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24/01/17 日本競馬における国内外障害競争出走経験を有する種牡馬

*日本競馬における国内外障害競争出走経験を有する種牡馬

本稿では、1984~2022年に本邦で繋養された種雄馬(及び持込馬の父)全3644頭のうち、国内外における障害競争出走経験を有する種牡馬に関して記載する。本稿の執筆に先立ち、JAIRS*1が提供する血統書サービスにおける供用種雄馬データベース*2に基づき、1984~2022年に本邦で繋養された種雄馬(及び持込馬の父)全3644頭のリストを作成した。当該リストから、中の人の手作業により国内外における障害競争出走経験を有する種牡馬の抽出を行った。抽出作業においては主にJBISサーチ*3、netkeiba競馬データベース*4(特に競馬データベースクラシック*5)、及びRacing Post*6並びにFrance Galop*7等に基づいて障害競争出走経験の有無の確認を行っているが、特に比較的古い年代の馬に関しては抜けがある可能性があることに留意されたい。

 

本日は上田麗奈さんのお誕生日です*8*9*10*11*12*13*14*15。おめでとうございます。

 

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1984~2022年において本邦で繋養された種雄馬(及び持込馬の父)全3644頭のうち、国内外における障害競争出走経験を有する種牡馬は以下のとおりである。産駒数はJAIRSが提供する血統書データベースサービス*16に基づいて記載した。

馬名 生年 品種 障害実績 平地実績 産駒数 主な産駒(障害) 主な産駒(平地)
アスコツトセブン (JPN) 1978 サラ ヨドヒーロー (JPN) ヨドスイート (JPN) 日本障害2勝 1981 菜の花賞(400万下) 14 なし なし
アンクルスーパー (JPN) 1997 サラ デインヒル (USA) サークルシヨウワ (JPN) 日本障害2戦未勝利 2002 寿S(1600万下) 5 なし なし
イチエイボーイ (JPN) 1977 サラ モンテセロ (GB) イシノセン (JPN) 1982 東京障害特別 なし 9 なし なし
ウインクリューガー (JPN) 2000 サラ タイキシャトル (USA) インヴァイト (IRE) 日本障害1勝 2003 NHKマイルC (G1) 31 なし エバーローズ 2012 轟S(1600万下)
ウインマーベラス (JPN) 1997 サラ サンデーサイレンス (USA) ミヤビサクラコ (JPN) 2003 京都ハイジャンプ (G2) 2001 ディセンバーS 19 ディアディアー 2010 福島JS なし
エスタンパレード (JPN) 2011 サラ キングカメハメハ (JPN) スギノセンヒメ (JPN) 日本障害1戦未勝利 2017 蹴上特別(1000万下) 0    
ヴリル (AUS) 2001 サラ Sunday Silence (USA) Phantom Creek (GB) 日本障害2勝 2005 奥多摩S(1600万下) 43 バトルボンネビル 2016 障害未勝利 なし
エイシンタウラス (JPN) 1986 サラ ノーザンテースト (CAN) エイシンガール (JPN) 日本障害2勝 1991 鳥栖特別(900万下) 1 なし なし
エーシンジーライン (USA) 2005 サラ Giant's Causeway (USA) Lady Danz (USA) 日本障害3勝 2012 小倉大賞典 (G3) 7 なし ユウユウグリュック 2023 浦和ジョッキーズラウンド(浦和)
カシノエイト (JPN) 1977 サラ オサイチテツト (JPN) リキオーヒ (JPN) 日本障害2戦未勝利 1982 うずしお特別(800万下) 2 なし なし
カシマアーバン (JPN) 1980 サラ キタノカチドキ (JPN) サローング (GB) 日本障害1勝 1985 ディセンバーS(1400万下) 0    
カネトシガバナー (JPN) 1995 サラ アンバーシヤダイ (JPN) カネトシクイン (JPN) 2003 阪神スプリングJ (G2) 1998 神戸新聞杯 (G2) 14 なし なし
キングリオ (JPN) 2012 サラ キングカメハメハ (JPN) ウィキッドリーパーフェクト (USA) 日本障害3戦未勝利 なし 2 なし なし
グランドマーチス (JPN) 1969 サラ ネヴアービート (GB) ミスギンオー (JPN) 1974-75 中山大障害 1973 万葉S(700万下) 8 なし なし
グレイレジェンド (JPN) 2008 サラ トワイニング (USA) オグリクェスチョン (JPN) 日本障害3戦未勝利 2012 市原特別(1000万下) 3 なし なし
グレートダービー (JPN) 1975 サラ ヒツテイングアウエー (USA) ヒルズデイア (USA) 日本障害4勝 1980 読売杯西海賞(800万下) 20 なし なし
ケイアイドウソジン (JPN) 2006 サラ キングカメハメハ (JPN) リーダーズフライト (USA) 2014 阪神スプリングJ (G2) 2012 ダイヤモンドS (G3) 2 なし なし
ケイワン (JPN) 1988 サラ L'Emigrant (USA) タンゴダンサー (USA) 日本障害4戦未勝利 1993 道新杯 10 なし ベルデンフドウ 2002 あけび特別(名古屋)
ケルゼツク (FR) 1976 アア(31.25%) アア  Thalian (FR) Drina (FR) フランスHaies4戦未勝利 フランス平地4勝 144 なし サシオギ 1990 タマツバキ記念
ゴーカイ (JPN) 1993 サラ ジヤツジアンジエルーチ (USA) ユウミロク (JPN) 2000-2001 中山GJ (G1) なし 75 オープンガーデン 2011 阪神スプリングJ (G2) バースフォンテン 2014 ファビィレイン特別(船橋
コガネターボ (JPN) 1984 サラ マグニテユード (IRE) コガネポプラ (JPN) 日本障害1勝 1989 ルビーS(1400万下) 0    
ゴッドスピード (JPN) 1994 サラ ポリッシュネイビー (USA) プリテイシルバー (JPN) 1999 中山大障害 1996 府中3歳S (G3) 0    
サクラサワヤカ (JPN) 1979 サラ ホープフリーオン (USA) スワンズウツドグローヴ (GB) 日本障害1勝 1985 寿賞(900万下) 9 なし なし
サンエムキング (JPN) 1992 サラ ナグルスキー (CAN) サンエムスピード (JPN) 日本障害2戦未勝利 1997 師走S 0    
シンウルフ (JPN) 1979 サラ ラツキーソブリン (USA) スノーシヨツト (JPN) 日本障害1戦未勝利 1983 スプリンターズS
203 なし カノヤミノリ 1994 なにわS(1500万下)
スズカコーズウェイ (JPN) 2004 サラ Giant's Causeway (USA) フレンチリヴィエラ (USA) 日本障害2戦未勝利 2009 京王杯スプリングC (G2) 149 スリーコーズライン 2019 障害未勝利 スズカコーズライン 2000 大和S
スターウォーズ (JPN) 2007 サラ キングカメハメハ (JPN) レディバラード (IRE) 日本障害1戦未勝利 なし 2 なし なし
スポーツキー (USA) 1972 サラ Nijinsky (CAN) Sports Event (USA) イギリス障害3戦未勝利 イギリス平地5勝 325 ハーバーシャープ 1987 障害4歳400万下 ダイゴトツゲキ 1984 阪神3歳S
セカンドゲス (USA) 1995 サラ Irish Tower (USA) Early Decision (USA) 日本障害2戦未勝利 2001 晩春特別 6 なし イケヅキタロー 2008 ヘルクレス座特別競走(大井)
セキテイボーイ (JPN) 1984 サラ テスコボーイ (GB) メイジバルドー (JPN) 日本障害1戦未勝利 なし 12 なし なし
ダイゴウ (JPN) 1967 サラ Red God (USA) トリーソング (IRE) 日本障害1勝 1970 府中特別(800万下) 11 なし デュランス 1984 ひよどり越特別(800万下)
ダイコーター (JPN) 1962 サラ ヒンドスタン (GB) ダイアンケー (USA) 日本障害1勝 1965 菊花賞 122 ホウシュウスカイ 1987 阪神障害S ニシノライデン 1987 サンケイ大阪杯 (G2)
ダイシングロウ (JPN) 2004 サラ ダンスインザダーク (JPN) コウユーラヴ (JPN) 日本障害3勝 2008 博多S(1600万下) 2 なし ダイシンクワトロ 2021 奈良大和肉鶏特別(園田)
ダイシンサンダー (JPN) 2011 サラ アドマイヤムーン (JPN) イチゴイチエ (JPN) 日本障害3戦未勝利 2016 錦S(1600万下) 3 なし なし
ダイタクカピタン (JPN) 1978 サラ ダツパーダン (USA) シユウエイコ (JPN) 1986 京都大障害(秋) 日本平地4勝 1 なし なし
ダイタクサージャン (JPN) 1992 サラ サンデーサイレンス (USA) スイートラブ (JPN) 日本障害1勝 1997 エメラルドS 24 ウォータートリトン 2008 障害未勝利 シャイニールック 2006 東京湾C船橋
タカラダケ (JPN) 1968 アア(25.34%) アア  ハマノオー (JPN) アア  キンオウ (JPN) 日本障害1戦1勝 1971 アラブ大賞典 2 なし なし
タニノフランケル (IRE) 2015 サラ Frankel (GB) Vodka (JPN) 日本障害1戦未勝利 2018 大原S(1600万下) 28 なし なし
ダンディーハート (JPN) 1992 サラ マルゼンスキー (JPN) ハートブレイク (USA) 日本障害6戦未勝利 1996 シーサイド(大井) 4 なし なし
チアズサイレンス (JPN) 1993 サラ サンデーサイレンス (USA) グリーンスミレ (JPN) 日本障害1勝 1996 名古屋優駿(名古屋) 49 なし なし
チャクラ (JPN) 2000 サラ マヤノトップガン (JPN) カーロッサ (IRE) 日本障害1勝 2003 ステイヤーズS (G2) 14 なし マヤノチャクリ 2017 雪おくりまつり特別(金沢)
トウショウオリオン (JPN) 1993 サラ トウシヨウボーイ (JPN) コーニストウシヨウ (JPN) 日本障害2戦未勝利 1998 北九州記念 (G3) 1 なし なし
トウフクキヤノン (JPN) 1976 サラ ロイヤルタタン (USA) エリモスクリーン (USA) 日本障害2戦未勝利 1981 京葉ハンデキャップ(1700万下) 0    
トスカフエ (FR) 1981 アア(30.65%) アア  Cafettot (FR) アア  Toscafleur (FR) フランスHaies1戦未勝利 フランス平地3勝 121 なし トキノリバティー 1990 セイユウ記念
ナリタアトラス (JPN) 1993 サラ マルゼンスキー (JPN) タイシンリリイ (JPN) 日本障害1戦未勝利 1997 石狩川特別(岩見沢 15 なし なし
ナンキンリユウエン (JPN) 1977 サラ ノーザンテースト (CAN) タミアナ (GB) 日本障害3戦未勝利 1983 福島民友C 90 なし グラッパ 1990 栗子特別(900万下)
ニユーカイモン (JPN) 1969 サラ系 ゼモングース (GB) サラ系 アイチテンプウ (JPN) 日本障害2勝 1974 ゴールドC 40 なし ショウフウリッキ 1986 あやめ賞(400万下)
ノーアテンシヨン (FR) 1978 サラ Green Dancer (USA) No No Nanette (FR) フランス障害2勝 1982 Preis von Europa (G1) 2着 656 ギャザウェイ 1994 障害OP スーパークリーク 1990 天皇賞(春) (G1)
ノーザンレインボー (JPN) 1990 サラ ノーザンテースト (CAN) エコルシユ (USA) 1998 中山大障害(春) 1997 アクアマリンS(1500万下) 1 なし なし
ハギノグレート (JPN) 1986 サラ ハギノカムイオー (JPN) ニツシヨウカオリ (JPN) 日本障害1勝 日本平地1勝 2 なし なし
ハシストーム (JPN) 1970 サラ シンザン (JPN) セカイイチオー (JPN) 日本障害5勝 1974 大原特別(800万下) 7 なし アドバンスボーイ 1987 御池特別(900万下)
バローネターフ (JPN) 1972 サラ バウンテイアス (GB) キクホマレ (JPN) 1977-79 中山大障害 なし 19 なし なし
パワークリント (JPN) 1991 サラ ヤワ (IRE) フアニーエバー (JPN) 日本障害3勝 1995 ジューンS(1500万下) 1 なし なし
ピーチシヤダイ (JPN) 1977 サラ ノーザンテースト (CAN) シヤダイクリアー (JPN) 1985 東京障害特別 1983 成田特別(800万下) 49 なし エーワイキング 2000 下総特別(船橋
ファイヴナカヤマ (USA) 1991 サラ Davil's Bag (USA) Suspend (USA) 日本障害4戦未勝利 1995 関越S 17 なし カシノトーマス 2005 ミヤマキリシマ特別(荒尾)
フイルモン (GB) 1960 サラ Never Say Die (USA) Winged Foot (GB) イギリス障害4勝 1962 Anglesey Stakes 146 ジョーアルバトロス 1980 中京障害S ラフオンテース 1981 朝日チャレンジC
ホウシユウリツチ (JPN) 1970 サラ ダイコーター (JPN) トサクイン (JPN) 日本障害5勝 1973 神戸新聞杯 15 ブゼンリッカ 1982 障害5歳以上400万下 なし
マイネルスマイル (JPN) 1991 サラ サクラロータリー (JPN) ミクロンケンラン (JPN) 日本障害1勝 日本平地3勝 8 なし プニプニヨークン 2012 神姫バス杯(園田)
マルブツサーペン (JPN) 1981 サラ サーペンフロ (GB) ビーゲイ (IRE) 日本障害5勝 1986 平安S 11 なし ハイブリッジ 2000 名港杯(名古屋)
マンジュデンカブト (JPN) 1986 サラ ノーザンテースト (CAN) マンジユデンミキコ (JPN) 日本障害1勝 1992 ブリーダーズGC(札幌) 5 なし マンジュデンツルギ 2006 エクセレント競争(盛岡)
マンハッタンスカイ (JPN) 2004 サラ マンハッタンカフェ (JPN) デック (USA) 日本障害2戦未勝利 2008 福島記念 (G3) 3 なし なし
メジロディザイヤー (JPN) 1994 サラ サンデーサイレンス (USA) メジロラモーヌ (JPN) 日本障害1勝 日本平地1勝 76 メジロスパイダー 2009 障害未勝利 セイカモリオカ 2006 銀河賞(盛岡)
メジロパーマー (JPN) 1987 サラ メジロイーグル (JPN) メジロフアンタジー (JPN) 日本障害1勝 1992 有馬記念 (G1) 60 メジロライデン 2002 京都ハイジャンプ (G2) デルマポラリス 2001 牡丹賞(500万下)
モルフェサイレンス (JPN) 2005 サラ ニューイングランド (JPN) モルフェソング (JPN) 日本障害2勝 なし 1 なし なし
ライトオスカー (JPN) 1978 アア(25.00%) メジロムサシ (JPN) アア  ミスヨウテイ (JPN) 日本障害3戦未勝利 1981 シュンエイ記念 46 なし なし
ロイヤリスト (JPN) 1977 サラ デイバインギフト (GB) セントソフイア (JPN) 日本障害1戦未勝利 なし 14 なし なし
ロンギングダンサー (JPN) 2009 サラ シンボリクリスエス (USA) ダンスパートナー (JPN) 日本障害2勝 2015 新潟開設50周年記念(1600万下) 4 なし なし

