にげうまメモ

障害競馬の個人用備忘録 ご意見等はtwitter(@_virgos2g)まで

23/04/16 Weekly National Hunt / Jump Racing

4/10(月)

Fairyhouse (IRE) Yielding to Soft

Donohue Marquees Juvenile Hurdle (G2) 2m (Replay)

1. Enjoy The Dream J: Darragh O'Keeffe T: Andrew McNamara

人気のBlood Destinyが逃げる展開も、どうにも飛越がおぼつかない場面が目立つ。じわじわと前に接近してきたEnjoy The DreamがBlood Destiny以下を振り切って勝利した。

Irish Grand National Dayはやや波乱の決着から始まった。Enjoy The DreamはこれがHurdle初勝利で、Maidenは勝ち馬から16馬身差の3着に終わっていただけに、やや驚きの結果となった。どうやらドイツで平地競争を走っていたようで、2022年のドイツオークスにも参戦している。ただ、今回はやや全体的に相手関係的なところを考えた方がいいだろう。絶好調のWillie Mullins厩舎のBlood Destinyが人気を集めていたが、どうにも飛越にミスが目立つ場面が目立った。Deep Impact産駒のCougarも出走していたが、前半からかなり力んで走る場面が目立っており、ペースが上がったあたりからさっぱりついていけずに大敗に終わった。メンバー的に前走と比較するとかなり楽であっただけにここは恰好を付けたかったのだが、障害馬としての完成度の不足が目立つ結果となった。

 

Rathbarry & Glenview Studs Hurdle (G2) 2m4f (Replay)

1. Asterion Forlonge J: Paul Townend T: Willie Mullins

Beacon Edgeが逃げる展開も馬群はかなり密集して進行。外からHms Seahorse、Fil Dorが前を狙うも、馬群を縫って出てきたAsterion ForlongeがMonkfishを退けて勝利した。

Asterion Forlongeはこれがシーズン2戦目となる。昨シーズンはJohn Durkan Memorial (G1)やKing George VI Chase (G1)の落馬などお騒がせの馬であったが、今シーズンは3月のThurlesから始動していた。ひとまず馬自身はだいぶ元気のようで、Punchestownの大舞台に出てくるのであれば楽しみな存在になりそうだ。これが700日以上の休み明けとなったMonkfishも見せ場を作っての2着で、すでに9歳とかなり年齢を重ねているが、元々は"Future Gold Cup Horse"といった高い評価を受けていた馬だけになんとかここから順調に行ってもらいたいところである。同じく9歳のBeacon Edgeがやや離れた3着に入った。5歳馬Hms SeahorseとFil Dorはどうにも振るわず、いずれも大敗に終わった。

 

Mclnerney Properties Fairyhouse Chase (G2) 2m3f200y (Replay)

1. Easy Game J: Paul Townend T: Willie Mullins

ゆるゆると逃げたEasy Gameを早々にJanidilがとらえ、そのままEasy Gameを突き放しにかかるも、Janidilが最終障害でまさかの落馬。代わって前に出たEasy Gameがそのまま勝利した。

この日のFairyhouseは強い雨が降っており、このレースから馬場状態はSoft (Yielding to Soft in places)に悪化している。Janidilはこの路線では実力上位の馬で、残念ながらRyanair Chase (G1)ではうまくいかなかったようだが、やはり本来であればこの路線のG2クラスであれば優にトップレベルの力を持っている。落馬についてはどうにも雨の降り始めで滑りやすい馬場ということもあり、やや遠い飛越を試みた最終障害での着地で躓いたもので、一種の不幸なアクシデントだろう。ただ、その時点でEasy Gameとはだいぶ差がついており、Mark Walsh騎手としてはもう少しリスクの低い飛越で十分だったのではと思うところがある。Easy Gameとしてはこれで重賞を含む3連勝としたが、基本的には空き巣重賞を狙って使っているタイプで、ここからどうこうということはなさそうだ。昨年4月のOMC Claims Handicap Chase (Grade A)を勝つなど実績のある11歳馬Royal Rendezvousもいたのだが、全く走る気を見せず後方でのんびりついて回るだけで、Easy Gameから81馬身差の2着に終わった。

 

Irish Grand National Chase (Grade A) 3m5f (Replay)

