri Brion調教師のアイルランド遠征において勝利こそ上げることはできなかったものの最も精力的にHurdle競走に出走した馬で、アメリカ帰国後はG1を勝利して今後の活躍を期待されていたのだが、残念な結末となってしまった。

 

Lonesome Glory Handicap Stakes (G1)

To be run over National Fences for four-year-old and upward. Two and One Half Miles on the Hurdle. $150,000

1. The Mean queen J: Richard Condon T: Keri Brion

Bodes Wellが逃げる展開もペースは落ち着き馬群は密集。しかし後半からBodes Wellはペースを上げると、最終コーナーの前では後続にやや大きな差をつける。しかし番手から追い上げてきたThe Mean Queen、さらにはSnap Decisionが最終コーナーでBodes Wellを捉えると、The Mean QueenがSnap Decisionを退けて勝利した。

The Mean Queenは上記Keri Brion調教師のアイルランド遠征にて、Keri Brion調教師唯一のアイルランドHurdle競走における勝利をもたらした馬。アメリカ帰国後はGreat MeadowのAllowance、Percy WarnerのMargaret Currey Henley Hurdleと連勝を上げ、Jonathan Kiser Novices Stakesでは謎の落馬に終わっていたものの、前走はJonathan Sheppard Handicap (G1)を快勝していた。今回は昨年のNovice Championで、今最もアメリカHurdle路線において勢いのあるSnap Decisionを下したことで、名実ともにアメリカHurdle路線の頂点に立ったと考えてよいだろう。一方、ここまでCalvin Houghland Iroquois Hurdle (G1)を含む9連勝を上げてきたSnap Decisionはついにここで連勝が途切れることになった。とはいえ非常にゆったりとした展開を後方で進んだことや、平地部分でのスピード面で勝ち馬に分があったという側面もあり、逆転は展開一つで可能だろう。

昨年のNew York Turf Writers Cup (G1)の2着馬Rediceanが3着だが、前2頭とはかなり離された結果で、残念ながらやや力量差がありそうだ。今年のIroquois Hurdle (G1)の2着馬Amschelもやはり当時の内容が示す通り、ここではやや苦しい感もある。前走Jonathan Kiser Novice Stakesを棚ぼたで勝利したBodes Wellは最後脚が上がっての5着。前走の内容的にもThe Mean Queenと比べると格下感があるのだが、どうにも走ったり走らなかったりと気性の悪さを見せているのが気がかりな内容である。

 

9/17(金)

Auteuil (FR) Tres Souple (4.1)

〇 Prix Finot (Listed)

Haies Pour poulains entiers et hongres de 3 ans, n'ayant pas couru. 3600m (Replay)

1. Aimant J: Angelo Zuliani T: David Cottin

ぼちぼち秋のAuteuil開催と重賞競走も始まり、秋のフランス障害競走も本格化してきた。勝ったのは最終コーナー入り口から元気よく上がってきたAimant。飛越自体は安定しており、この時期の3歳戦らしくかなりゆったりとした流れであったが、抜け出してからのトップスピードは目立つものがあった。父Exosphereはオーストラリア産馬で、オーストラリアでGolden Rose Stakes (G1)勝ちがある。どうやらフランスにシャトル種牡馬として繋養されていたようで、ヨーロッパ障害競馬における実績は皆無といっていいだろう。ヨーロッパ障害競馬では珍しいSir Tristram - Zabeelというオセアニア感しかない系統で、Aimantの母父もDansili、母系はアメリカ系統ということで、フランス障害競馬においてはかなり異色の出自となる。ひとまず今回は瞬発力の違いで押し切ったが、どこまで戦うことができるのか楽しみにしたい。

 

〇 Prix Richard Et Robert Hennessy (Listed)

Steeplechase Pour tous chevaux de 5 ans et au-dessus. 4400m (Replay)

