にげうまメモ

障害競馬の個人用備忘録 ご意見等はtwitter(@_virgos2g)まで

23/10/08 Czech Racing - Velká Pardubická Result

Pardubice (CZE) Stav dráhy: 3.4 (dobrá)

133. Velká Pardubická se Slavia pojišťovnou

Steeplechase crosscountry L - 6900 m, cena, 6letí a starší 5.000.000 Kč

2020年は新型コロナウイルス感染拡大の影響で無観客開催となるなど苦しい時期を経験したVelká Pardubickáの開催であるが、2年前は2日間で1500万Kčであった馬券の売り上げは、昨年は1700万Kč、そして今年はなんと2200万Kčを越える売り上げを達成するなど絶好調であるそうだ*1。特にVelká Pardubickáの売り上げは総額で1100万Kčとその大部分を占めるそうで、約400万Kčが競馬場での売り上げである一方、残りはオンラインでの売り上げだそうだ*2。Tipsportにおける年間の馬券の売り上げも過去最高記録を更新することは既に決定しているようで、Velká Pardubická当日にPardubice競馬場に詰めかけた大観客も含め、Velká Pardubickáもまさに新型コロナウイルスによる苦しい時代を耐え、チェコ競馬の発展に尽力した関係者の努力により新しい時代を迎えたと言ってもいいだろう。SNS上でもこのレースを見ていると思しき日本人が散見されたことは嬉しい限りで、昨今は円安やウクライナ及び中東情勢等の問題は多いものの、是非一人でも多くの日本人にこのPardubice開催の楽しさを現地で体験して欲しいと願うばかりである。Česká televizeもこの日に限っては地域制限を解除したうえ、単に上から単調に映すのではなくレース映像としての華やかさとともにレースのスポーツとしての視認性を重視したドローン映像を多用したレース中継を行っている。かつては遠い存在であったチェコの競馬であるが、日本からも競馬中継の視聴が可能となっていた現状、もはや隔世の感すらあるほど身近なものとなっていると言えよう。JRAも日本調教馬の出走がどうとかいうくだらないことを言わず、このレースの馬券を売り出して欲しいところなのだが、どうだろうか。せめてグリーンチャンネルもこの開催の中継くらいは行って欲しいところである。なお、Česká televizeはドローンを多用して迫力あるレース中継を実現すべく頑張ったようだが、ちょっとしたアクシデントもあったようだ(ドローンが木に引っかかった?)*3

23/10/08 Czech Racing - Velká Pardubická Entries(にげうまメモ)

Velká Pardubická当日に予定されていた「オーバーテイク!」の上映会&トークショー*4*5の参加を早々に断念していたことから、一昨年*6*7や昨年*8と異なり上田麗奈さんの著しい供給が予測されたわけではないのだが、冷静に考えてこのような長くてわかりにくい記事を当日になって読むのはしんどいだろうという目論見から、毎年恒例の出走馬紹介は早々に書き上げていた。もはや今年に入ってはブログを自ら宣伝してすらいないのだが、いつも気が付いてくださる方、XをはじめとするSNSやラジオへの投書等で関心を寄せてくださった方には改めて御礼を申し上げたい。どうしても昨今の風潮もありSNS等では所謂バズり目的のものを含めて出典不明の断片的でいい加減な情報が蔓延しているようであるが、当ブログが、何かしらのきっかけで関心を持った方にとってはより正確な情報を得るための足掛かり、知識のある方にとっては毎回のように腹を切ってお詫びしているちょっとしたエンターテインメントになれば幸いである。当ブログは所謂SNS等でのバズり目的やアクセス数の拡大を目的として関心の薄い層にアプローチすること、及び初心者向けにわかりやすく解説すること等を意図したものではなく、基本的に自らの備忘録を主な目的としたものではあるが、気楽にお付き合い頂けると社会性に大いに問題のある中の人も喜ぶかもしれない。

なお、ラジオのリンクは以下のとおり。基本的に中の人はもはやクイズ企画の最下位要員程度の存在であるが、当ブログを含めてご要望及びご感想等があれば、引き続き気軽に送って頂ければありがたい。

海外競馬ニュースch(Stand.fm)

 

この週のVelká Pardubická以外のレース回顧については別記事を参照されたい。

23/10/08 Weekly National Hunt / Jump Racing(にげうまメモ)

前評判としては、8月の3rd Qualification RaceにてTalent以下を完封した上がり馬Sacamiroが人気の中心となっていた。対するは4th Qualification Raceを勝った上がり馬のArgano、2021年のこのレースの勝ち馬で今年12歳となるベテランTalentが対抗馬として挙がっていた。連下候補としては、2nd Qualification Raceで軽快なスピードでこのコースへの適性を示したLodgian Whistle、昨年の勝ち馬で今年はアイルランドのPatrick Mullinsとコンビを組むMr Spex、上がり馬Godfrey、このレースの常連で今年で11歳となるPlayer、チェコ移籍後に急激にパフォーマンスを上げてきた12歳馬Starなどが続いていた。チェコ国外からはスロバキア及びアイルランドからそれぞれ2頭が参戦していたが、スロバキアのRoyal GinoとKaiserwalzerはいずれも低評価、アイルランドのJet FighterとAlpha Maleはいずれも最低人気という下馬評であった。