1. I Am Maximus J: Paul Townend T: Willie Mullins

降りしきる強い雨により馬場はSoftまで悪化していた。レースはFire Attack、さらにDefi Bleuがやや後続を引き離して逃げる展開で、後続馬群は密集して進行。イギリスのRoyale Pagailleなどは積極的に運ぶも、早々に脱落。Fire Attackはどうにも左に斜飛するところが目立ち、途中からDefi Bleuが先頭に代わる。そのままDefi Bleuは気合を付けながら逃げ込みを図るが、これにGevrey、Dolcita、Panda Boyなどが接近。最終障害を越えたところでGevreyが先頭に出てくるが、さらに後ろから追い込んできたI Am MaximusがGevreyを捉えて勝利した。Defi Bleu、Dolcita、Panda Boyと続いた。はるか後方でAngels Dawnも完走を果たし、30頭近い出走馬のうち、完走したのはたったの6頭という凄まじい消耗戦となった。

I Am MaximusはChaseは初勝利としたが、とはいえBrown Advisory Novices' Chase (G1)でも4着などと高い能力を示してきた馬で、さらに初の多頭数の24f超のハンデ戦でこれだけ対応できるというのは大したものだろう。後方の馬群の内から進め、そこから馬群を縫って追い上げてくるというPaul Townend騎手の騎乗も見事であったが、それと同時にこのレースをNovice馬がやってのけるというのはやはり驚くべきことである。道中はほぼ絶望的な位置にいたタイミングもあり、かなり馬としてズブいところも見せていたようだが、とはいえまだ7歳という年齢も考えればその将来性には期待したいところである。Authorized産駒らしいパワーと持久力を持った馬で、馬場適性にもよるものの、来年はAintreeのGrand Nationalという選択肢も上がってくるかもしれない。昨年の中山グランドジャンプにも登録のあったGevreyは見せ場十分の2着で、この馬にとって24f以上のレースは初であったことを踏まえると、内容的には十二分のものであった。やはり中山のようなスピードの生きる条件よりも今回のような重い馬場でスピードの持続性能を生かすタイプで、いくらなんでも中山はこの馬にとっては完全に適性外であったと思われる。今回は10st1lbという楽な斤量も味方したものと思われるが、この馬もまだ7歳と若く、今後の活躍を楽しみにしたい。

Gevreyと同じくSaddler Maker産駒のDefi Bleuが3着。レース内容を見るとある程度騎手が気合をつけて前に出ていくような場面もあり、この馬の持てるスタミナの全てを絞り切った騎乗と言えよう。Conditional JockeyのGavin Brouder騎手は勇気のある騎乗ぶりで、今回の凄まじい消耗戦の立役者となった。おそらくGordon Elliott厩舎の中ではさほど高い順位にいるわけではないと思われるが、このような勇気のあるレースができる人はいずれチャンスを掴んでほしいものである。それにしても、このようなレース振りで3着まで踏ん張るのだから、やはりSaddler Maker産駒というのはこのような条件で滅法強いのである。さらに4着にはSaint Des Saints産駒のDolcitaが入り、1~4着をフランス生産馬が独占する結果となった。この牝馬も24f超の競争は初めてで、それにも関わらず一時はあわやという勢いを見せていた辺り、かなり将来性がありそうな一頭である。

 

4/13(木)

Aintree (UK) Good to Soft

Manifesto Novices' Chase (G1) 2m3f200y (Replay)

1. Banbridge J: J J Slevin T: Joseph O'Brien

Grand National Meeting1日目。レースは人気のStage Starが淡々と逃げる展開も、勝負所からあっさりと馬群に飲み込まれ後退。代わって出てきたBanbridgeがSaint Roiを振り切って勝利した。

Banbridgeは前走のIrish Arkle Novice Chase (G1)の2着馬で、Dysart Dynamoがオーバーペース気味に飛ばしたところ、これを追いかけて行って苦しくなった前を交わして2着に食い込んできたというレースであった。今回はDrinmore Novice Chase (G1)に続いての20fへの参戦であったが結果を残した。Cheltenhamは残念ながら馬場を気にして取りやめていたようだが、やはりIrish Arkleのレース振りを見ると16fというよりは20fの馬といったところだろう。将来的には24fまで距離を伸ばしても面白そうだが、Hurdle時代に一度24fでは失敗しているだけに陣営の判断には注意しておきたい。後方から進めたSaint Roiは惜しい2着で、あまり勝ち馬とは差はなさそうだ。Turners Novices' Chase (G1)でいい勝ち方を見せたStage Starは案外な敗戦に終わった。Aintreeが特別合わないというわけではなさそうなのだが、またノドの問題でも出てきたのかもしれない。

 

Jewson Anniversary 4YO Juvenile Hurdle (G1) 2m209y (Replay)

1. Zenta J: Mark Walsh T: Willie Mullins

レースはBo Zenith、Sarsons Riskなどが前に行く展開も、例によって馬群は極めて密集して進行。ここから抜け出してきたBo ZenithとZentaの長い叩き合いはZentaに軍配が上がった。Nursretが3着に入った。

