にげうまメモ

障害競馬の個人用備忘録 ご意見等はtwitter(@_virgos2g)まで

22/10/09 Czech Racing - Velká Pardubická Result

Pardubice (CZE) 3.5 (dobrá / Good)

132. Velká Pardubická se Slavia pojišťovnou

Steeplechase crosscountry L - 6900 m, cena, 6letí a starší 5.000.000 Kč

何気なく撮影してそのまま忘れ去られていた写真が出てきた。2020年はチェコでのCOVID-19の急速な拡大による無観客開催、2021年は日本が最感染危険国に指定され日本からチェコへの入国は原則禁止されていたことから日本からPardubice競馬場の訪問は不可と寂しい状況であったが、2022年はPardubice競馬場にも入場規制なしに合計で約25000人の観客を迎え、かつて自由に日本から国外の競馬場への足を運ぶことができた世界を思い起こさせるような素晴らしい開催となった。また、この2日間で昨年の1500万Kčを上回る1700万Kčもの売り上げが達成され、さらにこの日の競馬中継を放映したČT Sportでは150万人の視聴者を集めたという記録もあるようで、*1、COVID-19による苦しい時代にも関わらず、これまでチェコ競馬の発展に尽力した関係者の努力が報われる開催となったそうだ*2。タイムラインを拝見しているとちらほらとこのレースを見ていると思しき人が散見され嬉しい限りである。日本調教馬の出走がどうとかいうケチくさいことを言わず、JRAもこのレースの馬券を売り出して欲しいところなのだが、どうだろうか。

今年は10月5日に上田麗奈 2nd ミニアルバム "Atrium"が発売されることが予定されており*3*4、到着以降は一切のやる気を失うことが容易に予測されたことから早々に出走馬紹介を書き上げていた。ブログを積極的に宣伝することは好きではないし、所謂わかりやすい記事や興味を惹くような記事というのは自分が書いていて面白くないことから、例によって情報量だけを増やした代わりに分かりやすさや取っつきやすさをかなぐり捨ててきたような記事ではあるのだが、こんなマイナー中のマイナーな話題しか扱わない辺境ブログの更新に気が付いてくださった方、読んでくださった方、紹介までしてくださった方、さらにはなにかしらの感想をくださった方がいてくれたことは嬉しいものである。基本的には個人的な備忘録代わりを目的として開設したブログであり、本来は公開する特段の理由もないものなのだが、なにかのきっかけで興味を持った方がきちんとした情報を集める上での助けになるのであればこれほど嬉しいことはない。

 

22/10/09 Czech Racing - Velká Pardubická Entries(にげうまメモ)

昨年の2着馬で、ここ数年のチェコCross Country路線屈指の素質馬として名高いEvžen、今年のI. kvalifikace na 132. Velkou pardubickou se Slavia pojišťovnou (NL)でTheophilosを下してきた7歳の上り馬Del Reyといった有力馬が相次いで早々に不在となり、さらに直前のIV. kvalifikace na 132. Velkou pardubickou se Slavia pojišťovnou (NL)では快進撃を続ける6歳馬Night Moonが落馬して権利取りに失敗、このNight Moonの落馬に巻き込まれる形で2021年の勝ち馬Talentも落馬し、そのTalentも一時は出走の可否が流動的である旨の報道が出たうえ、さらには2019年の勝ち馬Theophilosが直前で故障を発症し回避(引退)と、全体的にメンバーとしては手薄となることが想定されていた。しかしながらそのTalentは出走に漕ぎ着けることに成功し、下馬評としてはその連覇を狙う11歳のTalentが人気の中心になっていた。さらに、9月のMeranoのCrystal CupであるPremio Delle Nazioni (G2)を快勝し、フランス・イタリア・ポーランドなどで結果を残してきたSunday Break産駒のBrunch Royalがここへの出走を表明し、初のPardubiceのCross Country挑戦という懸念もあったものの、チェコ国外でのパフォーマンスが高く評価されたようでこの馬が対抗角と考えられていた。このBrunch Royalに続いてPlayer、Mr Spexといったこの路線の常連、さらには上り馬Imphal、13歳の古豪No Time To Loseが連下候補といったところだったようだ。

 