1. Sacamiro (CZE) J: ž. Jan Faltejsek T: Petříková Eva

レースはスタート直後からPlayer、Stuke、Lodgian Whistleなど比較的予想された先行馬が前に行く展開。さらにKaiserwalzer、Mr Spexも先頭集団から。第3障害のSmall Water Jumpまでは各馬軽快に飛越するが、最難関のTaxis Jumpの手前で先頭を走っていたStukeが急激に左に斜飛。これに巻き込まれる格好でZataro、Mr Spex、Royal Gino、Alpha Maleが落馬。さらにその後ろにいたGodfreyも巻き込まれるような恰好の落馬。これとは関係ない事象として後方にいたArganoも騎手が制御を欠いた飛越をした結果落馬。Irish Bankは特に落馬等なく突破するも、Taxisで鐙を落としていたPlayerはそのまま途中棄権。やや馬群の周りに空馬が多い状況ながらもその後のPopkovice Turn等は無事にクリアする。このあたりで先頭はLodgian WhistleとKaiserwalzerがやや後続にリードを取って引っ張る恰好となり、その後ろからImphal、Sacamiro、アイルランドのJet Fighter。やや馬群が空いてTalent、Star、Santa Klara、Dulcar De Sivola、Lombarginiなどと続く。2連続障害の辺りで馬群の前を走っていた空馬を避けるためペースは落ちて馬群は密集。早々にJet Fighterが後方に落ちるも、Lodgian WhistleとKaiserwalzerが並んで引っ張るという形は変わらずレースは進行する。その後のカーブでKaiserwalzerが空馬によって外に釣りだされる不利を受けるが、ペースが遅かったことも幸いしKaiserwalzerはすぐに先頭集団に復帰する。

第12障害の着地地点で躓いたImphalが落馬。このあたりで再度Lodgian Whistleがリードを開き、KaiserwalzerとSacamiroがこれについて行く。一時は馬群に取り付いた結果やや行きたがる素振りを見せていたStarは、無事に空馬を前に置いた最後方に復帰する。Dropの辺りからKaiserwalzerがLodgian Whistleに並んでいき、Stone Wallの前では先頭に。その後ろにSacamiro、Talent、Santa Klaraなど。手ごたえが悪くなったJet Fighterは最後方に脱落。このあたりからKaiserwalzerはややリードを開きつつレースを作っていき、全体的に馬群は開いていく。Kaiserwalzerは軽快に飛ばしていく一方で、番手を進むLodgian WhistleにSacamiro、Talentなどが接近。その後ろからSanta Klara、Dulcar De Sivolaと続く。後半の難関障害であるBig English jumpにて紅一点Santa Klaraが大きなミス。さらにHavel's Jumpにて再度ミスをしたSanta Klaraが落馬。スロバキア調教馬の悲願を賭けてKaiserwalzerは頑張って引っ張るが、これにTalent、Sacamiro、さらに後方からStarが一気に接近。手ごたえが悪くなったLodgian Whistleは脱落。残り2障害地点では後方から押し上げたStarが先頭に代わり、そのまま最終障害を先頭で飛越して逃げ込みを図る。Marek Stromský騎手渾身の騎乗で先頭を進むStarだが、ここに内からSacamiro、Talentが接近。直線を向いて内から抜けてきたSacamiroが食らいついてきたTalent以下を振り切って勝利した。Starが3着。やや遅れてLombargini、Kaiserwalzer。さらに大きく遅れてLodgian Whistle、Dulcar De Sivola。そして勝ち馬から約30秒以上遅れてアイルランドのJet Fighterが入線。以上が完走した馬である。

 

Lodgian Whistleは2020年に一度このレースに挑んでいるが、当時は後方から進め、ペースが緩んだところを利用してポジションを取りに行くも、その後フェードアウトして大敗に終わっていた。その後イタリアのSteeplechase等を使うもうまくはいかず、故障からの復帰もあって昨年の末から久しぶりにPardubiceのCross Countryに復帰し、今年に入ってからは特に6月の2nd Qualification Raceではその類稀なるスピードで快勝していた。しかしながら一方で今年の2nd Qualification Raceは以前の5800メートルから距離が600メートル短縮されたことの利もあり、5000メートルクラスまでは特に問題なく対応できる一方、さらに1000メートル以上距離が伸びるここではそもそもこの馬自身距離不安があるということもあって、空馬を避けるという意図もあったとはいえOndřej Velekは息を入れるために一旦かなり急激にペースを落としている。そこからOndřej Velek騎手が騎乗したLodgian Whistleはじわじわとペースを上げていこうという意図は見られるのだが、一方でスロバキアKaiserwalzerのJaroslav MyškaはDropの辺りからそのペースを嫌ったのかLodgian Whistleを制して前に出ていき、途中からはかなり積極的に仕掛けていくレースを試みている。結果的に、前半のTaxisの大きなアクシデントはともかくとして、特に後半はかなり締まったペースで進行するタフな持久戦が繰り広げられた。Kaiserwalzerのペースによりかなり馬群の隊列が伸びたということもあり、当初は18頭という多頭数が出走していたものの、Taxisのアクシデントを避けることに成功した馬にとって、道中で理不尽な不利を受ける馬は殆どおらず、比較的オープンでフェアなレースが展開されたと言えよう。