1984~2022年において本邦で繋養された種雄馬(及び持込馬の父)全3644頭のうち、障害競馬への出走経験を有する種牡馬は計67頭確認された。この中には日本の障害競馬を彩った名馬も含まれており、その中でも種牡馬として代表的であったのは2000~2001年と中山グランドジャンプ (G1)を連覇したゴーカイであろう。2000年から国際招待競走に変更された同競争において*17*18、同馬は日本代表としてイギリス・アイルランド・フランスのみならずオセアニアアメリカといった世界各地の強豪を迎え撃ち*19、特に国際招待競走第1回となった2000年においてフランスのBoca Bocaを抑えて見事優勝を果たしたシーンは本邦の障害競馬の水準の高さを世界に訴えるものであった。同馬の引退後は日高軽種馬農協・門別種馬場で繋養され*20種牡馬として2011年の阪神スプリングジャンプ (G2)を制し、同時代の障害路線にてトップクラスの活躍を見せたオープンガーデンを送り出した*21。今般の調査において、日本障害重賞競走を制した種牡馬が日本障害重賞競走を制した産駒を送り出した例はこのゴーカイのみであり、オープンガーデンは惜しくもG1のタイトルには手が届かなかったとはいえ、ゴーカイが障害馬・障害種牡馬として日本競馬史に残した足跡は大きい。ゴーカイの母ユウミロクは1987年カブトヤマ記念 (G3)の勝ち馬で、兄弟には1997年のダイヤモンドステークス (G3)を制したユウセンショウや2001年の中山大障害 (G1)を制したユウフヨウホウがいるという、なかなか味わい深い本邦のステイヤー血統である*22。ゴーカイの父Judge Angelucciは近年ではキタサンブラックの母母父であることでその名前を知られているようだが、種牡馬としてはゴーカイを除くとほぼ失敗に終わったと言われており*23、現代ではこの系統自体は既に過去のもので、近年の障害競馬における活躍馬も存在しない。

なお、今般の調査対象における産駒の障害実績は概ね平地実績に比例する傾向が推測されたが、産駒の障害実績という観点から健闘したのがウインマーベラスであった。同馬は2003年に京都ハイジャンプ (G2)等を含む障害重賞3勝をあげて一気に頭角を現すと、積雪のため延期となったことで2004年1月に行われた*24第126回中山大障害 (G1)ではブランディスの2着に入った。次世代を担うチャンピオンホース候補として期待された同馬であるが、残念ながらレース中の故障により志半ばで同レースを最後に引退、8年間の種牡馬生活の中で残した産駒の血統登録頭数は19頭と僅かであったが*25、その中から2010年の福島ジャンプステークスを制したディアディアーが現れたことはこの中では比較的目立つ実績である。ただしディアディアーは参戦した重賞競走2戦ではいずれも大敗に終わり、引退後は乗馬となったそうだ*26