ZentaはフランスではListed勝ちがある馬で、これでアイルランド移籍後は3戦2勝とした。CheltenhamのJCB Triumph Hurdle (G1)でも3着に入っていた実力馬で、レースの性質としてはかなり平地色が強いものであったものの、とはいえJuvenile Hurdleの中で実力上位であることは間違いないだろう。イギリスのBo Zenithもまたex-frenchで、フランス時代はかなりいい勝ち方をしていたことで話題を集めていた。ここまで下級条件戦のみの勝ち鞍しかなかったのだが、ようやく大舞台で結果を残し、フランスで見せてきた素質の高さを発揮することができていることは喜ばしいことである。Gary Moore厩舎の評判馬がそのまま大成した例はあまり多くはないのだが、このまま無事に行って欲しいところである。Golden Horn産駒の牡馬Nusretは後方の内から進み、じわじわと馬群を縫って追い上げて3着に入った。レース内容はさすがにこの展開であの位置から追い上げてくるのは現実的にはだいぶ厳しいものがあり、前2頭から5馬身と着差はそれなりについたこと、レースの性質としてかなり平地色が強いものではあったのだが、とはいえこのレース運びで3着に来たことは注意すべき内容だろう。

 

Bowl Chase (G1) 3m210y (Replay)

1. Shishkin J: Nico de Boinville T: Nicky Henderson

直前になってBravemansgameの所有者がどうこうといったひと悶着があり、結局Bravemansgameは出走取り消しになった。レースはAhoy Senorが逃げる展開で、好位からConflated、Shishkin。Conflatedはじわじわ接近するも、残り3障害でミスをして後退。代わって出てきたShishkinがAhoy Senorを捉えて勝利した。

Shishkinはこれが初の24f戦であったが結果を残した。Ryanair Chase (G1)ではどうにも飛越にミスがあり、最後盛り返してくるも2着に終わっていた。今回も若干飛越にミスはあるのだが、とはいえ24fで結果を残したということは今後に向けて明るい材料となった。苦しくなってからしぶとく加速を続けるのがこの馬の一番の強みで、これができるので本質的にはCheltenhamの登り坂は向きそうな感がある。Ahoy SenorにとってはAintreeは適性のあるコースで、ある程度Ahoy Senorのレースができていた中で、最後はこのAhoy Senorをねじ伏せるというのだから大したものだろう。ただしやはりコースに形態を生かしたレース運びが重要となるCheltenhamにおいて不安が残るというのはまだ確かで、次のシーズンは引き続きそのレース運びには注意しておきたい。Ahoy Senorは自身のレースをやっての2着。A Plus Tardはどうにも今シーズンはいまいちで、Aintreeへの適性云々以前に2022年春までの状態にはないと考えた方がよさそうだ。

 

Aintree Hurdle (G1) 2m4f (Replay)

1. Constitution Hill J: Nico de Boinville T: Nicky Henderson

ゆるゆると先頭を走ったConstitution Hillがそのままほぼ持ったままで勝利した。Constituion HillはこれでHurdleは7戦無敗とした。そのほぼ全てで10馬身以上の着差をつけており、3馬身差というのはここまでにつけてきた着差の中で最小となる。とはいえ平坦なAintree、のんびりとしたペース、さらにこの良馬場という着差の付きにくい条件の中、メンバーとしてもG1級の面々を相手にほぼ持ったままのレースというのはやはり驚くべき内容で、この馬のペースで運んだとはいえ、初の20fに目途をつけたということで今後に繋がる内容となった。後方から追い上げたSharjahが2着。今年で10歳となるベテランだが、12st0lbを背負ってCountry Hurdle (Premier Handicap)でも4着に食い込んでおり、さすがに能力のあるところを見せてくれた。差のない3着に6歳馬Zanahiyrが入った。

 

4/14(金)

Aintree (UK) Good to Soft

Mildmay Novices' Chase (G1) 3m210y (Replay)

1. Gerri Colombe J: Davy Russell T: Gordon Elliott

人気薄のSholokjackが逃げる展開も途中で早々に落馬。代わってGali Des Liteauxがやや強気に出ていく展開も、これを持ったままで追走したGerri Colombeが残り2障害あたりから前に出ると、Complete Unknown以下を振り切って勝利した。