Sacamiroは昨年は3着と結果を残した馬だが、今年は8月の3rd Qualification Raceを快勝することで昨年と比べてさらに力をつけていることを示していた。その直前の2nd Qualification Raceでは上記Lodgian Whistleの2着に終わっていたが、内容的には後ろから脚を伸ばしてのもので、スピードを生かして上手く逃げたLodgian Whistleに対してこの馬は更なる距離延長によりパフォーマンスを上げてくる可能性を示すものであった。今回の内容としても前々で積極的に運んだKaiserwalzerを見ながらしっかりと最後まで脚を伸ばすもので、レースとしてもその勝ち方としてもチャンピオンたるべき馬がチャンピオンとしてのレースをやり切ったといったものだろう。先天的な能力の高さでただ圧倒するのではなく、安定した前向きな飛越でひたすら最後まで走り切るタフな走りはまさにチェコステイヤーとしてのチャンピオンそのものであり、その姿は日本は勿論、イギリスやフランスのチャンピオンとも異なるものであった。Monsunの産駒である父Camillは既に亡くなっており、残された現役競争馬はSacamiroを含めごくわずかである*9。母SaraはMemoriál Rudolfa Deylaなどチェコの平地競争で良績を残したチェコ生産馬で、Sacamiro自身は既に閉鎖が決まり取り壊しの危機にあるHřebčín Napajedlaの出身馬である。Hřebčín Napajedlaは現在その存続のため活動が行われており、この日のPardubice競馬場でも署名活動を行っていたそうだ*10。厩舎では"Sako"と呼ばれている*11この馬は、以前にも書いたようにBeňovという人口700人程度の小さな村に拠点を構える管理馬5頭の小さな厩舎の所属で*12*13、小さな厩舎なのでということで昨年は町から所属厩舎への寄付金があったほか、今年はSacamiroの応援のためBeňovからPardubiceへのバスツアーが手配されていたそうで、このバスツアーは地元の人でほぼ満席であったそうだ*14。このような出身の馬が、チェコを代表する名手であり、これが6度目のVelká Pardubická勝利となるJan Faltejsek騎手とのコンビで、国を代表するレース、それどころか世界の競馬シーン随一の名競争をチャンピオンとして勝利するのだから競馬というものは面白いのである。Jan Faltejsek騎手もまた2週間前のMeranoでの落馬で左肩を脱臼し、結果的にイタリア最高峰の競争であるGran Premio Merano (G1)では有力馬First of Allの騎乗をFelix De Gilesに譲っている。そのFirst of AllがGran Premio Merano (G1)で見せた素晴らしい勝ち方はもはや周知の事実だろう。そのうえ1週間前のMeranoでの転倒で更に悪化、直前のレースでも落馬を経験している*15。Sacamiroの馬主が心配するほどなんとも満身創痍の状態であったが*16、それでもこれだけ安定した落ち着いた盤石の騎乗を見せるのだから大したものであろう。このようにSacamiroの勝利はチェコ競馬界や生産界、そしてそれを取り巻く人々に希望をもたらす勝利であった*17。ちなみに戦前にラジオの投書で映画「ドリーム・ホース」*18に触れてくださった方がいたが、なにかの布石であったかもしれない。

Sacamiroと同様、やはりチャンピオンとしての競馬を見せたのが12歳となったTalentである。最後はフラット部分の伸び脚でSacamiroからは離されたが、この馬もこの馬としてやるべきことはやり切ったレース内容であった。これでこのVelká Pardubickáは2019年の7着を除けば、2020年は4着、2021年は1着、2022年は2着と毎年のように素晴らしい結果を残しており、故障でそのキャリアの形成に大きな支障が発生し、現在でもその体調面の調整に苦労している馬の活躍としては驚異的な内容であろう。この日のPardubiceの天候や馬場を考えると、朝方に降っていた雨がさらに降り続けば再度の戴冠もあったかもしれない。来年は13歳とかなり年齢を重ねることになるが、来年もまたこの舞台で会いたいと思える走りであった。Sacamiro、Talentともにチェコ生産馬が上位を独占し、近年は外国産馬に押されがちなチェコ生産界にとっては嬉しい結果となった。特にTalentの母母父LincolnはHřebčín Napajedla出身で、1976年のチェコHorse of the Yearに輝いているほか、1990年及び1998年のリーディングサイアーに輝いているチェコの名馬だそうだ。このような馬の血を引く馬がこのような大舞台で長きに渡って活躍することは、チェコの競争馬生産地としてのポテンシャルの高さを示すものであろう。見せ場を作ったのが葦毛の12歳馬Starで、最終障害の地点では先頭に立ちあわやのシーンまで作り出した。この瞬間、Marek Stromský騎手悲願の勝利を夢見たファンは多いのではないだろうか。Star自身、元々はスロバキアJaroslav Brečkaに所属していた馬だが、現在はチェコHana Kabelková厩舎に移籍している。どうやらこの移籍がうまくいったようで、12歳となった今年はかつての破天荒な走りはどこへやら、Velká Pardubickáでも安定して上位争いを繰り広げるに至っている。どうやら他馬に並んでいくとエキサイトする面があるようだが、騎乗したMarek Stromský騎手はぎりぎりまで最後方で我慢を続けており、その騎乗は文句なしに百点満点のものであった。どうにもフラットの瞬発力勝負では分が悪いようで最後は遅れたが、ここまでフレッシュな12歳馬というのも驚異的なもので、来年もまたこの舞台に戻ってきて欲しい一頭である。Marek Stromský騎手はこれまでにAmant Gris及びNikasと2度のVelká Pardubickáでの1位入線からの失格を経験している不運な騎手であるが、その技術はやはりVelká Pardubickáの勝者に値する高い水準のものを持っていると言えよう。レース後はこれで勝てないのであれば70歳まで騎手を続けなければならないのではとまで述べており、経験のある名手の騎乗を引き続き楽しみにしたい*19