1. Thrilling J: Baptiste Le Clerc T: Lageneste & Macaire

2週目から一気にペースを上げて引っ張ったThrillingがそのままEddy De Balmeを抑えて勝利した。Thrillingは2019年の4歳Steeplechase路線では比較的上位の活躍を見せた馬で、Prix Ferdinand Dufaure (G1)では勝ったGoliath Du Berlaisがあまりにも強すぎたとはいえ、30馬身ほど離れた3着に入っている。今年の春に約1年半ぶりに復帰し、そこから一線級相手には戦っていなかったのだが、これで6月のPrix Rigoletto (Listed)を含む3連勝とした。レースとしてはやや全体的に若さを見せる部分があり、全体的に試走といった意味合いが強いレースをスピードの違いで押し切ったといったもので、ここからいきなり重賞クラスでと言うと微妙なのだが、ひとまず世代トップクラスの能力を見せていた馬として期待したいところ。春には重賞で好勝負を演じていたEddy De Blameが2着。こちらはThrillingと違って落ち着いたレース運びが目立っており、障害馬としての完成度の違いを感じさせるものであった。

 

Prix The Fellow (G3)

Steeplechase Pour tous poulains et pouliches de 4 ans. 4400m (Replay)

1. Let Me Love J: Olivier Jouin T: William Menuet

前半からQueen Du Berlaisが逃げるも、Gros Open Ditchでミスをして後退。最終コーナーから抜け出してきたLet Me LoveがLadyvilleとの叩き合いを制して勝利した。

牡馬・セン馬・牝馬混合戦なのだが、実に8頭中5頭が牝馬が占めており、上位3頭は牝馬が独占している。Let Me LoveはHaiesでは重賞においてはぱっとしなかった馬で、Steeplechaseに転向して結果を残してきた。Steeplechase重賞はこれが初勝利となる。水壕障害でやや大きなミスはあったものの許容範囲といったところで、Authorizedの産駒だが特段乗り難しそうなところは認められなかった。惜しい2着に終わったのがLadyvilleで、Haiesでの実績はHaras D'Etreham Prix Sagan (G3)勝ちがあるようにこちらが上である。直線の障害でややミスがあり、この辺りで着順は入れ替わる可能性があるだろう。Prix Ferdinand Dufaure (G1)の上位2頭、Le Listrac、L'aubonniereがこれに続いた。

 

9/19(日)

Bro Park (SWE) Steeplechase god, Häckbana god

H. M. Drottingens Pris 3800 hä

För 4-åriga och äldre hästar som vid viktdatum fullföljt minst en steeplechase eller häcklöpning. (Replay)

1. Early Voice J: Engblom Henrik T: De Burca Kahlil

3周目に入る辺りからペースを上げて引っ張ったEarly VoiceがそのままMr Suarezを退けて勝利した。Early VoiceはこれでBro ParkのSteeplechaseから連勝、障害競走のみに限れば、昨年11月のBro ParkのNovice Hurdleから3連勝とした。もともとはアイルランドで障害競走を走っていた馬で、3歳Hurdleの一般競争でFujimoto Flyerの4着が最高とさっぱり良いところがなかったのだが、スウェーデン移籍後は良績を残している。ただし今回は途中からペースアップしたEngblom Henrik騎手の好騎乗もあった。Mr SuarezはEarly Voiceを早めに追いかけての2着。今年のSvenskt Champion Hurdleの勝ち馬Tinoloもいたのだが、こちらは好位から進めるも最後脱落し3着。今年7月のノルウェーのHurdleでも大して実績のないVon Blucherの2着に終わっているようで、今回のレース運びを考えるとやや疑ってかかった方がいいかもしれない。上り馬Liars Cornerは後方にゆったりと構えるレース運びで、結果的に明らかに仕掛け遅れの4着に終わった。

 

H. M. Konungens Pris 4200 st

För 4-åriga och äldre hästar som vid viktdatum fullföljt minst en steeplechaselöpning. (Replay)