Gerri ColombeはChaseは5戦4勝とした。唯一土がついたのが前走のCheltenhamのBrown Advisory Novices' Chase (G1)のみで、そのCheltenhamでもThe Real Whackerと僅差の2着に入っている。CheltenhamからAintree替わりということでこの馬としてはレースがしやすくなったものと思われるが、とはいえ内容的には完勝だろう。このあとPunchestownを使うのかは不明だが、いずれにせよCheltenhamよりはレースはしやすいものと思われるだけに引き続き期待したい。次のシーズンに向けても楽しみな存在だろう。諸事情により一時的に現役復帰しているDavy Russell騎手のインタビューは最高に格好いいので動画の視聴を推奨する。前走KemptonのClass2を快勝したComplete Unknownが2着で、ここまでのレース振りとしてあまりNoviceの重賞向きという馬ではないだけに、今後に期待が持てる内容となった。Bronn、Galia Des LiteauxのBrown Advisory Novices' Chase (G1)組はGerri Colombe相手にだいぶ離されての入線で、Galia Des Liteauxはかなり勇気ある仕掛けを見せていたが、結果的にはGerri Colombeの強さが光るレースとなった。

 

Top Novices' Hurdle (G1) 2m103y (Replay)

1. Inthepocket J: Rachael Blackmore T: Henry de Bromhead

Matataがかなり引っかかり気味に逃げる展開も、早々に後続が殺到。残り2障害あたりから好位にいたInthepocketが出てくると、後ろから好位まで取りついていたLucciaとHansardを振り切って勝利した。2着には最後Strong Leaderが上がった。

InthepocketはSupreme Novices' Hurdle (G1)の4着馬で、その前にはTattersalls Ireland Novice Hurdle (G1)で2着に入っている。今回は引き続きのイギリス遠征となったが、とはいえメンバー的には実力上位というところで、さすがに層の厚いSupreme Novices' Hurdle (G1)で好走してきた実力を見せてくれた。Supreme Novices' Hurdle (G1)では大敗に終わったStrong Leaderが2着に入ったが、これは全体的に前掛かりになったところを最後追い込んできたものだろう。2~4着辺りの力量差はあまりないような感がある。牝馬Lucciaは後方からじわじわと押し上げての3着。KemptonのDovecote Novices' Hurdle (G2)では大敗に終わったGary Moore厩舎のHansardは今回は大いに進境を見せての4着に入った。ただ、アイルランド組として対抗角に押されていたのは2月のJohnstown Novice Hurdle (G2)でCorbetts Crossの2着に入ったFound A Fiftyということを考えると、ややメンバー的にどうかという疑問は残りそうだ。

 

Marsh Chase (G1) 2m3f200y (Replay)

1. Pic D'Orhy J: Harry Cobden T: Paul Nicholls

強い雨によりこのレースから馬場はSoftとなった。レースはMinella Dramaが強気に引っ張る展開で、好位からPic D'Orhy、Fakir D'Oudaries。後方のFugitif、Millers Bankは早々に後退。そのままMinella Dramaは元気に逃げ込みを図るも、勝負所から前に出てきたPic D'OrhyがFakir D'Oudariesを振り切って勝利した。3着にはMinella Dramaが入った。

Pix D'OdryはCheltenhamはスキップしてこちらに向かってきた馬で、今シーズンはこれで計4勝目とした。Ascot Chase (G1)ではあのShishkinの2着に入っており、さすがに相手がまともに走ったShishkinでは厳しかったようだが、今回は結果を残した。Minella Dramaがだいぶ強気に出てくるところを見ながら進め、そのままFakir D'Oudariesを振り切るというHarry Cobden騎手の騎乗はこの馬のスピードの持続性能を存分に引き出すもので、さすがはPaul Nicholls厩舎の主戦騎手といったところだろう。3連覇を狙ったFakir D'Oudariesは最後追い込むも2着までで、どうにも今シーズンは以前はなかったようなズブさのようなものが認められるのが気がかりなところ。Minella Dramaは調子のよい馬にありがちな前向きなレースで、ひとまずこの馬の勢いを感じさせるレースであった。

 

Topham Handicap Chase (Premier Handicap) 2m5f19y (National) (Replay)

1. Bill Baxter J: Sam Twiston-Davies T: Warren Greatrex

Grand National Meeting2日目のNational Fenceを使用する伝統の競争。レースはGin On Lime、Haut En Couleurs、Al Dancerなどが元気いっぱいに出てくる展開で、この中からGin On Limeが積極的に引っ張る。しかし第14障害あたりからHaut En Couleurが先頭に代わるとGin On Limeは後退。Haut En Couleursはそのまま引っ張るが、第17障害あたりから手ごたえが怪しくなると、代わって出てきたBill BaxterとFantastic Ladyが先頭に。空馬を挟んだ2頭の叩き合いはBill Baxterに軍配が上がった。Fantastic Ladyは差のない2着。3着にはKiller Kaneが入ったようだ。