4着以下はやや離されたが、4着には12歳馬Lombarginiが入った。2021年まではかなり安定したレースを見せていた馬だが、同年のVelká Pardubickáでは落馬に終わるとその後はぱっとしない競馬を続けており、今回もかなり評価を下げていた。土壇場でチェコの騎手Adam Čmielから英国人騎手James Bestへの乗り替わりが生じたということでチェコ競馬コミュニティからはやや反発もあったようだが、James Best騎手とのコンビでその反発を払拭する競馬を見せた。この馬をチェコメディアであるiSport.czは"autista a zmatkař"(自閉症でトラブルメーカー)と表現しているように気性的にはどうにも頼りないところがある馬だが*20、今回のレース運びは安定したものを見せており、Kaiserwalzerがやや積極的に引っ張ったことである程度ペースが流れ、かつ馬群が開けたこともこの馬にとっては向いたものと思われる。イギリス人騎手James BestもPardubiceの経験は多くはないのだが、ここでは素晴らしい騎乗を見せた。最後は勝負圏内から脱落したようにやはりこの馬のピークは2021年頃でありさすがにやや力落ちのような気配もあったが、それでもここまで勝負に加わったことは褒めるべきだろう。James Bestは2019年のイギリス調教馬Rathlin Roseとのコンビでもいいレースを見せており、この人もまたこのPardubiceに戻ってきて欲しい騎手である。なお、Velká Pardubickáには12歳馬が計4頭出走していたが、そもそも状況的にもかなり厳しかったうえ、Taxis Ditchで不幸な落馬に終わったAlpha Maleを除き3頭全てが勝負圏内に入ったというのは特筆すべき結果であろう。興味深いレースを見せたのがスロバキアのKaiserwalzerで、Lodgian Whistleを制して積極的に前に行くと、最終コーナー付近まではあわやのシーンまで作り出した。さすがに最後は苦しくなって派手に失速してはいるのだが、Jaroslav Myška騎手の勝利への高い意欲を感じさせる強気の騎乗により見せ場を作った。2021年の4th Qualification Raceでは当時大本命と思われたTheophilosを下してきた馬で、その後は全くぱっとしないレースに終わっているのだが、調教師としてはこの馬がこれまでの挑戦を糧に成長しているとのことで、そうであって欲しいと願うところである*21。2021年の4th Qualification Race以来の激走であったが、まだ10歳と案外若い馬であることを踏まえると、引き続き注意しておきたいところである。スロバキアの伝説Jaroslav Brečka調教師にとってもこの5着という成績は過去最高のものであるそうで、その挑戦は引き続き楽しみにしたい。