ゴーカイのみならず、グランドマーチスバローネターフゴッドスピードノーザンレインボーといった日本障害競馬の一流馬も繋養馬の中に認められた。1974~1975年にかけて中山大障害(春)及び中山大障害(秋)を完全制覇したグランドマーチス*27は1985年にJRA顕彰馬に選出された*28名馬で、1956年の中山大障害競争を制したハクレイを祖母に持つ*29。同馬の全盛期、あまりにも同馬が強すぎたために負担重量のルールが変えられたのではないかというエピソードは有名であろう*30。引退後は主に乗馬用の種牡馬として供用されたようで、競争馬としてはバトルマインという馬が何度か障害未勝利戦で掲示板に載ったのが最高のようだ*31バローネターフ中山大障害(秋)を3連覇、中山大障害(春)を2勝という素晴らしい成績を残した同年代のチャンピオンで*32、この馬もグランドマーチスと同様に主に乗馬用種牡馬として活動したそうだ。グランドマーチスはNever Say Dieの孫、バローネターフHyperionの孫だが、いずれの系統も過去のものであり、近年の障害競馬における活躍馬も殆ど存在しない。Hyperionの直系として、Traffic Judgeを介するDom Pasquiniの産駒であるDom AlcoはフランスHaiesで現在はG1競走として行われているPrix Cambaceresを含む計5勝を挙げ、種牡馬としてはAintreeのGrand National (G3)の勝ち馬Neptune Collonges、King George VI Chase (G1)等を制し現代でもその名前がレース名に残るSilviniaco Conti、Scottish Grand National (G3)を連覇したVicente、Scottish Grand National (G3)の勝ち馬Al Co、スイスGrosser Preis der Stadt Zürich等を勝利し同年代のスイスチャンピオンホースとして活躍したBaraka De Thaix*33等を送り出した数少ない成功例であるが、Dom Alco自身は2010年に亡くなっており、おそらく後継種牡馬はいないものと思われる*34。Dom PasquiniにはDom Alcoの他にもPasquin Fleuri、Saint Preuil、Pasadonoといった後継種牡馬がいたようだが、おそらく競争馬の系統としては途絶えたものと思われる。Hyperionの直系であるSheriff's Starの産駒で、菊花賞 (G1)等を制した二冠馬*35セイウンスカイアイルランドに輸出されるプランもあったという話もあり、もし実現していればもう少しその産駒の活躍を目にすることができたかもしれない。なお、本邦からアイルランドに輸出された馬として2007年のSingapore Airlines International CupにてDoctor Dino等を下して勝利したシャドウゲイトが挙げられるが、同馬の産駒として唯一の競争馬と思われる牝馬Paradise Sunsetは2023年8月にWarszawaの平地競争を勝利している*36。前年にホッカイドウ競馬所属馬として果敢にも海外遠征に挑んだコスモバルクの勝利を含め、当時は魅力ある国際競争として行われていた同レースは2015年を最後に廃止されているのみならず*37シンガポール競馬自体も2024年を最後に廃止予定と報じられており*38、なんとも寂しい限りである。

ダイタクカピタンはRibotの産駒であるDapper Danを父にもつ馬で、平地競争では400万下を勝利したのみと平凡な競走成績であったが、障害馬としては1986年の京都大障害(秋)等を制す活躍を見せた*39。京都大障害は1953年に創設された重賞競走で、古くから京都競馬場に設置されている高さ0.8メートル、幅15メートルのとび下り台(バンケット)を名物障害として実施されている。このタイプの障害は欧州のCross Country競走においては遥かに巨大で複雑な構造を有する障害を含めてごく一般的に設置されているが*40、Steeplechase競走において使用されるパターンは珍しい。一例としては比較的Steeplechase的な性質を有するベルギーWaregem競馬場のSteeplechase Courseのスタンド前に類似の障害が設置されているが、同コースを使用して行われる"Belgian Grand National"とも言われるING Grote Steeple-Chase Van Vlaanderenは欧州Cross Country Seriesの一環であるCrystal Cupのメンバーでもあり*41、その立ち位置は微妙なところである。京都大障害は1999年の障害競争のグレード制導入に伴い、現代では京都ジャンプステークス及び京都ハイジャンプとして実施されている*42。ダイタクカピタンの唯一の産駒ダイタクヒリュウは公営新潟で1勝をあげたそうだ*43。St Simonの末裔であるRibotの系統における近年の成功はほぼHoist The Flagを介する系統に属する大種牡馬Flemensfirth、Shantou、Astarabadによるものであるが、Hoist The Flagの系統として面白いところでJapeという馬はVelká Slušovická Steeplechase等を制したLarizanoや、Bad HarzburgのListenrennenであるBadener Roulette-Preisを制し、種牡馬としては2020年のVelká Pardubickáを制したHegnusの父として知られるMagnusを送り出している*44。さらにJapeの産駒でGran Corsa Siepi D'Italia (G1)を制したAge of Japeは、その産駒Dařbujánが2023年のWieka Partynickaを制すなどようやく種牡馬としての結果を残しつつあるのだが、残念ながらAge of Japeは2022年に早逝してしまっており、ポーランドチェコ独自の系統として残された産駒にはなんとか頑張って欲しいところである。Ribotのそれ以外の系統として近年ではKaringa Bayの産駒であるConeygreeがNovice馬として2015年のCheltenham Gold Cup (G1)を制したことが代表的であろう。その快速を生かしてNovice馬として40年ぶりのCheltenham Gold Cup (G1)を勝利し、その内容も圧巻の快走劇であった同馬であったが、残念ながらその後は故障に悩まされることとなった*45。他には1995年のChampion Hurdle Challenge Trophy (G1)の勝ち馬AlderbrookがScilly Isles Novices' Chase (G1)の勝ち馬For Non StopやGrand Annual Challenge Cup (G3)の勝ち馬Alderwoodを送り出している。

イチエイボーイはMontecelloの産駒で、平地競争では未勝利戦も勝ちあがれなかった馬だが障害競争で素質を開花、1982年の東京障害特別を制した他、同年の中山大障害キングスポイントの2着に入った*46。東京障害特別は1956年に創設され、1999年からは東京ハイジャンプ (G2)及び東京オータムジャンプ (G3)又は東京ジャンプステークス (G3)として行われている競走だが、イチエイボーイが勝利した第53回競走では襷の大障害コース*47を使用して行われていた。当時は通称「けやき」と呼ばれる大土塁障害や大竹柵障害といった難易度の高い障害が設置されていたようだが*48、残念ながら21世紀を待たずに廃止されている。文中の注釈先は襷コースを使用した行われた最後の東京障害特別に関する貴重なレポートである。東京競馬場はさらに古くにはX字状の襷コースやS字状のコースが存在していたようで、本邦の競馬場における障害コース及び設置された障害の詳細な変遷は今後の興味深い調査課題であろう。なお、種牡馬としてイチエイボーイの残した産駒は僅かで、障害競争に出走した産駒は存在しない。

なお、今般の調査では対象外となったが、2010年代後半の日本障害競馬で絶対王者として君臨したオジュウチョウサンは2023年から本邦にて種牡馬として繋養されている。JAIRSのデータベースによると2023年は8頭の牝馬を集めたそうで*49、その産駒の活躍を楽しみにしたい。今やすっかり日本競馬を席巻したうえ、世界各地にその影響力を広げるSunday Silence系として、ハットトリックが2015年Gran Criterium D'Autunno (G1)の勝ち馬Triple PursuitやPennsylvania Hunt Cupの勝ち馬Royal Ruseを送り出しているほか、近年ではマーティンボロがフランスで繋養され、Prix Guillaume De Pracomtalの勝ち馬Edwinaをはじめとする活躍馬を送り出している。フランスには他にもレゴラスボーンキンググレイトジャーニー、LaymanといったSunday Silence種牡馬が存在しており、その産駒にはAQPS等の非サラブレッドの障害馬も多数含まれているようだ。オジュウチョウサン自身も2018年にフランスからカドラン賞の出走オファーを受けていたようで*50、日本での種付け頭数は残念ながら少数に留まっているようだが、もし海外挑戦が実現していれば希代のステイヤー資質を生かして障害チャンピオンとして君臨した同馬がフランスにて障害種牡馬として重用される未来もあったかもしれない。オジュウチョウサンの父ステイゴールドは他にも2011年の中山グランドジャンプ (G1)の勝ち馬で、鞍上の柴田大知騎手の号泣インタビューが印象深いマイネルネオスを筆頭に、グッドスカイやエムエスワールド、メイショウヨウドウの父として本邦の障害競馬ではお馴染みであるが、その後継種牡馬の産駒も結果を残しているようで、2023年にはゴールドシップ産駒のマイネルグロンが中山大障害 (G1)にて石神深一騎手とともに前年のチャンピオンであるニシノデイジーを競り潰しに行く強い競馬を見せ、新たな日本のチャンピオンホースとして名乗りを上げた。また、オルフェーヴルも2021年阪神ジャンプステークス (G3)の勝ち馬トゥルボーを送り出しているが、面白いところではHokkaido Missという牝馬が2020年にオーストラリアWarrnamboolのMaiden Hurdleを勝利して話題を集めた。サンデーサイレンスの産駒として上記リストには他にも、上記ウインマーベラスダイタクサージャン名古屋優駿の勝ち馬チアズサイレンス牝馬三冠馬メジロラモーヌの産駒メジロディザスターといった名前が認められ、現代日本障害競馬においても馴染みが深い存在である。