Bill Baxterは前走のClass3から連勝とした。Chaseでは今シーズンはWind Surgery前及び落馬を除けば4戦4勝という成績を残しているNovice馬で、ここまであまり上のクラスで戦ったことはなかったようだが、10st4lbの恩恵はあったもののいきなりこのメンバー、しかもNational Fenceにおいてこれだけ戦うことができるというのは大したものだろう。ある程度オーバーペース気味の先頭集団を追いかける位置取りを見せていたことも面白い材料で、距離さえ持てば面白い存在になりそうだ。Fantastic Ladyは惜しい2着で、10st12lbという斤量を考えればこちらを上に取るべきだろう。昨年のこのレースは第1障害で落馬に終わったが、今年は見せ場を作った。12st0lbのトップハンデのHaut En Couleursは積極的に運んでの4着で、さすがに最後は苦しくなったようだがまだ6歳という年齢を考えるとさらなる距離延長への適性を期待したいところである。Grand Nationalに登録があった馬の中ではBattleoverdoyenが最後追い込んで5着に入った。今年で10歳とだいぶ年齢を重ねているが、かえってズブいところを見せていたことが前半のオーバーペースに巻き込まれずに済んだのかもしれない。Burrows Saintも出走していたが、こちらはあまりいいところなく大敗に終わった。Grand Nationalに出走していてもそれなりに人気を集めた可能性がある馬だけに、やや案外な敗戦となった。

 

Sefton Novices' Hurdle (G1) 3m149y (Replay)

1. Apple Away J: Stephen Mulqueen T: Miss Lucinda Russell

前半からApple Awayが逃げる展開で、好位にStay Away Fay、Irokoなどが構える。Absolute Notionsは中段から。じわじわとMaximilianが追い上げてきてStay Away Fay、Irokoとともに前を追いかけるも、そのままApple Awayが後続を振り切って勝利した。

Apple Awayは牝馬でこれでDoncasterの牝馬限定Novice Listedを含む3連勝とした。経歴としてもex-pointerで長くHurdleの下級条件戦を使っていたようで、ここにきて調子を上げていたとはいえかなり意外な結果だろう。展開的に恵まれたという感はありそうだが、一方で元来混戦のこの路線というところもあり、今回の逃げ切り勝ちの価値は今後もよく検討した方がよさそうだ。DoncasterのAlbert Bartlett River Don Novices' Hurdle (G2)を勝ったMaximilianが2着で、Cheltenhamこそスキップしたものの、ひとまずこの馬も実力上位であることを示した。当時の勝ち馬Stay Away Fayはその後Albert Bartlett Novices' Hurdle (G1)を制しており、この組はひとまず信用ができそうだという印象がある。Cokoriko産駒でCheltenhamのMartin Pipe Conditional Jockeys' Handicap Hurdleを勝ったIrokoも惜しい3着で、このあたりはあくまで展開一つといったところだろう。

 

4/15(土)

Aintree (UK) Good to Soft

Maghull Novices' Chase (G1) 1m7f176y (Replay)

1. Jonbon J: Aidan Coleman T: Nicky Henderson

Jonbonが前に行くかと思いきや、Rachael BlackmoreのMarvel De Cerisyがかなり注文を付けて先頭に立つ展開となる。Jonbonと並走の格好になるも、Marvel De Cerisyはどうにも飛越にモタついたりと徐々に後退。そのまま抜けてきたJonbonが付いてきたCalicoを振り切ると、後続に43馬身差をつけて勝利した。Calicoは最終障害で落馬に終わった。

Jonbonは今シーズンのイギリス16f Novice Chaseでは一番手となる馬で、Arkle Challenge Trophy (G1)ではアイルランドのEl Fabioloに敗れていたが、それ以外では圧倒的なレースを続けていた。ひとまず今回も圧倒的人気に応える形の勝利で、内容的には飛越においても特段の問題はなく、文句なしの完勝だろう。Novice HurdleではConstitution Hill、ChaseではEl FabioloとCheltenhamには縁がないのだが、おそらくこのままQueen Mother Champion Chase (G1)に目指すことになると思われることから来シーズンの活躍を期待したい。Soldier Hollow産駒のCalicoは強敵相手についていっての2着で、WarwickのKingmaker Novices' Chase (G2)ではJonbonに絡んでいった走りが伊達ではないことを見せてくれた。Rachael Blackmoreの騎乗が目立ったのが2着のMarvel De Cerisyで、さすがに馬の能力的にJonbonと比べると数段格下だったようだが、それでも万が一にでもひっくり返してやろうという意図を感じる騎乗はやはり面白いものである。

 

Turners Mersey Novices' Hurdle (G1) 2m4f (Replay)

