にげうまメモ

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21/11/21 Weekly National Hunt / Jump racing

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*週刊障害競馬回顧 2021/11/15-2021/11/21

11/20(土)

Ascot (UK) Good

Chanelle Pharma 1965 Chase (G2) 2m5f8y (Replay)

1. Lostintranslation J: Brendan Powell T: Colin Tizzard

例によってMaster Tommytuckerが逃げるも、最終コーナーからDashel Drasher、Lostintranslationが接近。Dashel Drasherは残り2障害から脱落し、LostintranslationとMaster Tommytuckerとのマッチレースは最終障害で前に出たLostintranslationに軍配が上がった。

Lostintranslationは2019年のBetdair Chase (G1)の勝ち馬で、2020年のCheltenham Gold Cup (G1)ではAl Boum Photoの3着もある。ただし昨シーズンはノドの影響もあってか不信に終わり、今シーズンの前に3度目のWind Surgeryを行っていた。ひとまず良馬場の20f戦で全体的に緩い展開であったこともあって結果を残したが、やはり良馬場が予想されたBetfair Chase (G1)ではなくこちらに回ってきたという点はやや気になるところ。Master Tommytuckerはやはり右回りの競馬場の方がいいようで、今回はLostintranslation相手に見せ場を作った。例によって飛越が怪しいところが多く、名門Paul Nicholls厩舎で既に10歳と年齢を重ねていることを考えると、ここから向上することも考えにくくこれが芸風なのだろうと受け入れるしかなさそうだ。2018~2020年頃に一時代を築いたDefi Du Seuilは昨シーズンはさっぱりで、今回はWind Surgery明けであったが、さっぱり良いところはなく大敗に終わった。20f自体は16fよりもペースが緩むことが多く、ノドの懸念がある以上悪い選択であったようには思えないのだが、ここまで負けるとなると馬の状態に懸念がありそうだ。

 

Coral Hurdle (G2) 2m3f58y (Replay)

1. Buzz J: Nico de Boinville T: Nicky Henderson

快調にSong For Someoneが逃げるも馬群は密集して進行。最後の直線から馬群を抜けてきたBuzzがSong For Someoneに3馬身差をつけて快勝した。

Buzzは昨シーズンのAintree Hurdle (G1)の2着馬。そこまではどちらかというとハンデ戦を使っており、クラス2で勝利もあったようだが、適性としてはG2以上の競争にあったような感がある。10月にはNewmarketの平地を使ってOisin Murphy騎手を背に勝利した実績もあり、元々平地で長い馬ということもあって平地のスピードという意味では高いものがあるのだろう。ただし、今回はやはり良馬場で緩い展開であったということもあり、スピードの持続性能という意味ではどこまでやれるか注意しておいたほうがいいかもしれない。昨シーズンのこのレースの勝ち馬Song For Someoneは自身のレースをしての2着で、本来はもう少し馬場が渋った方がいいのだが、やはりここでは実力上位である。なにかと話題になるGoshenもいたのだが、全体的にお行儀が悪く、直線でスパートをかけてからはやや走法が乱れて伸びきれず、結果として前からは離れた4着に終わった。

 

Haydock (UK) Good to Soft

〇 Graduation Chase (C2) 2m5f127y (Replay)

1. Bravemansgame J: Harry Cobdon T: Paul Nicholls

スムーズに進めたBravemansgameがそのまま勝利した。Bravemansgameは昨シーズンのChallow Novices' Hurdle (G1)の勝ち馬で、Chaseはこれで2戦2勝とした。ある程度余裕のあった展開とはいえ、全体的に伸びやかで安定感のある飛越が目立っており、今期のNovice戦線では楽しみな馬になるだろう。2020年のScilly Isles Novices' Chase (G1)の勝ち馬Itchy Feetは実はChaseは計2勝しかしておらず、Graduation Chaseへの出走権があったこと自体が驚きなのだが、今回も惜敗に終わった。全体的に飛越がいまいちでスピードに乗り切れないのはいつものことで、トップスピードよりもスピードの持続性能が生きるレースの方がよさそうな印象があるのだが、どうにもそのようなレースに使ってもらえていない。

 

Betfair Chase (G1) 3m1f125y (Replay)


1. A Plus Tard J: Rachael Blackmore T: Henry de Bromhead

Bristol De Maiの4度目のBetfair Chase (G1)勝利がかかったレースということで話題になっていたが、人気はアイルランドのA Plus Tardが集めていた。レースはBristol De MaiとRoyal Pagailleが並んで逃げるも、2周目からペースを上げたRoyale Pagailleが単騎先頭に。しかし好位でするすると抜けてきたA Plas Tardが残り2障害で先頭に立つと、そのまま後続に22馬身差をつけて快勝した。2着にはRoyale Pagailleが入った。

