にげうまメモ

障害競馬の個人用備忘録 ご意見等はtwitter(@_virgos2g)まで

21/11/07 Weekly National Hunt / Jump racing

f:id:virgos2g:20211103105017p:plain

*週刊障害競馬回顧 2021/11/01-2021/11/07

11/02(火)

Exeter (UK) Good to Soft

Haldon Gold Cup (G2) 2m1f109y (Replay)

1. Eldorado Allen J: Brendan Powell T: Colin Tizzard

Moonlighterが引っ張るも早々に後退。代わってKing D'Argentが先頭に代わるが、残り4障害辺りからHitmanが先頭に。そのままついてきたEldorado Allenを振り切って逃げ込みを図るが、ゴール直前でもう一度伸びてきたEldorado AllenがHitmanを捉えて勝利した。

今年は昨シーズンのCelebration Chase (G1)の勝ち馬Greaneteenの参戦があったが、それ以外は基本的にNoviceからの上り馬といったメンバー構成であった。勝ったEldorado Allenは昨シーズンのNovice上りの馬で、Arkle Challenge Trophy (G1)ではShishkinの2着もあるのだが、基本的に同路線では2番手以下の立ち位置といったところで、Arkle Challenge Trophy (G1)でも後方からついて回り、最後Shishkinについて行った組の脚が上がったところを浮上してきたといったレース運びであった。レース振りからは距離を伸ばした方がよさそうな印象もあるのだが、AintreeのManifesto Novices' Chase (G1)では5着に敗れており、どうにも能力自体がよくわからないといったところ。今回も最後脚が上がったHitmanに対してじわじわと伸びて差し切ったというレース運びで、内容的にはやはり距離を伸ばした方がよさそうな印象がある。Wind Surgery明けのHitmanが2着で、こちらはManifesto Novices' Chase (G1)ではProtektoratの3着に入っている。同レースでさっぱり勝負にならなかったEldorado Allenと違って最後まで勝負圏内で頑張っており、今回はあくまで仕掛けのタイミングの差だろう。昨年の勝ち馬Greaneteenもいたのだが、他馬が10st台の斤量を背負う中で一頭だけ11st10lbを背負っており、勝負圏内には入れず離れた4着に終わった。Celebration Chase (G1)ではAltiorを下してきたのだが、Altior自身昨シーズンの時点でかなりピークは過ぎていた印象もあり、今シーズンの16f Chaseには強力な上り馬が多数存在することを考えると、やや先行きが不安な結果となった。

 

11/06(土)

Aintree (UK) Good to Soft (Soft in places)

〇 Grand Sefton Handicap Chase (C2) 2m5f19y (National) (Replay)

1. Mac Tottie J: James Bowen T: Peter Bowen

Sir Jack Yeats、Spyglass Hill、Via Dolorosaなどが前に行くも、残り3障害辺りからVia Dolorosaが先頭に。しかし好位でスムーズに追走していたMac Tottieが残り2障害で先頭に代わると、追いかけてきたSenior Citizenを抑えて勝利した。

Grand Sefton Chase自体、昨年までは12月のBecher Chase Dayに行われるClass2の競争で、年間に5回のみ行われるNational Courseを使ったものなのだが、今年からは11月に移動したようだ。Mac tottieは昨シーズンにNoviceのClass3で勝ち鞍がある程度の実績で、今シーズンの初戦もFontwellのClass2で大敗している。20fよりも24fがよさそうな感はあるのだが、今回初のNational Courseで一変した。National Fenceにおいて飛越にミスはほぼ認められず、若干Foinaivonで躓く場面はあったがすぐに立て直していた。距離延長でさらにパフォーマンスを上げることが期待されることを考えると、新たなNational Specialistとして楽しみにしたい。これが3度目のNational Fenceへの挑戦となるSenior Citizenも安定したレース運びで2着に入った。

 

Wincanton (UK) Good

'Rising Stars' Novices' Chase (G2) 2m4f35y (Replay)