1. Irish Point J: Davy Russell T: Gordon Elliott

Hallwood、You Wear It Wellが前に行く展開も早々にHallwoodはミスをして後退。そのままYou Wear It Wellが逃げるも、じわじわとAuthorised Speedなどが接近。しかし外から出てきたIrish Pointが残り2障害あたりで前に出ると、馬群を縫って出てきたKateiraを抑えて勝利した。

Irish Pointは前走のNaasのKingsfurze Novice Hurdle (G3)から連勝とした。Cheltenhamはスキップしていた馬だが、それ以前のアイルランドのNovice Hurdle路線では上位争いを繰り広げており、実力的にはややここでは過小評価だったような感もある。ただし前がある程度やり合う中をじっくりと見ながら進めたDavy Russell騎手の騎乗もさすがであり、名手の熟練の技をこの現役最後の開催でもいかんなく発揮してくれたことは喜ばしい内容だろう。牝馬限定戦を勝ってきたKateiraは大健闘の2着で、馬群を縫ってくるレスを見るとHandicap路線でも見てみたいところである。人気を背負ったHermes Allenは3着までで、どうにも道中外から被されたりとこの馬本来のレースはできなかったような感がある。Gary Moore厩舎の素質馬Authorised Speedは見せ場を作ったが、どうにも勝負所から脱落して大敗。まだ飛越面でいまいちなところがあり、ペースが上がると厳しくなるようだ。対抗角と目されていたDark Ravenは途中で落馬に終わったが、残念ながら芳しい結果ではなかったようだ。

 

Liverpool Hurdle (G1) 3m149y (Replay)

1. Sire Du Berlais J: Mark Walsh T: Gordon Elliott

Stayers' Hurdle (G1)を勝利してこのレースは連覇を狙うSire Du Berlaisが出走していたが、人気はFlooring Porterや牝馬Marie's Rockが集めていたようだ。レースは前半から元気いっぱいFlooring Porterが引っ張る展開で、好位からHome By The Lee、Marie's Rockなど。Flooring Porterは軽快に逃げるが、残り2障害あたりから好位から手ごたえ良く上がってきたMarie's Rockが先頭に。しかし馬群を縫って追い上げてきたSire Du Berlaisが最終障害あたりで前に出ると、そのままMarie's Rockを振り切って勝利した。

Sire Du BerlaisはStayer's Hurdle (G1)から連勝、このレースは連覇とした。11歳となった今年はキャリアハイの結果を残しているのだが、とはいえ道中はどうにも手ごたえが悪く何度も鞍上に促されて走っており、さらに今シーズンの前半4戦はまったくいいところなくフェードアウトしていたことを考えると、今回も道中の手ごたえを見る限りでは走るとは思えないというのが正直なところだろう。パフォーマンスとしてはFlooring Porterがかなり締まったペースを作り出す中、逃げたFlooring Porterを含めて殆どの馬が最後は苦しくなった一方、この馬だけが最後までしっかりと脚を伸ばしていたというなかなか強いものなのだが、とはいえどうにも信用しにくいというのは正直なところではある。

牝馬Marie's Rockは見せ場を作った。Cheltenhamではどうにも騎乗的にもよろしくなかった感もあり大敗に終わっていたのだが、とはいえ初の24fでこれだけやれれば十分だろう。逃げたFlooring Porterはこの馬のレースはしており、例によって厳しいペースを作り出しているのだが、とはいえ前2頭はなかなか高いパフォーマンスを見せたと考えてよさそうだ。4着以下は大きく遅れ、今シーズンはLeopardstownのChristmas Hurdle (G1)を勝ったHome By The Leeもいたのだが、こちらは早々に脱落して途中棄権に終わった。

 

Monkton (USA) Firm

My Lady's Manor Timber Stakes

For Five-Year-Olds And Upward. To be ridden by amateur riders acceptable to the race committee. Three Miles on the Timber $50,000 (Replay)

1. Tomgarrow J: Freddie Procter T: Leslie Young

例によって後続に大きなリードを取ってVintage Vinnieが逃げるも、早々にTomgarrowが接近。途中から前に出たTomgarrowがそのままVintage Vinnieを突き放して勝利した。

Tomgarrow20221年のInternational Gold Cup Timber Stakesの勝ち馬で、このレースは昨年に続き連覇とした。これが昨年5月のAllowance以来のレースであったがひとまず馬は元気そうで、引き続き今年も期待できそうだ。Maryland Hunt Cup3連覇を目指すVintage Vinnieも相変わらずのレースで、距離的な違いもあるためTomgarrowにつかまったのだが、とはいえ年齢的にズブくなってきたということもなさそうなことは良いことだろう。GoodoldtimesはVintage Vinnieを追いかけるも途中から脱落し、後方から進めたMystic Strikeにつかまったようだ。Pennsylvania Hunt Cupなどを勝利しているベテランMystic Strikeは無理をせずの3着で、今回はVintage Vinnieがある程度飛ばした影響といったところだろう。年齢的にはかなりのものを重ねているようだが、相変わらず元気そうなのはなによりである。