アイルランド調教馬はこのレースは初制覇とした。24f Chase G1の3冠レースの初戦となるこのレースは、本来イギリス調教馬にとって始動戦となるレースであり、この時期からわざわざアイルランドから勝負を掛けて遠征してくる意味合いは薄いのだが、Henry de Bromhead調教師は勝機ありと判断して馬を連れてきたのだろう。A Plus Tardは昨シーズンのCheltenham Gold Cup (G1)の2着馬で、昨年12月にSavills Chase (G1)の勝利を始め、24fの距離を延長してパフォーマンスを上げてきた経緯がある。元々左回りには適性があり、かつHaydockでありがちな極端な消耗戦にならずにスピードが生きる条件となったことは、Cheltenham Gold Cup (G1)でのロングスパートに耐えうる程の高いスパート能力を有するこの馬にとってあまりにも容易いレースであった。

上り馬Royale Pagailleは自身のレースをした。昨年の冬にHaydock、Kemptonといった競馬場の不良馬場のハンデ戦で頭角を現してきたように、本来は重馬場でのワンペース型の馬であり、良馬場となったCheltenham Gold Cup (G1)ではペースについていけず大敗していた。今回も得意のHaydockということで3着以下は完封しているのだが、適性としてはこのようなG1路線ではなく重馬場のハンデ戦にあるだろう。Chatham Street Lad、Clondaw Castleはここでは一枚格下の馬で、いずれもRoyale Pagailleから大きく離れた入線。実績馬といえば2018年のAscot Chase (G1)の勝ち馬Waiting Patientlyもいたのだが、さっぱりレースに参加できずに途中棄権。なにかと順調に使えない馬で、これがChristian Williams厩舎への転厩初戦であったのだが、やはり体調的には懸念が払拭できないというのが現状だろう。全体的にイギリス調教馬としてここからアイルランド調教馬に混ざった際のG1戦線で勝負になりそうな印象を持つ馬はおらず、イギリス24f G1競走の初戦としては寂しい結果になった。注目されたBristol De Maiは2018年当時は良馬場でこのレースを勝利しているのだが、そこから2年の歳月を経た現在、このような良馬場では既にスピード能力の面で厳しくなっているようだ。本来パワーとスピードの持続性能でゴリ押しするタイプの馬で、Haydockのように異様なまでに横長で後半息切れしやすい競馬場においては無類の強さを発揮するのだが、さすがにスピードでついていけなければどうしようもない。今回はRoyale PagailleのペースやA Plus Tardのスパートについていけず、残り4障害辺りから脱落して途中棄権に終わった。不良馬場のワンペース型の展開になるレースであればもう一花咲かせるポテンシャルは持っているのだが、残念ながら今年の英国の冬は乾燥した天候が予想されているらしい。

 

11/21(日)

Navan (IRE) Good

Monksfield Novice Hurdle (G3) 2m4f (Replay)

1. Hollow Games J: Davy Russell T: Gordon Elliott

ほぼ残り3障害からの瞬発力勝負はHollow GamesがLunar Displayを抑えて勝利した。Hollow GamesはこれでHurdleは2戦2勝、NHFも含めると4戦4勝とした。元々PTP出身の馬だが、ここでの飛越自体は安定しており、緩いレースであったとはいえ内容的には十分だろう。ここでは比較的経験の長いLunar Displayが2着だが、この馬自身昨年2月の牝馬限定Listedクラスで入着のある馬で、Hurdle2戦目でこれを下すことが出来るのだから大したものである。

 

その他

So French tombe au champ d'honneur (Paris-Turf)

日曜日のGrand Steeplechase De Bordeauxに今年で10歳となるSo Frenchが出走していたが、途中の障害で大きなミス、故障を発生して残念ながら助からなかったそうだ。2016年、2017年とGrand Steeplechase De Paris (G1)を連覇した名馬で、近年は故障の影響もあったのかAuteuilのG1戦線からは離れていたのだが、去年もこのGrand Steeplechase De Bordeauxでは2着に入り、前走のNancyでも勝利するなど、コンスタントに活躍を続けていた。

The Best Scenes from the International Gold Cup Steeplechase (Town & Country)

アメリカInternational Gold Cupのレポート。年に一度の開催だが、長い伝統と多数の観客を集める人気のある競馬開催である。アメリカ競馬の規模の巨大さに比して、アメリカ障害競馬は非常にマイナーであり、日本でもあまり知られていないようだが、このレポートを読む限りでは非常に華やかな様子で、現地に行ってみるのも面白いかもしれない。

Going good to ploughed: local farmer jeopardises once-a-year meeting (RacingPost)

スイスFehraltorfの競馬開催が地元農家との間で揉めているようだ。悲しいことに競馬場の馬場が耕されているなかなかにショッキングな写真が掲載されている。