1. Captain Tom Cat J: Charlie Hammond T: Dr Richard Newland

持ったままで上がってきた人気のMick Pastorがそのまま勝つかと思いきや、内で抵抗した逃げたCaptain Tom Catがこれを凌いで勝利した。Captain Tom Catは今年の5月からChaseを使ってきた馬で、夏場にはNovice戦で圧勝劇を3戦連続で演じているのだが、その後挑戦したSummer Plate (G3)では5着に終わっていた。その後のNoviceのListedでも大敗していたものの、今回は久しぶりに逃げてこの馬らしいレースを見せたといったところだろう。内容的にはどうやらスピードを生かして逃げた方がよさそうなタイプで、Wincantonのスピードが生きるコースも味方したようだ。4連勝で挑んできたMick Pasterは勝ち馬を捉えきれず。ここまで3度のWind Suergeryを行っているように若干の健康面での不安は残りそうだ。

 

Elite Hurdle (G2) 1m7f50y (Replay)

1. Sceau Royal J: Darryl Jacob T: Alan King

強気にChristopher Woodが出て来ようとするも、これを制してSole Pretenderがハナへ。残り3障害辺りからTeqany、Sceau Royalなどの後続が殺到し、そこから抜けてきたSceau RoyalがTeqanyに5馬身差をつけて快勝した。

Sceau RoyalはこれでElite Hurdle (G3)は3勝目とした。昨シーズンはシーズン前半はHurdle、その後はChaseを使っており、ChaseでもCelebration Chase (G1)の3着といった良績を収めている。ChaseではNovice時代にHenry VIII Novices' Chase (G1)を勝った実績はあるのだが、基本的にChaseのG1クラスでは一歩足りないといった立ち位置のようで、そのレース選択には注意した方がよいだろう。今シーズンはこれでKemptonのListed Hurdleから2連勝で、9歳となった今年の冬も調子はいいようだ。能力的には基本的に良馬場で低い飛越とスピードを武器に立ち回るタイプのようで、馬場が悪化するとあまり良くはなさそうな印象がある。案外アメリカのHurdleや中山などは合うのかもしれない。昨年のこのレースの2着馬TequanyはまたもやSceau Royalの2着だが、内容的にはほぼ完敗といったところだろう。

 

Naas (IRE) Yielding (Good to Yielding in places)

Fishery Lane Hurdle (G3) 2m (Replay)

1. Teahupoo J: Jack Kennedy T: Gordon Elliott

Quilixiosの始動戦ということで話題になっていた。そのQuilixiosが途中から引っ張るも、残り3障害辺りからTeahupoo、Autumn Eveningが接近。Autumn Eveningは残り2障害で落馬するも、TeahupooがそのままQuilixiosを12馬身突き放して勝利した。Jeff Kidderもいたのだが、こちらはさっぱり伸びず3着まで。

Teahupooは昨シーズンのNorman Colfer Winning Fair Juvenile Hurdle (G3)の勝ち馬。FairyhouseのRathbarry & Glenview Studs Juvenile Hurdle (G2)ではJeff Kidderの2着に終わっていたのだが、G1クラスでの出走はなく、G1で実績を残してきた一線級を相手にするのはこれが初めてであった。ひとまず4歳世代相手に格好はつけたが、上の世代相手にどこまでやれるかは未知数だろう。昨シーズンのJCB Triumph Hurdle (G1)の勝ち馬Quilixiosはどうにもその直後のPunchestownのChampion 4yo Hurdle (G1)で凡走したことが気になるのだが、今回も全体的にRachael Blackmoreとリズムが合っていないような走りで、最後は失速して2着に終わった。やや驚いたのが上り馬Autumn Eveningで、昨シーズンJuvenile Hurdleの重賞クラスの実績はなく、今年の9月にLiam Healy Memorial Lartigue Hurdle (Grade B)を勝ったばかりなのだが、勝ち馬を上回る勢いで進出してきての落馬。ここまで走るとは驚きで、できれば最後まで見てみたかった。

 

Poplar Square Chase (G3) 2m (Replay)

1. Captain Guinness J: Rachael Blackmore T: Henry de Bromhead

Felix Desjyが逃げるも飛越にもたつき後退。代わってAndy Dufresneが前に行くも、これをぴったりと追いかけていったCaptain GuinnessがAndy Dufresneを4馬身ほど突き放して勝利した。

Captain Guinnessは重賞はこれが初勝利、Chaseは2勝目とした。2020年のSupreme Novices' Hurdle (G1)では他馬の落馬の煽りを食って落馬、Irish Arkle Novice Chase (G1)では元気よくEnergumeneを追いかけるも落馬、Ryanair Novice Chase (G1)も最終障害で落馬と、ここまでとにかく良いところがなかったのだが、ようやくここにきてこの馬の実力を示すレースを見せてくれた。この路線にはShishkinやEnergumeneといったバケモノクラスの馬がいるのだが、基本的にそれらに次ぐ実力の持ち主といったところで、まともに走ればG1クラスでも好走が期待されるだろう。Andy Dufresneは昨シーズンのNovice上がりの馬で、ここまでの成績的には20fよりも16fの方がよさそうな印象がある。