レースはスタート直後からStretton、Player、Imphal、Chicname De Cotteが前に行く展開で、その中でも特にThomas Garner騎手のStrettonはかなり積極的に前に出てくる。一方でLombargini、Star、Argano、Talent、Brunch Royalといった馬はゆったりとしたスタートを切ったことで、隊列はいきなりかなり長くなる。Velký Taxisův příkopにて番手にいたPlayerは障害直前で馬がブレーキをかけるもなんとか飛越。しかしながら3番手にいたImphalは明らかに踏み切り位置が遠すぎたことが原因で、空壕に引っ掛かる形で落馬。さらに中段にいたStarも落馬し、スロバキアの生きる伝説Jaroslav Brečka騎手のVelká Pardubickáは早々に終わってしまった。直後のIrská laviceは全馬無事に突破するも、Popkovický skokにてKaiserwalzerが空壕に引っ掛かるような形で転倒、スロバキア調教馬の2頭は第6障害までに競争中止に終わってしまった。

第7障害のFrancouzský skokにてDusigroszが着地時に躓いて騎手が落馬。このあたりからStrettonのThomas Garner騎手は一気にペースを落とし、PlayerやChicname De Cotteを筆頭に後続が殺到、そして馬群は密集して進行することになる。第10障害のAnglický skokにて中段で飛越にもたついた馬が出て接触が生じるも落馬は特に発生せず。この辺りでStrettonが先頭、Player、Chicname De Cotte、Mr Spexなどが先頭集団を形成。Talent、Brunch Royalが続き、その後ろからSacamiro、Lombargini、Dulcar De Sivola、No Time To Lose、Arganoと続く。ここまで落馬が多発したことで馬群と並走していた空馬がいたのだが、第14障害のŽivý plotの直前のコーナーで馬群に並走していた空馬2頭は逆方向に走って行く。この辺りの障害ではかなり極端にペースも緩んでいたものの特段の事象なくレースは進行するが、Dropにて空壕に後脚を取られる形でBrunch Royalが落馬。さらにHadí příkopの踏み切り地点で滑ったのかNo Time To Loseも落馬。そのままStrettonがかなりゆったりとしたペースで引っ張るも、Suchý příkopにて空壕に引っ掛かる形でミスをしたStrettonは後退、代わってStrettonと並走していたPlayerが先頭に出てくる。

後方に脱落したStrettonに代わってPlayerが前に出ると、好位からChicname De Cotte、Talent、Mr Spex、そして圧倒的最低人気のDulcar De Sivolaも含めて前目の集団を形成する。Lombargini、Sacamiro、Arganoは相変わらず後方から。Strettonは再度押し上げを図り、Steeplechase skokの辺りでは外から番手まで食らいついてくる。Playerはじわじわとペースを上げて引っ張り、前目にいたはずのChicname De Cotteはじわじわと後退する。終盤の難所である第26障害のVelký anglický skokは全馬ミスなくクリア。Havlův skokでは逃げるPlayerにTalent、Dulcar De Sivolaが並んでいく。その後ろからMr Spex、Lombargini、Sacamiroと続く。Stretton、Chicname De Cotteは脱落。Arganoは相変わらず後方から。ここからTalentがPlayerに並んでいったことで一気にペースが上がり、残り3障害地点ではTalentが先頭に。Playerがこれに必死で食らい付き、Mr Spexがその後ろから接近。Dulcar De Sivolaは後退し、代わって後方からSacamiroが接近する。そのままTalentは先頭で最終障害を越えるも、そこから内をすくって出てきたMr SpexがTalentとの激しい追い比べに持ち込むと、ゴール前ではTalentに対して1馬身ほど前に出て勝利した。2着にはTalent、後方から追い上げたSacamiroが3着、さらに前で粘ったPlayer。やや離れてArgano、そこから4秒近く遅れてLombargini、Dulcar De Sivola、そしてStretton。以上8頭が完走した馬である。Chicname De Cotteは勝負どころから脱落するとそのまま残り2障害辺りで途中棄権、なお馬群が来る前に直線で観客に愛想を振りまいていた馬はNo Time To Loseである。

 