 

Nakayama (JPN) Yielding

The Nakayama Grand Jump / 中山グランドジャンプ (G1) 4250m (Replay)

1. イロゴトシ J: 黒岩悠 T: 牧田和弥

オジュウチョウサン引退後の初のG1競走となる。レースは昨年の中山大障害オジュウチョウサン以下を破って勝利したニシノデイジーが人気を集めていた。スタートからニシノデイジーが立ち遅れる展開で、やや主張してビレッジイーグルが出てくる。そのままペースを落とすかと思いきや、番手でふらふらと走っていたテーオーソクラテスが引っかかり気味に絡んできてこの2頭で後続を引き離し、やや隊列は長くなる。大生垣を越えたあたりから一気に後続が殺到し、逃げる前の二頭にミッキーメテオ、さらにニシノデイジーが接近。ハードルコースに入る辺りからイロゴトシが外から前に出てくると、一気にスパートをかけて先頭に。テーオーソクラテス等が抵抗するもイロゴトシはそのまま脚が上がった後続を突き放し、終わってみれば2着に3秒近い大差をつける圧勝とした。2着にはミッキーメテオが入ったようだ。

この日は一日雨が降り続いており、それなりに馬場は重くなっていたようだ。レース展開としてはビレッジイーグルは例によって逃げの手に出ており、そのまま例によってペースを落として逃げるかと思いきや、大障害コースに入る辺りからテーオーソクラテスがふらふらと絡んでいくことであまりペースは落ちずに進行している。ニシノデイジーは出遅れたことでじわじわとロングスパートをかけつつ前に接近しているのだが、いつものビレッジイーグルのペースとは異なりペースが落ち切らずに進行したことで、結果的には速い流れの中を進出せざるを得ない状況となった。どうしても行きたがって走るタイプで、かつスピード能力的にも高いものを持っている馬だけに進出することまではできているのだが、結果的にはこの重馬場で厳しいペースをまくり上げたことで消耗が激しくなり、4コーナーの地点では完全に脚が上がる結果となった。さすがにこのペースを捲り上げていくだけのレースができるのはオジュウチョウサンか、もしくはKarasiやBlackstairmountainといった馬くらいだろう。

イロゴトシは九州産馬としてはめでたいG1制覇となった。障害4戦目での戴冠ということでインパクトもあり、黒岩騎手の勇気のある仕掛けも見事であったのだが、一方でこの重馬場で最後まで脚が上がらなかったあたり、どちらかというと重馬場巧者といった側面もありそうだ。置き障害でも飛越をミスしていたりと荒削りな部分はありそうで、この馬の適性には引き続き注意しておきたい。昨年イルミネーションJSを勝っていたミッキーメテオは最後追い込んでの2着だが、とはいえこれは前が厳しくやり合う流れを利して追い込んできたものだろう。3着のダイシンクローバーも同様のレース運びで、結果的には勝った馬のしぶとさが目立つ結果となった。

 

4/16(日)

Pakenham (AUS) Heavy10

〇 John Adams Memorial 1JW Hurdle

Handicap. Three-Years-Old and Upwards, No sex restriction. Restricted Conditions. Apprentices can claim. 3200m (Replay)

1. Nelson J: Steven Pateman T: Declan Maher

昨年亡くなったオーストラリア障害競馬の重鎮John Adams氏の名を冠したレース。やや引っかかり気味にFabalotが逃げたCleaverに絡んでいく展開も、好位から進めたPort GuillaumeとNelsonがこれに接近。しぶとく抵抗するCleaverをNelsonが最後差し切って勝利した。Port Guillaumeは3着。

NelsonはFrankel産駒で、アイルランドでは平地のG3勝ちもあるようだ。その後は日本からもクリンチャーが参戦した2018年のPrix de l'Arc de Triompheにも参戦した経歴がある。オーストラリア移籍後は重賞戦線を使うも結果は残せず、今年から障害に転向していたようだ。Maidenでの快勝に続いての連勝で、飛越自体も特に問題はなく、ひとまずなかなか楽しみな存在になりそうだ。元々はニュージーランドHurdleでMaiden勝ちを収めたCleaverが差のない2着で、若干の斤量差はあったとはいえなかなかの健闘だろう。Nelsonと同じく平地の実績馬であるPort Guillaumeは最後脱落して3着に終わった。

 