2nd Qualification Raceで鮮やかなレースを見せたLodgian Whistleは例によって先手を取ったのだが、途中からKaisewalzerに先頭を譲ると、Steeplechase Courseに入る辺りから好位から脱落し、最後は勝ち馬から10秒ほど離れた6着に終わった。2nd Qualification Raceで見せたように、主に5000メートルクラスの競争で特徴的な鮮やかなスピードを生かして勝ってきた馬ということもあり、以前のこのレースでのパフォーマンスも併せて考えるとやはり6900メートルという距離は長いのかもしれない。Česká televizeの映像でも流れていたように、今年で70歳を超えるJosef Váňa調教師が今でも自らまたがって調教を付けている馬であるらしいが、5000メートルクラスの競争であればともかく、このVelká Pardubickáの舞台では立ち回りにかなり注文が付きそうだ。これで5年連続のVelká Pardubická参戦となったDulcar De Sivolaはさすがにペースが速かったようで、道中はだいぶ追走に苦労し、Lodgian Whistleから10秒近く遅れて7着に入った。ある程度ペースが緩んだ場合は安定的に追走ができるようだが、とはいえそもそもここで勝負圏内に入るにはスピード能力の点で大きく不足があるようで、このような展開となってはどうしようもないだろう。とはいえこのVelká Pardubickáを5年連続で完走したということは誇るべきことであり、この馬もまた一種の名馬と言えるだろう。このレースの表彰式は7着の騎手まで表彰台に上ることができるのだが、7着馬の鞍上として壇上に上がったDulcar De SivolaのJosef Borč騎手は高々と誇らしくそのトロフィーを天に掲げていた。Josef Borč騎手とDulcar De Sivolaは2021年を除けば常にコンビを組んでおり、このVelká Pardubickáを5年連続で完走した同馬に対する誇りを感じさせるシーンであった。驚くべきレースを見せたのがアイルランドの6歳馬Jet Fighterで、さすがにPoint-to-PointのMaidenしか勝ち星がない馬ということでスピード能力の面で大きく不足があったようだが、1カ月前のなんとか馬群について行っただけのパフォーマンスを考えれば、勝ち馬から30秒近く遅れたとはいえこの計31の障害を突破し、6900メートルを完走したことは驚異的であろう。アイルランドのSean O'Keeffee騎手にとってもいい経験になったことが考えられるが、昨今はなにかと騎手不足に難渋しているチェコ・イタリア界隈の障害競馬界にとって将来の有力な選択肢として期待したい。アイルランドPeter Maher調教師にとって初のVelká Pardubickáへの挑戦は残念ながら結果を伴わなかったが、それでも明らかに格下と思われた馬がこの1カ月でこれだけの進歩を見せたことは収穫であろう。Peter Maher調教師をはじめ、アイルランドからの更なる挑戦を期待したい。なお、Jet Fighterは完走した馬の中では唯一の一桁台の年齢の馬であり、完走した他馬は全て10歳以上であった。

これが5回目のVelká Pardubickáの挑戦となった11歳馬PlayerはTaxis Ditchにて鐙を落とし、そこから復帰することは叶わず途中棄権となった。昨年の段階でもTaxis Ditchの直前にて急激にペースを落とすような飛越を見せており、今年もレース映像の奥側を走っているためわかりにくいのだが、どうやらTaxis Ditchでの飛越は十分ではなかったようだ。2020年は2着、2022年は4着と素晴らしい結果を残してきた馬で、おそらく今回もこのアクシデントがなければ上位争いを繰り広げていたと思われるが、どうにも2021年のTaxis Ditchでの落馬が尾を引いているようで残念である。このTaxis Ditchを突破してこそVelká Pardubickáのチャンピオンと言えよう。Scuderia Aichner陣営が送り込んだ紅一点Santa Klaraは終盤の障害で落馬に終わった。どうやらMeranoのCross Countryのようにある程度息を入れながら走れればよいのだが、前走のWielka Wrocławskaでも強気に乗った結果最後は息切れしているように、どうにもロングスパート能力という点ではややここでは厳しかったようだ。フランス人騎手Ludovic Solignacとコンビを組んだImphalは何でもない障害での落馬で、このレースは昨年に引き続きの落馬に終わった。

 

