にげうまメモ

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22/10/01 オーストラリア障害競馬 ④ - 出走馬統計 -

*オーストラリア障害競馬

2022年のオーストラリアにおいて障害競馬はVIC州のみで行われたことから、出走馬の殆どはVIC州調教馬であり、VIC州以外からの参戦馬はごくわずかであった。SA州からはOakbankに拠点を置くBarry Brook調教師がAristocat、Buckeye Nation、Drop The Orangeの計3頭を合計で6回出走させているが、そのうち全てが大敗又は途中棄権に終っており、出走したレースのいずれでも勝ち負けに加わることはできていない。2022年にSA州の障害競馬を廃止するに際してRacing SA側はSA州における障害馬の不足を主張していたようで、上記の統計情報はその主張を支持するものだが、一方でSAJR(South Australian Jump Racing)が2021年秋にRacing SAに提出したデータには以下の主張がなされており*1、上記の統計情報の解釈は注意を要する。少なくとも2021年以前(COVID-19前後の比較を含む)のVIC州におけるSA州調教馬の出走統計はその解釈において必要な情報だろう。

  • COVID-19による大きな影響を受けた2021年におけるSA州のHurdle及びSteeplechaseにおける平均出走頭数はそれぞれ5.3及び5.5頭であり、同年に行われた計12競走のうちGreat Eastern Steeplechaseを含む7競走でSA調教馬が勝利した
  • 2021年のSA州の障害競走の出走馬のうち、65頭中23頭がSA調教馬であった
  • SA州に拠点を置く計13人の調教師が2022年において条件が揃えば全体で20頭以上の現役競走馬を障害競走に出走させる準備をしていた

2022年において、オーストラリア障害競馬に管理馬を出走させた調教師は合計で60名程度である。その中には日本でもKarasiで有名なEric Musgrove師のようにオーストラリア障害競馬において豊富な実績を持つ調教師も含まれているが、一方でCiaron Maher、Gai Waterhouse、Ben Hayes、Patrick Payne、Symon Wilde、Henry DwyerといったVIC州全体のリーディングでも上位にランクインする調教師も積極的に障害競馬に参入していることは特筆すべきであろう。特にCiaron Maher & David Eustace厩舎の近年の勢いはすさまじく、その中にはNorwayやChains of Honourといった平地競馬の実績馬を次々と障害競馬に送り込んでいるうえに、2020-2021シーズンにおいては計13勝をあげリーディングトレーナーに輝き*2、2022年にはGrand Annual SteeplechaseをHeberiteで制すなど、近年のオーストラリア障害競馬において絶大な存在感を誇っている。

また、オーストラリア障害競馬のトップジョッキーであるSteven Pateman騎手は近年調教師としても活動しており、HistoricでEulong Steeplechase、Bell Ex OneでJJ Houlahan Hurdleを制すなど、じわじわと結果を残しつつある。Steven Pateman騎手は2020-2021シーズンも計19勝をあげリーディングジョッキーに輝くなど、今でも一線級の障害騎手として活躍しているが、過去にもオーストラリアのみならず、アイルランドアメリカ、ニュージーランド、さらには2003年のVelka Pardubickaにも参戦歴のある*3非常に成功した騎手である*4

過去、中山グランドジャンプをKarasiで制したBrett Scott元騎手は現在調教師として活動しており、2021年にはThe StatesmanでGalleywood Hurdleを制している。2021年の3月の第1週にMorningtonの厩舎にて馬に蹴られたことが原因で、脳出血及び顔面骨折により昏睡状態に陥っていた師であるが、治療の甲斐あって無事回復したのち、上記のレースが調教師に取って復帰後初勝利という非常に嬉しいレースになったようだ。また、日本人として川上鉱介元騎手はVIC州を拠点に障害騎手として活躍していたが、2019年のGrand National Steeplechaseの騎乗を最後に引退、現在はRising Sun Syndicateの代表取締役として活動している*5