 

Auteuil (FR) Collant (4.5)

Prix Congress (G2)

Steeplechase Pour tous poulains et pouliches de 3 ans, ayant reçu une allocation en courses à obstacles. 3600m (Replay)

1. Latino Des Isles J: Pierre Dubourg T: Arnaud Chaille-Chaille

前半から元気一杯大逃げを打ったLatino Des Islesの逃げ足は衰えることなく、むしろそこから後続を突き放すと、終わってみれば2着のIniesta Du Gouetに20馬身差をつける圧勝とした。

Latino Des IslesはSteeplechaseはこれでListedから2連勝とした。HaiesではPrix Aguado (G3)にてParadisoの3着があるくらいで重賞クラスにおける目立った成績はないのだが、Steeplechaseでは結果を残している。全体的にスピードに任せた飛越が多く、若干のミスも散見されるのだが、それでもFrance GalopのTracking SEgmentsを見る限り、前半からかなりのペースで飛ばしながらも最後まで大きな減速が生じることなく押し切っているのは非常に今後が楽しみになるものである。まだ3歳と若く、色々と荒削りな面は多いのだが、もう少し落ち着いて走ることが出来れば距離延長にも対応できるだろう。

 

Haras D'Etreham - Prix Magalen Bryant (G2)

Haies Pour pouliches de 3 ans 3600m (Replay)

1. Hawai Du Berlais J: Pierre Dubourg T: Arnaud Chaille-Chaille

好位から進めたHawai Du Berlaisが直線で抜け出すと、そこからLa Maniganceに15馬身差をつけて圧勝した。Hawai Du BerlaisはこれでHaiesは3戦3勝。前走のPrix Magne (G3)ではLa Cheneviereと接戦を演じていたのだが、今回は馬場が悪化して一気にパフォーマンスを上げてきた。Martaline産駒は航行能力とパワーに優れたストライドを有することが特徴で、Hawai Du Berlaisはその特徴をよく受け継いでいるように見える。他馬が概ね65kgを背負っていたのに対して、この馬は67kgを背負いながらも直線の瞬発力だけでこれだけ突き放すのは、やはり能力としては一枚格上といったところで、La Cheneviereこそ不在であったものの少なくともこのレースでは別格の存在であったと考えてよいだろう。Lion D'Angers、Compiegneと連勝してきたLa Maniganceが2着。春先に結果を残してきたLa Boetieもいたのだが、こちらは振るわず6着に大敗した。

 

Grand Prix D'Automne (G1)

Haies Pour tous chevaux de 5 ans et au-dessus 4800m (Replay)

1. Galop Marin J: Morgan Regairaz T: Dominique Bressou

2018年から3連覇、今年で4連覇を目指すGalop Marinが出走していたのだが、春のGrande Course De Haies D'Auteuil (G1)で30馬身差の大楽勝を上げ、秋の2戦はいずれも楽勝しているL'Autonomieが例によって人気の中心となっていた。イギリスからはThyme Hillが参戦しており、L'Autonomieに次ぐ2番手候補として人気を集めていたようだ。

レースは例によってGalop Marinが出てくるも、早々にL'Autonomieが先頭に。1周目のスタンド前でややL'Autonomieが右に斜飛する癖を見せると、代わってGalop Marinが先頭に代わる。好位からPaul's Saga、Thyme Hill。最終コーナーの手前からGalop Marin、L'Autonomieが後続を突き放すと、最後の直線でGalop Marinは内へ、L'Autonomieが大外へ進路を求める。そのまま後続を大きく突き放しての2頭の叩き合いは内のGalop Marinに軍配が上がった。3着にはFolsom Prisonが入った。