今年のTaxis Ditchでは先頭集団を走っていたStukeが障害直前で逃避するような恰好で急激に斜飛し、その結果としてStukeに加え、それを巻き込む形でRoyal Gino、Alpha Male、Zataro、Mr Spex、Godfreyの計6頭が落馬する大きな事故が発生した。それとは別にTaxis Ditchでは後方にいたArganoの落馬もあった。その結果、残念ながら事故の発生要因となったStukeは助からず、Arganoに騎乗していたMartin Liška騎手もその場で蘇生処置を受ける必要があるほどの重傷を負った*22*23(が、蘇生処置を受けたことを否定する報道もあるようだ*24)。Taxis Ditchはここ30年ほど何度も安全性の向上を目的とした修正が加えられてきており、2020年のSottoventoの事故を受けた2021年にも多くの修正が行われ、着地側の斜面の傾斜の変更、芝生を排除した視覚的に認識可能な空壕、空壕端の視覚的な目印の設置、空壕の深さの縮小(1メートル→75cm)、生垣の高さの修正(135~145cm)等、障害の性質を担保すると同時に安全性の向上を目的とした多数の工夫が凝らされている*25Velká Pardubickáの象徴的なシーンとして古いTaxis Ditchの画像を(無断)転載するいい加減なアカウントを見かけたこともあるが、もはや過去のTaxis Ditchとはその様相は大きく異なっていることは広く知られるべきである*26この修正は2022年において騎乗していた騎手から安全性上の観点から高く評価されており*27*28、今年は多数の馬がDitchの内側に着地せざるを得なかったTaxisの事故の発生状況や、Taxis Ditchを突破したもののDicthの内側に着地していた一部の出走馬の飛越状況を考えると、Radek Holčák調教師も述べているように、この修正が行われていなかった場合は更に悲惨な転帰を招いた可能性が考えられる*29。実際にJosef Váňa氏は現在のTaxis Ditchの安全性について一切の懸念はないと主張しており*30、同様の見解はJosef Bartoš氏やVáclav Chaloupka氏も述べている*31。加えて、2023年からVelká Pardubickáにおいて極端に能力が低い馬を除外することを目的として、Qualification Raceにおける出走権利獲得要件に追加の条件が加わっている*32*33。このように様々な安全性の担保を目的とした措置が行われていた今年のVelká Pardubickáであったが、残念ながらそれらの想定を上回る大規模なアクシデントが発生してしまったと言えよう。Česká televizeやTipsportによるレース中継の放映やオンラインでの馬券販売の拡大に努力し、その努力が一定の成果を上げているチェコ競馬界であるが、一方でソーシャルネットワークの発達した昨今において、狂信的な動物愛護団体等は滅ぶべしとしても*34、どうしてもVelká Pardubickáは普段から競馬を見ない層も観戦するということもあってか事故による議論と反発は免れないようで*35、過去の競馬を取り巻く状況はともかくとして、少なくとも現代社会においてやはりこのような事故はやはりあってはならないものであることはもはや疑問を差し挟む余地のないことであり、伝統の名の下に安全性を考慮しない条件に固執することもまた時代錯誤な考え方であろう。実際に2020年の事故の際にも発生したTaxis Ditchに対する廃止運動は2023年も再発しているようで*36、通常レース中の事故の転帰に関する公式なアナウンスはなされないのだが、この反発の大きさを鑑みてかこの事故に関しては早々にPardubice公式Facebookから事故の転帰に関するアナウンスがなされている*37。Stukeに騎乗していたフランス人騎手Benoit Claudicは今年になって積極的にPardubiceに遠征し結果を残している人で*38、今年もこの大一番においてStukeの鞍上を確保していたようにPardubiceのCross Countryにおける経験と技術を兼ね備え、昨今は騎手の確保に難渋しているチェコ競馬界隈を考えると非常にありがたい存在である。今年は不幸にもこのような事故の中心となってしまったが、Martin Liška氏はこの事故自体は騎手に起因するものではないとの見解を述べており*39チェコにおける騎乗機会を引き続き確保して欲しいところである。事故の中心となったStukeも全くのoutsiderというわけではなく、Cross Countryでの経験こそ今年に入ってのみであるものの、2019~2020年にかけてMeranoにてSiepiのG1競走を2勝し、当時のイタリアSiepi路線においてはトップホースとして君臨した人気のある競争馬である*40。そもそも尿路系の先天的な異常により当歳時には安楽死の危機も経験し、オーナーサイドが多額の費用をかけて行ったドイツでの2度の手術を乗り越えてきた馬だそうで、このような馬がイタリアで栄光を掴んできたことは喜ばしいことであろう*41。このように、ここまでの関係者による慎重な安全対策の実施、かつこの事故が競馬界隈内外にもたらす影響等を考えると、今年は考え得る中でも最悪のケースの事故が起こってしまったと言えよう。なお、現地で観戦していた日本の競馬ジャーナリストで、たまたまTaxis Ditchにいたと思しき人物がわざわざこの事故の映像をSNSに掲載し、この映像とともに「一度は見る価値のあるレース」などという能天気なツイートをしているが、上記の難しい背景及び事故の転帰、加えて今般の事故がチェココミュニティにおいて引き起こした議論の大きさ等を考えると、この無神経さと不勉強ぶりには呆れるしかない*42。今回の落馬の原因について、Martin Liška騎手は馬の経験不足を指摘しており、これは出走に踏み切った調教師及びオーナーサイドの責任であると主張する*43。Josef Váňa氏は同馬が先頭に留まったことで飛越に際して追従する馬が存在せず、結果的に何かしらに驚いたことが原因であると指摘する*44*45。Josef Váňa氏曰く、これはどうやら経験の浅い馬は経験豊富な馬の後を追って飛越することでこのように難易度が極めて高い障害飛越を可能にすることが知られていること、及びこの時刻には太陽の位置との関係で障害地点に影が生じることが馬を驚かせる可能性が考え得るとの指摘をしており*46、実際にイギリス等では夕方における障害飛越は安全性上の観点からオミットされることがある。同様に経験の浅い馬が先頭に立ったことの問題はLukáš Matuský騎手やGrzegorz Wroblewski調教師も指摘しているが、同騎手は経験の浅い騎手と馬のコンビという問題点についても併せて指摘している*47*48。Marek Stromský騎手は過去にTaxis Ditchにて同様のパターンによる落馬を経験しており、中央に馬が密集していたことが事故が拡大した原因であると述べている*49。Jan Kratochvíl騎手はTaxis Ditchにアプローチする際の速度の不足を指摘しており*50、同様の見解は昨年Martin Liška氏からも出されている。一方で、Stukeの調教師であるRadek Holčákは馬自身は十分な技術を持っていたこと、Benoit Claudic騎手に対しては他の経験豊富な馬にリードされて飛越するよう指示を出していたものの、騎手はペースの遅さと馬自身のリズムを重視して前に行った旨を説明している*51。このように直接的な事故の原因としては様々な指摘がなされているが、いずれにせよ現時点のTaxis Ditchに対する安全性に対するチェコ競馬関係者の専らの見解は上記のとおりで、Jaroslav Brečka調教師はどんなに優秀な馬であっても落馬する可能性はあること*52、及びJosef Váňa氏は今回の事故は100年に1度の不幸な偶然であったと述べているそうだ*53*54。加えて、チェコメディアであるChrudimský deníkで行われたオンラインアンケートには7000人近い人が参加し、約70%の参加者がTaxis Ditchの修正を不要と回答している*55。一方でチェコJockey Clubは2023年10月10日付で当該事故に関する内部調査を行う旨を発表しており*56、今般の事故を踏まえたTaxis Ditchに関する議論及びVelká Pardubickáを巡る動向は引き続き注視する必要がありそうだが、なにかと競馬における事故が発生するたびに喜び勇んで発生する極端な動物愛護運動の社会的な影響と、それに基づくこの世界最高峰の馬事文化及びスポーツの祭典の価値を貶めるような措置だけは必ず避けねばならないことは言うまでもないだろう*57