 

一方で、今般の調査において抽出された種牡馬の多くは、キャリアの後半において障害競争に転向したex-flat horseであり、障害馬としての活動は比較的限定的なものであった。平地G1競走の勝ち馬としては2003年NHKマイルカップの勝ち馬であるウインクリューガーが挙げられる。某巨大掲示板でも(良くも悪くも)人気を集めた*51同馬は阪神で障害未勝利戦を勝利、続く阪神ジャンプステークス (G2)に参戦するも4着に敗れ、レース中のアクシデントにより発症した屈腱炎により引退となっている*52ウインクリューガーの産駒のうち障害競争に出走した産駒は存在しないようだが、エバーローズという牝馬が2012年に準オープンの轟ステークスを勝利している。引退後も繋養されていた日高スタリオンステーションが閉鎖されるといった波乱があったようだが、その後は伝統神事である相馬野馬追にも出場したりしているようで*53、競争馬及び種牡馬としても波乱万丈の馬生を辿ってきたようだが、その余生が穏やかなものであることを願いたい。ウインクリューガーの祖父となるDavil's Bagの系統は日本でも馴染みがあり、Roses In Mayが春陽ジャンプステークスを制したコウユーヌレイエフ等を送り出しているが、ウインクリューガーの父タイキシャトルの後継種牡馬であるメイショウボーラー小倉サマージャンプ (G3)を制したマキオボーラーを送り出した。Devil's Bagの産駒は上記リストには他にもファイヴナカヤマの名前が認められる。ファイヴナカヤマ自身の産駒はごく僅かであった一方、ファイヴナカヤマの半兄のBarというアメリカ生産馬はアメリカ平地競争でAllowance等の3勝を挙げたのみであったものの*54馬術用途の種牡馬として活躍したそうだ*55

ダイコーターは1965年の菊花賞の勝ち馬であり、ダービー直前に推定2500万円と言われる当時としては破格の金額で購入されたことで話題を集めた馬だが、キャリアの晩年には障害競争に出走し、障害未勝利戦を勝利、淀障害ステークスで2着に入っている*56種牡馬入り当時はあまり注目されなかったようだが、多数の平地重賞勝ち馬に加え、阪神障害ステークスを制した牝馬ホウシュウスカイ等を送り出した。ダイコーターの産駒のうちホウシュウリッチという馬は平地競争では1973年の神戸新聞杯を制した馬であるが、障害競馬では現役生活を通じて計5勝、1975年の阪神障害ステークスで3着と結果を残した。引退後は種牡馬入りしたものの、産駒としてはブゼンリッカという馬が阪神の障害400万下を制したのが最高であったようで、残された産駒も僅かであったようだ。同馬は1985年に早々に用途変更となっている。シンザンダイコーターに代表される多数の活躍馬を送り出し、日本のオールドファンにとっては思い入れの深いものと思われるヒンドスタンの系統であるが、既に系統としては途絶えたものと思われ、そのヒンドスタンの父Bois Roussel全体の系統も現代障害競馬にとっては既に過去のものである。なお、ダイコーターと同じく障害競争に参戦した菊花賞勝ち馬としてビッグウィークが挙げられる。ヴィクトワールピサルーラーシップペルーサエイシンフラッシュローズキングダムといった強豪揃いであった同世代において、人気薄ながらも菊花賞で驚きの勝利を挙げたビッグウィークはキャリアの晩年に障害競争に参戦し未勝利戦を勝利しているが、引退後は種牡馬ではなく乗用馬として活躍し、ホースセラピーに関わることもあったそうだ*57*58

それにしても、上記リストには菊花賞を制したダイコーターステイヤーズステークス (G2)勝ち馬のチャクラ、ダイヤモンドステークス (G3)の勝ち馬ケイアイドウソジンといった平地のステイヤーが存在する一方で、上記NHKマイルカップ (G1)を勝ったウインクリューガー京王杯スプリングカップ (G2)勝ち馬のスズカコーズウェイ、古くにはスプリンターズステークスを勝利したシンウルフといった短距離馬も含まれており、加えて日本障害競馬にはマンジュデンカブトのようなダート馬やダンディーハートのような地方競馬出身馬も存在することを考えると、日本障害競馬の出走馬の多様性はやはり興味深いものであろう。シンウルフは1983年のスプリンターズステークスの勝ち馬であるが、引退後は鹿児島県で種牡馬入り、産駒は中央の九州産馬限定戦で活躍したそうだが、産駒として障害競馬に出走した馬はごくわずかである*59。なお、平地G1勝ち馬として上記リストにはメジロパーマーの名前もあるが、この馬の場合は近年の某コンテンツ(好き嫌いはさておき)の影響等により広く知られている通り障害帰りの平地競争馬として平地G1競走を制したもので*60ウインクリューガーダイコーター等とは経緯を異にすることに加え、Wicklow BraveやMax Dynamite、Echoes In Rainのような所謂欧州の"Dual Purpose Horse"として活動したわけでもない。メジロパーマー種牡馬としては京都ハイジャンプ (G2)を制したメジロライデンを送り出しており、飛越の問題から早々に障害馬としてのキャリアを諦めたとはいえ、同馬の能力を考えれば障害重賞を制していた可能性もあったかもしれない。

 

障害及び平地重賞の両方を制した馬として、カネトシガバナー及びケイアイドウソジンの名前が認められる。ただし、上記2頭を含め、同様の実績を有する競争馬であるアサクサゲンキ、タガノエスプレッソ、メドウラーク等は所謂欧州の"Dual Purpose Horse"とは本質的に異なることに留意されたい。カネトシガバナーは1998年に神戸新聞杯 (G2)及び愛知杯 (G3)を制した馬であるが、2001年から障害競馬に参戦、2001年の東京ハイジャンプ (G2)や2003年の阪神スプリングジャンプ (G2)を制し、2001年の中山大障害ではゴーカイに次ぐ単勝式2.8倍の2番人気に推されたほか*61、2003年の中山グランドジャンプ (G1)ではビッグテーストの4着に入った*62。引退後は日高スタリオンステーションにて種牡馬入りするも目立った産駒は現れず、産駒で障害競争に出走した馬は存在しない*63。かつて本邦で栄華を誇ったノーザンテーストの産駒として、カネトシガバナーの父アンバーシャダイは他にも京都ジャンプステークス (G3)の勝ち馬ホッコーアンバーや1996年の阪神障害ステークス(春)の勝ち馬ナリタライジンを送り出しているほか、その後継種牡馬として、メジロベイシンガーメジロロンザンを含め複数の活躍馬を送り出したメジロライアン、淀ジャンプステークスの勝ち馬ベストウォリアを送り出したベストタイアップ等が存在していたようだが、残念ながらすでにその存在としてはほぼ過去のものと思われる。中の人が初めて触れた版のダービースタリオンではサンデーサイレンスよりもノーザンテーストの方が種付け料が高額ですらあった記憶があるのだが、2024年現在における転帰は広く知られている通りである。

ケイアイドウソジンは2012年のダイヤモンドステークス (G3)を15番人気で勝利した馬であるが、障害馬としては2014年阪神スプリングジャンプ (G2)を制している。種牡馬として残した産駒は僅か2頭で、残念ながら2018年に早逝したそうだ*64。近年の本邦を代表する大種牡馬となったキングカメハメハケイアイドウソジンの他にも東京ハイジャンプ (G2)を制したサーストンコラルドを送り出している。面白いところで2018年の新潟大賞典 (G3)を勝利するなど芝の中期長距離戦線で活躍したスズカデヴィアスは2019年にはオーストラリアに遠征、さらに帰国した2020年には障害戦線に参戦、福島の未勝利戦を勝利したうえに同年の中山大障害 (G1)にも参戦している。残念ながら翌年の落馬により亡くなってしまったが、クラシック戦線から海外の平地G1競走、そして障害競争と、長きに渡って活躍を続けた名馬であった。キングカメハメハには複数の後継種牡馬が存在するが、近年ではルーラーシップ阪神スプリングジャンプ (G2)の勝ち馬エイシンクリックを、世界のロードカナロア東京ジャンプステークス (G3)の勝ち馬ジューンベロシティを、名牝シーザリオの産駒で兄弟にはエピファネイアやサートゥルナーリア等を持つ超良血馬リオンディーズ三木ホースランドパークジャンプステークスの勝ち馬タイキフロリゼルを送り出すなど存在感を強めている。Kingmanboの系統には他にもWelsh Grand National (G3)の勝ち馬Elegant Escapeや三木ホースランドジャンプステークスを制したダノンバッカス等を送り出したDubai Destinationや、Manifesto Novices' Chase (G1)を制したCaptain Conanを送り出したKingsalsa、Velká starohájska steeplechaseの勝ち馬Oldfieldroad等の父King's Best、Wielka Służewieckaを勝ったGertsoginyaの父Kentucky Dynamiteなど、成功した種牡馬が複数含まれており、今後も障害競馬において着目すべき系統であろう。エイシンフラッシュ等の父として知られるKing's Bestはその後本邦にも輸入され、ボナパルト春麗ジャンプステークスを制したほか、King's Bestの後継種牡馬の産駒としてはエイシンフラッシュ産駒のテーオーソクラテスが小倉ジャンプステークス (G3)を、Workforceの産駒エルゼロが三木ホースランドジャンプステークスを勝利している。Kingmanboの末裔として、面白いところではChristopheneというアメリカ生産馬はアイルランドHurdle競走を4戦するも勝ち星は上げられなかったが、引退後は種牡馬入りし、2010年にEBF Mares Novice Hurdle (G3)を制したMcvilleを送り出したようだ。他にもLemon Drop Kidの産駒アポロキングダムは競争馬としては平地競争の500万下を勝利したのみであったが、種牡馬として2014年の中山グランドジャンプ (G1)をその類稀なるスピードで圧勝した快速馬アポロマーベリックを送り出した。