L'AutonomieのAngelo Zuliani騎手の騎乗がやや物議を醸しているようだ。確かに、単純な走行距離という意味ではGalop Marinと比べるとL'Autonomieはかなりの距離を走っていることになる。しかしながらAuteuil競馬場の直線では馬場条件や内埒側の形態を踏まえて大外方向に持ち出すことは決して珍しい戦術ではなく、さらにL'Autonomieには右方向に斜飛する癖があることを踏まえると、Angelo Zuliani騎手の騎乗自体に問題があったとは思えない。むしろ右方向に斜飛する癖を見せていたL'Autonomieにとって、コーナーを曲がった後の直線の障害を右方向に飛越し、最終障害を外ラチを見ながら矯正しつつ飛越させたことは、この馬にとって最大限のスプリントを掛けるための戦術であったと考えてよいだろう。

Galop Marinはこのレースは4連覇とした。Miss Salsa Blue以下を15馬身千切った2018年、Paul's Saga以下を抑えきった2019年と2020年、そしてL'Autonomieとのマッチレースを制した2021年と、それぞれ素晴らしいレースをやってのけての4連覇である。スピードの持続性能とパワーに優れたこの馬にとって、おそらく3000メートルクラスよりも4000メートル後半のレースの方が与しやすく、かつ重馬場となった今日の条件もこの馬向きであった。単純なトップスピードという点ではL'Autonomieには適わないのだが、それでもこの馬のやるべきことをやった結果である。今年で9歳とそろそろベテランの域に差し掛かるのだが、内容的にはほぼ上位2頭が抜けており、L'Autonomieに対してよきライバルとしてまだまだ好勝負を見せてくれるだろう。

前走のPrix Carmarthen (G3)にてL'Autonomieの2着に入ったFolsom Prisonが3着に入った。さすがに上位2頭に対してはどうしようもなさそうだが、連下候補としては上位の能力を持っているようだ。イギリスのThyme Hillはさっぱり勝負にならず5着で、どうしてもここまで順調にレースを消化してきたフランス勢と比べると、これがシーズン復帰戦となること、さらに初のフランスのHaiesということで若干飛越面でも見劣る点があった。ひとまずイギリスに戻って期待したい。

 

11/07(日)

Navan (IRE) Good

For Auction Novice Hurdle (G3) 2m (Replay)

1. My Mate Mozzie J: Mark Walsh T: Gavin Cromwell

ゆったりとしたペースで引っ張ったMy Mate Mozzieが追いかけてきたBoothen Boyを振り切りそのまま10馬身差の快勝とした。My Mate MozzieはこれでMaidenから2連勝とした。今年の6月には平地の未勝利戦を使って2着に敗れているが、10月にはHurdleデビュー戦で勝利をあげている。NHFで重賞戦線での出走はないが、ここでは力が違ったようで今後を楽しみにしたい。やはりMaidenを買って挑んできたChemical Energyが2着に入ったが、この馬自身Natioanl Hunt Flatの重賞クラスでは足りなかった馬で、レースの全体的な水準と言う意味では若干微妙かもしれない。

 

Lismullen Hurdle (G2) 2m4f (Replay)

1. Darasso J: Luke Dempsey T: Joseph O'Brien

例によって後続を引き離してFlooring Porterが逃げるも、残り2障害で落馬。代わって前に出てきたDarassoがSire Du Berlaisを6馬身ほど突き放して勝利した。DarassoはもともとフランスでHaiesのListed勝ちがある馬で、2018年末からアイルランドに移籍、その後HurdleとChaseでそれぞれ重賞勝ちを収めている。ただし基本的にG1クラスや一線級相手だと若干足りないといったところのようで、HurdleやChase、それも16fから24fまであまりこだわらずに使っているというのが現状のようだ。目標とするレースがいまいちわかりにくいのだが、ひとまず戦績を見る限りでは、24fや重馬場ではあまりよろしくなさそうな印象があり、今回も条件的には比較的この馬向きであったのだろう。今年のSteyers' Hurdle (G1)ではFlooring Porterの2着に入ったSire Du Berlaisはまたもや2着で、勝ち馬とは斤量やここまでのステップによる程度の違いだろう。

 

Fortria Chase (G2) 2m (Replay)

1. Notebook J: Rachael Blackmore T: Henry de Bromhead

するすると逃げたNotebookがそのままSamcroを突き放して10馬身差の快勝。Notebookは遡れば2019-2020年の16f Novice Chaseで活躍した馬だが、昨シーズンは所詮のPoplar Square Chase (G2)勝ちのみに終わっていた。この路線はChacun Pour Soiというバケモノクラスの馬がいたりとどうにも層が厚く、かつこの馬自身重馬場でパワーのいるコースの方が得意ということもあって条件的なストライクゾーンも狭いのだが、さすがに大幅にメンバーが弱化したここでは格の違いを見せるレースであった。Samcroは今シーズンは夏場も使うなど色々と転機を図っているようだが、Notebookを追いかけるも、最後は突き放されて完敗の内容に終わった。斤量的にもNotebookに対して3lbの有利があったことを考えると、ここでは実力的にはっきりと順序が付いたといったところだろう。