 

*1:https://www.dostihy.fitmin.cz/domaci-dostihove-deni/sazky-na-pardubicky-mitink-prekonaly-rekord-na-cely-mitink-bylo-vsazeno-22-milionu-vic-jak-polovina-smerovala-na-vrchol-mitinku.html

*2:https://www.dostihy.fitmin.cz/domaci-dostihove-deni/sazky-na-pardubicky-mitink-prekonaly-rekord-na-cely-mitink-bylo-vsazeno-22-milionu-vic-jak-polovina-smerovala-na-vrchol-mitinku.html

*3:https://twitter.com/MpPardubice/status/1711054841512947930/photo/1

*4:https://twitter.com/81pro_official/status/1711002949013639371

*5:https://twitter.com/komaki_motors/status/1710939152521560573

*6:上田麗奈 1st LIVE Imagination Colors Blu-ray - 上田麗奈 | Lantis web site

*7:「上田麗奈 1st LIVE Imagination Colors Blu-ray」Digest Movie - YouTube

*8:https://twitter.com/ReinaUeda_Staff/status/1577493789542735872

*9:https://www.dostihy.fitmin.cz/domaci-dostihove-deni/velkou-pardubickou-vyhral-sacamiro-s-janem-faltejskem-dostih-ovlivnila-stukeho-chyba-na-taxisu.html

*10:https://www.facebook.com/groups/504975458490758/

*11:https://isport.blesk.cz/clanek/ostatni-velka-pardubicka/437806/sampion-sacamiro-vlk-samotar-co-kouse-panenku-a-vsechny-terorizuje.html

*12:https://virgos2g.hatenablog.com/entry/2023/10/08/000000

*13:https://www.horseboook.cz/blog/sport/na-kus-reci-v-dostihove-staji-benov-z-dostihoveho-kone-muze-byt.html

*14:https://prerovsky.denik.cz/zpravy_region/sacamiro-z-benovska-staj-sazkari-favorit-velka-pardubicka.html

*15:https://isport.blesk.cz/clanek/ostatni-velka-pardubicka/437762/velka-pardubicka-plna-padu-dojelo-jen-osm-koni-slavi-sacamiro-s-faltejskem.html

*16:https://www.idnes.cz/sport/ostatni/manzele-petrikovi-majitele-vitez-velka-pardubicka-sacamiro.A231010_753406_sporty_rou

*17:https://zlin.cz/zpravy/velka-slava-v-benove-ahoj-ja-jsem-sacamiro-ten-co-vyhral-velkou-pardubickou/

*18:https://virgos2g.hatenablog.com/entry/2023/01/17/231245

*19:https://isport.blesk.cz/clanek/ostatni-velka-pardubicka/437803/stromsky-popsal-hruzu-na-taxisu-proc-jedete-vsichni-na-prostredek.html

*20:https://isport.blesk.cz/clanek/ostatni-velka-pardubicka/437968/autista-a-zmatkar-ktereho-leka-i-zradlo-utocil-na-senzaci-ve-velke.html

*21:https://www.turfsport.sk/slovensko/piate-miesto-vo-velkej-je-uzasny-vysledok-motivuje-ma-to-k-dalsej-praci-vravi-jaroslav-brecka/

*22:https://isport.blesk.cz/clanek/ostatni-velka-pardubicka/437781/smrt-kone-na-taxisu-vazne-zraneny-zokej-stuke-vybocil-a-prisla-pohroma.html

*23:https://pardubicky.denik.cz/zpravy_region/velkapardubicka-2023-taxis-kun-smrt-stuke-liska.html

*24:https://www.konealide.cz/2023/10/10/den-s-zokejem-liskou-pri-te-hruze-to-dopadlo-nejlepe-jak-mohlo-rika-po-padu-na-taxisu/

*25:https://isport.blesk.cz/clanek/ostatni-velka-pardubicka/437781/smrt-kone-na-taxisu-vazne-zraneny-zokej-stuke-vybocil-a-prisla-pohroma.html

*26:当然、中の人が2019年にPardubice競馬場を訪問したときとも異なっている。

*27:https://isport.blesk.cz/clanek/ostatni-velka-pardubicka/421343/myska-o-taxisu-kdyby-se-neupravil-byla-by-pulka-koni-mrtvych.html

*28:https://pardubicky.denik.cz/ostatni_region/faltejsek-upravy-taxisu-porad-zalezi-na-tom-jak-na-prekazku-najedete-20211012.html