なお、障害及び平地重賞の両方を制した馬として、上記ゴッドスピードも3歳時は重賞戦線で活躍し、小倉3歳ステークス (G3)及び府中3歳ステークス (G3)を制している。引退後は宮城県にて種牡馬入りしたそうだが、血統登録された馬はいなかったようだ*65ゴッドスピード自身はDanzigの産駒であるPolish Navyを父に持っており、Danzigの系統はChief's Crown、Green DesertDanehillをはじめとする多数の成功した大種牡馬を根幹種牡馬として大きく広がる一方、これらの根幹種牡馬を介さないDanzigの系統も多数の活躍馬を送り出している。Hard Spunの産駒であるSnap DecisionがアメリカHurdle路線のチャンピオンホースとして君臨しており、同馬がおそらくここ数年で最も有力な活躍馬だろう*66。他にもPolish Precedentの産駒であるRaktiがGran Corsa Di Siepi Roma (G1)の勝ち馬Cross Fadeを送り出しているほか、Don Grafという馬の産駒KalmarがWielka Służewieckaを勝利、Winning Boyの産駒であるTai Hoが2019年のニュージーランドGreat Western Steeplechaseを制している*67。大型の水壕障害が設置されたSteeplechase Courseを有するニュージーランド南島Riverton競馬場*68で行われるGreat Western Steeplechaseは、南島における障害馬及び騎手の不足により2019年が最後の競争となっており*69*70、Tai Hoはおそらくその最後の勝ち馬となりそうだ。2023年現在、ニュージーランド南島における障害競馬は残念ながら8月のRiccarton Parkで行われるGrand National Meetingのみとなっているが、Riccarton Parkには数多くの本格的な生垣障害が設置されたSteeplechase Courseが存在しており、その保全と再興が期待される。同様のDanzigの系統として他にもLure - Orpen - Blu Constellationの系統のSky Constellationというイタリア生産馬はイタリア調教馬としてCorsa Siepi Dei 4 Anni (G2)を制しており、チェコ調教馬をはじめとする国外調教馬に席巻されつつあるイタリア障害競馬において、強力な国外勢に一矢報いることに成功した。また、Peruginoの産駒であるBashboyはVIC州Grand National Steeplechaseを3勝したオーストラリアの名馬であるが、特に2015年の勝利はアイルランドRuby Walsh騎手とのコンビでの成功として有名である*71。なお、2015年当時はオーストラリアではビクトリア州のみならず南オーストラリア州においても障害競馬が行われており、SA州においてもVIC州とは独立してGrand National Hurdle / Steeplechaseが実施されていたが、2022年に同州で障害競馬を廃止する法案が可決され、2024年現在においてVIC州の"Grand National"は実質的にオーストラリアの"Grand National"となっている。上記経緯においては多数の問題点が指摘されているが、特にRacing SAと動物愛護団体である"The Greens"が共闘して障害競馬の廃止を進めたことが指摘されており、大きな禍根を残す結果となった*72

障害及び平地重賞の両方を制した馬のうち、現役の競争馬として代表的なところでは、上記オジュウチョウサンの引退レースとなった2022年の中山大障害 (G1)を制したニシノデイジーもまた2018年の札幌2歳ステークス (G3)等の勝ち馬である。ニシノデイジーの父でDansiliの産駒であるハービンジャーは他にもヨカグラやケイティクレバーといった複数の重賞勝ち馬を送り出しているが、Dansiliの後継種牡馬として最近ではZambezi SunがGrand Steeplechase De Paris (G1)を制したRosario Baron、ZacintoがGreat Northern Steeplechaseの勝ち馬Te Kahuを送り出しており、現代障害競馬としても馴染みがある系統である。世界中で成功を収めるDanehill系にはJeremyやMastercraftsman、Westerner、Elvstroem、Champs Elysees、Dylan Thomasといった成功した種牡馬が多数含まれるが、面白いところではEstejoの産駒であるポーランド生産馬のTunisはその血統背景を鑑みてわざわざ陣営がポーランドからフランスへと連れてきたという経緯があり*73*74、同馬はAuteuilのHaies重賞を複数勝利、引退後はフランスで種牡馬入り、2023年から産駒がフランスでデビューしており、既に障害競争で勝ち星を挙げている。出走馬の殆どがフランス生産馬で構成されるフランス障害競馬において、フランスと比較して極めて小規模な障害競馬開催国であるポーランド*75生産馬がフランス障害競馬に出走し、さらにその一線級で結果を残したことは極めて異例のことで、同馬をポーランドから連れてきた陣営の慧眼には恐れ入る。同陣営は他にもLaroshというウクライナ生産馬をフランスに導入しており、ウクライナOdessa(Одеса)競馬場で計3勝をあげた同馬はFontainebleuのHaies競走で勝利したことで話題を集めた*76ウクライナにはKyiv及びOdessaに競馬場が存在するが、どうやらロシアによる侵攻にも関わらず、2023年12月にもOdessaでは競馬が行われているようだ*77ハルキウ地域のスタッドファームに繋養されていた馬の30頭中22頭が死亡する等、馬産業を含めてロシアによる軍事侵攻により多数の痛ましい被害を出しているウクライナであるが*78、その中でも競馬開催が継続されていることは世界の競馬シーンにおいても大いに着目すべきニュースであろう。ウクライナ生産馬として近年目立つのはTchavsarの産駒でチェコ調教馬である牝馬Piraniyaで、同馬はBad HarzburgのSeejagdrennenを勝利している*79。夏季に集中的に行われるBad Harzburg開催はこの30年で大きく衰退したドイツ障害競馬に残された貴重な砦であり*80、その馬事文化における重要性は明白である。

 

日本競馬界は世界各国から多数の世界的良血馬を集めており、平地競争馬を転用する日本障害競馬もその恩恵に預かっている。タニノフランケル牝馬として史上3頭目、64年ぶりに東京優駿を制した日本競馬史を代表する名牝ウォッカの産駒で*81、父にはイギリス平地競争で絶対的な強さを誇り、種牡馬としても影響力を広げるFrankelを有するという世界的な良血馬である。タニノフランケル自身、平地競争馬としては2019年の小倉大賞典 (G3)の2着が最高で、障害馬としても小倉の未勝利戦で5着に入ったのみと目立った結果は残せなかったが、引退後は種牡馬入りし、2023年は計32頭の産駒が血統登録されたそうだ。平地競争ではソウルスターリング等の活躍馬が目立つFrankelの産駒はあまり障害競争では馴染みはないが、2023年にはSan RemoがVIC州Grand National Hurdleを制しているほか、同年に現存するオーストラリア最古の障害競争でColeraine競馬場にて行われるGreat Western Steeplechase(ニュージーランドRiverton競馬場で行われていた同名の競争とは別物である)をNelsonが制し、ようやく結果を残しつつある。Frankelの種牡馬としての成功を考えると、この系統の出身馬の障害競争への適性は今後注意すべき着眼点であろう。なお、タニノフランケルの全弟であるSeven Pocketsはイギリスで平地競争馬として現役生活を送ったのち、アイルランドLongford House Studで種牡馬入りしたようだ*82

ロンギングダンサーの母ダンスパートナーは1995年の優駿牝馬及び1996年のエリザベス女王杯を制した名牝であるが、ロンギングダンサーは障害戦で2勝を挙げる活躍を見せた。残念ながら同馬は2021年に死亡しており*83、産駒として血統登録された馬は計4頭と僅かである。ロンギングダンサーの父シンボリクリスエス種牡馬としてクリーバレンやサナシオンソロルマイネルフィエスタといった複数の障害重賞勝ち馬を送り出している。Kris Sの系統として最近ではArchの産駒であるCurve of StonesがInternational Gold Cupを制したのが比較的目立つ大きなタイトルだろう。上記リストには他にも、三冠牝馬メジロラモーヌの産駒であるメジロディザスター、アメリカでAlcibiades Stakesなる2歳G1を制したWickedly Perfectの産駒キングリオ、全姉に優駿牝馬を制したアドラーブルがいるノーザンレインボー、母に1991年カルティエ賞年度代表馬等に選出されたAraziの半妹Phantom Creekを持つヴリルといった世界的な良血馬が含まれており、日本障害競馬の出走馬における平地血統面から鑑みた豪華さは世界各地の障害競馬と比較しても抜きんでたものである。