 

Auteuil (FR) Collant (4.5)

Prix Maurice Gillois (G1)

Steeplechase Pour tous poulains et pouliches de 4 ans 4400m (Replay)

1. Let Me Love J: Oliver Jouin T: William Menuet

レースはHades、さらに途中からChorail Debelairが逃げる展開も、残り3障害辺りからLet Me Loveが先頭に。内を立ち回って出てきたSel Jemが最終障害手前で先頭に立ちそのまま逃げ込みを図るも、再度盛り返してきたLet Me Loveがゴール直前でこれを捉えて勝利した。Gold Tweetが3着。

Let Me Loveはこれで前走のPrix The Fellow (G3)を含む4連勝とした。スタート直後にやや行きたがって走る辺りはAuthorized産駒らしい前向きさもあるのだが、やはり落ち着いて走らせたときのスピードの持続性能とパワーは素晴らしいものを持っている。特に、機動力で一気に進出してきたSel Jemに対して、ゴール直前で弾き飛ばされる不利を受けながらもゴール手前で差し切るのだから大したものだろう。4歳牝馬ということもありどこまで現役を続けるかは不明だが、やはり障害馬として上のクラスでも見てみたい馬である。上り馬Sel Jemは惜しい2着。いきなりのG1クラスでほぼ勝ちに等しい内容まで迫ったことは大したもので、来年以降期待したい。この路線の安定勢力であるGold Tweetはまたもや3着で、このような馬は案外距離延長で変わってくる可能性を秘めている。春にPrix Ferdinand Dufaure (G1)を勝ったLe Listracは途中で落馬した馬に躓く不利もあったのだが、さすがに前から大きく離された5着というのは残念であった。同レースで2着のL'Aubonniereも大敗で、やや春のG1戦線のメンバーには疑問符がつく結果となった。

 

Prix Cambaceres (G1)

Haies pour tous poulains et pouliches de 3 ans 3600m (Replay)

1. Kyrov J: Gwen Richard T: Francois Nicolle

Sans Bruitが前に行くも、途中からこれを制してAin't Got Wingsが先頭に。最終コーナーを回る辺りから内を立ち回ってKyrovが先頭に代わると、そこからじわじわと伸びて後続を突き放し、終わってみれば9馬身差の快勝とした。2着にはGolden Sonが入った。

KyrovはこれでHaiesは6戦5勝とした。ここまで重賞クラスで戦った実績はなく、前走もCompiegneの賞金額で制限の付いた競走を勝ってのここへの参戦であったのだが、やや驚きの勝利をあげた。前半からやや行きたがって走っており、慎重に進めるためかスタート直後は最後方に位置しているのだが、内容的には完勝であった。10月のPrix Georges De Talhouet-Roy (G2)を勝ってきたGolden Sonが2着で、同4着のAin't Got Wingsが3着、同2着のImprenableが4着であることから、やはりというかこの組が強かったような感はある。6月のPrix FrascatiでGolden SonはKyrovに敗れているのだが、ややステップレースの関係か人気の盲点となっていたようだ。

 

Prix La Haye Jousselin (G1)

Steeplechase pour tous chevaux de 5 ans et au-dessus 5500m (Replay)


 1. Poly Grandchamp J: Bertrand Lestrade T: Francois Nicolle

フランスSteeplechaseにおける秋の大一番。このレースの昨年の勝ち馬Docteur De Ballonが早々にGrand Steeplechase De Paris (G1)3連覇に専念するために回避を表明していた。人気としては今年5歳で、昨年4歳Steeplechase戦線では無敵を誇り、春のGrand Steeplechase De Paris (G1)では5着に敗れたものの、前哨戦となるPrix Heros XII (G3)でGeneral En Chef以下を振り切って勝利をあげたLe Berryが一番人気に推されていた。その他、Carriacou、Figuero、Feu Folletといったこの路線ではお馴染みのメンバーが集まっていた。