Strettonに騎乗していたThomas Garner騎手は現在はアメリカを拠点とする名手で、PardubiceのCross Countryは2019年のこのレース以来なのだが、それ以前はチェコスロバキア、さらにはフランス、イタリアと渡り歩いていた歴戦の騎手であり、当然Velký Taxisův příkopへの対応方法をはじめ、Velká Pardubickáの騎乗方法はよく理解している。基本的にハナに行ってレース展開を握りたいという意図を強く持っていたようで、2020年頃までのトレンドに沿ってVelký Taxisův příkopをスプリントを掛けて飛越するというのはその意図の表れであった。Stretton自体は無茶なペースで飛ばしていくタイプではなく、むしろ平均的なペースからレースの安定感やスピードの持続性能を生かしつつじわじわと消耗戦へと持ち込んでいくタイプで、Velký Taxisův příkopからペースを落としつつ、後半のロングスパート合戦に持ち込むというのはThomas Garner騎手の戦術であった。その想定が狂ったのがSuchý příkopでのミスであり、そこからは同様にStrettonと似たようなペースを刻みつつ基本的に上り勝負に持ち込むことを目論んでいたPlayerによるレース展開となっている。これは同様にStretton、Evžen、Hegnusといった先行集団でのんびりと進める馬たちが引っ張り、その結果として明らかに引っかかったStarがするすると前に上がってきたり、空馬によるほぼ致命的な不利を受けて完全に馬群から脱落したBeau Rochlaisが再度復活してきたりと、魔訶不思議な現象が展開された昨年とほぼ同じような展開である。実際にここではスピード面から明らかに格下のDulcar De Sivolaまでが途中まで勝負圏内に加わっており、Havlův skokの地点では一瞬先頭に立ちかける場面すら発生したことはその証左であろう。

 

Mr Spexは昨年の3着馬で、今年はI. kvalifikace na 132. Velkou pardubickou se Slavia pojišťovnou (NL)では8着と凡走したものの、III. kvalifikace na 132. Velkou pardubickou se Slavia pojišťovnou (NL)では勝負に加わっての4着と調子を上げてきていた。昨年のQualification Raceではあまり良いところはなかったのだが、どうやら距離延長がこの馬にとっては向いたようで、今年も昨年と同様に本番になってパフォーマンスを上げての勝利となった。今年はJan Kratochvíl騎手が落馬負傷のためLukáš Matuský騎手に乗り替わっていたが、昨年よりもかなり積極的にレースを進め、そこから先に動いたTalentをターゲットに最後まで脚を伸ばし切るというレース振りで、この馬のスピードの持続性能を存分に生かし切るというレース振りであった。昨年はややレース展開としては後手後手に回り、展開次第ではもう少しやれるかもしれないといった悔いの残るレース振りではあったのだが、昨年よりも明らかにレース運びが向上しての戴冠であるのだから大したものである。やはりこのレースを熟知したLukáš Matuský騎手のような名手の手腕は大したものであり、この名手に対して以下のような失礼極まりない記載をしている某ブログの管理人は腹を切ってお詫びすべきである。

ただし、ここまで主戦を務めていたJan Kratochvílが落馬負傷のためLukáš Matuskýに乗り替わるのは若干微妙な材料だろう。

Mr Spexは2021年はこのレースまでのパフォーマンスはどうにも微妙であったのだが、2020年の段階で故障があり順調に使えなかったという話もあるようで*5、2021年の段階ではその悪影響があったのかもしれない。いずれにせよ今後順調に使うことができるかも含めて要注意だろう。今回はVelký Taxisův příkopでは転倒したImphalをぎりぎりで避けるという幸運もあった。メディアではCheltenhamのGlenfarclas Cross Countryの話題も出ているが、どうやら調教師によると輸送が負担になる馬であることからCheltenhamには行かないようで、来年1月末からゆったりとトレーニングを再開したのち、今年と同様の路線を辿るそうだ*6。ともかく、8歳の若馬がこのレースで強い競馬を見せたことは来年以降非常に楽しみな材料で、この日のPardubiceではCena LabeにてWell Absolut及びChelmsfordという6歳馬コンビがいいレースをしており、他にもNight MoonやEvženといった能力のある若馬が揃っていることを考えると、来年のこの路線は非常に面白いことになりそうだ。