なお、アドマイヤムーン産駒のラヴアンドポップは2021年の東京ハイジャンプ (G2)等を制した馬であるが、同馬の半兄Demonstrative*84は2014年のEclipse Winnerで、その勝ち鞍としては2012年及び2014年のNew York Turf Writers Cup (G1)、2012年のColonial Cup (G1)、2013年及び2015年のIroquois Hurdle (G1)、2014年のLonesome Glory Handicap (G1)、2015年のGrand National Hurdle (G1)と、当時のアメリカHurdleの主要競争*85を悉く制したアメリカの名馬である。ただしラヴアンドポップは2022年に引退しており、種牡馬入りはせず乗馬となったそうだ*86。Admire Moonの産駒として、Fujimoto Flyerという牝馬アイルランドEmmet Mullins厩舎の調教馬として2019年のPrix PelatというAuteuilの3歳限定Listed競走を制したことで一部の海外競馬ファンの間で話題を集めた。ただしその後はイギリス・アイルランドでは勝ち星をあげられず、2021年にフランスPatrice Quinton厩舎に移籍し、PauのClasse3のHaies競走を勝利するも、2022年の5月に引退したようだ。どうやら繁殖牝馬としてDoctor Dinoの産駒であるRaffles Choiceという牡馬が2023年に誕生したようで、その障害競争での活躍が楽しみである*87。成功した種牡馬Muhtathirの産駒であるDoctor Dinoは毎年のようにフランスリーディングの上位に名前を認める有力な種牡馬で、近年ではアイルランド16f Hurdle路線で圧倒的な強さを見せるState ManやGrand Steeplechase de Paris (G1)にて驚異的なロングスパート能力により後方からぶち抜いたDocteur De Ballonを筆頭に、La Bague Au Roi、Sceau Royal、Master Dino、Sharjah、Saint Godefroy、Un Reve Dautomne、Fort Medocなど、多数の活躍馬を送り出している。本邦の平地競争でその現役生活を送ったBandeはそのDoctor Dinoの半弟のみならず、AintreeのGrand National (G3)を連覇したアイルランドの名馬Tiger Rollを筆頭に、No Time To Lose、Nichols Canyon、Echoes In Rain、I Am Maximus、Goshenといった多数の活躍馬を送り出した大種牡馬Authorizedの産駒という良血馬で、当初種牡馬入りした日本では残念ながら殆ど繫殖牝馬を集められなかったようだが、その後輸出先となったフランスではAQPSやSelle Françaisを含む多数の繫殖牝馬を集めているようだ。上記のような血統的には高いポテンシャルを有する同馬がその可能性を最大限に発揮できる環境に移動したことを喜ばしく思うとともに、その産駒の活躍を今から楽しみにしたい。2021年生まれの産駒には既にちらほらと所属厩舎が登録された馬もいるようだ*88。なお、Authorizedは一度トルコに輸出されているが、その産駒の素晴らしい活躍を受けて高齢ながらもアイルランドに連れ戻されているという経緯がある。

 

上記リストにはそれ以外にもなかなかの個性的な馬が含まれた。モルフェサイレンスは尾花栗毛が特徴的なニューイングランドの産駒であったが、早くからその才覚を発揮した三浦皇成を含む他の24期生とは対照的に長らく勝ち上がりに苦労した大江原圭騎手*89*90とのコンビで人気を集めた*91。2009年の中山大障害は、同年にはようやく騎手として待望の勝利を挙げたとともに、長らく勝ち切れないでいたこの馬自身も待望の初勝利を挙げ、続くオープン戦での勝利を含めた2連勝をあげた人馬のコンビで挑むというドラマチックな展開で、残念ながらキングジョイから離れた4着には敗れたものの、人馬にとっては飛躍の年となった。モルフェサイレンス自身はその後は門別での競争を含めぱっとしない成績に終わったが、その後は驚くべきことに種牡馬入りし、産駒としてはカシノシャインという馬がJRA平地競争を2戦したようだ*92ニューイングランドの代表産駒として京都ハイジャンプ (G2)等を制したテイエムハリアートーワヒヨシマルが挙げられるが、いずれも種牡馬としては活動せず、テイエムハリアーは引退後早逝してしまったそうだ。

グレイレジェンドはTwiningの産駒であるが、その曾祖母ホワイトルビーはオグリキャップの母というオールドファンにとっては思い入れの深い血統で注目された。競争馬としては市原特別(1000万下)を勝った程度で1600万下クラスでは頭打ちになり、障害戦でも3戦していいところなしと平凡な成績に終わっているが、その血統面から種牡馬入りしたようだ。2020年に早々に用途変更となっているが*93、残された産駒には少しでも上を目指して頑張って欲しい。TwiningForty Ninerの産駒であるが、その系統として面白いのはSunday Breakであろう。名牝Catequilの産駒で半弟にキズナを持つ同馬はアメリカで競走生活を送り、引退後は主にフランスで種牡馬として活躍した。産駒のうちOrsippusというアメリカ生産馬は2010年のMatalan Anniversary 4YO Hurdle (G1)を勝利しているほか、Brunch Royalは2021年のWielka Wrocławskaや2022年のPremieo Delle Nazioni (G2)を制すなど同年のポーランドSteeplechase及びイタリアCross Countryにてチャンピオンとして君臨し、フランスTrophée National du Crossにも参戦した。同馬は2022年のVelká Pardubickáにも参戦しており、当時は同じScuderia Aichnerの持ち馬で、MeranoのCross Countryで圧倒的な実績を誇ったFatal Macとの比較も含めて大いに注目されたが*94、スタンドからの大歓声に驚いたのかDropにて落馬に終わっている。また、2020年のCena ČASCH、2021年のCena Vltavyと順調にステップアップしてきたChemlsfordは2023年にはVelká PardubickáのQualification Raceに参戦し、その第1戦にてGodfrey以下を振り切って快勝している。同年はその後残念ながら故障により休養に入ってしまったようだが、チェコCross Countryにおける有数の素質馬としてその復帰が楽しみである*95

 

1984~2022年において本邦で繋養された障害競馬への出走経験を有する種牡馬として、国外の障害競争への出走経験を有する馬も僅かに認められた。No Attentionはフランスのステイヤーとして活躍した馬で、1982年のPreis von Europa (G1)で2着、1982年のPrix Royal Oak (G1)で4着などの実績がある。この馬は3~4歳時において12~1月のCagnes-Sur-Mer開催のHaiesに参加し2勝をあげているほか、春先にはAuteuilのHaiesを4戦し、2着3回という結果を残している。ただしHaiesへの出走としては2023年現在はGroupe IIとして行われている4月のPrix Amadouで大敗したことを最後に平地に戻したようで、その後フランス障害競馬への出走歴はない*96。No Attentionは今般の調査対象馬のうち産駒としては最も多くの血統登録馬を有する種牡馬で、その産駒の中には1990年の天皇賞(春)を制したスーパークリークの名前もある。障害馬としては小倉のオープン戦をギャザウェイが制したのが最高であるが、面白いことに同馬は障害未勝利戦をオーストラリアでチャンピオンジョッキーにも輝き*97*98中山グランドジャンプにも何度か来日した名手Craig Durden騎手*99を背に勝利している。同騎手は中山グランドジャンプ以外にも1994~1996年に掛けて来日していたようで、昨今は騎手不足が問題視される日本障害競馬であるが、やはり中山グランドジャンプで結果を残したBrett ScottやRuby Walshといった名手による抜きん出た騎乗技術を鑑みると、また国外の名手の騎乗を本邦の舞台で見てみたいところである。1990年代に障害騎手として来日したオーストラリアのJamie Evans騎手は自身のFacebookで未だに来日時の思い出を話しているようだ*100。また、No Attentionの産駒のうち、テンジンショウグンという馬は障害戦で400万下を含む2勝を挙げたのち、障害からの出戻りとして1998年に穴男として有名な江田照男騎手を背に単勝式355.7倍の最低人気ながら日経賞 (G2)を制している個性派である*101。このようになかなか面白い産駒を送り出したNo Attentionであるが、残念ながらNo Attention自身は1997年に用途変更となり、その後の消息は不明であるそうで*102、おそらく本邦の血統トレンドを鑑みるとその系統としては途絶えたものと思われる。一方で、No Attentionの父Green Dancerは2023年現在ではフランスで活躍した大種牡馬Cadoudalの父として知られているが、CadoudalはCheltenham Gold Cup (G1)等の勝ち馬Long Runや、World Hurdle (G1)3連覇をはじめとする偉業を成し遂げ現在でも史上最強の24f Hurdle競争馬の一頭に数えられるBig Buck's、Welsh Grand National (G3)の勝ち馬Le Beau Baiといった数多の強豪を送り出すのみならず、Indian River、Maresca Sorrento、Buck's Boum、そしてSaint Des Saintsといった複数の成功した後継種牡馬を送り出した。その中でも特に大成功しているのがSaint Des Saintsの系統で、既にSaint Des Saintsは多数の活躍馬のみならずJeu St Eloi、Castle Du Berlais、Goliath Du Berlais、Magic Dream、Na Hasといった複数の後継種牡馬を送り出し、特にPrix Ferdinand Dufaure (G1)にて卓越した身体能力を見せつけて圧勝したGoliath Du Berlaisを中心に多数の繁殖牝馬を集めているようで、現代の欧州障害競馬において最も勢いのある障害血統となっている*103Green Dancerの産駒として日本ではエイシンプレストンが広く知られているが、Cadoudalを介さない系統としてはIphinoがCriterium Di Primavera (G2)の勝ち馬Treserka、CraigsteelがRelkeel Hurdle (G2)等を制したWholestoneを送り出した程度で、Green Dancerの子孫の現代障害競馬における成功はほぼひとえにCadoudalによるものと言っていいだろう。最近ではフランスの1マイル路線で活躍したFuisseの産駒としてBelle PromesseがPrix Christian De Tredern (G3)を制しているが、残念ながらFuisseは年々フランスでの種付け数は減少し、既にアイルランドに輸出されているそうだ*104*105。一方、No Attentionの半弟でNonoalcoの産駒であるNikosは平地競争馬としては1マイルのG3競走を制したのみであったが、引退後は種牡馬入りし、2009年のQueen Mother Champion Chase (G1)等を制し当時の16f Chase路線で一時代を築き上げた名馬Master Mindedを送り出した。加えてNikosの後継種牡馬であるFrestierも2018年のイタリアGran Premio Merano (G1)でフランス調教馬として驚異的な強さを見せつけたLe Costaudを送り出しており、上記Saint Des Saintsの成功も踏まえると、No Attention自体は既に過去のものとなっているが、血統的には現代障害競馬においてもなかなか馴染みがある面々である。総額15億円ものシンジゲートが組まれたにも関わらず*106本邦での種牡馬としては大失敗に終わったと言われるスーパークリークも、当時の日本競馬の世界的な位置づけは現代とは大きく異なっていたとはいえ、欧州の障害競争であればその真価を発揮することが出来たかもしれない。