レースは例によってLe Berryが出てくるも、2周目の入り口あたりからEnjeu D'Arthel、Feu Folletが前に出る。早々にPetit Open Ditchで落馬したEnjeu D'Arthelを残して、Feu Folletがそのまま引っ張る格好となる。しかし3周目の入り口でFeu Folletはトラブルがあったのか途中棄権。代わってLe Berryが引っ張るも、内からするすると上がってきたPoly Grandchampが先頭に。さらに外から進出してきたCarriacouとのマッチレースになるが、もう一度抵抗したPoly GrandchampがCarriacouを凌いで勝利した。Le Berryが3着。Figueroが4着に入った。

Le BerryはGrand Steeplechase De Paris (G1)ではやや距離的に持たなかったような格好で負けており、今回も春と比べると500メートル距離が短縮されるとはいえ、4歳時代には実績のなかった距離となることには変わりはなかった。そのため、どうしても前に行ってスピードを生かした方がよいという馬の性質もあり、前半から前に行ったものの、そこからはレースを慎重に進めようと試みている。それを見逃さなかったのがEnjou D'ArthelのClement Lefebvreであり、Feu FolletのBaptiste Le Clercであった。あいにくEnjou D'Arthelは早々に落馬し、Feu Folletもトラブルがあったのか途中棄権しているが、結果的にこれが道中からペースが緩まずに進行し、そこから徐々にペースを落としつつゴールまで耐えきるという消耗戦が形成されている。

Poly Grandchampは2020年のPrix Robert De Clermont-Tonnerre (G3)以来の勝利とした。この路線の重賞戦線には精力的に出走しているが大舞台では基本的にやや格下感のあるような走りを続けており、ここでこの消耗戦に耐えきったというのは驚きの勝利である。可能性があるとすれば、今回はかなり深いブリンカーをつけており、さらに途中からじわじわと進出して脚を使い切る競馬によって集中力を切らさなかったことが考えられるが、それにしても9歳となったこの馬がここまでの走りを見せるとは驚きである。2着のCarriacouは2019年のGrand Steeplechase De Paris (G1)の勝ち馬で、その後も大きな勝ち星こそないもののコンスタントに良績を残している。この馬にとってこのような消耗戦はこの馬向きであったのだが、それ以上の走りを見せたのがいつもいつも一緒に走っていたPoly Grandchampというのは驚きの結果であった。

Le Berryはやはり途中から延々と絡まれたのが苦しかった。Kevin Nabet騎手の戦術はこの馬の長所を生かしつつこの舞台を耐えきるにあたって最善のものであったが、やはりその戦術が簡単に通用するほど容易な世界ではない。最後は完全に脚が上がり、前の2頭からは大きく離されての3着であり、66kgという軽量で挑めるのはこれが最後であったことを考えるとここでは結果を残したかった。距離さえ持てばこの舞台で勝ち負けできる可能性もあるのだが、現状ではもう一段階レベルアップする必要がありそうだ。2019年のPrix Maurice Gillois (G1)の勝ち馬Figueroは大きく離されての4着で、昨年こそGrand Steeplechase De Paris (G1)で2着など頑張っていたのだが、今年はどうにも微妙な成績に終わっている。

 

その他

Oakbank members take their fight to court (The Advertiser)

残念ながらこの記事は会員限定で読めないのだが(本当はよろしくないのだが、"Long Live Jump Racing"という主にオセアニア州障害競走に詳しいFacebookグループのコメントに全文が転載されている)、概要文を読むとどうやらOakbank Racing Clubの障害競走中止の決定について、裁判所に訴え出るという動きがあるようだ。SA州の障害競走は多額の資金提供のオファーがあったにも関わらず、既に2022年は開催されないことが決定されているが、VIC州も含めてまだ色々と動きがあるようなので注視しておいた方がよいだろう。

OAKBANK BATTLE GOES TO COURT (RSN)

上記の記事の続報が出たので。

BHA confirms introduction of Junior National Hunt Development Hurdle races from Autumn 2022 (BHA)

BHAは"Junior National Hunt Development Hurdle"というカテゴリーを新設するようだ。これが10~12月は3歳馬、1~4月は4歳馬に解放され、National Hunt Flat及びJunior National Hunt Development Hurdleクラスを除く平地及び障害競走を走ったことがない馬が対象となる。この"Junior National Hunt Development Hurdle"クラスの勝ち馬は、翌シーズンも"Novice Hurdle"を走る資格があるそうだ。一頭につき"Junior National Hunt Development Hurdle"の出走は4回までに制限されている。