11歳のTalentは見せ場を作っての2着。先に前に出てきたPlayerは放置しておけばそのままゴールまでPlayerのリズムでスパートを掛けることで確実に勝負圏内に入ってくるだけの能力を持った馬で、当然このことはPavel Složil騎手は熟知していることを踏まえると、このPlayerをターゲットにするのは致し方ないことである。結果的にはMr Spexのターゲットにされる形で2着には甘んじたが、それでもチャンピオンとしてのレースをしての僅差の2着なのだから大したものだろう。レースとしては昨年とほぼ同様の展開とはいえ、過去に大きな故障があり通常の競争馬と比べれば十分な強度の調教ができない馬で、しかも直前に軽度とはいえ負傷があっての2着なのだからその価値は非常に大きいものであろう。来年は12歳とかなり高齢の域に差し掛かるが、なんとかかつてのチャンピオンとして無事に走ってもらいたいものである。9歳の上り馬Sacamiroは後方から追い上げての3着で、展開次第ではもう少し上を目指すことが出来たかもしれない。おそらく距離延長はこの馬にとってはプラスであったようで、経験を積んでの来年に期待したい。所属するEva Petříková厩舎は全5名の小規模な厩舎、全員がフルタイムで異なる職業をしており、師は地元の農業中学校で教師をしているというなんとも地元に密着した陣営で*7、このような陣営が一国を代表するCross Country競走で結果を残すのだからやはりチェコの障害競馬というものは面白いものなのである。この厩舎のMaková Panenkaという馬がこの日の第1レースで勝利しており、おそらく開業からまだ1年かそこら、管理馬もチェコJockey Clubによればたったの5頭と非常に小さな厩舎なのだが、これから頑張って欲しいところである。

10歳の古豪Playerは自身のレースをして4着に入った。もはやこのレースは2019年から連続して4回目の出走であり、淡々と前目でペースを刻んでいく展開はこの馬及び騎乗したMarcel Novák騎手にとってはいつもの展開となっている。一方でこのように前目で運びたい馬にとって、Velký Taxisův příkopにて馬が明らかにブレーキをかける場面があったことは明らかにマイナス材料で、こればかりはもはや馬が昨年Velký Taxisův příkopで落馬したことをよく記憶しているのだろう。Velký Taxisův příkopは調教でも使用することが禁止されており、今年のVelká Pardubickáでは全体的に他馬がかなりゆったりとしたペースで飛越を試みたことから結果的には大きなディスアドバンテージには至らなかったのだが、来年以降は今年の反省を生かしてまた全体的なVelký Taxisův příkopの飛越思想が変化する可能性がある。その際にこの馬がこのVelký Taxisův příkopに十分に対応した上で、この馬にとっての展開を作り出すことができるかは再度慎重に検討すべきだろう。面白いのが上り馬Arganoで、道中はやや後方離れた位置取りから進め、じわじわと進出して勝ち馬から1秒ほど離れた5着に入った。この馬にとってはVelká Pardubickáは初の参戦、道中はかなりゆったりとしたペースからの上り勝負で後方からの押し上げが困難であったこと、さらにここまで距離延長でパフォーマンスを上げてきたこと等を踏まえると、この5着はなかなかに価値があるものである。Martin Liška騎手兼調教師にとっても自信をつける結果であったはずで、来年はより積極的な競馬で上位入線を狙っても不思議ではない一頭である。

11歳の古豪Lombarginiは積極的に勝負を掛けて行ったが、結果的には息切れして7着に入った。最近はどうにも飛越面で不安を抱えていたようで、今回はとりあえずは完走はしたということでここ最近の不安が的中したわけではないのだが、とはいえ積極的に勝負に加わったにも関わらず最後脱落しての大敗というのはあまり好ましいものではないだろう。11歳という高齢を考えると少々年齢的な衰えが不安になってくる時期で、来年も現役を続けるのであればそのパフォーマンスには注意しておきたい。12歳のStrettonは積極的に運んだが、残念ながらこの馬にとってのVelká Pardubickáは上述のとおりSuchý příkopで終わってしまった。淡々と前目で運んでいけばなんとか雪崩れ込む形で入着することも可能であった可能性もあるのだが、Suchý příkopのミスからそこから再度押し上げてペースアップについて行くだけの余力はなかったようで、12歳という年齢や近走成績を考えるとそろそろ潮時なのかもしれない。全盛期に見せていた抜群の安定感と粘り強さを考えると寂しいものである。圧倒的最低人気のDulcar De Sivolaは一瞬あわやというシーンを作っての7着で、この馬がVelká Pardubickáにここまで連続して無事に完走を果たし、しかも今年はここまで見せ場を作ったことは大いに誇って良いのではないだろうか。このような馬にはなんとか良いことがあって欲しいものなのだが、とはいえ明らかにスピード面での不足が目立っており、距離を短くしてどうこうということもなく、一方でこのような距離のレースが他にあるわけでもなく、あったとしてもフランスやイギリス、アイルランドなど、明らかにこの馬にとっては厳しい環境ばかりで、なかなか難しいところである。