*29:https://isport.blesk.cz/clanek/ostatni-velka-pardubicka/437902/holcak-o-kolizi-na-taxisu-stuke-byl-pripraveny-pokyny-jezdci-byly-jine.html

*30:https://www.idnes.cz/sport/ostatni/taxisuv-prikop-upravy-umrti-josef-vana-stuke.A231009_164332_sporty_pls

*31:https://isport.blesk.cz/clanek/blesk-sport/437852/spor-o-slavny-dostih-a-ikonickou-prekazku-pro-ochrance-zvirat-morbidni-zabava-podle-vani-uz-nemuze-byt-lehci.html?kapitola=1011872

*32:https://virgos2g.hatenablog.com/entry/2023/03/06/201453

*33:https://zavodistepardubice.cz/sezona-2023-bude-plna-zmen/

*34:https://pardubicky.denik.cz/zpravy_region/velkapardubicka-2023-taxis-kun-smrt-stuke-liska.html

*35:https://isport.blesk.cz/clanek/blesk-sport/437816/smrtelna-hruza-jmenem-taxis-zuri-kalousek-i-novotny.html

*36:https://www.idnes.cz/sport/ostatni/taxisuv-prikop-upravy-umrti-josef-vana-stuke.A231009_164332_sporty_pls

*37:https://www.facebook.com/dostihypce/posts/pfbid02VgBAVWiXLxPXSAbh7uCKJZVyU6xEVFNHxj3vd1XSQUiieQdTCo5DyeyGp4FuZtJHl

*38:http://dostihyjc.cz/index.php?page=18&IDTR=13404&rok=2023&pod=kariera

*39:https://isport.blesk.cz/clanek/ostatni-velka-pardubicka/437808/strach-o-zokeje-lisku-trenerka-kabelkova-si-oddechla-je-v-poradku.html

*40:http://dostihyjc.cz/index.php?page=17&ID=51400

*41:https://isport.blesk.cz/clanek/ostatni-velka-pardubicka/437902/holcak-o-kolizi-na-taxisu-stuke-byl-pripraveny-pokyny-jezdci-byly-jine.html

*42:当然のように偏った動物愛護思想を有する無教養なクラスタに絡まれているようで、本人が幾ら叩かれようが知ったことではないが、競馬界隈に悪影響を及ぼさないことを願いたい。

*43:https://pardubicky.denik.cz/ostatni_region/zokej-jaroslav-myska-velka-pardubicka-smrt-kone-stuke-taxis.html?utm_medium=referral&utm_campaign=social_redirection&utm_source=facebook

*44:https://www.idnes.cz/sport/ostatni/taxisuv-prikop-upravy-umrti-josef-vana-stuke.A231009_164332_sporty_pls

*45:https://isport.blesk.cz/clanek/ostatni-velka-pardubicka/437842/co-muze-za-fatalni-pad-na-taxisu-stin-i-chyba-zokeje-chybi-lidr-mezi-jezdci.html?kapitola=1011818

*46:https://isport.blesk.cz/clanek/ostatni-velka-pardubicka/437828/vana-o-fatalnim-padu-shoda-nahod-taxis-hazi-stin-kun-se-musel-leknout.html

*47:https://isport.blesk.cz/clanek/ostatni-velka-pardubicka/437842/co-muze-za-fatalni-pad-na-taxisu-stin-i-chyba-zokeje-chybi-lidr-mezi-jezdci.html?kapitola=1011817

*48:https://pardubicky.denik.cz/zpravy_region/stuke-tragedie-velka-pardubicka-dostih-smrt.html

*49:https://isport.blesk.cz/clanek/ostatni-velka-pardubicka/437803/stromsky-popsal-hruzu-na-taxisu-proc-jedete-vsichni-na-prostredek.html

*50:https://isport.blesk.cz/clanek/ostatni-velka-pardubicka/437842/co-muze-za-fatalni-pad-na-taxisu-stin-i-chyba-zokeje-chybi-lidr-mezi-jezdci.html?kapitola=1011819

*51:https://isport.blesk.cz/clanek/ostatni-velka-pardubicka/437902/holcak-o-kolizi-na-taxisu-stuke-byl-pripraveny-pokyny-jezdci-byly-jine.html

*52:https://www.turfsport.sk/slovensko/piate-miesto-vo-velkej-je-uzasny-vysledok-motivuje-ma-to-k-dalsej-praci-vravi-jaroslav-brecka/

*53:https://isport.blesk.cz/clanek/ostatni-velka-pardubicka/437828/vana-o-fatalnim-padu-shoda-nahod-taxis-hazi-stin-kun-se-musel-leknout.html

*54:https://www.idnes.cz/sport/ostatni/taxisuv-prikop-upravy-umrti-josef-vana-stuke.A231009_164332_sporty_pls

*55:https://chrudimsky.denik.cz/ostatni_region/stuke-velkapardubicka-anketa-taxis-myska.html?utm_campaign=social_redirection&utm_source=facebook

*56:https://www.dostihy.cz/aktuality/jockey-club-cr-se-zabyva-udalostmi-pri-133-velke-pardubicke-se-slavia-pojistovnou

*57:https://virgos2g.hatenablog.com/entry/2023/04/15/080000