MJ Bourke Hurdle

Quality. No age restriction, No sex restriction. No class restriction. Apprentices cannot claim. 3200m (Replay)

1. Blandford Lad J: Aaron Lynch T: Peter Gelagotis

72kgを背負ったSaunter Boyが軽快に逃げる展開もHeir to The Throneをはじめとする後続がぴったりとついていく。Saunter Boyは抵抗するも、最後までついてきたBlandford LadがSaunter Boyとの叩き合いを制して勝利した。3着以下は遅れた。

Blandford Ladは昨年のGrand National Hurdleの3着馬で、Saunter Boyを除くメンバーの中では実力上位の存在であった。今回は65.5kgという楽な斤量で、72kgのSaunter Boyを下すというレース内容で、斤量的にはかなり助けられた感があるのだが、とはいえ3着以下にはきっちりと差をつけていたことはやはりほめるべき内容だろう。72kgを背負ったSaunter Boyは惜しい2着で、昨年のオーストラリアHurdleで無敵を誇っただけの実力を見せてくれた。今年は引き続き厳しい斤量を背負いそうだが、やはりその走りには期待した方がいいだろう。この日のPakenhamはHeavy10の重馬場だが、飛越もうまくスピードもある馬で、4000メートルクラスの競争も難なくこなす能力も持ち合わせている。重馬場にも十分対応は可能な馬で、土曜日の中山のレースを見ていると日本という選択肢も面白そうな感もあるのだが、どうだろうか。

 

〇 Ecycle Solutions BM125 Chase

Handicap. No age restriction, No sex restriction. BenchMark 125. Apprentices can claim. 3200m (Replay)

1. Hurry Cane J: Aaron Kuru T: Symon Wilde

Rexmontがするすると逃げる展開も、これに人気のRockstar Ronnieが絡んでいく。そのまま前にいったRockstar Ronnieは逃げ込みを図るも、じわじわと差を詰めてきたHurry Caneが直線で前に出るとそのままEpizeelを振り切って勝利した。

Hurry Caneは元々ニュージーランドHurdleで勝ってきた馬で、オーストラリア移籍後はこれが初勝利とした。平地では重賞戦線にも参戦していた能力馬のようで、移籍初戦のHamiltonのGus MacGilivray Carpenter Hurdleでは4着に終わっていたようだが、今回は結果を残した。ただし65.5kgという軽量に助けられた部分はありそうで、引き続きこの馬の立ち位置には注意したほうがいいかもしれない。今年で10歳になるベテランだが、長く頑張ってほしいものである。昨年のJericho Cupで3着のあるEpizeelが2着。元々イギリスDan Skelton厩舎の所属馬で、イギリスではPtPを含めて6勝を挙げているRockstar Ronnieは案外な敗戦で、どうにも全体的に行きたがって走る仕草が目立った。今回はトップハンデの不利もあったように思われるが、もう少し落ち着いて走れるようになってほしいところである。

 

J.E.H Spencer Memorial Steeplechase

Quality. No age restriction, No sex restriction. No class restriction. Apprentices cannot claim. 3500m (Replay)

1. Stern Idol J: Steven Pateman T: Ciaron Maher & David Eustace

Elvisonを制して外からStern Idolが前に行く展開。その後ろからVanguard、Bee Tee Junior、さらにCrosshillなど。Stern Idolはじわじわとペースを上げてレースを運ぶと、途中からElvisonを振り切って単騎逃げの格好に。そのまま頑張って追い上げてきたBee Tee Junior及びCrosshill以下に大きな着差をつけて圧勝した。

Stern Idolは昨年のHurdle路線では衝撃的な勝ち方を見せた馬だが、JJ Houlahan HurdleではCheltenhamでも結果を残したBell Ex Oneの2着に終わっていた。これがSteeplechase初参戦ということで、やや引っかかり気味に走る馬ということを差し引いてか慎重なレースに徹していたが、能力の違いを見せつける勝利となった。元々はAuteuilのHaiesで走っていた馬だけに飛越面ではいいものをもっているようで、どこまでこの勢いが続くかは注目した方がいいだろう。Grand National Steeplechase勝利などがある実績馬Bee Tee Juniorが2着で、やはりHeavy10の馬場はこの馬向きのようだ。Punchestown Festivalで勝ち星を挙げたCrosshillはオーストラリア移籍後の障害戦としてはこれが初めての参戦で、初のSteeplechaseであったが飛越は安定したものを見せていた。この重馬場で踏ん張ったBee Tee Juniorから差のない3着というのはやはり能力の証で、引き続き注意した方がよさそうな一頭だろう。昨年のBrierly WinnerのVanguardは2着争いからも脱落しての4着に終わった。