1. Three Is company J: Stern Kim T: Enström Lars-Åke

途中から逃げるLuris Pegasusに絡んで行ったThree Is CompanyがLuris Pegasusとの叩き合いを制して勝利した。Three Is Companyはこの路線ではかなり長い馬で、今年のFamiljen Perssons minneslöpningの勝ち鞍がある。本来Strömsholmの障害にも対応可能な技術のある馬で、今回はこの馬が早めに動いたことで全体的に脚が上がる展開の中、最後まで飛越が安定していたことが勝因だろう。Luris Pegasusは惜しい2着。今年の5月に長い休養から復帰した馬だが、Bro ParkのSteeplechaseについては問題なく対応していた。Svenskt Grand Nationalの勝ち馬Reinventもいたのだが、どうにも苦しくなったせいか勝負所の飛越でミスがあり、そのまま後退して3着に終わった。どうやら故障で助からなかったとのことで、残念な結果となってしまった。

 

Pakuranga Hunt @ Te Aroha (NZ) Slow8

RMS Contracting Open Hurdle OPN HDL 3100m (Replay)

1. Dr Hank J: Shaun Phelan T: Harvey Wilson

前半から元気一杯English Gamblerが逃げる展開。English Gamblerはそのまま先頭で最終コーナーを回ってくるも、直線で後続が接近。なんとかEnglish Gamblerは最終障害までリードを保つも、最終障害でミスをして落馬。番手にいたDr Hankが勝利した。

Dr HankはこれでHurdleは3勝目とした。Hurdleは4戦3勝と好成績を収めている馬で、今回は前走負けたRichard of Yorkeがおそらく何等かのトラブルで途中棄権に終わったこと、人気のEnglish Gamblerが落馬したといったこともあったのだが、それでもこのEnglish Gamblerの逃げを一頭追いかけていったパフォーマンスは単なる棚ぼたと片付けていいものではないだろう。Maidenを勝ったばかりで全く人気のなかったCurious Georgeが2着。Maidenを勝ちあがるにはやや時間の掛かった馬だが、今後に繋がる走りを見せた。Maidenを圧勝して人気を集めたEnglish Gamblerは全体的に制御を欠いて走っており、最終障害の落馬も騎手との意図が合わなかったもののように見える。

 

Pakuranga Hunt Cup (PJR) OPN STP 4200m (Replay)

1. Eion J: Emily Farr T: Ken Duncan

本来Ellerslie競馬場で行われる競走なのだが、新型コロナウイルス感染症の影響で今年はTe Arohaで行われることになった。前半からIt's A Wonder、Zartan、Mesmerizeといった馬が引っ張る展開も、これを好位からEion、Te Kahu、Lacustreが追いかける。抵抗するZartanをEionが抑えて勝利した。

Eionはこれで今年のMcGregor Grant Steeplechaseに続き、PJRは2勝目とした。かなり長い休養を経てきた馬だが、今年のパフォーマンスを見る限りではその影響はないようで、前がかなり引っ張るところを好位で追走して勝ち切るパフォーマンスは今後の可能性を感じさせるものであった。Great Northern Steeplechaseがどこで開催されるかは未定のようだが、少なくともEllerslie競馬場がダメな馬ではなさそうで、本番も期待できるだろう。12歳のZartanは見せ場十分の2着。ここまで2~3着が多くどうにも勝ち切れない馬なのだが、It's A Wonderを煽るくらいの勢いで引っ張り、絡んできたMesmerizeを振り切り、最後までEionに抵抗するレース運びはここでも実力上位であると考えてよいだろう。上り馬Te Kahuが3着。Lacustreは好位から進めたが、最後やや伸びを欠き4着に終わった。Grand National Steeplechaseで見せ場を作ったShamalもいたのだが、前半からはるか離れた後方を走り、そのまま見せ場なく大敗。It's A Wonderは途中でトラブルがあったようだ。