 

Velký Taxisův příkopではImphalとStarの2頭が落馬した。このVelký Taxisův příkopの飛越に際しては議論があり、Mr SpexのLuboš Urbánek調教師はペースが遅いことが落馬が発生した原因であり、先頭集団にいたPlayerはおそらく昨年の落馬を馬が覚えていたことから直前でブレーキをかけた可能性が考えられる旨を述べている*8。この障害の飛越時のスピードについてはまともに飛越をしようとしなかったImphalを理由に、障害の飛越側の構造と合わせてImphalに騎乗していたJaroslav Myškaも問題提起しているようだが*9、とはいえ一方でどういうわけか今年は妙にゆったりとVelký Taxisův příkopを飛越しようと試みる馬が例年になく目立っており、来年以降のトレンドについては少し注意してみた方がいいかもしれない。ただし、やはり関係者から共通する意見として特筆すべきは着地側の空壕の修正により安全性が向上した旨の意見であろう。この修正は障害自体の難易度及びスペックに影響を及ぼすものではないことを踏まえると、これは上記のようにより大衆から注目されるようになったVelká Pardubickáにとっては非常に明るい材料である。

注目されたBrunch RoyalはDropにて落馬。Dropはスタンド前に設置されていることからスタンドから地鳴りのような歓声が発生するのだが、どうやら騎手によるとこの歓声に馬が驚いたということである。フランスのCross CountryはAuteuilのような都市部の競馬場で行われることはなく田舎の小さな競馬場で行われることが殆どであり、MeranoやWroclawにおいてもコースの形態により真正面から観客の歓声を浴びるというシーンは生じ得ないため、このような大歓声に馬が慣れていなかったのかもしれない。古豪No Time To LoseはHadí příkopの踏切地点で滑っての落馬に終わったが、これはペースが遅すぎたせいだろう。13歳という年齢も考えればこれで十分なキャリアだと思われる。Dusigroszは凡ミスでの落馬で、Cross Countryは実質4戦目であることを考えると来年に期待したい。やや不幸だったのがChicname De Cotteで、Ludovic Solignac騎手が前々で積極的に運んだが、やはり良馬場でのスピード勝負におけるペースアップについて行くことができなかったようで、じわじわと脱落して途中棄権に終わった。もう少し馬場が重くなったり、道中からある程度ペースが流れるなどでスプリント能力の必要性が相対的に低い展開になれば良かったのだが、こればかりは時の運である。Ludovic Solignac騎手はフランスCross CountryのSpecialistらしい進路取りとスピードを殺さぬレース運びに長けているのだが、一方でこの日の第3レースでは極端なスローペースを演出したりとどうにも前に行ったときのペース配分において不安が残ることはやや注意した方がいいかもしれない。

Kaiserwalzerに騎乗したアイルランドのPatrick Mullinsは2年連続で落馬に終わった。Velký Taxisův příkopは無事に飛越したものの、Popkovický skokにて空壕に引っかかってしまった。なかなかチェコでは結果を残すことができていないPatrick Mullins騎手であるが、どうやらレース後にCheltenhamやAintree、Punchestownを引き合いに出してこの開催の素晴らしさを語っていたようで*10、今年は少しずつこのコースにも慣れてきたことが想定され、直前のレースではMr Zuruでその腕力の強さを遺憾なく発揮していた現状、またこのアイルランドの名手の手綱さばきをチェコPardubiceのCross Countryにて見てみたいものである。