 

なお、国外から本邦に輸入された繁殖牝馬における障害競馬出走経験の有無及び産駒成績は今後の調査課題であるが、直近の例としてはJukebox Juryの産駒で2020年のPrix Cadran等を制したPrincess Zoeが挙げられる。同馬は2022-23シーズンはHurdle路線に参戦し、2023年のCheltenham FestivalのJack De Bromhead Mares' Novices' Hurdle (G2)にも出走し5着に入っているが、どうやら日本にて繁殖入りするらしい*107Montjeuの産駒であるJukebox JuryはDamsireとしてはドイツダービー馬Fantastic Moonを送り出しているようだが、種牡馬としてはFarclasやIl Etait Temps等のG1勝ち馬に加えて、Cena Nadace pro rozvoj města Pardubicの勝ち馬Dajuka、Wielka Partynickaの勝ち馬Spasskiといった産駒を送り出しており、その代表産駒としては2020年のGran Corsa Siepi Di Merano (G1)等を制し、当時のイタリアSiepiにおいてチャンピオンホースとして君臨したStukeが挙げられる。残念ながらStukeは2023年のVelká PardubickáのTaxis Ditchにおける落馬により亡くなっており、当該障害の安全性等に関して多くの議論を引き起こす原因となってしまったが、当歳時には尿路系の先天異常により生命の危機にもあったにも関わらず、ドイツでの複数回の手術を乗り越えてイタリアでの栄光を掴むというドラマチックなキャリアを辿った馬である*108

 

現代日本競馬においては既に過去の存在となっているが、アングロアラブ及びサラ系といった非サラブレッド種牡馬も僅かに認められた。Keruzec*109はフランスPompadourでアングロアラブ限定平地競争を2勝した馬であるが、Auteuilでの3戦を含むHaiesを4走し、2023年現在は4歳限定HaiesのClasse2競走として行われるPrix Jean Noiret*110で2着に入った。1837年に設立された歴史あるPompadour競馬場は現代でも活発にアラブ系競争馬を対象とした障害競馬を開催しており、そのハイライトは緑豊かで起伏のある本格的なCross Country Courseをフルに使用した8月のGrand Cross De Pompadourで、同競争はフランスCross Country SeriesであるTrophée National du Crossの一環として行われる*111。Keruzec自身は純血アラブを祖先とする父系の出身で、父はアングロアラブのThalian、祖父は純血アラブのDjerba Ouaとなる。Keruzecの母Drina IIはサラブレッドである。おそらくこの系統出身の馬は現代障害競馬にも存在していると思われるが*112、現代障害競馬におけるアラブ系競争馬の位置づけを踏まえると、その殆どはフランスのアラブ系競争馬限定競走と思われる。

Toscafetはフランスアングロアラブ限定平地競争で3戦3勝と結果を残した馬だが、4月のPauのHaiesにも参戦し、サラブレッド相手に4着に入ったようだ*113。Toscafetの場合は父Cafettot及び祖父Dionysos IIはいずれもAnglo-Arabianだが、その父SamaritainはSt Simonに連なるサラブレッドである。Cafettotの後継種牡馬としてClafouti (AA)はKotkijetが勝利した2001年のGrand Steeplechase De Paris (G1)にも出走したChampion Veronais (AC)を、Le Criquet (AA)はPrix Cahallenge De Haies Des 4 AnsというEnghien-Soisyの競争を制したMister Boum (AA)を送り出しているが、おそらくいずれも競争馬の血統としては過去のものと思われる。なお、Toscafetの産駒であるトキノリバティーは1990年のセイユウ記念を横山典弘騎手を背に制した馬で引退後は種牡馬入りしたようだが、JAIRSのデータベースにおいて血統登録された産駒は計8頭と僅かであった*114

サラ系種牡馬として笠松及び公営中京、名古屋で活躍したニューカイモンはそのキャリアの晩年となる1976年には障害競争にて3戦2勝、オープン戦で淀障害ステークスを勝利したエリモロイヤルの3着という成績を収めた馬である。ニューカイモンの場合は父がThe Mongooseというイギリスのサラブレッドであった一方で、母アイチテンプウがサラ系競争馬であった。このアイチテンプウはどうやら牝系として1899年に日本レース・倶楽部によってオーストラリアから輸入されたミラ*115に遡る牝系出身のようだ*116。もはや数少なくなってしまったミラの末裔としてトウケイミラ*117という馬が2020年にJRAで3勝を挙げたそうで*118、なんとか残って欲しいところである。なお、父The MongooseはMatchemに遡るPrecipitationを父に持つSupreme Courtの産駒であるが、既に現代障害競馬においては姿を消した系統である。Matchemの子孫の現代障害競馬における活躍馬は数少ないが、近年ではTiznowの産駒であるMr Hot StuffがA. P. Smithwick Memorial Steeplechase (G1)やGrand National Hurdle (G1)を制したほか、同じくTiznowの産駒であるSchoodicがInternational Gold Cup等を制し、アメリカHurdle及びTimber路線においてチャンピオンホースとして君臨したのが比較的存在感を示した希少な例であろう。他にはDiktatの産駒Skins Gameを父に持つSkins RockがGran Corsa Siepi Di Milano (G1)等を制した程度だろうか。非サラブレッド競争馬としてフランスを中心にAQPS等が多数存在し、現代の欧州障害競馬においても大きな存在感を示している一方で、本邦においてもその出自は全く異なるとはいえ過去にはサラ系及びアングロアラブ等の非サラブレッド競争馬は多数存在したが、日本障害競馬においてサラ系及びアングロアラブ等の競争馬の位置づけは今後の検討課題であろう。

*1:https://www.jairs.jp/

*2:https://www.studbook.jp/users/ja/Search_kyouyou.php?sid=&initial_forward=

*3:https://www.jbis.or.jp/

*4:https://www.netkeiba.com/

*5:https://db.netkeiba.com/?pid=classic_index

*6:https://www.racingpost.com/

*7:https://www.france-galop.com/fr/hommes-chevaux/chevaux

*8:https://twitter.com/seigurachannel/status/1747515897051570251

*9:https://twitter.com/mahoyomeproject/status/1747272501019951293

*10:https://twitter.com/Spica_Oh/status/1747573304763060600

*11:https://twitter.com/komarin_PR/status/1747453703706042399

*12:https://twitter.com/watakon_ten/status/1747545520338534434

*13:https://twitter.com/KONAMI573ch/status/1747415941460418601

*14:https://twitter.com/ArknightsStaff/status/1746110126355046609

*15:https://virgos2g.hatenablog.com/entry/2023/01/17/231245

*16:https://www.studbook.jp/users/ja/UserMenu.php

*17:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%AD%E5%B1%B1%E3%82%B0%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%89%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%B3%E3%83%97

*18:当ブログでは数えきれないほど記載しているが、既に同競争は国際的には一介の凡庸な国際競争に格下げされるという愚策の犠牲となっている。

*19:https://virgos2g.hatenablog.com/entry/2021/12/14/002653

*20:https://uma-furusato.com/column/54964.html

*21:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AA%E3%83%BC%E3%83%97%E3%83%B3%E3%82%AC%E3%83%BC%E3%83%87%E3%83%B3_(%E7%AB%B6%E8%B5%B0%E9%A6%AC)

*22:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A6%E3%82%A6%E3%83%9F%E3%83%AD%E3%82%AF

*23:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%83%E3%82%B8%E3%82%A2%E3%83%B3%E3%82%B8%E3%82%A7%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%83%81

*24:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%AD%E5%B1%B1%E5%A4%A7%E9%9A%9C%E5%AE%B3

*25:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A6%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%9E%E3%83%BC%E3%83%99%E3%83%A9%E3%82%B9

*26:https://www.equitation-japan.com/index.php?menuindex=102-103&hno=56536

*27:https://www.jra.go.jp/gallery/dendo/horse10.html

*28:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B0%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%89%E3%83%9E%E3%83%BC%E3%83%81%E3%82%B9

*29:https://db.netkeiba.com/horse/result/000a002b46/

*30:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B0%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%89%E3%83%9E%E3%83%BC%E3%83%81%E3%82%B9

*31:https://db.netkeiba.com/horse/1982101349/

*32:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%90%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%8D%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%83%95

*33:https://web-hakuba.com/keiba/column/C/2015/GBR/Ffoslas2.html

*34:https://www.pedigreequery.com/dom+alco

*35:実質的な1998年の牡馬三冠馬である。なお、同馬を外して同世代の3強と称する言説が存在するが、誤りである(当ブログの管理人談)。

*36:https://virgos2g.hatenablog.com/entry/2023/11/12/000000

*37:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B7%E3%83%B3%E3%82%AC%E3%83%9D%E3%83%BC%E3%83%AB%E8%88%AA%E7%A9%BA%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%83%8A%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%8A%E3%83%AB%E3%82%AB%E3%83%83%E3%83%97

*38:https://www.sankei.com/article/20230606-3CEEE5H4N5M77FEEWRVD2XWTJI/

*39:https://db.netkeiba.com/horse/1978102849/

*40:https://virgos2g.hatenablog.com/entry/2022/01/23/141302

*41:https://virgos2g.hatenablog.com/entry/2021/09/17/030000

*42:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%AC%E9%83%BD%E5%A4%A7%E9%9A%9C%E5%AE%B3

*43:https://search.jbis.or.jp/horse/0000237468/record/

*44:https://virgos2g.hatenablog.com/entry/2021/10/10/000000

*45:https://en.wikipedia.org/wiki/Coneygree

*46:https://db.netkeiba.com/horse/1977102566/

*47:https://www.web-hakuba.com/keiba/column/C/pasttime.html

*48:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%B1%E4%BA%AC%E7%AB%B6%E9%A6%AC%E5%A0%B4

*49:https://www.studbook.jp/users/ja/Search_chichi_shushiba_list.php?hid=36464606220&kid=&TanetsukeYear=0

*50:https://news.netkeiba.com/?pid=news_view&no=141527

*51:https://dic.nicovideo.jp/a/%E3%82%A6%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%82%AC%E3%83%BC

*52:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A6%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%82%AC%E3%83%BC

*53:https://www.sponichi.co.jp/gamble/news/2016/03/01/kiji/K20160301012129600.html

*54:https://www.equibase.com/profiles/Results.cfm?type=Horse&refno=1071717®istry=T&rbt=TB

*55:https://www.pedigreequery.com/bar

*56:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%80%E3%82%A4%E3%82%B3%E3%83%BC%E3%82%BF%E3%83%BC

*57:https://www.sponichi.co.jp/gamble/news/2013/07/04/kiji/K20130704006144600.html

*58:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%93%E3%83%83%E3%82%B0%E3%82%A6%E3%82%A3%E3%83%BC%E3%82%AF

*59:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B7%E3%83%B3%E3%82%A6%E3%83%AB%E3%83%95

*60:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A1%E3%82%B8%E3%83%AD%E3%83%91%E3%83%BC%E3%83%9E%E3%83%BC

*61:https://db.netkeiba.com/race/200106050710/

*62:https://db.netkeiba.com/horse/1995107100/

*63:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AB%E3%83%8D%E3%83%88%E3%82%B7%E3%82%AC%E3%83%90%E3%83%8A%E3%83%BC

*64:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B1%E3%82%A4%E3%82%A2%E3%82%A4%E3%83%89%E3%82%A6%E3%82%BD%E3%82%B8%E3%83%B3

*65:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B4%E3%83%83%E3%83%89%E3%82%B9%E3%83%94%E3%83%BC%E3%83%89_(%E7%AB%B6%E8%B5%B0%E9%A6%AC)

*66:https://virgos2g.hatenablog.com/entry/2023/12/15/010000

*67:https://www.odt.co.nz/sport/racing/tai-ho-tough-slogging-riverton-steeplechase-win

*68:https://www.pressreader.com/new-zealand/the-southland-times/20191221/282402696285172

*69:https://virgos2g.hatenablog.com/entry/2021/12/26/000000

*70:https://www.stuff.co.nz/sport/racing/127861258/jumps-racing-unlikely-to-return-to-riverton-racecourse

*71:https://www.youtube.com/watch?v=j610hYTyMZQ

*72:https://virgos2g.hatenablog.com/entry/2022/07/13/224025

*73:https://www.france-sire.com/article-zoom_etalon-41537-tunis_monte_en_pression_avec_sa_1ere_generation_de_3_ans.php

*74:https://www.france-sire.com/article-actualites-26247-larosh_embarquez_pour_l_ukraine_avec_air_guillaume_macaire.php

*75:https://www.jairs.jp/contents/w_tokei/2018/3.html

*76:https://www.france-sire.com/article-actualites-26247-larosh_embarquez_pour_l_ukraine_avec_air_guillaume_macaire.php

*77:https://www.facebook.com/pages/%D0%9E%D0%B4%D0%B5%D1%81%D1%81%D0%BA%D0%B8%D0%B9-%D0%B8%D0%BF%D0%BF%D0%BE%D0%B4%D1%80%D0%BE%D0%BC/237918256387439

*78:https://virgos2g.hatenablog.com/entry/2022/09/19/110537

*79:http://dostihyjc.cz/index.php?page=17&ID=99357

*80:https://virgos2g.hatenablog.com/entry/2023/04/28/000552

*81:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A6%E3%82%AA%E3%83%83%E3%82%AB_(%E7%AB%B6%E8%B5%B0%E9%A6%AC)

*82:http://www.longfordhousestud.website/seven-pockets.html

*83:https://www.studbook.jp/users/ja/Honba.php?sid=1212960692

*84:https://www.equibase.com/profiles/Results.cfm?type=Horse&refno=8072712®istry=T&rbt=TB

*85:https://virgos2g.hatenablog.com/entry/2023/12/12/013000

*86:https://jra.jp/news/202201/010804.html

*87:https://www.france-galop.com/fr/cheval/aVd5cCtUVnh0VE9TRVB1T2xQc1BFdz09

*88:https://www.france-galop.com/fr/cheval/ZTZKUlp3RE5XS3ZCanRVcHpaSzdSdz09

*89:https://diamond.jp/articles/-/4678

*90:http://www1.mirai.ne.jp/~inazuma/ok/index.html

*91:https://w.atwiki.jp/ooehara/pages/12.html

*92:https://db.netkeiba.com/horse/2015109056/

*93:https://www.studbook.jp/users/ja/Honba.php?hid=23816410826

*94:https://virgos2g.hatenablog.com/entry/2022/10/09/000000

*95:http://dostihyjc.cz/index.php?page=17&ID=164047

*96:https://www.france-galop.com/fr/cheval/SjlERHRldXdxUUZyWFo3Y2dYQWdBQT09

*97:https://www.racing.com/news/2020-05-05/news-craig-durden---1993-grand-annual

*98:https://go.gale.com/ps/i.do?p=AONE&u=googlescholar&id=GALE|A285158233&v=2.1&it=r&sid=sitemap&asid=3a43b6b4

*99:https://virgos2g.hatenablog.com/entry/2021/12/24/155405

*100:https://www.youtube.com/@jamieevansjockey/videos

*101:https://db.netkeiba.com/horse/1990102785/

*102:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8E%E3%83%BC%E3%82%A2%E3%83%86%E3%83%B3%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3

*103:https://virgos2g.hatenablog.com/entry/2023/09/22/235500

*104:https://www.pedigreequery.com/fuisse2

*105:https://infochevaux.ifce.fr/en/fuisse-fFGXcp_uTtaLskfYnxSGbw/reproduction/bilan-reproduction

*106:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%83%BC%E3%83%91%E3%83%BC%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%AF

*107:https://twitter.com/tonymullins84/status/1705590722286477703

*108:https://virgos2g.hatenablog.com/entry/2023/10/08/070000

*109:https://www.france-galop.com/fr/cheval/dmVtK0VrQ1ZBa1RSdVZpRHpwN1dOQT09

*110:https://www.equidia.fr/courses/2023-09-05/R1/C3

*111:https://virgos2g.hatenablog.com/entry/2022/01/23/141302

*112:https://virgos2g.hatenablog.com/entry/2022/08/07/135333

*113:https://www.france-galop.com/fr/course/detail/1984/O/elRySHQ5VnBrZFlyMVowc2lLSTJpQT09

*114:https://www.studbook.jp/users/ja/Search_chichi_kettou_list2.php?hid=166606830496&kid=&birthYear=0

*115:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9F%E3%83%A9_(%E7%AB%B6%E8%B5%B0%E9%A6%AC)

*116:http://www.asahi-net.or.jp/~ka5k-ab/arab/family.html#NTB

*117:https://news.sp.netkeiba.com/?pid=column_view&cid=45011

*118:https://db.netkeiba.com/horse/2017103554/